日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

文字の大きさ
402 / 486
第九章:奪還作戦と、国の闇

402:アルマーク商会の闇

しおりを挟む
 そんな二人を静かに見守るセリア。やがてどちらともなくセリアへ向き直ると、エルヴィスはセリアへ向けて先の感謝を述べる。
 それにエルヴィスの部下たち、特に逃げれると分かって表情に出てしまった者たちは、セリアへと泣いて感謝したのだった。

「お前の部下はいいやつばかりだな」
「ああおかげさまでね。私にはすぎた者ばかりだよ。それでナガレはこれから何処へ行くんだ?」
「あぁ王都のお前の家に乗り込むつもりだ」
「……詳しく聞いても?」
「そのつもりだ」

 流はそう言うとエルヴィスに席を勧める。それを遠巻きに見ていた飲食店や屋台の店主は、エルヴィスたちの分まで食事を用意してくれる。
 どうやらエルヴィスは家柄をぬきにしても、この街の商人にとても好かれているようであった。
 その後料理を食べながら事のあらましを説明するが、意外にも冷静にそれを受け止めているエルヴィス。

「そんな事があったのか……」
「ああ、それで俺はお前んちに乗り込んで、その娘を取り返しに行くところさ」
「はっきり言おう、私と祖父は全くあずかり知らぬ事だ」
「なら一体誰が今回のことを? かなり大掛かりな組織と見ているが」
「疑うのは分かる。そして話から間違いなくウチが関与している」
「なら残るは……」
「そうだ、私の父だ。より正確に言うと、父と姉の二人が黒幕だろう」

 エルヴィスはそう言うと、持っていたアツアツのひき肉のパイを握りつぶす。
 つぶれたパイは夏だと言うのに、湯気が出るほどの熱さのそれは、容赦なくエルヴィスの皮膚を熱で犯す。
 だがその痛みを感じることより、父と姉への怒気が強く、やけどした右手を震わすのだった。

「エルヴィス……これを使って」
「っ、ありがとうございますセリア様。魔具で冷やされた手ぬぐい、心地よく癒やされます」
「お前も色々あるらしいな。せっかくのパイが台無しだ。ホラ、このムガムガワニの串焼きやるよ」
「ああ、私はこれも好物でね。かんだ瞬間ラムヤックの果実のような肉汁がほとばしる、そんな奇跡のような味、そして濃厚な野性味溢れる香りに負けない香草のハーモニーが、もう一口と奇跡をさらに昇華するのがクセになるね」
「お前は生きる食レポか? まぁいい、ほらもう一本やるよ」

 エルヴィスは嬉しそうにそれをもらうと、両手で同時食いする。本当に好きなんだなと見ている者たちが呆れつつも、一本を食べ終わる頃にポツリと話し出す。

「父は……変わってしまったんだ。あの日、妹がオルドラから帰って来てからね」
「オルドラ? またあそこか……」
『本当にろくな事しないね、マッタク』
「ッ!? 今の声はどこから?」
「これ美琴さん、初心者を脅かすのはやめなさいな。この謎の声は、俺の最愛の相棒である、この刀が話してるんだ。気にしないでくれ」
『えーだって、本当の事ですしぃ。ブーブー』
「い、色々規格外なヤツだな」
「悪い、話の腰を折った。それで?」
「あぁ。そうだな、あれは私が駆け出しの頃だったか……」

 エルヴィスは十年前の事を思い出す。ちょうどその頃、姉であるエリザベスがオルドラ留学から帰って来た。
 同時期に祖父が引退を表明し、エルヴィスの父へと全権が譲渡したばかりであり、多少混乱していた時期だという。
 そんな中、エルヴィスの父である〝カークス〟は、これまでの路線を大きく変更すると言う暴挙に出る。
 
 アルマーク商会――それはこの国、バンディア王国ならず、ここ十年で一気に世界規模まで、のし上がった企業である。

 その裏にはカークスの強引と言うのも生易しい、限りなく黒に近いグレーゾーンを躊躇なく行った結果だった。
 無論それは「表の事」だけであり、裏では黒も黒。夜の帳より尚黒い、悪事を平然と行っているという。

「それを国は取り締まらないのか?」
「無駄さ、この国の王室は腐ってしまった。いや、元々腐ってたところに、親父がさらに腐らせて、取替しのつかない所まで来てしまっている」
「そこまでか……」
「ああ、もうこの国はおしまいだ。これから王都へ行くのだろう? なら一緒に行こう。道中見せたいものがある」
「寄り道している時間は無いんだが?」
「問題ない、私を誰だと思っている。この国の裏と表を知る商人だぞ? 逆に近道となるさ」
「そうか、そりゃ心強い。さて、うまい飯も食べたし、そろそろ行くか!!」

 流の言葉に全員がうなずく。エルヴィスの部下がすでに出立の準備を整えてあり、その報告へと来る。
 その中にセリアには嬉しい内容も含まれていた。

「まぁ!! それじゃあ私達の鎧も回収して来てくれたの?」
「はいセリア様。あちらの馬車へと積んでありますので、出立前に装備のほどを」
「ありがとうエルヴィス。みんなも自分の物を装備なさい」
「「「ハッ」」」
「それはそうと、エルヴィスや。ワシらは馬車を護衛しとる時間は無いぞ?」
「ルーセントさん、その心配にはおよびませんよ。品はすでに処分しましたので、このまま馬で行きます。オイ、馬を回せ!!」

 エルヴィスはそう言うと、体躯の立派な馬を人数分用意する。それは軍馬と呼ばれるもので、その中でも最高級の個体ばかりを集めたものだった。

「フム、これはワシらの馬より、かなり高級ですなぁ」
「そうね、流石はエルヴィスと言ったところかしらね?」
「お褒めに預かり光栄です。では皆様、これに乗り換えて行きましょう」

 なんとも手際が良いエルヴィスに、舌を巻く流たち。
 そんな彼らを嬉しそうに見ながら、エルヴィスは出発の準備をするのだった。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...