日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

351:【封弐】の札

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「悪かったよ。まぁでも、お前がアレに気がついてくれて助かった」
「一瞬吹き出すかと思ったのです。ああいうシリアスな場面でやめてほしいのです!」

 因幡さんはどうやらご立腹らしい。それは何故だろうか?

「いきなり背中に『ボクの顔で、にんじんだ~いすき♪』とか、吹き出しまで入れた顔書かないでほしいのです!」

 そう、流は因幡だけに見えるように、背中に妖気で文字を書いていた。マンガ風にだが……。
 そのマンガを読んでいくうちに、因幡の顔が凍りつく。それはあの「封弐」と書かれた札を剥がすから、そのサポートをしてくれと言うものだった。
 さらにその時には兄妹に悟られず、何事も無かったように頼むと書いてある。一瞬馬鹿かと思ったが、それが本気だとすぐに分かる。なぜなら――。

 ――死ぬつもりで挑む。

 そう一言最後に書いてあったのだから。
 だからこそ、因幡は「久しぶりに会えて離れたくない」と言うような様相ようそうで、流へとしがみ付きながら治療を施す。

「まったく、お客人はいい女を泣かせるプロなのです?」
『ええ、そうですよ。本当に酷い人なんですからね?』
「おい。二人ともそりゃねぇだろ」
「『いっぺん、逝ってみます?』」
「ヒヤァァァァ!? って、何やらせんるんだお前ら……」
「そのわりにはノリノリだったのです」
『そういう人ですから』

 非道。あまりにも非道な二人に流は泣きそうになる。なんて酷い娘()たちなんだと!!

「『……今、ぜ~~たいサイテーの事を考えてた』」
「被害妄想って知っているか?」
「『どの口が言うのです?』」
「ほんと、ごめんなさい」

 恐ろしい……人を捨て去ったこの身でも、恐ろしくて心が泣いた。

「ふぃ~、もういいのです。ほら、早く手を治療するのですよ」
「すまねぇ」

 流はそう言うと、右手の袖をまくり上げる。それに一瞬、ほほを赤らめる因幡だったが、ただれた腕を見て目尻に涙を浮かべる。

「お客人は馬鹿なのです! あと少しで本当に腕が吹き飛ぶところだったのですよ!!」
「バカ言えよ。異世界ではな、腕は生えるのが標準装備だぜ? なぁ美琴?」
『それはバケモノに限っての事ですけどねぇ?』
「なら今の俺がそれだろ?」

 美琴は瞬間抜け出し、流の頬を思いっきりツネる。

「あいだだだだだ!!」
「またそういう事を言うからですよ!! いい加減ウジウジするのはやめなさい!!」
「もーげーるーーーー!!」
「うぅ……なんだか負けた気分なので、ボクもーーー!!」
「っ!? やべげええええええ」

 二人に両頬を引っ張られ……激痛に涙目で喘ぐ流であった。

「ぅぅぅぅ……いだい……。豚王に殺される寸前より命の危機を感じた……」

 マジ泣きしている漢(?)に、やり過ぎたかと反省する二人。

「クソッ、なんて凶悪な自称娘たち・・・・・だ!!」

 うん、まだ全然足りないと思う二人だったが、これ以上このダメな人に付き合っても仕方ないと思い我慢をする。

「流様が頬のお肉がいらないのは分かりました」
「今日の夜は、お客人の頬肉のソテーにするのです」
「それ、俺食べれなくね?」
「それはともかく、お客人。はやく腕を治すのです」

 呆れたうさみみ娘は、流の右腕を優しく引く。そして何やら唱え始め腕にキスをする。
 瞬間、流の腕にあった爛れは消え失せ、元の健康な肌つやが戻る。

「おおおおお!? 痛みが無くなった!!」
「もぅ。これに懲りたら、あんな無茶はだめなのですよ?」
「分かったって、因幡がいたからこそ無茶も出来るってもんだ」

 さらっといい笑顔で感謝を告げる漢に、顔が真っ赤になる因幡。それを美琴は微笑ましく見ているが、ちょっと寂しくも思う。
 流は畳の上に置いてある【封弐】の札を見つめる。今の状態で触ったら、また大怪我確実で危険な札に、妖力を薄くまとわせる。

「お客人、そんな薄い妖気ではすぐに貫通しちゃうのです」
「大丈夫だよ因幡ちゃん。見ててみよ?」

 それに因幡は心配そうに頷くと、流の右手をジット見つめる。
 流は札にゆっくりと右手を近づける。すると右手が段々ぼやけだし、徐々に白さが増してくる。
 白さがさらに強くなり、手の形がよく見えなくなった瞬間、流は札に手を触れた。

「ああああ!? 大丈夫なのです??」
「ッ……。あぁ、問題ないようだ」
「ふふん、さっすが私の流様♪」
「でもいったいどうやって? そしてその手はどうなってるのです?」
「あぁコイツはな――」

 因幡の疑問、それは流の妖力で纏った薄い膜であった。普通こんな程度じゃ即貫通し、ダメージを負うだろう。
 そこで流は考える。その結果、妖気を薄く「何層も重ねて」触れる事にした。だがそのままでもすぐに貫通されてしまうので、流はさらに考える。
 ならば貫通されたそばから、また作ればいいじゃない? と単純な考えからやってみたら、それが大成功したと言うわけだ。

「――と、言うわけだよ。分かったかい、うさちゃん?」
「ほぇ~。普通はそう思ってもやらないのです、でも凄いのです!!」
「あ、でも流様。厚く纏えばよかったんじゃないですか?」
「いやな、俺もそう考えたんだわ。でも触れて分かったんだが、あれは厚さに関係なく『最初に触れたものを侵食』する感じだった」
「なるほど……確かに怖い御札だね。〆さんたちがこんな状態を知ってたら、確実に許可しなかっただろうし」
「そうだろうなぁ。まぁこれで、あのバケモノ……弐に遭遇しても何とかなるかもしれない」

 そう流は言うと、【封弐】の札をアイテムバッグにしまうのだった。
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