日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

385:祈り

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「ハッハッハ。お二人共……いい加減にしませぬと、泊よりキツーイお仕置きがありますぞ?」
「ルーセント。キサマこそセリアの子飼いに成り下がりやがって、アイヅァルム騎士団長としての誇りはどこに行った!?」
「そうよ! 父上に特別に目をかけてもらっているからと言って、調子にノリすぎよ!!」
「やれやれ、躾の悪いお子たちだ……」

 ルーセントは素人でも感じるほどの「圧」を出し、二人を威圧する。それまで壊れた小鳥のように煩くさえずっていた二人だったが、それをウケてピタリと口を閉ざす。
 その様子をセリアは苦笑いで見つめながら、二人の兄姉へと話す。

「別に……お二人にふくむところはありませんよ。ただ、私はクコロー家の品位を落とさないようにしているだけです。私達はここの領主の一族ですが、だからと言って民を足蹴にし、貪っていいはずがない。むしろ民のために尽くし、その民からの恩恵を受けるべきです」
「綺麗事を言うな!! 俺や出来のいい・・・・・妹は、貴族として民から一目置かれている。それが貴族と言うものだ。お前のように山猿が如く飛び回り、死にそうになりながら、いくらでも生えてくる草を救う? ハンッ、馬鹿の極みだなぁ?」
「そうよ! 兄さんの言うとおりだわ。私達は選ばれた人種! それを私達二人は王都でしっかりと学んできたわ。貴女と違ってね! 上の兄さんと、貴女は貴族として私達から学ぶべきよ」
「ええ、学ばさせていただいてますよ。こうはなるまいと、ね?」
「「キサマアナタ!!」」

 その時だった。再度上部より響く轟音に四人は静まる。セリアとルーセントは鋭い視線でその入口の扉を睨むと、抜刀し構える。
 突然の事にイッヂとエメラルダはビクリと震え、物陰に隠れた瞬間だった。入り口の扉が勢いよく開け放たれ、そこから見た顔が二人乱入して来た。

「お前たち、無事でよかった」
「ハッ、セリア様! 状況を説明します。先程まで最上階で戦闘が行われており、その後爆発。セルガルド様は負傷され運ばれました。侵入した賊はすべて鎮圧に成功。正体は人のようですが、どこか違和感があったとの事です。なお、アーセッド様はご無事で指揮を執っておられます!」
「何ですって!? 父上はご無事か!?」
「はい、ただいま担架でもうすぐこちらへと搬入された後、結界師によって封印。後に治療に入ります」
「クッ……こんな時に。イッヂ兄上!! どうするのです?」
「し、知らん!! 俺は何も知らんぞ!!」
「そんな事を言っているのではありません、この後どうするのか? を聞いているのです」
「そんな事はお前が決めろ!! 俺に頼るな!! バカバカしい、俺は下に行く!!」
「あ、待ってよ兄上。もぅ、セリア! 血なまぐさい事にお姉ちゃんを巻き込まないでよね!!」

 そう言うと二人は入り口から出ていってしまう。それを見たセリアは「してやったり」とほくそ笑むと、斥候二人に再度問う。

「邪魔者は消えたわ。それで詳細は?」
「ハッ! 脱出経路は確保済み、いつでも外へ逃れられます。なお情報を集めていた三名はすでに『天空飛び』場で待機。此度の混乱の原因は、やはり内部の裏切りとの情報が集まっています」
「やはりね……」
「ただ気になる事が一点。その裏切り者ですが、どうも正気じゃなかったとの事でした」

 ルーセントとお互い顔を見合わせる。どうにも先の龍人と、同じような事があったのでは? と思うと、妙に得心もいく。

「お嬢様、やはり龍人と同じ?」
「かもしれないわね。それよりこのままここに居たら、確実に城に閉じ込められるのが問題だね」
「ですな、あのいけ好かない男を救出するためには、やはり外へ逃れるのが一番でしょうな」
「もぅ、ナガレだってば。伝令が戻ってイズンへと命令が届けばいいけど……とりあえず父上を向えに行きましょうか」
「そうですな、ではお前たち二人はこのまま付いて来い」

 外に出ると衛兵はおらず、あちこちに兵士が倒れていた。さらに進むと最悪な状況が目に入る。

「うそ!? しっかりしなさい、大丈夫?」
「うぅ……セリアさ、ま……」
「いい、動かないで。もうすぐ救護班も到着するだろうから、ヨルム・・・は寝てなさい」
「すみません、イズン様への命令を伝える事叶わず……」
「大丈夫、私がいるもの。きっとナガレは救ってみせるわ」
「あり、がとうございま――」

 そう言うとヨルムは気絶する。どうやら背後から殴られたようだった。セリアはヨルムをゆっくりと寝かせると、周りを見渡す。
 そこは戦場であり、死体もいたるところに転がっている。ヨルムは運が良かったのだと思いながらも、この状況を引き起こした「内通者」に怒りを覚える。

「これで脱出は確定ね」
「ですなぁ。アレは老骨にこたえるから、やりとうないですがなぁ」
「あら、慣れると楽しいものよ? それより、この状況を引き起こしたヤツは許せないわ」
「無論ですとも。そこに転がってる男、ミームーはいつも明るく良いやつでした。あっちの首がない巨漢で特注の鎧の男はドムル。そっちの袈裟斬りになってる娘はミラ。みんな気のいいワシの部下達でした」

 セリアは「そう」と一言漏らす。そしてその死体の前に行くと、裏返し仰向けにして腕を組む。
 その後一人ひとりに祈りをささげ、冥福を願うのだった。
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