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第八章:塔の管理者達と、新たな敵
308:背前の合せ鏡
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内部に侵入し、すぐに鑑定眼を発動させる。どうやら番犬たちは流の事に気がついていないようだった。その理由が――。
「今回のコレ、『背前の合せ鏡』はいい仕事をしているらしい」
「ほぇ~、全くわからないワンよ? 匂いすらかき消えているワン」
ワン太郎は、流の周りを〝ててて〟と走り回ると、また流の肩へと乗る。
今回異怪骨董やさんから持ってきた骨董の品の一つ、「背前の合せ鏡」と呼ばれるモノは直径三センチ程の丸い鏡であった。その効果は「対象者の後ろの風景を前に映し出す」と言うものだ。
ただ「頭上以外」の場所と言う制約があるが、どこから見ても透けて見え誰もいない。
「本当に凄いよな。さて、情報では水塔だったが……館にもそれなりの人数がいるな。どうする」
『まずはメリサさんを救出優先して、水塔を攻略後がよいのでは?』
「だな……」
流は屋敷を一瞥してから、塔へ向けて走り出す。途中番犬と数回すれ違った後、目的の水塔の入り口へとたどり着く。
「おいおい、なんだこれは?」
「う~ん。異世界の魔法結界といった感じに見えるワン……」
入り口の前に来ると、ガーゴイルの彫像のような二体の石像が指をこちらへと向けて、入り口を高エネルギーの塊のようなもので封鎖している。
美琴で斬り割くのは出来そうだが、確実に侵入がバレそうであった。
「何かいい方法は……ん? あれは……」
見れば塔の上部より、窓のようなものが付いているのを発見する。
しかしそこまでの距離は、約十五メートルほどで妖人になろうとも、届く距離じゃなかった。どうしたものかと少し考え、ふと外壁を見ると流に妙案が閃く。
「ワン太郎、お前氷作るの得意だろう? なら足場を作ってくれよ、水塔の壁に沿ってさ」
「おお! なるほど! あるじは目の付け所が鋭いワンね」
「なんだよ、そのどっかの企業みたいなセリフは。で、どうだ出来るか?」
ワン太郎は不敵にわらいながら「愚問!」と言うと、流から降りると同時に尻尾をふくらませる。
その後すぐに、水塔の壁に「狐の顔をした足場」が階段のように出来上がった。
「こいつは驚いた。ここまで出来るとはなぁ」
「エヘンだワン! 凄かろう、凄かろう!? 撫でてもいいんだワンよ?」
「よし、じゃあ後で撫でてやる。ちゃ~りゅも添えてな」
それを聞いたワン太郎の尻尾は高速で動き、残像で九尻尾に見えるほどだった。余談だが〝ちゃ~りゅ〟と言うのは、異世界で売っているペット用のオヤツで、ペットに大人気だったりする。それをメイドが見つけて購入したものだった。
「約束だワンよ!?」
「分かったって、さて……と。一気に上階へ行くより下から順に見ていくか」
『追跡者も、違う階層で何度か見たと言ってましたしね』
流れはワン太郎の頭を一撫ですると、氷の狐顔の足場を蹴り進み窓部分まで駆け上がる。
窓部分は広く、縦は自分の背丈よりなお高く、幅は二メートルほどあるもので、扉などは無くそのまま侵入できる構造に驚く。
そのあまりの不用心さに、街の重要拠点としての役割に少し不安を抱くが、それが杞憂だとすぐに分かる。
「あるじ~、これ進むと駄目なやつワン」
「だな。大体ここは中世ヨーロッパに似た世界にしては、魔具があるから現代日本より技術が進んでいたりするからなぁ……」
流の目線の先にあるモノ……それはどう見ても「ロボット」だった。いや、この世界風に言えば「ゴーレム」と言うものだろうか。
上半身が人の形で、頭部は前後左右を見るレンズのようなモノが付いており、足は無いが車輪が付いており、右手には何かを撃ち出すであろう筒が装備されている。
さらによく見ると、左手には紋章のようでもあり、魔法陣のような模様の盾を装備しており、警備ロボットにしか見えなかった。
その頭部のレンズのようなモノに、もし熱感知センサーのようなものが付いていたら、さすがの背前の合せ鏡でもお手上げと思えたが――。
「とは言え、ここで指をくわえて見てるわけにもいかねぇからな……じゃあ行くぞッ!!」
流から飛び降りたワン太郎は、ゴーレムの前に飛び出し注意を引く。
それを見たゴーレムは、人と違うからか攻撃態勢には入らず、ジッとワン太郎を見つめていた。
「よそ見は廃棄処分だそ?」
流は背後からゴーレムを中心から縦に一刀にて斬り伏せる。真っ二つになったゴーレムの中心には、透明度の高い真っ赤な魔核が綺麗に半分に割れていた。
それを見て、このゴーレムは魔核を破壊すれば問題ないと判断する。
「なるほどね、魔核を破壊すればいいのか。場所は丁度真ん中か」
『では飛竜牙を飛ばせば、ロボさんを討ち取れるんじゃないのかな?』
「アルカイックが幽霊になった娘が、ロボって言うと違和感しかない……しかも討ち取るとか……江戸時代人め」
『ちょ!? 失礼なうえに、ひどくないですかそれ!!』
「まぁ本当の事だ許――来たぞ。前方から五体だ」
「ワレに任せるワンよ~」
ワン太郎は、前方から迫るゴーレムの足元を凍らせ、アイスリンクのような「氷の床」を作り出す。
警備モードとは言え、それなりのスピードで走っていたゴーレムは、いきなり滑り隣のゴーレムとぶつかり止まる。
「ナイス、ワン太郎! 喰らえ、飛竜牙!!」
素材は石と木の中間のようなもので出来ているゴーレムは、その魔核がある場所に深々と飛竜牙が突き刺さり活動を終えるのだった。
「今回のコレ、『背前の合せ鏡』はいい仕事をしているらしい」
「ほぇ~、全くわからないワンよ? 匂いすらかき消えているワン」
ワン太郎は、流の周りを〝ててて〟と走り回ると、また流の肩へと乗る。
今回異怪骨董やさんから持ってきた骨董の品の一つ、「背前の合せ鏡」と呼ばれるモノは直径三センチ程の丸い鏡であった。その効果は「対象者の後ろの風景を前に映し出す」と言うものだ。
ただ「頭上以外」の場所と言う制約があるが、どこから見ても透けて見え誰もいない。
「本当に凄いよな。さて、情報では水塔だったが……館にもそれなりの人数がいるな。どうする」
『まずはメリサさんを救出優先して、水塔を攻略後がよいのでは?』
「だな……」
流は屋敷を一瞥してから、塔へ向けて走り出す。途中番犬と数回すれ違った後、目的の水塔の入り口へとたどり着く。
「おいおい、なんだこれは?」
「う~ん。異世界の魔法結界といった感じに見えるワン……」
入り口の前に来ると、ガーゴイルの彫像のような二体の石像が指をこちらへと向けて、入り口を高エネルギーの塊のようなもので封鎖している。
美琴で斬り割くのは出来そうだが、確実に侵入がバレそうであった。
「何かいい方法は……ん? あれは……」
見れば塔の上部より、窓のようなものが付いているのを発見する。
しかしそこまでの距離は、約十五メートルほどで妖人になろうとも、届く距離じゃなかった。どうしたものかと少し考え、ふと外壁を見ると流に妙案が閃く。
「ワン太郎、お前氷作るの得意だろう? なら足場を作ってくれよ、水塔の壁に沿ってさ」
「おお! なるほど! あるじは目の付け所が鋭いワンね」
「なんだよ、そのどっかの企業みたいなセリフは。で、どうだ出来るか?」
ワン太郎は不敵にわらいながら「愚問!」と言うと、流から降りると同時に尻尾をふくらませる。
その後すぐに、水塔の壁に「狐の顔をした足場」が階段のように出来上がった。
「こいつは驚いた。ここまで出来るとはなぁ」
「エヘンだワン! 凄かろう、凄かろう!? 撫でてもいいんだワンよ?」
「よし、じゃあ後で撫でてやる。ちゃ~りゅも添えてな」
それを聞いたワン太郎の尻尾は高速で動き、残像で九尻尾に見えるほどだった。余談だが〝ちゃ~りゅ〟と言うのは、異世界で売っているペット用のオヤツで、ペットに大人気だったりする。それをメイドが見つけて購入したものだった。
「約束だワンよ!?」
「分かったって、さて……と。一気に上階へ行くより下から順に見ていくか」
『追跡者も、違う階層で何度か見たと言ってましたしね』
流れはワン太郎の頭を一撫ですると、氷の狐顔の足場を蹴り進み窓部分まで駆け上がる。
窓部分は広く、縦は自分の背丈よりなお高く、幅は二メートルほどあるもので、扉などは無くそのまま侵入できる構造に驚く。
そのあまりの不用心さに、街の重要拠点としての役割に少し不安を抱くが、それが杞憂だとすぐに分かる。
「あるじ~、これ進むと駄目なやつワン」
「だな。大体ここは中世ヨーロッパに似た世界にしては、魔具があるから現代日本より技術が進んでいたりするからなぁ……」
流の目線の先にあるモノ……それはどう見ても「ロボット」だった。いや、この世界風に言えば「ゴーレム」と言うものだろうか。
上半身が人の形で、頭部は前後左右を見るレンズのようなモノが付いており、足は無いが車輪が付いており、右手には何かを撃ち出すであろう筒が装備されている。
さらによく見ると、左手には紋章のようでもあり、魔法陣のような模様の盾を装備しており、警備ロボットにしか見えなかった。
その頭部のレンズのようなモノに、もし熱感知センサーのようなものが付いていたら、さすがの背前の合せ鏡でもお手上げと思えたが――。
「とは言え、ここで指をくわえて見てるわけにもいかねぇからな……じゃあ行くぞッ!!」
流から飛び降りたワン太郎は、ゴーレムの前に飛び出し注意を引く。
それを見たゴーレムは、人と違うからか攻撃態勢には入らず、ジッとワン太郎を見つめていた。
「よそ見は廃棄処分だそ?」
流は背後からゴーレムを中心から縦に一刀にて斬り伏せる。真っ二つになったゴーレムの中心には、透明度の高い真っ赤な魔核が綺麗に半分に割れていた。
それを見て、このゴーレムは魔核を破壊すれば問題ないと判断する。
「なるほどね、魔核を破壊すればいいのか。場所は丁度真ん中か」
『では飛竜牙を飛ばせば、ロボさんを討ち取れるんじゃないのかな?』
「アルカイックが幽霊になった娘が、ロボって言うと違和感しかない……しかも討ち取るとか……江戸時代人め」
『ちょ!? 失礼なうえに、ひどくないですかそれ!!』
「まぁ本当の事だ許――来たぞ。前方から五体だ」
「ワレに任せるワンよ~」
ワン太郎は、前方から迫るゴーレムの足元を凍らせ、アイスリンクのような「氷の床」を作り出す。
警備モードとは言え、それなりのスピードで走っていたゴーレムは、いきなり滑り隣のゴーレムとぶつかり止まる。
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