日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

354:もーぜ?せ?

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「まったく凶悪なワンコだぁ」
「えへへ~。ほめるなら〝ちゃ~りゅ〟を添えてほしいんだワン」
「たく、仕方ないやつだなぁ……えっと、ほら」
「わーい! あるじ大好きだワンよ!」

 ワン太郎は短い前足で器用に袋を破くと、中にはいっている半生な何かを口に入れる。
 どうやらとても美味しいらしく、尻尾が高速で動いている。

『もぅ、ワンちゃんばかり優しくして』
「お前にも十分優しいだろ? ほら」

 そう言うと流は美琴の鞘をなでる。

『ぁぅ……もぅ。そういうのは誰もいない所でしてくださいよね!』

 どうやら鞘を撫でられるのは、とても恥ずかしいらしい。そんな妖刀の意味の分からない感覚に首をかしげながらも、流は嵐影と話す。

「嵐影、この先にある町があるって聞いたけど、お前は分かるか?」
「……マーァ」
「そらそうだな、何度も行ったことあるなら安心だな。町までどのくらいで着く?」
「……マ」
「意外と近いな。まぁお前の走り方なら、それもそうか」
『流様、今後の予定は?』
「まずは王都は北にあるらしいし、ちょっと寄り道していきたい所もある」
『寄り道? そんな所へ行っても大丈夫なの?』
「まぁな。それに約束もある……」

 障害物が何もない草原を爆走する嵐影。やがて遠くに横に広がる構造物が見えてくる。
 それはトエトリーと同じような石壁があり、外壁からのぞく建物の構造はトエトリーと同じような感じである。

「おおお!! アレが異世界で二つ目の町になるのか! トエトリーがあまりにもデカすぎて、他の町の事なんてあまり意識してなかったが、目の前にあるとやっぱり違うな!!」
『ですねぇ! まだまだ行っていない場所がおおいからねぇ』
「おいしいのあるかなぁ? あるじぃ何か買ってほしいワン!」

 三人が遠くに見える町に期待を込めて見つめる。だが……。

「『「んんん??」』」
「あるじぃ~アレは争っている感じに見えるワン」
『ワンちゃんが言うんだから、間違いなさそうだね』
「俺にはまだよく見えんが、何か争っているのは分かるな。それで何と争っているんだ?」
「う~ん。ワレは異世界の事は知らないけどね、人間と魔物ぽいのが戦っているんだワン。見た目はトカゲ人間ぽい感じかな?」
『あ! それ知ってるよ。ゲームによく出てくるやつだよね?』
幽霊おまえはゲームもするのかよ……あぁ、間違いないだろう。トカゲ人間と言えば、リザードマンだ」

 目の前の町にある大門へと攻撃を加えている、多数の凶暴なトカゲが人の姿になったかのような生物リザードマン。その数は数百はいそうだった。
 身長は人間より大きく、全員鎧のようなものと槍や鈍器を装備しているようだった。

「あるじぃ、どーするんだワン?」
「何体いるんだあれ? まぁ、どーするもこーするもねえわなぁ……」
『普通は避けるのでしょ、当然。でも流様だから、ね?』
「そう言うフリは、やめてくれよ美琴さん。そらお前当然――突っ込め嵐影!!」
「……マアアアア!!」

 さらに加速する嵐影は、リザードマンの後方へと突撃する。嵐影は大きくジャンプすると、前足に装備した〝嵐の鉤爪かぎづめ〟でリザードマンを真っ二つにしながら、突き進む。
 その様子にリザードマン達はパニックになりながらも、何とか立て直して流を半包囲する。

「おお!! 凄いな嵐の鉤爪は! 嵐影の意思で本当に出し入れ自在なんだな」
「あるじぃ~。ワレも頑張るから後でほめてワン」
「んじゃ、ワン太郎は左側たのむ。嵐影は右側だ。二匹ふたりとも無茶はするなよ?」

 それに頷くワン太郎と嵐影は、流から弾けるように左右に散っていく。
 嵐影は前足に装備した嵐の鉤爪を自在に出し入れし、リザードマンを切り裂いたかと思えば、殴りつけて吹き飛ばす。
 後ろから襲いかかって来た敵には、後ろ足で蹴った――はずだったが、真横に真っ二つになっていた。
 これは後ろ足に装備した嵐の鉤爪で行ったものだ。

「やるなぁ嵐影! ワン太郎は……え゛!?」

 嵐影の活躍に驚く流だったが、さらに驚きの現実が左側に広がる。
 ワン太郎は小狐状態のまま、リザードマンの足元を疾走する。そしてリザードマンの体に触れながら、糸を縫うように無軌道に走る。
 そして触れられたリザードマンは、そこから凍りつき、やがて動かなくなった。

『ワンちゃんも、嵐影もやりますねぇ~!』
「まったくだ。さって……主としての矜持ってやつを、魅せつけてやりますかねぇ」

 左右の事に呆然としているリザードマンの本隊、中央へ向けてゆっくりと歩をすすめる。
 それに気がついたリザードマンの一匹が、流へ向けて「ジャアアアアア!!」と叫ぶと、周囲も我に返り流へと襲いかかってくる。

 そんな状況でも鼻歌でも歌いそうな雰囲気で、不敵に歩をさらにすすめる。
 馬鹿にされた!! 奴らはそう感じたのだろう。それがかんさわったのか、益々激怒して襲ってくるリザードマン達を見て、「まぁ、今更だしいいか」と流は開き直ったように呟く。

 ぽつりとした呟きはリザードマンが猛る轟音により消し飛び、深緑の波が一人の漢へと殺到する。
 突然背後から襲われた怒りはリザードマンたちを益々猛らせ、流までの距離は残り二メートルほどになった瞬間――。

「ジャアアアアアアアアア――ァ……ァ、ァ……」

 いきなりだった、唐突だった、その暴力的でありえない何かが目の前に現れる。
 人間より格段にわかる、「命の危機」を感じられる本能が悲鳴を強烈にあげ、恐怖が波紋のように一気に広がる。

「よ~トカゲ野郎。今日は蹂躙されるにはとても良い日だと思わないか? お前らがそこの人達にしてたように、ゆっくりと楽しもうぜ。なぁ?」

 流は恐怖の塊の視線より少しでもハズれようと、バックリと割れたリザードマン達の先にいる「死体」を見つめながら威圧するように言い放つ。 
 リザードマン達は戦慄する。目の前にいる人間が突如見た目が変わったと思えば、明らかに自分たちより凶悪なバケモノが、恐ろしい視線で睨みつけているのだから。
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