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第九章:奪還作戦と、国の闇
355:リザオ
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「なんだ!? 一体何が起こっている!!」
ここ、クコロー領「アイヅァルム」は、どこからかいきなり襲いかかって来たリザードマンと交戦していた。
まだ二十代であろう金髪青目が戦場によく映える男、領軍長の一人「イズン」は突然の事態に困惑する。
「イズン様! 斥候魔法により分かりました!! 敵背後よりさらに強大なナニカが現れ、リザードマンを駆逐しているそうです!!」
「報告は正確にしろ! ナニカとは何だ!?」
「そ、それが。ラーマンと、子犬? らしいと」
「俺は聞き間違ったのか? え~と、ラーマンと子犬と聞こえたが?」
「はい、間違いありません」
「……馬鹿にしているのか?」
「ほ、本当なんです!! 斥候魔法使いが三度確かめました!!」
「あ~わかった。よし、それは千歩譲って信じよう。で、なんでトカゲ共は止まっている?」
「あの……怒りませんか?」
その問に報告を持ってきた領兵は顔色を悪くし、頬を引きつらせる。それを訝しげに見るイズンは、アゴをしゃくって続きをうながす。
「聞かないと怒りようもない」
「ぅ、実はその二匹を使役していると思われる男がいます。それが……人じゃ無さそうだ……と」
「ハァ~? なんだそ――」
その時だった、伝令が焦ってイズンの元へと駆けつける。
「イズン様大変です!! これを機と見たセリア様が、直衛二十騎と共に討って出られました!!」
「何だとッ!? クソッ、あのジャジャ馬めが! 後方で大人しくしていればいいものを!! 至急連れ戻してこい!!」
「ハッ!!」
「チッ……面倒な事をしてくれる」
イズンはこの戦闘をさらなる出世の道具にしようと考え、あえてゆっくりと殲滅して、敵の強大さを喧伝するつもりであった。
だが意味のわからない奴らの登場で、それが誤算となる。さらにクコロー伯爵の娘であるセリアが暴走し、直衛の二十騎と共に討って出たという。
ますます計算が狂いだし、イラつく頭を掻きむしりながらイズンは防壁の上から戦場を睨む。
(クソ! 次から次へと何だ!? 子犬? ラーマン? アホか!! そして人じゃないヤツだと? 意味が分からん。セリアは俺の嫁にしてやるから、まだ殺すわけにはいかねぇし……チッ。こうなら一気にやっちまうか? いや、もう少し苦戦しねぇと軽い相手だと思われてもダメだ)
そんな打算を重ねるが、状況は自分の思惑とは真逆の方向へと進む。
まずは謎のナニカが後方から恐ろしい速さで、リザードマンどもを蹴散らしているのが見える。
さらにセリアの部隊が、これも予想以上に善戦しており、敵の分断に成功しつつあった。
「どうしてこうなる……」
「イズン様なにか?」
「何でも無い!! それより後方の奴らの詳細は分かったのか!?」
「いえ、今はあの情報が最新です」
「クソ、つかえねぇ!」
そうイズンは言うと、報告しに来た男を蹴り飛ばし、南門前へと歩き始めたのだった。
◇◇◇
「ギャヴァアアアア!!」
「――百三十っと」
『違いますよ、百と三十二です』
「あ~もぅ数えるの面倒だなっ――セイッ! 百三十三」
恐怖で動けなくなった、リザードマンを容赦なく斬り伏せる流。
リザードマンたちはその状況にやっと気が付き、迫る死の恐怖から逃れるために、本能が「生きるため」の戦いを選ぶ。
圧倒的な力で人間を蹂躙して、四肢をもぎ、首をハネ、内蔵をぶちまけて楽しんでいたはずの自分たちだった。
だが状況は一変し、意味のわからない恐怖が自分たちの首をハネ、体を真っ二つにされ、眉間を穿かれた。
「っと、そっちに固まってる場所に人間がいるな?」
『戦闘音が激しくなっています。間違いないと思うよ』
「一気に蹴散らす、美琴!」
『うん、使って!!』
美琴から妖力をもらい、さらに自分の妖力と混ぜ合わせ一気に数メートル飛び上がる。
「纏めてここを襲ったことを後悔しやがれ! ジジイ流・参式! 七連斬!! 【極】」
拡散型の参式を、流だけが使える七連の斬撃を放つ。
それを美琴と流の妖力を合わせて、その業最強の【極】にまで昇華させる。
上方から放たれた七連の白紫の斬撃は、通常の斬撃より威力が半減する。が、妖力で通常の威力を凌駕した威力で、倍の十四の弧を描く。
それが極にまで高まった妖力を付与された斬撃は、爆散しながら小さな斬撃となってリザードマンへと襲いかかる。
◇◇◇
突然の事に誰も対処が不可能な状況、次々と仲間が倒れていくのを尻目に、リザオは眼前に迫る白紫色のナニカから視線が外せない。
それが自分の左肩に当った瞬間、強烈な衝撃と激痛が走る。
さっき人間の左肩を自慢のスピアで貫いて、もがく様を見て笑ったが、アイツも自分を見て笑うのだろうか? と、マヌケな事を考える。
だがそんなマヌケな思考は、続けてくる白紫色のナニカが胸を貫通した事で終わりを迎える。
ただ最後にリザオは思う――(アイツの口車に乗って、人間狩りを楽しもうなんて思わなかきゃよかった!! こんな所へ来るんじゃなかったギャ)と。
◇◇◇
自分で放った業ながらも、あまりの威力に額に冷や汗を浮かべながら着地する流。
見れば数十匹は大地に転がっていた。
「えぇっと……一・二・三・四・五……いっぱい、いっぱい、いっぱい」
『もぅ! 数えるのが面倒だからって適当に!! なんです、いっぱいって!?』
「えー、ギルドに申告する時数わからないとダメだろ? はぁ、もういいか。面倒だ……うん。美琴、エルシアの気持ちで頼む」
『えるしあ:ナガレさん、それで何体のリザードマンを倒したんですか?』
「いっぱいです! よし、コレで行こう!!」
『はぁ、もういいです――ッ!? 左斜め上!!』
「なッ!?」
突如襲いかかる一本のスピア。それは流の心臓を確実に狙うコースで空から降ってきたのだった。
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まだ二十代であろう金髪青目が戦場によく映える男、領軍長の一人「イズン」は突然の事態に困惑する。
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「はい、間違いありません」
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「あ~わかった。よし、それは千歩譲って信じよう。で、なんでトカゲ共は止まっている?」
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その問に報告を持ってきた領兵は顔色を悪くし、頬を引きつらせる。それを訝しげに見るイズンは、アゴをしゃくって続きをうながす。
「聞かないと怒りようもない」
「ぅ、実はその二匹を使役していると思われる男がいます。それが……人じゃ無さそうだ……と」
「ハァ~? なんだそ――」
その時だった、伝令が焦ってイズンの元へと駆けつける。
「イズン様大変です!! これを機と見たセリア様が、直衛二十騎と共に討って出られました!!」
「何だとッ!? クソッ、あのジャジャ馬めが! 後方で大人しくしていればいいものを!! 至急連れ戻してこい!!」
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「チッ……面倒な事をしてくれる」
イズンはこの戦闘をさらなる出世の道具にしようと考え、あえてゆっくりと殲滅して、敵の強大さを喧伝するつもりであった。
だが意味のわからない奴らの登場で、それが誤算となる。さらにクコロー伯爵の娘であるセリアが暴走し、直衛の二十騎と共に討って出たという。
ますます計算が狂いだし、イラつく頭を掻きむしりながらイズンは防壁の上から戦場を睨む。
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まずは謎のナニカが後方から恐ろしい速さで、リザードマンどもを蹴散らしているのが見える。
さらにセリアの部隊が、これも予想以上に善戦しており、敵の分断に成功しつつあった。
「どうしてこうなる……」
「イズン様なにか?」
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◇◇◇
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「――百三十っと」
『違いますよ、百と三十二です』
「あ~もぅ数えるの面倒だなっ――セイッ! 百三十三」
恐怖で動けなくなった、リザードマンを容赦なく斬り伏せる流。
リザードマンたちはその状況にやっと気が付き、迫る死の恐怖から逃れるために、本能が「生きるため」の戦いを選ぶ。
圧倒的な力で人間を蹂躙して、四肢をもぎ、首をハネ、内蔵をぶちまけて楽しんでいたはずの自分たちだった。
だが状況は一変し、意味のわからない恐怖が自分たちの首をハネ、体を真っ二つにされ、眉間を穿かれた。
「っと、そっちに固まってる場所に人間がいるな?」
『戦闘音が激しくなっています。間違いないと思うよ』
「一気に蹴散らす、美琴!」
『うん、使って!!』
美琴から妖力をもらい、さらに自分の妖力と混ぜ合わせ一気に数メートル飛び上がる。
「纏めてここを襲ったことを後悔しやがれ! ジジイ流・参式! 七連斬!! 【極】」
拡散型の参式を、流だけが使える七連の斬撃を放つ。
それを美琴と流の妖力を合わせて、その業最強の【極】にまで昇華させる。
上方から放たれた七連の白紫の斬撃は、通常の斬撃より威力が半減する。が、妖力で通常の威力を凌駕した威力で、倍の十四の弧を描く。
それが極にまで高まった妖力を付与された斬撃は、爆散しながら小さな斬撃となってリザードマンへと襲いかかる。
◇◇◇
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