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第九章:奪還作戦と、国の闇
377:連行される者
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「ちょっと待てえええ!! 俺の話を聞いていたのかおいいいいい!?」
「行っちゃったねぇ……はぁ~、またおかしな人が増えるんだねぇ」
「美琴さん、他人事みたいに言わないんでほしいですがね?」
「何をいまさら。私と流様は一心同体も一緒でしょ? ふふ、どこまでもお供しますよ」
「美琴……」
「流様……」
「何やってるのよ二人とも!? はぁ……なんかもうオバケは怖くなくなったわよ」
「「なんかごめん」」
そんな三人のやり取りを微笑ましく見ていたルーセントは、アイヅァルムより砂塵が上がるのを確認する。
見れば騎兵数百が今頃になって出陣し、こちらへと向かってくるようだった。
「お嬢様、援軍……いや、あの小物の考えることです。多分」
「ええ、斥候魔法で確認してたんでしょうね。ならここに来るのは当然かしらね?」
二人は苦々しく騎馬隊を睨みつける。やがてそれも近くなり、先頭の人物「イズン」が指揮官用の鎧をカスタムし、無駄に華美な鎧を光らせて到着する。
「全員動くな!! 動けば反乱罪とみなし、この場で処刑する!!」
「マイ・マスター、首をはねる許可を」
「ダメだ、ここはセリアに任せる」
「承知致しました」
そう静かに流はLへと指示を出す。それを見逃さず……いや、流「のみ」に集中しているイズンは、その言葉を見逃さなかった。
「キサマぁ……反乱の企てか!? セリア様はこちらへ、その銀髪の男を拘束しろ!! 抵抗すれば殺して構わん!!」
「「「ハッ!!」」」
「ちょっとイズン! 今頃来て何を偉そうにしているかしら? リザードマンを駆逐したのはこのナガレよ? 貴男がやっと出てきた頃には全部、彼とその仲間が殲滅し終えたわよ。どの面下げてここへ着たと言うの!!」
「セリア様お言葉ですがその男……人ではないと報告が上がっております。放置すれば我がアイヅァルムだけではなく、我らが守る本丸であるトエトリーまで被害が及ぶ事も懸念されます」
「どの口が言うか!! トエトリーからの客人を見捨て、この惨状を作り出した無能ものが!!」
「これはしたり。戦と言うものはセリア様のように感情で動けば負けるもの……ですからほら、この通り『勝てる』と分かれば出陣もいたします」
イズンがそう言うと背後の隊列が割れ、奥からはもうすぐ詠唱完了する魔法師と、試作型魔具の拘束具がこちらを向いているのが見える。
「イズン……貴男と言う人はッ!?」
「これが戦と言うものです。常に二手、三手先を読む。だからこそ勝てると言うものですよ」
「クッ……このおおおおお――」
暴発間際のセリアの左肩へと、優しく手が乗る。振り返れば流が妖人から人へと変わっていた。
「せっかく生き延びたつーのに、こんなつまらない事で怪我するのは嫌だろう? なら素直に従うさ」
「ナガレ……でも、捕まったら酷いことされちゃうよ!?」
「気にするな。俺は酷いことをされたら、もっと楽しいことをプレゼントしちゃう優しい男だからな?」
「そうですねぇ。流様は受けた御恩は本当にお優しく、誠意を込めてお返ししますからね」
「何をごちゃごちゃ言っている!! それでここで死ぬのか決めたのか?」
「ハイハイ、ワシはお任せいたしますわい、御代官さまぁ~」
「……フン。その馬鹿にした態度もいつまで持つか楽しみにしているわ。引立てい!!」
「ハッ!! オイ、その武器をこちらへ寄越せ!!」
「別にいいが……死ぬぞ?」
瞬間、悲恋から恐ろしい妖気が吹き出す。いや、妖気と言うよりも怨念そのものと言っていい恐怖の塊だった。
「ヒィィィィィ!? イ、イズン様!! 無理です!! 本当に死んでしまいます!!」
「何ぃ? どけ馬鹿者が!!」
イズンは悲恋を掴もうとした兵士を殴り飛ばし、自分が悲恋を奪おうと流の前に立つ。
その瞬間、具現化する恐怖の塊である、取り殺された者たちの恐ろしい顔・顔・顔の群れ。
いつの間にか悲恋へ戻っていた向日葵も、たこ焼きパジャマ姿でそれに参加しているのが場違い感MAXだったが、イズンにはそんなのを確かめる余裕はない。
「あひゃああああああああ!? な、何だこの武器はああああああああ!?」
「だから言っただろう? 触るとマジで死ぬぞ? それでもいいなら持っていけよ」
「クッ!? え、ええい。そんなものはどうでもいい。大人しく来い!!」
「おでぇかん様ぁ。ですから~、いつでも付いて行くと~、わしゃ~、言ってまんがなぁ~」
「馬鹿にしおって!! 連れて行け!!」
「「「ハッ!!」」」
連行される流達を見送るセリアと騎士を始めとした冒険者たち。その後すぐに兵士により完全に塞がれてしまい、その姿は見えなくなった。
「ナガレ……」
「姫さんよ。ジャジャ馬と呼ばれようとも、アンタここの娘だろ? 何とかならないのか?」
「ダメよ。父上は私を外に出したくない。先日の事もあったからね……それをルーセント達が個人的に私に付いてきてくれてるの。だから私の言うことなんて聞かないわ」
「歯がゆいな……」
「エド、頼みがあるの」
セリアは懐から魔具を出し、持っていた紙にそれを押し付ける。そのあと何かを書いてエドへと手紙を渡すのだった。
「行っちゃったねぇ……はぁ~、またおかしな人が増えるんだねぇ」
「美琴さん、他人事みたいに言わないんでほしいですがね?」
「何をいまさら。私と流様は一心同体も一緒でしょ? ふふ、どこまでもお供しますよ」
「美琴……」
「流様……」
「何やってるのよ二人とも!? はぁ……なんかもうオバケは怖くなくなったわよ」
「「なんかごめん」」
そんな三人のやり取りを微笑ましく見ていたルーセントは、アイヅァルムより砂塵が上がるのを確認する。
見れば騎兵数百が今頃になって出陣し、こちらへと向かってくるようだった。
「お嬢様、援軍……いや、あの小物の考えることです。多分」
「ええ、斥候魔法で確認してたんでしょうね。ならここに来るのは当然かしらね?」
二人は苦々しく騎馬隊を睨みつける。やがてそれも近くなり、先頭の人物「イズン」が指揮官用の鎧をカスタムし、無駄に華美な鎧を光らせて到着する。
「全員動くな!! 動けば反乱罪とみなし、この場で処刑する!!」
「マイ・マスター、首をはねる許可を」
「ダメだ、ここはセリアに任せる」
「承知致しました」
そう静かに流はLへと指示を出す。それを見逃さず……いや、流「のみ」に集中しているイズンは、その言葉を見逃さなかった。
「キサマぁ……反乱の企てか!? セリア様はこちらへ、その銀髪の男を拘束しろ!! 抵抗すれば殺して構わん!!」
「「「ハッ!!」」」
「ちょっとイズン! 今頃来て何を偉そうにしているかしら? リザードマンを駆逐したのはこのナガレよ? 貴男がやっと出てきた頃には全部、彼とその仲間が殲滅し終えたわよ。どの面下げてここへ着たと言うの!!」
「セリア様お言葉ですがその男……人ではないと報告が上がっております。放置すれば我がアイヅァルムだけではなく、我らが守る本丸であるトエトリーまで被害が及ぶ事も懸念されます」
「どの口が言うか!! トエトリーからの客人を見捨て、この惨状を作り出した無能ものが!!」
「これはしたり。戦と言うものはセリア様のように感情で動けば負けるもの……ですからほら、この通り『勝てる』と分かれば出陣もいたします」
イズンがそう言うと背後の隊列が割れ、奥からはもうすぐ詠唱完了する魔法師と、試作型魔具の拘束具がこちらを向いているのが見える。
「イズン……貴男と言う人はッ!?」
「これが戦と言うものです。常に二手、三手先を読む。だからこそ勝てると言うものですよ」
「クッ……このおおおおお――」
暴発間際のセリアの左肩へと、優しく手が乗る。振り返れば流が妖人から人へと変わっていた。
「せっかく生き延びたつーのに、こんなつまらない事で怪我するのは嫌だろう? なら素直に従うさ」
「ナガレ……でも、捕まったら酷いことされちゃうよ!?」
「気にするな。俺は酷いことをされたら、もっと楽しいことをプレゼントしちゃう優しい男だからな?」
「そうですねぇ。流様は受けた御恩は本当にお優しく、誠意を込めてお返ししますからね」
「何をごちゃごちゃ言っている!! それでここで死ぬのか決めたのか?」
「ハイハイ、ワシはお任せいたしますわい、御代官さまぁ~」
「……フン。その馬鹿にした態度もいつまで持つか楽しみにしているわ。引立てい!!」
「ハッ!! オイ、その武器をこちらへ寄越せ!!」
「別にいいが……死ぬぞ?」
瞬間、悲恋から恐ろしい妖気が吹き出す。いや、妖気と言うよりも怨念そのものと言っていい恐怖の塊だった。
「ヒィィィィィ!? イ、イズン様!! 無理です!! 本当に死んでしまいます!!」
「何ぃ? どけ馬鹿者が!!」
イズンは悲恋を掴もうとした兵士を殴り飛ばし、自分が悲恋を奪おうと流の前に立つ。
その瞬間、具現化する恐怖の塊である、取り殺された者たちの恐ろしい顔・顔・顔の群れ。
いつの間にか悲恋へ戻っていた向日葵も、たこ焼きパジャマ姿でそれに参加しているのが場違い感MAXだったが、イズンにはそんなのを確かめる余裕はない。
「あひゃああああああああ!? な、何だこの武器はああああああああ!?」
「だから言っただろう? 触るとマジで死ぬぞ? それでもいいなら持っていけよ」
「クッ!? え、ええい。そんなものはどうでもいい。大人しく来い!!」
「おでぇかん様ぁ。ですから~、いつでも付いて行くと~、わしゃ~、言ってまんがなぁ~」
「馬鹿にしおって!! 連れて行け!!」
「「「ハッ!!」」」
連行される流達を見送るセリアと騎士を始めとした冒険者たち。その後すぐに兵士により完全に塞がれてしまい、その姿は見えなくなった。
「ナガレ……」
「姫さんよ。ジャジャ馬と呼ばれようとも、アンタここの娘だろ? 何とかならないのか?」
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