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第八章:塔の管理者達と、新たな敵
339:車中にて
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「ナガレ……お前カーズ様を知っているのか?」
「ん、あぁ。ちょっと街で知り合ってさ、そこから友達になったんだ」
「あの方に友が……い、いや。お前ならそれもありうるのかもな」
そんなヴァルファルドの少し困惑した表情を見ると、その意味がよく分からなかった。
「ん? どうしてそこまで驚くんだ?」
「……なぁ、ナガレ。あの方を見て、知って、どう思った?」
「おいおい、質問をだなぁ……まぁいいさ。どうってそうだなぁ……骨董馬鹿だろ? 俺と同じな」
「ば、馬鹿ってお前なぁ……はぁ、いいかナガレ。あの方は特別だ、子爵と言う身分だが、そんなのはお飾りだと言うことだけは覚えておいてくれ」
「んん? まぁ分かったよ。そのうち会うこともあるかも知れないから、その時はちゃんと領主様として接するさ」
ヴァルファルドはその答えに、苦笑いを浮かべながらもうなずく。
それからお互い詳細な情報を交換しあい、流は商業ギルドへ報告と、シュバルツをついでに連れて行く事にする。
まだ寝たままだが、白豹の獣人姉弟が担いで来るという。
「エルシア、お前も大丈夫だと思うから、数日様子を見てからもとの生活へと戻るといい」
「ナガレさんありがとうございます。その……メリサの事、よろしくお願いします」
「あぁ、今度こそは必ず連れ戻すさ。まだここを去った理由も聞いていないしな」
二人はどちらともなく頷くと、流はヴァルファルドへと向き直る。
「じゃあヴァルファルドさん、後処理を任せて申し訳ないけど頼むよ」
「任せとけ、それとあの馬鹿を頼む」
「今はおとなしく寝てるし、それにもう悪さをする理由もなくなったしな」
ヴァルファルドはその理由の意味を思い出し、一つ頷く。
「そうだったな。それと敵がより一層明確になった今、ただの商家としての認識は捨てるようにな? 無論俺たちもそれを徹底させる」
「だな。アルマーク商会か……一体なにが目的なんだ……」
流はそう言ったものの、その自分の問いに答えがほぼ出ていた、だがそれを確信へとするためにアルレアン邸を後にする。
外で待っていた嵐影を呼び、屋敷にあった馬車をヴァルファルドの部下に用意してもらう。その馬車に嵐影をつなぎ、そのまま歩き出す。
目指すは商業ギルド、そしてその報告をする相手の顔を思い出すと、心に鉛でも詰められたのかと思うほどに、重く、苦しいものだった。
◇◇◇
嵐影は流たち四人を載せた馬車を軽快に引く。この数倍の重さがあろうとも苦もなく移動するだろう脚力で、おかしな鼻歌まで歌って場を和ます。
だが本人はいたって真面目に、何か曲を歌っているようだった。
それに反して、馬車の中はどんよりと空気が重い。その原因の漢が盛大にため息を吐きつつ、ボソリと本当に嫌そうに呟く。
「はぁ……憂鬱だ、行きたくない……」
「ア、アンタ!? アタシ達をどうするのよ?」
「落ちつけ姉貴。なるようにしかならねぇんだからさ」
「バーツさんに、なんて言えばいいんだ……」
「ほら見な! だってラーゼ、コイツのこの顔……絶対に私達を奴隷にするんだって!? 見なよ、この仄暗い瞳を……ヒィィ」
「だから姉貴、うるさいから少し静かにしてろって。いつもアニキに怒られてんだろう?」
「まぁ、考えても仕方ないな。うん、前向きに行こう」
「いきなり目に活力がみなぎりはじめた!? ぅぅ、きっと私を奴隷にして、あんな事やこんな事をする気なんだわ……獣みたいな男なんだよ!?」
「むしろ獣はオレらのほうだから、もう黙ってろ姉貴」
『アナタ達ウルサイですよ!? 静かにしなさい!!』
「「ヒィィィ!? 剣が喋った!!」」
「いや、お前ら三人がウルサイから静かにしろ」
「「『あ、ハイ』」」
ハァ~と深く嘆息する流。そんな流達が乗る馬車の御者台には誰もおらず、嵐影が安全に運んでくれている。
「いいかお前ら、これから商業ギルドへ行くから行儀よくしてるんだぞ?」
「……ぐすっ。やっぱり売られるんだ……アタシ売られちゃうんだぁぁぁ」
「すまねぇナガレのダンナ。姉貴はちょっと思い込みが激しくてな」
「まったくお前達一味は、ラーゼしかまともなヤツはいないのか?」
「あ~ら……そいつぁ聞き捨てならねぇな……」
「「アニキ!!」」
寝ていたはずのシュバルツは目を覚まし、寝たままの姿で流へと話しかける。
「ここは……あぁ、さっきの話だと商業ギルドへ行くのか……」
「まぁ、な。もう動けるか?」
シュバルツは痛みを堪えるように、「つぅぅ」と唸り上半身を起こす。
「問題ないわ。あ~ら意外とアニキ貧弱だったのねぇ」
「いや、それは逆だろう? あんた体のあらゆる所が火傷してたぞ。しかも両手なんてまだ燃えていたろう?」
「まぁ~あの天鳳流の業を使うとなぁ……文字通り死ぬんだわ~。とは言え、遅効性回復魔法〈イリデイスの息吹〉を使うことで、運が良ければ助かるとふんでやってみたワケよ」
「……そこまでして俺を〝殺したかった〟のか?」
「いや、あの時は〝やべぇヤツ〟って認識しかなかった」
流はその言葉に「そうか」と一言穏やかに話す。そして確信に迫る質問をする。
「なぁアニキ。その……今でも俺を殺したいか?」
その問に流の目をジット睨みつけるシュバルツは、ゆっくりと口を開き始めるのだった。
「ん、あぁ。ちょっと街で知り合ってさ、そこから友達になったんだ」
「あの方に友が……い、いや。お前ならそれもありうるのかもな」
そんなヴァルファルドの少し困惑した表情を見ると、その意味がよく分からなかった。
「ん? どうしてそこまで驚くんだ?」
「……なぁ、ナガレ。あの方を見て、知って、どう思った?」
「おいおい、質問をだなぁ……まぁいいさ。どうってそうだなぁ……骨董馬鹿だろ? 俺と同じな」
「ば、馬鹿ってお前なぁ……はぁ、いいかナガレ。あの方は特別だ、子爵と言う身分だが、そんなのはお飾りだと言うことだけは覚えておいてくれ」
「んん? まぁ分かったよ。そのうち会うこともあるかも知れないから、その時はちゃんと領主様として接するさ」
ヴァルファルドはその答えに、苦笑いを浮かべながらもうなずく。
それからお互い詳細な情報を交換しあい、流は商業ギルドへ報告と、シュバルツをついでに連れて行く事にする。
まだ寝たままだが、白豹の獣人姉弟が担いで来るという。
「エルシア、お前も大丈夫だと思うから、数日様子を見てからもとの生活へと戻るといい」
「ナガレさんありがとうございます。その……メリサの事、よろしくお願いします」
「あぁ、今度こそは必ず連れ戻すさ。まだここを去った理由も聞いていないしな」
二人はどちらともなく頷くと、流はヴァルファルドへと向き直る。
「じゃあヴァルファルドさん、後処理を任せて申し訳ないけど頼むよ」
「任せとけ、それとあの馬鹿を頼む」
「今はおとなしく寝てるし、それにもう悪さをする理由もなくなったしな」
ヴァルファルドはその理由の意味を思い出し、一つ頷く。
「そうだったな。それと敵がより一層明確になった今、ただの商家としての認識は捨てるようにな? 無論俺たちもそれを徹底させる」
「だな。アルマーク商会か……一体なにが目的なんだ……」
流はそう言ったものの、その自分の問いに答えがほぼ出ていた、だがそれを確信へとするためにアルレアン邸を後にする。
外で待っていた嵐影を呼び、屋敷にあった馬車をヴァルファルドの部下に用意してもらう。その馬車に嵐影をつなぎ、そのまま歩き出す。
目指すは商業ギルド、そしてその報告をする相手の顔を思い出すと、心に鉛でも詰められたのかと思うほどに、重く、苦しいものだった。
◇◇◇
嵐影は流たち四人を載せた馬車を軽快に引く。この数倍の重さがあろうとも苦もなく移動するだろう脚力で、おかしな鼻歌まで歌って場を和ます。
だが本人はいたって真面目に、何か曲を歌っているようだった。
それに反して、馬車の中はどんよりと空気が重い。その原因の漢が盛大にため息を吐きつつ、ボソリと本当に嫌そうに呟く。
「はぁ……憂鬱だ、行きたくない……」
「ア、アンタ!? アタシ達をどうするのよ?」
「落ちつけ姉貴。なるようにしかならねぇんだからさ」
「バーツさんに、なんて言えばいいんだ……」
「ほら見な! だってラーゼ、コイツのこの顔……絶対に私達を奴隷にするんだって!? 見なよ、この仄暗い瞳を……ヒィィ」
「だから姉貴、うるさいから少し静かにしてろって。いつもアニキに怒られてんだろう?」
「まぁ、考えても仕方ないな。うん、前向きに行こう」
「いきなり目に活力がみなぎりはじめた!? ぅぅ、きっと私を奴隷にして、あんな事やこんな事をする気なんだわ……獣みたいな男なんだよ!?」
「むしろ獣はオレらのほうだから、もう黙ってろ姉貴」
『アナタ達ウルサイですよ!? 静かにしなさい!!』
「「ヒィィィ!? 剣が喋った!!」」
「いや、お前ら三人がウルサイから静かにしろ」
「「『あ、ハイ』」」
ハァ~と深く嘆息する流。そんな流達が乗る馬車の御者台には誰もおらず、嵐影が安全に運んでくれている。
「いいかお前ら、これから商業ギルドへ行くから行儀よくしてるんだぞ?」
「……ぐすっ。やっぱり売られるんだ……アタシ売られちゃうんだぁぁぁ」
「すまねぇナガレのダンナ。姉貴はちょっと思い込みが激しくてな」
「まったくお前達一味は、ラーゼしかまともなヤツはいないのか?」
「あ~ら……そいつぁ聞き捨てならねぇな……」
「「アニキ!!」」
寝ていたはずのシュバルツは目を覚まし、寝たままの姿で流へと話しかける。
「ここは……あぁ、さっきの話だと商業ギルドへ行くのか……」
「まぁ、な。もう動けるか?」
シュバルツは痛みを堪えるように、「つぅぅ」と唸り上半身を起こす。
「問題ないわ。あ~ら意外とアニキ貧弱だったのねぇ」
「いや、それは逆だろう? あんた体のあらゆる所が火傷してたぞ。しかも両手なんてまだ燃えていたろう?」
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「……そこまでして俺を〝殺したかった〟のか?」
「いや、あの時は〝やべぇヤツ〟って認識しかなかった」
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