日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

413:白煙は変化デス

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 三左衛門らの心配をよそに、美琴はおもむろに立ち上がると、ジャバが用意したステージのような荷台へと向かう。
 その様子を全員が呆然に見つめる。なぜならそれは、とても怪しく、とても妖艶で、とても儚げに見えたのだから。

 やがて美琴は白を基調とした、特注の金糸で彩られた百日紅が実に見事な、加賀友禅の袖の中から扇子を取り出すと、まるで夏祭りのような舞台で舞い始める。
 美琴は舞う。これまでの不運な過去を払拭するように、静かに妖艶に儚く。
 その洗練された舞いに魅入る一同。やがて徐々に美琴の周りに人魂が現れ、妖艶さと怪しさが極限になった頃、湖もそれに呼応するかのように光りだす。
 
 先程見た魚たちが、美琴につられたかのように点滅する。それを見た美琴は「ありがとう」と微笑む。
 それに気を良くしたのか、美琴は歌う。以前、どこかで覚えた春の歌を。
 セリアはただ魅入る。そして自然に、口から一言自然にこぼれた。

「なんて綺麗……」
「だな……人には到達できない領域だ。俺の世界でも異世界こっちでも、見たことの無い魅力が目の前にある」
「ミコトさんは本当に死んでいるのか? 私にはそうは思えない。いや、超常的な存在だからこそのこれ、か……」
「お美しいいいい!! マイ・マスターの伴侶は伊達じゃない!! 龍人の舞踊など足元にもおよばないですねぇ」

 そんな美琴の舞いと歌を一同は楽しむ。やがてルーセントたちがそれに加わり、その様子は夏祭りのようであった。
 美琴は思う。流とあえて本当に良かったと。そして同時に強く思う。

 ――この負の連鎖を断ち切らねばいけない、と。

 その思いは美琴の中にしっかりと、そして今はっきりと認識したのだった。


 ◇◇◇


 その後、心ゆくまで宴を楽しみ、やがて就寝した一同は夜明けと同時に出発する。
 まだ周囲は薄暗いが、それなりに視界も確保でき、ドラゴンが襲って来ても流やL以外でも対処は可能だろう。

「さて、昨日の遅れを取り戻す。ジャバ頼むよ」
「ケロケロ、分かったよエルヴィスちゃん。さぁ乗ってケロ」

 一同はジャバが背負い直した荷台に乗り込む。そのまま朝霧のたちこめる湖を進む。
 ドラゴンは昨日の一件でこりたらしく、その姿を見せることは無かったが、それを少し残念に流は思う。

「悪かったな、依頼達成出来なくて。俺の用事が済んだら、また来るからさ」
「ケロケロ、多分大丈夫ケロ。悪いやつの気配がここ一帯から消えたケロリ。それにたびに出た強い子供たちも、そろそろ帰ってくるケロ」
「そっか、なら安心か。俺はトエトリーと言う街にいるから、何かあったら何時でも連絡くれよ。って、その大きさじゃ魔物と思われて攻撃されちまうか?」

 そう流が言う頃には、向こう岸へと到着間際であり、ジャバはゆっくりと背中を浜辺へと向け腰を下ろす。
 全員が降りたのを確認すると、のっそりと荷台を下ろす。

「ケロケロ。さっき話しが途中だったけどね、ジャバはえ~っと……そうだ。人間さんたちの基準でいうとね、王滅級っていうらしいケロリ」
「だろうなぁ。俺とL、そしてワン太郎意外は気がついて無いようだが」

 その言葉で、エルヴィスをはじめ全員が固まる。そう、王滅級とはそういう存在なのだから。
 それを見たジャバは楽しげに「ケロロ」と喉を鳴らすと、エルヴィスに向けて話す。

「エルヴィスちゃんは商人だから、ジャバの事がよく分かって無かったのも仕方ないケロ。でもね、ジャバはと~っても強いケロ。ただ空を飛ぶ悪いやつは普段ジャバに近づかないからね、やっつけられなかったケロ」
「そ、そうだったのか。その、悪かったな。気軽に色々頼んだりして」
「いいのいいの。ジャバは他の威張ってるのと違ってね、人間さん達と仲良くしたいケロリ。だから今まで通り、お友達でいてくれると嬉しいケロ」
「そう言ってもらえると、私も嬉しいし助かるよジャバ」
「ケロリ。えっと、もう一つあるケロ。さっき人間さんが言っていた事の答えになるケロリ」

 そうジャバは言うと、巨体とも思えない速さで飛び上がる。直後〝ぼふん〟と白い煙のようなものが出現し、ジャバを包み込む。
 煙がはれ、やがて中からジャバが出てきたのだが……。
 
「ん? どうしたケロ? みんな固まっちゃって」
「「「え、だれだよおまえ!?」」」
「ケロリー!? ひどいケロ、ジャバだケロ!!」
「「「うっそ~」」」

 流をはじめ、全員が驚く。それもそのはず、ジャバはどう見ても人間の女。
 それも愛嬌たっぷりの、健康的で魅力的な小麦色の肌を持つ、南国に住んでいるような衣服を着用し、緑髪で瞳がくりっとしたピンクの可愛らしい娘だったからだ。ちなみに髪はショートである。

「ほんとうケロリ。たまに街までお買い物に行くケロ」
「びっくりだわ……なるほど、これならどこでも行けるな。王滅級ってそんな事も出来るのかい? 俺も先日、豚王に殺されそうになった事あるんだけど、あいつが街にいると思うとゾっとするわ」
「ケロ? 豚王……あ~あの戦馬鹿ケロ。あいつは小さくはなれたと思うけど、人間さんにはなれないケロ」

 その言葉で少し安堵する流。その後ジャバと少し話し、嵐影へ騎乗すると急いで次の目的地へと向かうのだった。
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