日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

342:バンディア王国の闇

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「で、ですがアニキ……あの得体の知れないバケモノどもですよ!?」
「あ~ら、今更だろうラーゼ? ナガレのさっきの話聞いたろう? え~っと死人しびとだったか? そいつらの話と俺らが知っているバケモノ。どう考えても似たような奴らだろう?」
「そ、それはそうですが……」
「それに俺たちの目的を忘れたのか? それにあのバケモノを作った奴らと、その背後にいる奴らがこの国をめちゃくちゃにしている。あの時それが確信に変わったろう?」

 シュバルツが処刑されそうになった時、姉弟が遭遇した殺しても死なない存在。
 正確に言えば「殺す事はできるのだが、すぐに復活する」バケモノと死闘をし、命からがらシュバルツの救出に成功した時の事だった。
 そのバケモノは人なのか、魔物なのかよくわからない見た目であり、まるで魔具が人になったかのようにも思えた。
 どう見ても人工的に作られた得体の知れないものであり、将軍のシュバルツですら知らない存在という事実に三人は戦慄した。

 さらにシュバルツが囚われていた場所は王宮内の最重要区であり、完全に王族がそれに関与していると思われる。
 以前からバンディア王国の上層部に不穏なモノを感じ、さらに処刑の経緯からこの国の裏にある危険性を考え、他国への脱出を姉弟は提案した。
 しかしシュバルツがそれを拒否した事で、王族派から見て一番の抵抗勢力であるこの街へと潜伏し、裏からあのバケモノを作った奴らの動向を探っていたのだった。

「まぁ~こんな感じで、俺らはこの国の闇が深いというのを実感しちゃったわけだ」
「つまりアルマーク商会がそれに加担していると?」
「あ~ら、そりゃぁそうだろう。俺も水塔の警備であのゴーレムを見た時、もしかして? と思ってたところに、エスポワールのやつがそれを『王命』だと言いやがった。つまりそういう事なんだろうな」
「王命か……シュバルツ殿、噂には聞いていたが戦場もきな臭いとか?」
「よくご存知で。将軍おれをすっ飛ばして、特殊部隊を投入する事は多くなったな。しかもその部隊の戦果が凄まじかった……が、それを見たものがいない」
「ふむぅ。話には聞いていたが、それはどういう事だ?」
「なに、簡単なことだ。目撃者もろとも敵も味方も皆殺しってやつだ」

 その言葉に流とバーツは絶句し、思わず目を見開く。だが流は妖人あやかしびとになっていたからか、人には強烈な威圧がバーツを襲う。だが顔には出さず額に脂汗を浮べ、表情は涼しく何事も無いようにこらえる。

「あ~ら、バーツさんが苦しそうだから、落ち着けよナガレ?」
「ッ!? す、すみませんでした。つい……」
「なに気にするな。しかし、いくらなんでもそんな事が許されるものなのか?」
「許されちゃうんだなぁ。それが『王命』ってやつだからねぇ」

 絶対遵守の強制力――『王命』

 それが一度発せられれば、何時如何なる時も即実行せねばならない、この国の絶対的なルール。

「敵も味方も皆殺し……か。そう、もう一つエスポワールは俺に言った事があった」
「ロクでもないようだが、聞こう」
「俺と一緒に世界を盗ろうと。そしてその報酬として、このバンディア王国を俺にくれてやると、ね」

 あまりの耳を疑う内容で、もう一度聞き直す四人。そもそも一商家が、なぜそれほど大言を吐けるのか?
 さらにココ最近のアルマーク商会が王国に関与し、強大な影響力を持ち始めているのを知っているバーツは、先の自分が言った「首魁は人外」と言う内容を思い出す。

「そうか……全てつながっていると言うことか……。ナガレよ、必ず生きて帰って来てくれ。これはこの街だけの話じゃなくなったかもしれん」
「その意味は今の俺には分かりませんが……。こんな俺を無条件で信頼してくれている、バーツさんの言うことだ。俺もその期待に精一杯応えさせてもらいますよ」

 そう言うと流は椅子からゆっくりと立ち上がる。そして全員を見渡すと「行ってきます!!」と気合を込める。

「うむ。冒険者ギルドへは俺から詳細を伝えておこう。メリサを頼んだぞ!」

 それに流は力強く頷くことで返事をする。そしてそれを見たシュバルツと姉弟が立ち上がり、流の前に整列する。

「あ~らいい顔しちゃってまぁ~。いいねぇ若いってのはさぁ……。ナガレ、これまでの事は詫びるつもりは無い。だがよ、ここに連れてきてくれた事を一生忘れねぇ。オタクには感謝をする」
「「ナガレのダンナ!! ここはお任せを!!」」
「別に謝ることはないさ。俺も聖人君子ってわけじゃないし、アンタの立場なら俺もそうしたかもしれないしな」
「そうかい。オタク……生きて帰って来いよ? 借りっぱなしってのは性に合わねぇからな」
「貸したつもりは無いから気にするな。どうしても返したいってんなら、そのうち助けてくれよ」

 そう言うとナガレは妖人あやかしびと化を解く。そのまま姉弟の下へと向かい「任せた。しかしお前らいつもハモるのな?」と笑いながら部屋を出ていく。
 その様子を四人は静かに見送りながら、姿が見えなくなっても入り口のドアを見つめる。
 やがてバーツがポツリと話し出す。

「ついにこの時が来たか……」
「この街が異常だと言うことは知っている。あまりにも強力な『ナニカ』に守られていると言うこともな」
「うむ、その事も含めて話そう。今後は俺の近くにいてくれ」
「あ~らいいのかい? 新参の俺をそこまで信頼しちまって?」
「なに、それで裏切られたら、俺の目が腐っていたと言う事だろうからな」
「はっはっは…………。承知しましたバーツさん、俺の全身全霊をかけて貴方の全て、そして魂の尊厳を守らせていただきます」

 突然のシュバルツの変わりように、驚くバーツは姉弟を見る。
 その姉弟はシュバルツの二歩下がった場所で、左胸に右手をそえ、左手は腰裏に回し丁寧に頭を下げる。
 これはバンディア王国騎士団の、正式な忠誠を誓うものであった。
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