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第九章:奪還作戦と、国の闇
429:ドルドルと言う男
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「ま、まぁおかしな声がどこからするが気にしないでくれ。それでヨシュア。ここで報告は終わりか?」
「今お前の腰から声がしたような気もするが……。まあいい、流石にここで終わりって内容じゃないからな。ついて来てくれ、こっちだ」
「あ、名前教えてよ。私はレンダ、あなたは?」
「んぁ。ああ俺は古廻流だ。流って呼んでくれ。っと、またなレンダ!」
「あ、うん。またね……ナガレ」
レンダは流の後ろ姿を見つめる。その瞳は潤んでおり、頬は朱色にそまる。
それを見た美琴は深く嘆息すると、あらたな犠牲者が増えたと呆れるのだった。
ヨシュアに連れられてギルド内部を歩く。どうやらこのギルドは縦に長い構造らしく、その最奥の部屋がギルドマスターの部屋であるようだ。
重厚な扉を右手で三度ノックすると、内部から「いいぞー」と元気な声がする。それを聞いたヨシュアは、扉を開くと流を紹介する。
「おおおヨシュア!! 無事で良かった。それで一体何があった? レンダは大丈夫だって言っていたが、相手はあのレッド・ドラゴンだしなぁ」
部屋の中へと入ると、そこには四十代後半ほどの男がいた。かっぷくが良く、見事な腹をさすりながら、こちらへ歩いてくる。
顔は元は美男子だったんだろうが、太りすぎて残念な黒髪の男は、流を見ると驚いた表情になる。
「おい、そいつはまさか……」
「そのまさかだ。レンダの言ったとおりになった。こいつ、ナガレがレッド・ドラゴンを撃退したんだわ。しかも驚け、こいつぁ極武級の二つ名持ちだ」
「極武級!? あれか、昨日通達があったコマワリ・ナガレか!!」
「え、もう知らせが回ってるの? やだ、なんか恥ずかしい。でも俺、本業は商人だからヨロシク」
「「そんな商人がいてたまるかああああ!!」」
「……本当なのに酷くね?」
二人に掴みかかられんばかりに迫られる流は、一歩後ずさりする。そしてボソリと「本当なのに」とつぶやく。
「と、とにかくよくやってくれた。それにしても極武級か……あぁ、凄いな。うん、うん。しかも無傷であのドラゴンを撃退とは驚くぞ! ハッハッハ」
「俺たちも遠くから見ていたが、とんでもないやつだったぞ? あの青い炎のブレスで攻撃されたら、こっちもかなりの被害を受けただろうからなぁ」
「青い炎のブレスだと? 確かまえに王都の資料館で見たことがある。そいつはレッド・ドラゴンの上位種のはずだ。通常のレッド・ドラゴンは赤い炎しか吐けないからな。とは言え、通常のやつでもかなり驚異だし、この町が襲われたらかなりの損害が出ただろう」
そういうものかと流はうなずく。確かにあの駄竜がはじめに吐いていた、水圧のブレスでも驚異的だった。
あれがこの街の防壁にあたったら、数発も耐えられなかっただろうと思う。それほどの威力で大地を破壊していたのだから。
「まぁなんだ。とりあえず全員無事でよかった。あらためて礼を言う。この町を救ってくれて感謝する。そして私がここのギルドマスター、ドルドルだ。よろしくな、極武の英雄殿」
「ああ。こちらこそよろしく頼むよドルドルさん」
「では詳しく聞かせてくれ、一体なにがあったのかを」
流は頷くと話を始める。ヨシュアも遠くからだったが、なんとなく分かっていただけに、その結果に驚く。
さらに最後は炎を吐きながらさっていった事については、もう悪さをしないから許してほしいと言う意味合いだと、無理やりこじつけてみるが。
「なるほど、レッド・ドラゴンはそういう事をするのか……うむ。報告書にあげておこう」
「ま~あんなんとやり合う機会なんて、そうそうあるわけじゃねぇからな。俺もレッド・ドラゴンに勝って火を吹かせたいものだ」
「は、ははは……。まぁそう言うこともあるのかも? な。ところで二人に聞きたいんだが、もしだ。もしだぞ。ラーマンがレッド・ドラゴンを倒したと言ったらどうする?」
流の言葉に二人は顔を見合わせ、大笑いした後にドルドルが話し出す。
「なんだそのおとぎ話は。昔この国を救った英雄のラーマンじゃあるまいし、そんな事できるワケないだろう?」
「そうだぞナガレ。ラーマンがドラゴンを倒したなんてのは、おとぎ話の中にある童話さ。大丈夫かおまえ? 子供でもそんなの信じないぞ」
「ヨシュアの言うとおりだ。もしいたら、神輿に乗せて神殿へ送らなければならん。これはこの国の宗教に関わる話でな。もし本当にそんなラーマンがいたら、神殿へ報告する義務があるのだよ。まぁおとぎ話の類で、誰も本気にはしまいがな」
「神殿? 俺は生まれがこの国じゃないから、よく分からんがそういうものか?」
ドルドルは流のその言葉に、大きな腹を〝ぽん〟と叩き二度うなずく。
「あぁそうか。資料にこの国出身じゃないとかいてあったな。この国で一番の勢力を誇る宗教団体がある。名は『ヴェーロ教』と言う。教義強制やお布施の強要もなく、人々の安寧のみを求める宗教だ。ただおとぎ話に関する事のみ、情報をあつめ、発見したら報告する義務がある」
「ヴェーロ教? どうも宗教というのに疎いから分からんが、邪教とかじゃなさそうならいいさ」
「ないない。あれは神が救うとか、終末論を喧伝したりしない。救いは自分たちで行うべきであり、そのためには正直であれ。と言う考えだからな」
「ヨシュアの言うとおりだ。あれは宗教というより、道徳を守りましょうね。って感じの気軽な考えだからな。たださっき言ったように、おとぎ話に関連する事柄だけは、なぜか厳しく追求するんだよな」
そう言うと二人はまた笑い出す。それを聞いて、流は一筋の冷や汗を額に浮かべると、嵐影の事を言わなくてよかったと、心底思うのだった。
「今お前の腰から声がしたような気もするが……。まあいい、流石にここで終わりって内容じゃないからな。ついて来てくれ、こっちだ」
「あ、名前教えてよ。私はレンダ、あなたは?」
「んぁ。ああ俺は古廻流だ。流って呼んでくれ。っと、またなレンダ!」
「あ、うん。またね……ナガレ」
レンダは流の後ろ姿を見つめる。その瞳は潤んでおり、頬は朱色にそまる。
それを見た美琴は深く嘆息すると、あらたな犠牲者が増えたと呆れるのだった。
ヨシュアに連れられてギルド内部を歩く。どうやらこのギルドは縦に長い構造らしく、その最奥の部屋がギルドマスターの部屋であるようだ。
重厚な扉を右手で三度ノックすると、内部から「いいぞー」と元気な声がする。それを聞いたヨシュアは、扉を開くと流を紹介する。
「おおおヨシュア!! 無事で良かった。それで一体何があった? レンダは大丈夫だって言っていたが、相手はあのレッド・ドラゴンだしなぁ」
部屋の中へと入ると、そこには四十代後半ほどの男がいた。かっぷくが良く、見事な腹をさすりながら、こちらへ歩いてくる。
顔は元は美男子だったんだろうが、太りすぎて残念な黒髪の男は、流を見ると驚いた表情になる。
「おい、そいつはまさか……」
「そのまさかだ。レンダの言ったとおりになった。こいつ、ナガレがレッド・ドラゴンを撃退したんだわ。しかも驚け、こいつぁ極武級の二つ名持ちだ」
「極武級!? あれか、昨日通達があったコマワリ・ナガレか!!」
「え、もう知らせが回ってるの? やだ、なんか恥ずかしい。でも俺、本業は商人だからヨロシク」
「「そんな商人がいてたまるかああああ!!」」
「……本当なのに酷くね?」
二人に掴みかかられんばかりに迫られる流は、一歩後ずさりする。そしてボソリと「本当なのに」とつぶやく。
「と、とにかくよくやってくれた。それにしても極武級か……あぁ、凄いな。うん、うん。しかも無傷であのドラゴンを撃退とは驚くぞ! ハッハッハ」
「俺たちも遠くから見ていたが、とんでもないやつだったぞ? あの青い炎のブレスで攻撃されたら、こっちもかなりの被害を受けただろうからなぁ」
「青い炎のブレスだと? 確かまえに王都の資料館で見たことがある。そいつはレッド・ドラゴンの上位種のはずだ。通常のレッド・ドラゴンは赤い炎しか吐けないからな。とは言え、通常のやつでもかなり驚異だし、この町が襲われたらかなりの損害が出ただろう」
そういうものかと流はうなずく。確かにあの駄竜がはじめに吐いていた、水圧のブレスでも驚異的だった。
あれがこの街の防壁にあたったら、数発も耐えられなかっただろうと思う。それほどの威力で大地を破壊していたのだから。
「まぁなんだ。とりあえず全員無事でよかった。あらためて礼を言う。この町を救ってくれて感謝する。そして私がここのギルドマスター、ドルドルだ。よろしくな、極武の英雄殿」
「ああ。こちらこそよろしく頼むよドルドルさん」
「では詳しく聞かせてくれ、一体なにがあったのかを」
流は頷くと話を始める。ヨシュアも遠くからだったが、なんとなく分かっていただけに、その結果に驚く。
さらに最後は炎を吐きながらさっていった事については、もう悪さをしないから許してほしいと言う意味合いだと、無理やりこじつけてみるが。
「なるほど、レッド・ドラゴンはそういう事をするのか……うむ。報告書にあげておこう」
「ま~あんなんとやり合う機会なんて、そうそうあるわけじゃねぇからな。俺もレッド・ドラゴンに勝って火を吹かせたいものだ」
「は、ははは……。まぁそう言うこともあるのかも? な。ところで二人に聞きたいんだが、もしだ。もしだぞ。ラーマンがレッド・ドラゴンを倒したと言ったらどうする?」
流の言葉に二人は顔を見合わせ、大笑いした後にドルドルが話し出す。
「なんだそのおとぎ話は。昔この国を救った英雄のラーマンじゃあるまいし、そんな事できるワケないだろう?」
「そうだぞナガレ。ラーマンがドラゴンを倒したなんてのは、おとぎ話の中にある童話さ。大丈夫かおまえ? 子供でもそんなの信じないぞ」
「ヨシュアの言うとおりだ。もしいたら、神輿に乗せて神殿へ送らなければならん。これはこの国の宗教に関わる話でな。もし本当にそんなラーマンがいたら、神殿へ報告する義務があるのだよ。まぁおとぎ話の類で、誰も本気にはしまいがな」
「神殿? 俺は生まれがこの国じゃないから、よく分からんがそういうものか?」
ドルドルは流のその言葉に、大きな腹を〝ぽん〟と叩き二度うなずく。
「あぁそうか。資料にこの国出身じゃないとかいてあったな。この国で一番の勢力を誇る宗教団体がある。名は『ヴェーロ教』と言う。教義強制やお布施の強要もなく、人々の安寧のみを求める宗教だ。ただおとぎ話に関する事のみ、情報をあつめ、発見したら報告する義務がある」
「ヴェーロ教? どうも宗教というのに疎いから分からんが、邪教とかじゃなさそうならいいさ」
「ないない。あれは神が救うとか、終末論を喧伝したりしない。救いは自分たちで行うべきであり、そのためには正直であれ。と言う考えだからな」
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