日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

412:下賜物

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 そんなこんなで、どうせ妖人あやかしびとだし腹も壊さないだろうと刺し身にしてみた。
 その様子を周囲は不気味に思うも、美琴も出てきて興味深そうに見ている。

「ナ、ナガレ。本当に食べちゃうの、ソレ?」
「たしかに東の民も食べるとは言ったが……。本当に生で食べれるのか?」
「ケロケロ~生は美味しいケロリ。人間さんも安心して食べれるよ、虫も病気も無い特別な魚ケロケロ」
「ほら、ジャバもそう言ってるし、ここは日本人としては食べるしか無い!!」
「そうですよ皆さん! 毒魚でも何でも工夫して食べる崇高な食への探究心!! その先にあるのが例え死でも、人は美食を追求し食べるのですからね!!」

 そう悲恋より抜け出たオバケが力説するが、死んでいるだけにみんなドン引きだ。
 と言うより、そのオバケのあまりの美しさにエルヴィスはじめ、騎士達も美琴に目を奪われる。
 セリアですら美琴の姿に心を奪われるほど、超常じみた怪しい美しさに見惚れた。
 そしてそのオバケが、何やら不穏なことを言い出す。

「コホン。流様、まずは私が毒味をして見ましょう」
「え!? オマエ食べれるの? オバケで幽霊でゴーストなのに?」
「そりゃ食べれますよ。ほぼ実体化しているんですから」
「……なんか納得いかん」
「私も知りませんけど、そーゆー意味不明な存在なんです! ぁ、言っていて悲しくなってきた」
「それより食べたモノはどうなる? そこ、とってもキニナル」
「もぅ、変な想像しないでくださいよ。私も分かんないけど、悲恋の妖力になると思うよ」
「意味不明なのは同意するが……。ホントどうなっているんだろうな、お前の体」

 美琴はそれに苦笑いすると、自分の体の変化に気がついていた。
 確かに以前も飲食をしようと思えばできたが、味は感じず「ただ食べただけ」だったが、今は違う。
 あの過去から戻ってきてからと言うもの、体が生身に近いと感じることが度々あった。
 だから今回、もしかしたらという思いで毒味として名乗りをあげたわけだが。

 全員に見守られながら、美琴はLが近くにある石から、器用に作った小皿に醤油を垂らし、ぷっくりと艶やかに光る唇を静かに開く。
 口に入れる瞬間、日本の醤油発祥の地・湯浅で作られた極上の生醤油の香ばしい香りが鼻孔を抜け、食欲をそそられる。そして口に宝石のように輝く赤身を含む。

「ど、どうだ。美味いのか?」
「…………ぐすッ……」
「美琴!! どうした!? どこか痛いのか!!」
「違うの……味……が……濃厚に……わ゛がる゛の゛うええええええええん」

 突如号泣する美琴。全員それを呆然と見つめるが、「味が分かる」。その意味がよく分かる流は美琴を優しく抱きしめる。
 
「おかえり美琴、数百年ぶりの食事……か。良かったなせいを実感出来て。死んでるけど」
「うん、うん、うん!! 私ね、きっと今生きてるんだって思えたの。死んでるけど」

 流も思わず涙をながし、美琴をより強く抱きしめる。そんな二人を見てLとワン太郎もホロリ。
 セリアも少し妬ける。でもその思いが伝わり涙を目尻にため、一筋の線を作るのだった。

 その後、美琴の生還(?)祝が開かれ、数百年ぶりの味がする食事を楽しむ。
 まるでこれまでの不運を払うかのように、美琴は食べて食べて食べまくる。
 刺し身は無論、今できる調理法で焼き・煮る・たたきで、濃厚かつ奥深い味わいに舌鼓をうつ。
 それは美琴が生前をふくめ、初めて心から美味いと感じる事ができる食事であり、愛する人と一緒に食べれる喜びに歓喜する。

「ふぅ~お腹いっぱい!! ごちそうさまでした!!」
「……半分無くなっちゃったわね。恐ろしいほど美味しかったから、それも納得ね」
「そ、そうだな。よく食ったな……」
「けぷっ。ワレも食べたけど、女幽霊の食欲はバケモノだワンねぇ。オバケだけど」

 もう何人前食べたのかすら、確認するのも馬鹿らしいほどに美琴は食べる。
 それを全員が満足するほど食べたが、それでもまだ半身は残っていた。
 流はワン太郎になんとかならないか? と聞くと、赤身そのものを瞬冷凍する事で鮮度を保つと言う。
 どうやらワン太郎自慢のわざらしく、解凍してもドリップ一滴すらでない完璧な仕上がりだ。

「と、言うわけだワン」
「やるじゃないの、ワン太郎。ちゃ~りゅやるぞ、ほれ」
「いただくワン! ちゃーりゅは別腹ワン」

 そんな彼らを見つめる複数の目。それは三左衛門たちである。
 三左衛門は悲恋の中にある飾り気のない和室より、外の様子を見つめ、姫と仰ぐ主の変化に冷やせを落とす。
 やがて三左衛門は重い口を開き、向日葵へと問う。

『……どう思う?』
『そうですね。やはりあの時に下賜かしされたモノが原因かと』
『忍者の視点から申しますれば、具現化能力も格段にあっぷしております。そうです、私が忍者です』
『才蔵もそう思うか。先の西洋式切腹台にヌシが打ち込んだクナイ、確かに見事だった。それにワシの虎鉄も切れ味が増しておるわ。やはり……』
『三左衛門様、豪商の視点としてはここ。そう、この和室すらより現実に近く思えますなぁ。そしてあの安置台すら……』

 一同は部屋の最奥に安置してある「青金に輝く玉」を見つめ、その存在力が増しているのに危惧する。

『時空神が姫へと下賜したこの玉で、一体何を姫にさせようとしているのか。危うい……、これ以上、姫を苦しまさせる事の無いようにせねば』

 三左衛門は無邪気に喜び、笑う美琴の顔を見ながら、そう思いを固めるのだった。
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