日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

383:兄が二人と姉が一人。私、すえっこです

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 昇降魔具は目的の階層である二十階へと到着する。そこは目の前に長く続く廊下があり、その最奥に目的の謁見の間がある。
 逆側には外へと続く窓があり、遠くまでよく見える絶景が広がっていた。
 セリアは赤い絨毯が敷かれている廊下を、足早に歩きながら周りを観察する。

(やっぱりただ事じゃないわね。衛兵の数が多すぎるし、結界魔法が入り口に張られているように見える)

 セリアの言う通り、それは当たっていた。衛兵は忙しく動いており、今も謁見の間から出てきた騎士は、魔法師が作った結界を一部解いてもらってから出入りしている。
 その騎士とすれ違い挨拶を受け、右手を上げることで返礼をしたセリアは、謁見の間の警備兵へと告げる。

「セリアが戻ったと父上に取り次いで」
「ハッ!! クコロー・フォン・セリア様、ただいまご帰還なされました!!」

 大きな声で内部へと報告する衛兵。すると中から低い声で『入れ』と、鳥の形の魔具越しに聞こえてくる。
 扉がゆっくりと衛兵によって開け放たれる。徐々に開く扉、それが開ききると円卓があり、その奥には階段が五段あった。
 その階段の上にはいかにも玉座と言うものが備え付けられており、その左右に二つの豪華な椅子がおいてある。
 その向かって右側の椅子に、この城の主である「クコロー・フォン・セルガルド」が座っていた。

「セリア、よく無事にもどった。これで一安心と言ったところデスネ」
「はい父上、ありがとうございます」

 セリアは父、セルガルドの威風堂々たる姿を見て冷や汗がにじみ出る。彼は生粋の貴族だ。
 それもお飾りの貴族と違い、文武両道の見本みたいな男であり、武の才能も家柄だけの門閥貴族もんばつきぞくとは違い、本物の武人でもある。
 そのたくましい体は、まさに筋骨隆々と表現すべきものであり、着用している貴族服が破けそうなほど、ミッチリとしていた。
 その体型に合わない紳士的なヒゲをひと撫でし、頭の天辺にだけこんもりと乗った金髪の毛を揺らしながら、鋭い目つきでセリアを見つめる。

「セリアちゃん、父上に心配をかけさせるな。もちろん俺も心配していたんだからな?」
「そうよセリア。先日あんな事があったばかりだと言うのに、心配したわよ」
「フン、ジャジャ馬姫とはよく言ったものだ。少しばかり痛い目を見たくらいでは、まったく変わらんと言うわけか?」

 上から長男のアーセッド、長女のエメラルダ、最後に悪態をついたのが次男のイッヂである。
 全員セリアと同じ特徴の、金髪青目で肌が白い人物たちである。ただ、イッヂとエメラルダは内面が顔に、にじみ出た出た表情だ。知らない人物が見たら、本当に兄妹かと思う。

 長男のアーセッドは、見た目は文官と言ったような出で立ちだが、ロングソードを佩剣はいけんしており、体も鍛えられて様になっている。
 次男のイッヂは、兄とは真逆にだらしのない体つきで、兄の二倍ちかい体格だ。
 長女のエメラルダは妹のセリアとは違い、華美なドレスと宝飾で身を飾り、左右からドリルのような髪を自慢気に揺らす。


「兄上がた、そして姉上。ご心配をおかけいたしました」
「お前に怪我でもあれば、お兄ちゃん泣くぞ? 本当だぞ? うぅ……」
「アーセッド兄様、またそのような事を……」
「無駄よセリア、兄上は貴女にゾッコンですからね? わたくしも貴女のように愛されてみたいものねぇ?」
「ケッ、女のくせに人気取りだけは上手いのは相変わらずだな。あぁ、女だから? クククッ」
「イッヂ、貴族にあるまじき言動は慎むデスネ」
「す、すみません父上。失言でした」
「ウム。それでお前たちを呼んだのは他でもない……理由は分かるデスネ?」

 セルガルドが一同を見回すと、イッヂへと目線を向けた。つまり答えよということだ。

「そ、それはあれですな。防衛機構がどこか故障してたのでしょうな」
「愚か者、あれは日々メンテナンスを怠ったことなど無いデスネ!!」
「ヒィ!? す、すみません父上!!」
「エメラルダはどうか?」
「え? わたくしですか? 存じませんね、わたくし女ですもの。そういうのは苦手です」
「……アーセッド」
「はい父上。あれが壊れるとは到底思えませんね。理由は父上が言った通りです、が……」
「続けるデスネ」
「はい、間者が入り込み内部工作をした結果かと思われます」

 その答えにセルガルドは二度頷くと、セリアに視線を向けた。

「兄上の言に、さらに付け加えさせていただきます。このタイミングと言うのが明らかに異常です」
「どうしてそう思う?」
「はい、理由は二つ。一つはトカゲ共が『たまたま近くを移動していたのを利用された』と言うこと。二つ目は『龍人の出現』です。彼らはご存知の通り、無駄な争いはせず利用される事も好みません。しかし一度彼らの独自の視点で機嫌を損ねれば、それは災害クラスのやっかいな連中です。それをココへとどうやって引き込んだのか?」
「つまり、敵はトカゲだけではなく龍人おも動かせる人材と、この城への工作。その二つを考慮すれば相当大きい組織と言うことデスネ?」
「ご慧眼恐れ入ります。そこで出てくるのが『アルマーク商会』です」

 セリアのその言葉で、一同は驚く。だがセルガルドだけはまゆ一つ動かさずセリアの話を聞き入る。

「セリア、お兄ちゃんにも分かるように説明してくれないか? あの商売神級のアルマーク商会のことかい?」
「そうですアーセッド兄上。ただ奴らも一枚岩ではない様子、それが分かったのも先程の戦闘中のことです」
「……詳しく聞こうデスネ」

 セリアは先の戦いの内容を語る。南門の惨状、その守将たる最低最悪な男の事。そして――。

「その時現れたのが、コマワリ・ナガレと言う人物です。彼は仲間たちと協力し、リザードマン共を下草を刈るように殲滅していったのです」
「ッ――古廻 流だと!?」

 セルガルドはその名前を聞き、思わず緑地に金糸で刺繍された豪奢ごうしゃな椅子から立ち上がる。
 そのあまりの食いつきぶりに、セリアをはじめ一同は驚きの表情を向けるのだった。
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