日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

文字の大きさ
386 / 486
第九章:奪還作戦と、国の闇

386:割れる思い

しおりを挟む
 セリアが祈りを捧げていると、遠くから怒鳴るように指示を出す声が聞こえる。
 どうやらセルガルドの代わりに、長兄のアーセッドが慣れないながらも頑張っているようだった。

「お嬢様が男で長男なら良かったと、今回ばかりは特に老骨に染みますのぅ」
「どうせ中身は男みたいと言いたいのでしょう? まぁその通りですけどね……と、来たようね」
「セリアちゃん!? 良かった無事だったか!!」
「おかげさまで。それより父上は大丈夫なのですか?」
「ああ命に別状はない。が、意識を失われている。全景探知の魔具に使われていた真核が突如爆発したのだ。その余波に巻き込まれてな……」
「そうですか……まずは堅牢な謁見の間へ向かいましょう。話はそれからです」
「あぁそうだな。ではお前達、進め!!」
「兄上。このような時は、もう少し肩の力を抜いて自然に。兵が気疲れして疲弊していまします」
「そ、そうだな。うむ、では行くぞ者共」

 そんな頑張っている長兄を見ると、応援したくなるセリア。だが補佐をしてくれる人材も乏しく、ルーセントを付けようと考えチラリとその顔を見る。
 見越したように「死ぬまでご奉公いたしますがね」と言われ、ウインクをされてしまう。
 まったく顔芸の達者な御老体だと苦笑いをうかべ、セリアたちは謁見の間へと戻る。
 ちょうど戻った頃に、救護班が到着しており治療用の器具や、結界師が守るように魔法を発動していた。

「いいタイミングね。兄上、父上を円卓の上に」
「そうだな。おい、父上を円卓にお乗せしろ」
「ハッ! ぁ、セリア様! セルガルド様が気が付かれます!!」
「馬鹿者! 私じゃなく、兄上に報告なさい」
「し、失礼しました!!」
「いやいい。俺よりセリアちゃんの方が、指揮官としてよほど優秀だ。みなもセリアちゃんの言うことをよく聞くんだぞ?」
「「「ハッ!!」」」
「もう兄上ったら……」
「俺は文官が性に合っているからな。おっと、父上が目覚める」

 治療師が魔法と器具を使い、治療をしたかいがあったのか、ゆっくりと目覚めるセルガルド。
 目の前には愛しの二人の息子と娘がおり、不出来な二人がいない事に少し寂しさを覚える。

「――うむ。爆発の余波でやられたデスカ?」
「はい父上。賊は殲滅しましたが、詳細は現在調査中です。心安んじておやすみを」
「うむ。よくここまで頑張ったなアーセッド。流石私の息子、まずは城の完全封鎖をするデスネ。セリア、古廻 流はどうなっているデスネ?」
「まだ連絡は来ません」
「そうか……お前はここから離れる事は許さんデスネ。父の側にい――」
「セルガルド様、再び気絶なさいました」
「治療師長、父上は本当に大丈夫なの?」
「はい、一時的な魔力の枯渇からくる中毒のようなものかと。話を総合しますと、魔核の爆発により周囲の魔力を巻き込んだのが原因です。近くにいたセルガルド様が魔力を吸われる形で、被害を受けたのでしょうな」
「そう、なら安心ね。兄上……」
「分かっているさ、セリアちゃん。行くんだろう?」
「ええ。実は先程伝令に走ったヨルムは、この騒ぎで動けない状態で見つけました。さらにその中で令杖も紛失し、伝令がいない状態です。この混乱の中、代わりのものに状況を説明して向かわせるより、私が直接出向いた方が早いですからね」
「そうだな。では頼むよセリアちゃん。父上はああ言ったが、俺はセリアちゃんを支持する。だが下まで送る余裕はない。どうする?」
「そこはなんとかします。兄上は城の封鎖を最優先で」
「わかった、そちらは任せておけ」

 セリアはそれに頷き、ルーセント達を連れて部屋を出るために扉へと手をかける。
 そこでふと思い出し、今回感じた確信的な事を、アーセッドへと伝えるために部屋へと戻り、そのまま彼を部屋の端まで連れて行く。

「どうしたセリアちゃん? お兄ちゃんが恋しくなったか? ま、まさかいけないよ、セリアちゃん!? 俺達は兄妹なんだー!!」
「? ふふ兄上が恋しいというのもありますが、一つ兄上のお耳に入れたいことがあります。それは――」

 アーセッドがいない間の事、その前にあった事。その違和感を二人ですり合わせ状況を整理する。

「……確かに言う通りだと俺も思う。やはりセリアちゃんはイッヂが内通者だと?」
「そこまではまだ……。それに判断材料が足りません。あくまで状況証拠といったところです」
「なるほど、分かった。俺の方もこれ以上やられないように、気を引き締めておく」
「はい、よろしくおねがいします。では行ってまいります」

 見送るアーセッドは、溺愛する末の妹のたくましさに涙腺が崩壊しかけたが、頑張ってこらえる。
 逆にこの大事な局面で、逃げ出した弟と妹を思えば怒りがこみ上げる。そして両手を握りしめ、父の姿を確認しつつ独りごちる。

「イッヂ、エメラルダ。お前達の本心はどこにある?」

 円卓で二人が座っていた場所を睨みつけ、悲しくも怒りに満ちた瞳で二人の事を思うアーセッドであった。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...