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第八章:塔の管理者達と、新たな敵
329:理不尽を超える理不尽
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エスポワールの言葉どおり、まさに理不尽の化身となって襲いかかる使用人たちは、数とスピードの権化と化す……。
そのスタンスは「一撃離脱」であり、決して二撃目は入れず他の使用人へとスイッチして流の攻撃を寄せ付けない。
左上段から襲いかかったと思えば、右下から頬をかすめるように手刀が飛び、正面からは手刀が四本飛んでくる。
氷狐王の機関銃のような氷の連射にも耐えた流は、その程度の手刀なら躱す事はわけないのだが、直線的な攻撃でない、まるで蛇のようなクネる動きで流を翻弄する。
「チィッ!! これじゃあきりが無いぞッ!?」
「ふ~む、無駄ですな。何をしても無駄無駄むぅだぁぁぁあ!!」
「そのセリフはなぁぁぁ!! 同じ死人でもお前のような、腐ったヤツの言っていい言葉じやあないッ!! 俺を殺したきゃロードローラーくらい持ってこい!!」
「ふ~む? 何を意味のわからない世迷い言を……。寝言は寝てから言うのですな? さぁ理不尽に呑まれてお逝きくださいませ」
エスポワールはそう言うと右手を前に振り落とす。
それを合図に今までよりもさらに苛烈な手刀と、使用人達のスイッチが加速する。
これには流も余裕を無くし、防戦一方だったのが更に追い詰められ――。
「グァァァァッ!?」
響く苦痛の声にエスポワールは口角を上げ、楽しげに嗤う。
「ククク……。古廻様ぁ~、ついに崩れましたなぁ!? ハァ~ハッハッハ――」
「エ、エスポワールさ……ま……」
「――ハア?」
突然倒れる使用人の一人。それを何が起きたのか、意味が分からない顔で見るエスポワール。
「理不尽? 然り然り……ならばさらなる理不尽を持って、キサマらを土塊に還してくれようぞ!!」
突如現れる黒い影。それはまるで空間が裏返ったかのように見えるほど、不気味だが自然に現れ、やがて黒い影は実体化し一人の老練な武将の姿になる。
その手には業物と思われる、ひと目で「ヤバイ刀」と言う物が抜かれており、その存在力を増し続ける。
エスポワールは濁った両目を見開き、その異常な状況に固まる。
自分の師であり、全ての根幹たる「鏡心様」からそのような知識を得ていないのだから。
「……ふ~む。なんですか貴方は?」
「わしか? 姓は九条。名は三左衛門。人呼んで『羅刹の三左』と言うケチな武士だ」
「ふ~む……なるほど。で? 貴方がお一人で参戦したとしても、状況は変わらないようですが?」
見れば流への攻撃は続いており、余剰をエスポワールへの守りに布陣が完了したようだった。
「ヌシも間抜けの類か? まぁ、そうなのだろう……所詮は死人よな」
「っく、そういうセリフはこの状況を――」
「だからのう、誰がワシだけと言った?」
三左衛門がそう言った瞬間、空間が反転するように影が浮かぶと、それが人の形になりやがて実体化する。
その数は見えているのによく分からず、そこにいるはずなのに、認識が難しい存在だった。
その事実にエスポワールは一言、「なっ……」とひねり出すのが精一杯だった。
「さて、よくも我らの大殿を嬲ってくれたな? この代償は高く付くぞ死人めが。さぁ……理不尽を始めよう」
三左衛門が最後の言葉を言い終わった瞬間それは起こる。主に武士の亡霊が抜刀すると、使用人たちへと斬りかかる。
「お前たち、守れ! 守れえええええ!!」
エスポワールは自らも曲刀を抜き、亡霊へと斬撃を放つ。だが――。
「なッ!? すり抜けただとおおおお!!」
「馬鹿め、すり抜けたのではないわ。この三左衛門の得意とする〝朧影〟よ」
「なぜ私がこのような、見せかけだけの業に惑わされる!?」
「阿呆め、戦場の年季が違うわ! 木瓜があああああッ!!」
三左衛門は左手で思いっきりエスポワールの顔面を殴りつける。たまらず吹き飛ぶエスポワールは、片膝を付きながらもすぐに起き上がる。
見れば使用人たちへも、得体の知れない何かが襲いかかっていた。
その攻撃は熾烈を超え、苛烈を超え、使用人達の防御を業と数で安々と喰い破る。
たまらず後退する使用人の一人は、背後に出来た大穴から出てきた亡者によって、噛みつかれ穴の中へと引きずり降ろされる。
その穴の後ろに、どう見ても陰陽師のような娘が気だるげに何かを唱えていた。
さらにエスポワールは視線を変えると、見えない壁に潰される者。師に聞いた鬼と呼ばれるのに酷似した何かに吹き飛ばされるもの。さらにはあの男、柴朔のような風体の男に真っ二つに斬られるものと、そこには阿鼻叫喚の地獄が広がっていた。
「ば……ばかなぁ……」
あまりの惨状にエスポワールは、ニ歩後ずさる。その様子を見た三左衛門は何をするでもなく、数歩下がりながら頭を下げて主の花道を作る。
「どうだ、骨の髄まで理不尽を堪能してくれたか?」
「な……何だと言うのだ……。こ、こんな事は『鏡心』様より聞いていないぞ!?」
「鏡心? 誰だそれは?」
「――っ!? これは……思わず口を滑らせてしまいましたな。なに、貴方の知ることではございませぬゆえ。どうぞそのまま――死ねええええええええええ!!」
エスポワールは持てる全ての力を使い、流へと斬りかかる。
体を回転させ、まるで羆破斬のように、背中を見せながら回転する死のコマと化す。
それを冷静に見る流は美琴を高速納刀する……そして!!
「腐った面は見飽きた。ジジイ流・抜刀術! 奥義・太刀魚【改】!!」
散々戦ってクセと業を見きった流は、エスポワールの斬撃の隙きを狙う。
それは攻撃を当てる一瞬、曲刀を斜め上に反らすクセを鑑定眼で見極めた流は、太刀魚をそらした瞬間「下から」ぶち当てる。
曲刀は太刀魚を滑り、そのまま流の頭上へ剣閃が走った刹那、太刀魚はエスポワールのクビを真っ二つに刎ね飛ばすのだった。
そのスタンスは「一撃離脱」であり、決して二撃目は入れず他の使用人へとスイッチして流の攻撃を寄せ付けない。
左上段から襲いかかったと思えば、右下から頬をかすめるように手刀が飛び、正面からは手刀が四本飛んでくる。
氷狐王の機関銃のような氷の連射にも耐えた流は、その程度の手刀なら躱す事はわけないのだが、直線的な攻撃でない、まるで蛇のようなクネる動きで流を翻弄する。
「チィッ!! これじゃあきりが無いぞッ!?」
「ふ~む、無駄ですな。何をしても無駄無駄むぅだぁぁぁあ!!」
「そのセリフはなぁぁぁ!! 同じ死人でもお前のような、腐ったヤツの言っていい言葉じやあないッ!! 俺を殺したきゃロードローラーくらい持ってこい!!」
「ふ~む? 何を意味のわからない世迷い言を……。寝言は寝てから言うのですな? さぁ理不尽に呑まれてお逝きくださいませ」
エスポワールはそう言うと右手を前に振り落とす。
それを合図に今までよりもさらに苛烈な手刀と、使用人達のスイッチが加速する。
これには流も余裕を無くし、防戦一方だったのが更に追い詰められ――。
「グァァァァッ!?」
響く苦痛の声にエスポワールは口角を上げ、楽しげに嗤う。
「ククク……。古廻様ぁ~、ついに崩れましたなぁ!? ハァ~ハッハッハ――」
「エ、エスポワールさ……ま……」
「――ハア?」
突然倒れる使用人の一人。それを何が起きたのか、意味が分からない顔で見るエスポワール。
「理不尽? 然り然り……ならばさらなる理不尽を持って、キサマらを土塊に還してくれようぞ!!」
突如現れる黒い影。それはまるで空間が裏返ったかのように見えるほど、不気味だが自然に現れ、やがて黒い影は実体化し一人の老練な武将の姿になる。
その手には業物と思われる、ひと目で「ヤバイ刀」と言う物が抜かれており、その存在力を増し続ける。
エスポワールは濁った両目を見開き、その異常な状況に固まる。
自分の師であり、全ての根幹たる「鏡心様」からそのような知識を得ていないのだから。
「……ふ~む。なんですか貴方は?」
「わしか? 姓は九条。名は三左衛門。人呼んで『羅刹の三左』と言うケチな武士だ」
「ふ~む……なるほど。で? 貴方がお一人で参戦したとしても、状況は変わらないようですが?」
見れば流への攻撃は続いており、余剰をエスポワールへの守りに布陣が完了したようだった。
「ヌシも間抜けの類か? まぁ、そうなのだろう……所詮は死人よな」
「っく、そういうセリフはこの状況を――」
「だからのう、誰がワシだけと言った?」
三左衛門がそう言った瞬間、空間が反転するように影が浮かぶと、それが人の形になりやがて実体化する。
その数は見えているのによく分からず、そこにいるはずなのに、認識が難しい存在だった。
その事実にエスポワールは一言、「なっ……」とひねり出すのが精一杯だった。
「さて、よくも我らの大殿を嬲ってくれたな? この代償は高く付くぞ死人めが。さぁ……理不尽を始めよう」
三左衛門が最後の言葉を言い終わった瞬間それは起こる。主に武士の亡霊が抜刀すると、使用人たちへと斬りかかる。
「お前たち、守れ! 守れえええええ!!」
エスポワールは自らも曲刀を抜き、亡霊へと斬撃を放つ。だが――。
「なッ!? すり抜けただとおおおお!!」
「馬鹿め、すり抜けたのではないわ。この三左衛門の得意とする〝朧影〟よ」
「なぜ私がこのような、見せかけだけの業に惑わされる!?」
「阿呆め、戦場の年季が違うわ! 木瓜があああああッ!!」
三左衛門は左手で思いっきりエスポワールの顔面を殴りつける。たまらず吹き飛ぶエスポワールは、片膝を付きながらもすぐに起き上がる。
見れば使用人たちへも、得体の知れない何かが襲いかかっていた。
その攻撃は熾烈を超え、苛烈を超え、使用人達の防御を業と数で安々と喰い破る。
たまらず後退する使用人の一人は、背後に出来た大穴から出てきた亡者によって、噛みつかれ穴の中へと引きずり降ろされる。
その穴の後ろに、どう見ても陰陽師のような娘が気だるげに何かを唱えていた。
さらにエスポワールは視線を変えると、見えない壁に潰される者。師に聞いた鬼と呼ばれるのに酷似した何かに吹き飛ばされるもの。さらにはあの男、柴朔のような風体の男に真っ二つに斬られるものと、そこには阿鼻叫喚の地獄が広がっていた。
「ば……ばかなぁ……」
あまりの惨状にエスポワールは、ニ歩後ずさる。その様子を見た三左衛門は何をするでもなく、数歩下がりながら頭を下げて主の花道を作る。
「どうだ、骨の髄まで理不尽を堪能してくれたか?」
「な……何だと言うのだ……。こ、こんな事は『鏡心』様より聞いていないぞ!?」
「鏡心? 誰だそれは?」
「――っ!? これは……思わず口を滑らせてしまいましたな。なに、貴方の知ることではございませぬゆえ。どうぞそのまま――死ねええええええええええ!!」
エスポワールは持てる全ての力を使い、流へと斬りかかる。
体を回転させ、まるで羆破斬のように、背中を見せながら回転する死のコマと化す。
それを冷静に見る流は美琴を高速納刀する……そして!!
「腐った面は見飽きた。ジジイ流・抜刀術! 奥義・太刀魚【改】!!」
散々戦ってクセと業を見きった流は、エスポワールの斬撃の隙きを狙う。
それは攻撃を当てる一瞬、曲刀を斜め上に反らすクセを鑑定眼で見極めた流は、太刀魚をそらした瞬間「下から」ぶち当てる。
曲刀は太刀魚を滑り、そのまま流の頭上へ剣閃が走った刹那、太刀魚はエスポワールのクビを真っ二つに刎ね飛ばすのだった。
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