日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

384:全景探知

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 セルガルドは立ち上がったばかりか、そのまま階段を降りてセリアの前まで来ると、その肩を両手でつかみ見開いた目で問いかける。

「セリア! その古廻 流は今どこにおられるデスネ!?」
「えっと、は?」
「は? ではない!! 今すぐ案内するのデスヨ!!」
「わ、分かりました父上。ですから少し落ち着いてください!」

 セリアのその言葉で、自分がいかに焦っていたのかを思い出し、落ち着きを取り戻す。

「ッ、すまない。取り乱したデスネ……。それでその古廻 流とはどのように知り得たのデス?」
「それは――」

 以前あったゴブリン事件、そしてその時助けてもらった事を詳細に話す。セルガルドもその事は知っていたが、改めて聞くと侍らしい戦闘に冷や汗が浮かぶ。
 もっとその事を早く確認していれば、流に色々便宜がはかれたと思うと残念でたまらず、娘の事に執着してしまったためのミスを悔やむ。

「――というわけで、今回は龍人を下し配下におさめています」
「オイ、セリア!! 嘘を付くなよ? 龍人をどうやって手懐けると言うんだ? お前の手柄にしたいために、嘘を父上に報告するなど許せることじゃない!!」
「そうよセリア。貴女一人でご褒美を貰って贅沢するつもりなのでしょう? いけないわ、お姉ちゃんがそれをすべて管理してあげるから、欲はだしちゃだめ」
「お前たちは何を言っている? セリアちゃんが嘘を言うはずがない、そうですよね父上?」

 その時だった。外から緊急報告の伝令が来たと知らせがあり、伝令を謁見の間へと通す。
 伝令の前に長男のアーセッドが進みより問いただす。

「今は重要な会議中だ。緊急との話だが何事だ?」
「ハッ!! 会議中申し訳ございません!! トエトリーよりの使者が、これをセルガルド様へと!!」
「ん……父上、間違いなくトエトリーよりの物です」

 アーセッドは父へとそれを持っていき手渡す。セルガルドはそれを確認し、一つ頷くと開封する。そして顔を青くして伝令に問う。

「ッ!? お前は百人隊長のヨルムだったな? それでヨルムよ、この使者は今どこにいるデスネ?」
「そ、それが……尋問室の中です」
「……ハァ? ば、馬鹿者!! なぜそのような場所にあのか、いや、あの者を捕らえているのだ!? 至急開放し、ここへ案内するデスネ!!」
「それがイズン様が、今回の事件の首謀者の疑いがあるとして、尋問せよとの仰せです」
「馬鹿が!! 侍がそんなわけがあるか!! 命令だ、一刻も早く開放しお連れするデスネ!! それとこの〝令杖れいじょう〟を持っていけ!!」
「しょ、承知しました!!」

 ヨルムは領主令の証である令杖を受け取ると、脱兎のごとく謁見の間を後にする。
 それを苦々しく見つめるセルガルドは、過去にあった過ちの一つを思い出す。

(クソ、これの積み重ねで過去失敗したと言うのに、また同じ過ちを……これ以上、二度と同じ過ちを繰り返すわけにはッ)

 そんな事を思っていた時だった。突如扉の外から聞こえる悲鳴、そして轟音と続く。

「何事デスネ!?」
「父上、私が見てまいりましょう!!」
「イッヂか、頼むデスネ」
「ハッ!!」

 普段動かないイッヂが珍しく巨漢を揺さぶり動く、それもこの危険かもしれない状態でと言うことに、セリアは嫌なものを感じる。
 背後にはルーセントがおり、さり気なく見ると彼も似たような事を考えているようだ。なぜなら――。

(アレはウインクサインか……脱出・の・用意・を、か)

 事前に決めてあるサインの一つ、脱出準備を合図を送られ、セリアは軽くうなずく。
 直後、部屋の外から轟音が響き、イッヂが転げるように戻ってくる。

「父上えええ!! た、大変です!! 何者かによって最上階の魔具『全景探知』が破壊されたようです!!」
「「「何だとッ!?」」」

 その報告に、エメラルダ以外全員が驚愕する。すぐさまセルガルドは帯剣し、アーセッドに命令を下す。

「アーセッド! ついて来るのデスヨ!!」
「はい父上!!」
「父上私も行きます!!」
「セリアはここで古廻 流を待つのデスヨ。いいかセリア、彼は特別だ。詳しくは言えんが、その事だけは覚えておくデスヨ」
「ッ!? はい、分かりました。父上、兄上お気をつけて」

 二人は頷くと部屋を出ていく。イッヂは怪我をしたのか、右足を引きずるようにしていた、が。

(兄上……それでは嘘とバレバレですよ。本当にきな臭い。一体何が起きているの?)

 イッヂは足を引きずるように歩くが、力の入れ方が不自然すぎる。戦場で幾度も負傷した兵を治療し、その動きを見てきたセリアだからこそ、その違和感がすぐに分かる。
 そんな視線に気がついたのか、イッヂはセリアの兄とは思えない、内面が顔ににじみ出た醜い表情で、セリアの視線が胡乱うろんげだと言わんばかりに、その視線の持ち主へと詰め寄る。

「おいセリア! なんだその目は? 俺が胡散臭うさんくさいとでも言いたいようだな、あぁん?」
「そう思われるのは、兄上の心にやましい事がおありなのですか?」
「なッ!? 何だと!! 女のくせに生意気な!! 父上と兄上に可愛がられているからと増長しやがって!! お前などもっと痛い目をみて、懲りればいいのだ!!」
「そうよ~。セリアは少し自分がワガママすぎると、自覚したほうがいいわねぇ? お姉ちゃん、貴女より貴族のお仕事、お茶会とか、舞踏会とか、社交界とか、頑張っているんだから、父上にもっとお小遣いあげるように言ってちょうだい? セリアばかり優遇されすぎなんて生意気なのよ!」
「そうだ!! ちょっとばかり民に慕われ、ママゴトの兵隊遊びなど恥知らずが」
「お姉ちゃんね、貴女が余計なことばかりするからぁ、いつも比べられて迷惑なのよ。少しは自重して、お詫びと誠意を金銭で見せてほしいわね?」

 セリアはこの二人の言葉が分からない。同じ言語を話しているとは到底思えないほど、その言っている事が最低なのだから。
 それを見たルーセントは「やれやれ」と一言漏らすと、セリアの隣に立ち二人へと忠告するのだった。
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