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第九章:奪還作戦と、国の闇
343:指示書
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外に出ると嵐影がいた。だが、何か、変だ……。
「嵐影、なぜ立ち上がってる!?」
見れば嵐影は立ち上がり、放り投げられたスイカのような果物を右ストレートで割る。
さらにそれを滞空している間に食べてしまう早業だった。
それを見た嵐影の熱心なファン(?)は大歓声で大喜びであった。
「あ、あ~。その、いいかな? 嵐影ぇ帰るよぅ?」
なぜか小声で言う流に嵐影は気が付き、熱烈なファン(?)に手を〝ふりふり〟して別れを告げる。
「嵐影様がおかえりになるぞ!! 道をあけろおお」
「嵐影さん! 右ストレート……最高に輝いてたっス!!」
「嵐影さまぁ、ありがたやありがたや!!」
「嵐影ちゃんまた来てねぇ♪」
もはや意味がわからない状況になっており、流は困惑を通り越し動揺する。
「……マァ!!」
「おっふ。突っ込んでくるなよ、スイカ汁でベチョベチョだ」
「……マッマ」
「ついノリでやったってお前なぁ」
そう愚痴りながらも、流は嵐影の背中へと飛び乗る。それを見た熱心な信者(?)は「嵐影様にまたがるなど許せん!!」とお怒りのようだった。
いたたまれない流は、早急にこの場を後にする。
「……あの時、俺死ぬほど頑張ったのよな?」
「……マ」
「元気出せって言われてもなぁ」
嵐影はおもむろに止まる。そして流に一度下りてもらうと、愛用のおでかけバッグから真っ赤なニンジンを取り出すと、それを流にプレゼントする。
「……マッマ」
「くれるのか? ありがとう。あ……おいしい」
どこまでも澄んだ青いそらを見つめながら、真っ赤なニンジンをかじる。その味は夏を感じさせる極上のメロン味であった。
◇◇◇
嵐影の背中に揺られながらメロン味のニンジンをかじっていると、背中にひんやりとした〝むにょ〟っとした感覚がした。
見ればワン太郎が右肩の上によじ登っているところだった。
「あ~ズルイんだ~いいな~ワレも食べるんだワン!!」
「……マ」
「ええええ!? もう無いのぅ? ショックだワン」
ガクリと項垂れるワン太郎は、小さなアゴを流の頭の上にのせて氷の涙を一つポロリと落とす。
「ったく、泣くなよ。ほら、半分あげるから」
流は美琴を少し抜くと、そこにニンジンをストッと落として切断する。
それに『あぁ!? 私菜切り包丁じゃないんですからね!!』と誰かがキレていたが、きっと気のせいなのだろう。
半分になった頭の部分を両手でつかみ、美味しそうに〝流の頭の上〟で食べるワン太郎。
「うゎ~!! あるじ、ありがとう! うわ美味しぃぃ!? 凍らせてみるワン」
瞬時に凍らせたニンジンを、美味しそうに食べるワン太郎。だが凍らせすぎてもろく崩れ落ち、それが流の頭の上につもりだす。
「……冷てぇ!? ちょ、おま、頭の上で何してんだよ!?」
「ぁ~? あるじごめんなさい。今すぐ吹き飛ばすワンよ」
「え? ちょま――ギャアアア!?」
ワン太郎は流の頭の上に散らばった、「ニンジンクズ」を凍てつくブレスで吹き飛ばす。
当然それは流の頭を氷漬けにし、真夏なのに冷水をぶっかけられて豊洲のマグロ冷蔵庫へ裸で放り込まれるより厳しい寒さに襲われた……気がする。
「うぅぅ~。痛いんだワン」
なぜかワン太郎の頭の上には可愛らしいコブが一つ出来ており、両手でさすりながら氷の涙をポロポロながしている。
そんなワン太郎は、嵐影の背の乗っている流の正面にいる。
「ったく、それでどうなったんだ?」
「えっと~、あるじの予想通り憲兵がトエトリーのアルマーク商会へとなだれ込んだワン」
「だろうな。それでうまく先回りは出来たか?」
「フフフ……ワレを誰だと思っているんだワンよ? 王様なのだワン! エライんだワン!」
ワン太郎は得意げに胸をはると、空間から氷の箱を召喚する。どうやらアイテムボックスのようなモノを持っているのかもしれない。
その箱を開けて中身を取り出すと、その「資料」を流へと渡す。
「…………これは……本店からの指示書か?」
「そうだと思うワン。キルト達もそう言ってたから間違いないと思うワン」
流は水塔から商業ギルドへ向かう前に、ワン太郎とキルト達に指示を出しアルマーク商会トエトリー支部へと向かわせた。
ちなみにキルト達は、氷狐王となったワン太郎の腹の中へと格納され、恐ろしい速さで移動したために死にそうになったらしい。
そのキルト達を向かわせた目的は、「古廻と鍵鈴について探りを入れる」と言うことであった。
ダメ元で送り込んだが、どうやらそれは成功だったようで、なぜエスポワールがトエトリーにいたのかが記されている。
「つまり俺が前に異怪骨董やさんで出会ったあのバケモノ……『幅り者』が俺の事を知って、トエトリーで網をはっていたと言うことか……」
憚り者は流を知る。知って次にこの世界に来ることを予想した憚り者は、その「経験」からこの地が高確率で古廻の者が現れると予想する。
そこで以前から計画にあった、トエトリー占領計画を実行するために、アルレアン子爵を籠絡し街の守護力を削ぐ邪法を仕込むと言うものだった。
その邪法を仕込みつつ、古廻の者を探索して見つけ出す。もし仲間に引き入れられるなら引き入れ、それが叶わぬのなら当初の計画通りに殺すと言うものだった。
「嵐影、なぜ立ち上がってる!?」
見れば嵐影は立ち上がり、放り投げられたスイカのような果物を右ストレートで割る。
さらにそれを滞空している間に食べてしまう早業だった。
それを見た嵐影の熱心なファン(?)は大歓声で大喜びであった。
「あ、あ~。その、いいかな? 嵐影ぇ帰るよぅ?」
なぜか小声で言う流に嵐影は気が付き、熱烈なファン(?)に手を〝ふりふり〟して別れを告げる。
「嵐影様がおかえりになるぞ!! 道をあけろおお」
「嵐影さん! 右ストレート……最高に輝いてたっス!!」
「嵐影さまぁ、ありがたやありがたや!!」
「嵐影ちゃんまた来てねぇ♪」
もはや意味がわからない状況になっており、流は困惑を通り越し動揺する。
「……マァ!!」
「おっふ。突っ込んでくるなよ、スイカ汁でベチョベチョだ」
「……マッマ」
「ついノリでやったってお前なぁ」
そう愚痴りながらも、流は嵐影の背中へと飛び乗る。それを見た熱心な信者(?)は「嵐影様にまたがるなど許せん!!」とお怒りのようだった。
いたたまれない流は、早急にこの場を後にする。
「……あの時、俺死ぬほど頑張ったのよな?」
「……マ」
「元気出せって言われてもなぁ」
嵐影はおもむろに止まる。そして流に一度下りてもらうと、愛用のおでかけバッグから真っ赤なニンジンを取り出すと、それを流にプレゼントする。
「……マッマ」
「くれるのか? ありがとう。あ……おいしい」
どこまでも澄んだ青いそらを見つめながら、真っ赤なニンジンをかじる。その味は夏を感じさせる極上のメロン味であった。
◇◇◇
嵐影の背中に揺られながらメロン味のニンジンをかじっていると、背中にひんやりとした〝むにょ〟っとした感覚がした。
見ればワン太郎が右肩の上によじ登っているところだった。
「あ~ズルイんだ~いいな~ワレも食べるんだワン!!」
「……マ」
「ええええ!? もう無いのぅ? ショックだワン」
ガクリと項垂れるワン太郎は、小さなアゴを流の頭の上にのせて氷の涙を一つポロリと落とす。
「ったく、泣くなよ。ほら、半分あげるから」
流は美琴を少し抜くと、そこにニンジンをストッと落として切断する。
それに『あぁ!? 私菜切り包丁じゃないんですからね!!』と誰かがキレていたが、きっと気のせいなのだろう。
半分になった頭の部分を両手でつかみ、美味しそうに〝流の頭の上〟で食べるワン太郎。
「うゎ~!! あるじ、ありがとう! うわ美味しぃぃ!? 凍らせてみるワン」
瞬時に凍らせたニンジンを、美味しそうに食べるワン太郎。だが凍らせすぎてもろく崩れ落ち、それが流の頭の上につもりだす。
「……冷てぇ!? ちょ、おま、頭の上で何してんだよ!?」
「ぁ~? あるじごめんなさい。今すぐ吹き飛ばすワンよ」
「え? ちょま――ギャアアア!?」
ワン太郎は流の頭の上に散らばった、「ニンジンクズ」を凍てつくブレスで吹き飛ばす。
当然それは流の頭を氷漬けにし、真夏なのに冷水をぶっかけられて豊洲のマグロ冷蔵庫へ裸で放り込まれるより厳しい寒さに襲われた……気がする。
「うぅぅ~。痛いんだワン」
なぜかワン太郎の頭の上には可愛らしいコブが一つ出来ており、両手でさすりながら氷の涙をポロポロながしている。
そんなワン太郎は、嵐影の背の乗っている流の正面にいる。
「ったく、それでどうなったんだ?」
「えっと~、あるじの予想通り憲兵がトエトリーのアルマーク商会へとなだれ込んだワン」
「だろうな。それでうまく先回りは出来たか?」
「フフフ……ワレを誰だと思っているんだワンよ? 王様なのだワン! エライんだワン!」
ワン太郎は得意げに胸をはると、空間から氷の箱を召喚する。どうやらアイテムボックスのようなモノを持っているのかもしれない。
その箱を開けて中身を取り出すと、その「資料」を流へと渡す。
「…………これは……本店からの指示書か?」
「そうだと思うワン。キルト達もそう言ってたから間違いないと思うワン」
流は水塔から商業ギルドへ向かう前に、ワン太郎とキルト達に指示を出しアルマーク商会トエトリー支部へと向かわせた。
ちなみにキルト達は、氷狐王となったワン太郎の腹の中へと格納され、恐ろしい速さで移動したために死にそうになったらしい。
そのキルト達を向かわせた目的は、「古廻と鍵鈴について探りを入れる」と言うことであった。
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