日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

394:溢れる「ちから」は供物となりて

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 突如変態紳士のジェニファーがそう宣言する。
 瞬間、処刑会場に動揺が走る。今まさに処刑寸前までいった罪人の男が、世界にも数えるほどしかいないであろう、「特別な称号」を授与されると言うのだから。

「え゛!? 俺が極武級だって!? 冗談だろう? なんでまた」
「もぅ冗談じゃないわよん。私がここまで来た、その意味が分かるでしょぅ?」
「そうだぞナガレ? 俺たちは忙しい、特にジェニファーの酒場にいる時はな」
「コホン。えっと、よろしいですかな? はじめましてナガレさん、お噂はかねがね。私はこの街の冒険者ギルドを管理しているドズルです。今後ともヨロシク」
「え、あ、はい」

 ギロチン台から首と手首だけを出して、まぬけに挨拶する二人。そんなシュールな光景をワン太郎は呆れ顔で見ていると、ドズルはさらに続ける。

「今回お二人においで願ったのは、極武級とは冒険者ギルドで与えられる最高峰の称号。だからこそ、ギルドマスター級が一人。そして極武級クラスが二人揃って初めてその栄誉が与えられるのです」
「そうよん。だからアイヅァルムへと、ミーたちが大急ぎで来たわけよん♪」
「まぁそんな訳だ。だからもう今日は、これ以上俺を呼ばないでくれたら助かる」
「そんな訳ですよナガレさん。では巨滅の英雄あらため、龍人達を下し、リザードマンを殲滅した功績に見合った二つ名……そうですな……『極武の英雄』なんていかがかな?」
「ンマ!? それはイイわねぇ~♪ 大賛成よん!!」
「だな、俺もそれがいいと思う。ようこそナガレ、ここが武の極みだ!!」
「お……おう? ありがとうって言っていいのか? こんな格好で……」

 三人の言っている事はとてもいい。が、処刑間際の情けない姿で、それを言われても流はイマイチ実感がわかない。
 そんな意味の分からない展開に、ワナワナと震える男が一人。イズンだ。

「ありがとう……だ、と? いいのか? だ、と? …………いい訳があるかあああああああああ!! フザッケルナ!! 極武級か何か知らんが、なんの権限があってアイヅァルムが正式に認めた罪人をもてはやす!? コイツは死刑だッ!! 誰がなんと言おうがなぁ!!」
「おいナガレ、なんだこの馬鹿は?」
「イヤねぇ~。きっとボーイの成功を妬んでいるんだわぁん。ふ・け・つ」
「黙れえええええええ!! ここは俺が法であり、秩序だ!! それを破ることは出来んッ!!」
「あ~ら……それはどうかしらん? ねぇヴァルファルド」
「こんな馬鹿と会話をする事も苦痛だが……おい、そこの頭がゴブリン級の馬鹿。そう、お前だ。コレが何だか分かるか?」

 ヴァルファルドは黒鎧のスキマから、長さ三十センチほどの細長い棒のようなモノを取り出す。
 どうやらあの鎧の中に、アイテムバッグ系の何かを仕込んでいるらしい。
 
「ッ!? ま、まさかセルガルド様の令杖れいじょう!? だ、だがそれは紛失したはず!!」
「残念ながら違うわん」
「何いい!? 貴様らああああ、令杖を不正に作ったのか!! 貴様らも重罪だぞ!?」
「本当に馬鹿なんだな……いいか、その足りない脳みそをフル回転させてよく聞けよ? こいつはお前の主であるクコロー伯爵のさらに上、トエトリー子爵・・からの令杖だ。その意味は分かるな?」
「な、なんだ……と……?」
「もぅ本当に見るのも不快な汚い顔ねん。いいかしらん、カーズ様はねん『コマワリ・ナガレ』の開放を命令しているのよん。それに、冒険者ギルドの総意として、極武級となる人材を黙って殺させると思って? そのゴブリンの汚物より汚いお顔で、理解できたかしらん?」

 イズンはその言葉で目の前が真っ暗になる。あの黒鎧が持ってる令杖は紛れもなく本物である証があった。
 それは持ってる少し上に魔力で出来た、トエトリー家のフラッグがはためいているのだから。

「う、嘘だああああああ!? こうなれば刑を執行してしまえばッ!!」
「イズン待ちなさい! いやあああナガレエエエエ!?」
「あら~ん大変、ボーイの命がもうすぐ消えちゃうわん(棒)」
「さらばだナガレ。世話になったな(棒)」
「短い人生だったぁ~しっぬううううううう――(棒)」

 イズンは血走った目で右手に持った手斧を振り落とす! 
 瞬間、流の首上にある死神の鎌が五メートルの高さより、その巨大な刃が真っ直ぐ落ちてくる。
 見物人の一部から歓声のような声と、残りは悲鳴なような声が聞こえた瞬間――。

「――ううううう訳がねぇわな?」

 首刈り刃が迫ること、残り八十センチ! 床に置いてあった悲恋より、突如クナイが二本飛びだし、ギロチンの刃の溝へと食い込む。
 それに邪魔をされて首刈り刃は動きを止め、さらに抜身の悲恋美琴が流の前に突き刺さっていた。

「今日は俺の昇格祝だ、なら派手に行こうじゃないか!? 天仙天女唯我独尊……お前は誰よりも美しい……狂楽きょうらく狂鎌きょうれんおどれ! 来い! 狂鎌天女『雅御前』!!」

 美琴が最大まで練り上げた妖気。そして流がそれに呼応して放つ、無邪の妖気を供物に顕現する妖艶な天女。
 それはいつものような恥ずかしげな表情ではなく、見る者が「ゾッ」とするような、美しい恐怖だった。
 衣装もいつもとは違う白を貴重としたものに、紫の羽衣をまとう。
 さらには黄金の冠を斜めに頂き、身の丈よりも大きな死の塊のような漆黒の大鎌を、数度頭上で回転させた後に飛び上がる。
 
 その見事な大鎌を操る動きと、まさに天女と言わんばかりの〝ふわり〟とした動作に、全員魅入る。
 それほど美しく、儚げに消えそうなほどに見えた。
 が、突然、雅御前と呼ばれた天女は大鎌を高速回転させると、そこから黒い斬撃が空間すら断ち斬ったのではないか? と思えるほどの勢いで無数に放たれる。
 
 次の瞬間、流とLが拘束されていたギロチン台はおろか、巨大な刃にすら〝無数の線〟が入る。
 それを確認した雅御前は、ダメ押しとばかりに持ち手の部分をコツリと右手で叩くと〝チリン〟と、鈴が鳴ったような、それに合わないような音が響く。
 直後に硬質なモノが、高音で気持ちよく割れるような音がした後、バラバラに砕け散る。

 それは冗談みたいな光景であった。なぜなら――。

「ボーイ……あなたそこまで……」
「ナガレ……冗談だろう……?」

 あのジェニファーとヴァルファルドすら驚愕の光景。
 雅御前が斬ったのはギロチンにとどまらず、流の背後で繰り返し上映されている、流と龍人とのつながりを暴露している、「石壁」までも細切れにされていたからだった。
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