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第九章:奪還作戦と、国の闇
360:三十三
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「隊長、商隊が置いていった荷物の中に使えそうなのはこれだけです」
「ほぅほぅ、これはいいのが揃っとるじゃないか」
部下より報告があった品は〝即効性体力回復薬〟〝即効性魔力回復薬〟〝煙幕〟〝弓と矢束〟。
「隊長さんちょっといいかい? コレなんだが」
「エドと言ったか? どうした――ほぉ。流石はアルマーク商会と言ったところか」
エドが持ってきたモノ。それは「静謐の聖女」と呼ばれる石像だった。
ルーセントはセリアの元へと行くと、静謐の聖女を渡す。
「セリア様、こちらをお持ちください」
「これは? 手のひらより少し大きいくらいだから、まぁ持てるけど……邪魔ね」
「ははは、そう邪険に扱うものではありませぬぞ? この像は――」
その時だった、突如リザードマン達が雄叫びを上げた。これまで用心してゆっくりと進軍していたが、その後の攻撃が無いと見て通常スピードで向かってくる。
「隊長の旦那、どうするんだ?」
「エド達は魔法師二人と、癒やし手が一人。盾が三人。そして前・中衛が合わせて六人か……魔法師の二人は?」
「上級魔法で魔力は使ったが、回復薬で八割戻してある」
「八割か……腹具合で連続使用が出来ぬから上等だな。それでお前たちは大丈夫なのか?」
「そっちも回復薬で問題ない。おかげで腹がタプタプだがな」
ルーセントはそれを聞き、当初の予定通りに人員を配置する。
まずは騎士達を全面に押し立て、限界が来たら下がらせ冒険者の盾と交代する。
その間に回復し前線へと戻り全体の守りとする。
そのスキマを狙って前衛が攻撃し、敵の数を減らす。そして魔法師が詠唱を終えたそばから、敵の塊を狙って殲滅という作戦だった。
もっと人員がいれば効果的な戦術も組めるのだが、この人数ではそれが限界だった。セリアもそれを分かっているので、何も言わずにそれを見守っている。
やがてそれらも終わり、セリアの隣にルーセントが来たことで敵を見据えながら口を開く。
「みんな、私のわがままに付き合ってくれてありがとう。これが本当の最後になるかもしれないから言っておく。あの世で会えたら一杯奢らせてね?」
「ははは。お嬢様は最近やっと、酒の味が分かるようになりましたからな。それは楽しみだ」
「こんなべっぴんな娘さんに酌をしてもらえるたぁ、あの世での楽しみが出来たってもんだ」
「お姉さんな私より、先に死ぬなんてのは許さないわよ?」
「それを言っら俺もだな。あがこうぜ姫さんよ!」
「「「我ら近衛隊はセリア様のために!!」」」
「よっし! 俺ら〝ドラゴンヘッド〟はジャジャ馬姫にあの世で乾杯だ!!」
これから死ぬのがほぼ確定したような状態でも、こんな冗談が言える自分に驚きつつも、覚悟を決めてセリアは檄を飛ばす。
「よく言った、楽しみは後にとっておけ! これよりまだ南門へ着かないであろう、商人たちの援護を開始する! 着いてもどうせ開門まで時間がかかるだろう、私達が倒れたら全てが無駄になると知れ!!」
『『『オウ!!』』』
「総員攻撃に備えよ!! この〝馬車と荷物の砦〟が難攻不落だと、トカゲ共に教えてやれ!!」
『『『オウ!!』』』
セリアがそう宣言した直後、動きを一層早めたリザードマン達は半包囲で荷馬車の砦を囲む。
「ルーセント!!」
「ハッ! 煙幕放てえええええええ!!」
「トカゲ共! バカデケェ鼻の穴によ~っく吸い込めよ!!」
冒険者達が煙幕を、次々リザードマンの中へと投げ入れる。
次の瞬間〝ドッムォ〟と鈍い爆音が響いたかとおもえば、白い煙が急速に広まる。そして――。
「グギャアアアアアオ!?」
「へっ、どうだ特製の赤カラシ入り煙幕の味はよ~!?」
「続けて声のする方へ一斉射撃!!」
『『『ハッ!!』』』
騎士たちが弓で次々と矢を放ち、「正面の一点だけ」を狙い撃つ。
赤カラシの匂い・音・煙・痛み、これら全てが野生の嗅覚を襲う。その壮絶な衝撃は、鼻の穴や目、そして喉を強烈に襲う。
「風魔法放てええええええ!!」
「「了解!!」」
ルーセントの指示で風魔法を「正面に向けて」煙幕を巻き込みながら進む。
やがて前方からも、悲痛な叫び声が響いてくるのを確認すると、セリアはさらに指示を出す。
「道は開いたわ!! さぁ~トカゲ共の大将の顔を殴りに行くわよ!!」
『『『よろこんで!!』』』
セリアを先頭に、最終防衛陣地〝荷馬車の砦〟から全員出撃する。総勢三十三名の決死隊は煙の中を突き進む。
あいも変わらず、煙の中では悶え苦しむリザードマンを槍で突き、剣で一閃し、鈍器で潰す。
セリアの左側にはルーセントがおり、それが敵を静かに始末しながら話す。
「お嬢様、どうやらここまでの賭けに勝ったようですな」
「ええ、この静謐の聖女のお陰でね」
リザードマンは人語が話せないわけじゃない、むしろ他の魔物より話せるのだ。それゆえに、人間の話している言葉も「理解」できる。
そこでセリアは一計を案じた。それは「荷馬車の砦での防衛」を宣言する事により、そこでの防衛戦をすると言う事を大声で知らしめる。
特に防衛体勢の配置を大声で指示しており、その効果は大きかったと言えよう。
それによりリザードマンは本陣の守りを薄くし、その薄くなった部分で荷馬車の砦を半包囲した。
半包囲が完成した事で好機とみたセリアは、薄くなった隙を突いて決死隊で中央突破に成功しつつあった。
「エルヴィスは実に良い仕事をしましたな」
「お陰で異常状態にならなくてすむ。本当に感謝だわね」
二人が言う静謐の聖女とは、『清らかな乙女』のみが扱える、最上級の異常状態耐性アイテムである。
効果は指定した人数を、異常状態から一定時間守る事ができた。そこでこの特製を活かし、煙幕で混乱させて一気に敵の中心にいるであろう、強者を駆逐するのが最大の目的だ。
強者さえ倒れれば、またリザードマンの動きが悪くなり、脱出の好機につながるとの期待からの強行的戦術であった。
☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
【あなた様に大感謝♪】
☆*:゚+。.☆.+*♪*:゚+。★彡
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エドが持ってきたモノ。それは「静謐の聖女」と呼ばれる石像だった。
ルーセントはセリアの元へと行くと、静謐の聖女を渡す。
「セリア様、こちらをお持ちください」
「これは? 手のひらより少し大きいくらいだから、まぁ持てるけど……邪魔ね」
「ははは、そう邪険に扱うものではありませぬぞ? この像は――」
その時だった、突如リザードマン達が雄叫びを上げた。これまで用心してゆっくりと進軍していたが、その後の攻撃が無いと見て通常スピードで向かってくる。
「隊長の旦那、どうするんだ?」
「エド達は魔法師二人と、癒やし手が一人。盾が三人。そして前・中衛が合わせて六人か……魔法師の二人は?」
「上級魔法で魔力は使ったが、回復薬で八割戻してある」
「八割か……腹具合で連続使用が出来ぬから上等だな。それでお前たちは大丈夫なのか?」
「そっちも回復薬で問題ない。おかげで腹がタプタプだがな」
ルーセントはそれを聞き、当初の予定通りに人員を配置する。
まずは騎士達を全面に押し立て、限界が来たら下がらせ冒険者の盾と交代する。
その間に回復し前線へと戻り全体の守りとする。
そのスキマを狙って前衛が攻撃し、敵の数を減らす。そして魔法師が詠唱を終えたそばから、敵の塊を狙って殲滅という作戦だった。
もっと人員がいれば効果的な戦術も組めるのだが、この人数ではそれが限界だった。セリアもそれを分かっているので、何も言わずにそれを見守っている。
やがてそれらも終わり、セリアの隣にルーセントが来たことで敵を見据えながら口を開く。
「みんな、私のわがままに付き合ってくれてありがとう。これが本当の最後になるかもしれないから言っておく。あの世で会えたら一杯奢らせてね?」
「ははは。お嬢様は最近やっと、酒の味が分かるようになりましたからな。それは楽しみだ」
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「お姉さんな私より、先に死ぬなんてのは許さないわよ?」
「それを言っら俺もだな。あがこうぜ姫さんよ!」
「「「我ら近衛隊はセリア様のために!!」」」
「よっし! 俺ら〝ドラゴンヘッド〟はジャジャ馬姫にあの世で乾杯だ!!」
これから死ぬのがほぼ確定したような状態でも、こんな冗談が言える自分に驚きつつも、覚悟を決めてセリアは檄を飛ばす。
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『『『オウ!!』』』
「総員攻撃に備えよ!! この〝馬車と荷物の砦〟が難攻不落だと、トカゲ共に教えてやれ!!」
『『『オウ!!』』』
セリアがそう宣言した直後、動きを一層早めたリザードマン達は半包囲で荷馬車の砦を囲む。
「ルーセント!!」
「ハッ! 煙幕放てえええええええ!!」
「トカゲ共! バカデケェ鼻の穴によ~っく吸い込めよ!!」
冒険者達が煙幕を、次々リザードマンの中へと投げ入れる。
次の瞬間〝ドッムォ〟と鈍い爆音が響いたかとおもえば、白い煙が急速に広まる。そして――。
「グギャアアアアアオ!?」
「へっ、どうだ特製の赤カラシ入り煙幕の味はよ~!?」
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騎士たちが弓で次々と矢を放ち、「正面の一点だけ」を狙い撃つ。
赤カラシの匂い・音・煙・痛み、これら全てが野生の嗅覚を襲う。その壮絶な衝撃は、鼻の穴や目、そして喉を強烈に襲う。
「風魔法放てええええええ!!」
「「了解!!」」
ルーセントの指示で風魔法を「正面に向けて」煙幕を巻き込みながら進む。
やがて前方からも、悲痛な叫び声が響いてくるのを確認すると、セリアはさらに指示を出す。
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『『『よろこんで!!』』』
セリアを先頭に、最終防衛陣地〝荷馬車の砦〟から全員出撃する。総勢三十三名の決死隊は煙の中を突き進む。
あいも変わらず、煙の中では悶え苦しむリザードマンを槍で突き、剣で一閃し、鈍器で潰す。
セリアの左側にはルーセントがおり、それが敵を静かに始末しながら話す。
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半包囲が完成した事で好機とみたセリアは、薄くなった隙を突いて決死隊で中央突破に成功しつつあった。
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