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第九章:奪還作戦と、国の闇
430:領主の館からの使者
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その後、ヨシュアの事やこの町の事。そしてあの不思議な受付嬢のことなど、多岐にわたり話は弾む。
「話は分かった。ナガレ、本当にありがとう。それで今回、レッド・ドラゴンの緊急討伐クエストを発行した。その報酬を受け取ってくれ。まぁ話だともう来ないのだろう? なら討伐相当とみなし、全額支払う。報酬額は竜貨五枚だ」
「それはまた凄い金額だな……いいのか、討伐してないんだが?」
流は竜貨五枚、つまり日本円にして五千万円ほどの報酬に驚く。
「いい、極武級とは存在自体が信頼の証みたいなものだからな。それに万が一襲って来ても、お前がなんとかしてくれるだろ?」
「ああ、それは任せてくれ。もし襲ってきたら、確実に討伐するさ」
「それを聞いて安心した。まぁ、そういう訳だからもらっておけ」
「憧れるねぇ~極武級! 俺もなってみたいわな~。まぁ、お前が駆けつけるまで、俺らがこの街を守るさ」
「感謝する。ヨシュアも凄いじゃないか、酋長クラスを単独討伐だろ?」
「まぁあれは運が良かっただけだ。オークが酋長になって間もないのが、突然目の前の道に転がって来てな。手負いのそいつを倒したってワケよ」
「手負いでも凄いだろ。俺も異世界に来たばかりのころ、ゴブリンの酋長と戦ったからよく分かる。あれは脅威だった」
「来てそうそうねぇ~。やっぱ違うわおまえ」
そうヨシュアは言って流の背中を叩く。ドルドルも笑いながらそれを見ていたが、やがてギルドの職員が部屋にやって来る。どうやら領主の館から迎えが来たようで、謁見の準備が整ったそうだ。
「ドルドルさん。ヨシュア。二人とも世話になったよ、何かあったらいつでも呼んでくれ」
「そうさせてもらうぞナガレ。うちのギルドも、極武の英雄殿がバックにいると思うと安心だからな」
「俺もおなじだ。そのうちトエトリーにも行ってみる。なにやらきな臭いって話だからな」
「ああ。王室が何やら、トエトリーに思う所があるらしいからな。二人とも十分に注意してくれ。今後どうなるか分からないが、よくない方向へと進んでいるのは間違いない」
流の言葉に二人はうなずく。そのまま流は部屋の外で待っていた職員に案内され、出ていくのを静かに見つめる二人。
やがてドルドルが声をひそめながら、ヨシュアに話す。
「……ヨシュア。今の話、誰にも言うなよ?」
「分かってるって。ただ間違いなく来るだろうな」
「ああ、王都との――」
ドルドルは閉められた窓を勢いよく開け放つ。そこには箱庭があり、隙間から見える真っ赤な空を眺めながら、話を続ける。
「――まったなしの殲滅戦が始まる」
「だな。さて、うちの領主様はどうするのか」
二人は無言で今後の情勢を考えると、背筋が寒くなるのだった。
◇◇◇
「おまたせ~って、あらまぁ。随分とお楽しみで羨ましい」
「おかげさまで楽しく過ごせたわよ。ええ、たのしくねぇ」
「老骨でもまだまだモテテしまって、ワシは楽しかったぞい」
「私は良い商売の契約が出来たよ。まぁセリア様はあの美貌だ。別の意味で大変だったようだがね」
三人は押し寄せる冒険者たちから歓待をうけ、楽しむもの。あしらうのに苦労するもの。ちゃっかりと商売をするものなど、色々だった。
見ればLは料理を次々と形の良い口にほうりこみ、木の皿を積み上げている。
そして流を見つけると、白い肉が乗った皿を持ち歩いてくる。どうやら流に食べさせるらしい。
「マフィ・マフター。こふぇ、おいふぃでふ~」
「あぁもう。ほら、口にソースついてるぞ。そして食べながら歩くのはヤメロ」
「あん♪ ほめらふぇた! ふぁい、あ~ん」
「ん、どれ。あ~ん……んぐッ!? コイツはうま~い! 鶏肉のようなタンパクな味だが、濃厚な肉汁が溢れる!! まるでブライン液に長時間漬け込み、それをリンゴの木でいぶしたかのような深い味わいとコクがたまらん!! そして赤と緑の酸味と辛味のソースがより複雑な味にし、素材ををさらに昇華させている!!」
『ふふ、もう。流様の表現は本当に美味しそう。また食べたくなっちゃうな。でも、ほら。外で待ってるよ?』
「んあ? そうだった行かないと。ほらみんな、迎えが来たから行くぞ~」
流たちは歓待してくれた冒険者たちに別れを告げると、そのまま外で待っている馬車へと向かう。
ギルドの外へ出ると嵐影は大量の食べ物と、見物人に撫でられていた。ワン太郎は三十路ほどの品の良いご婦人に抱っこされており、やはり何か食べている。
「んぉ、あるじぃ。この人がワレに食べ物を献上したんだワン。嵐影にもいっぱいだワンよ」
「コラ、献上じゃなく、いただいたって言うんだぞ? まったく……すみません、うちのペットが礼儀知らずで」
「あら、よくてよ? こんな可愛いキツネちゃんなら、献上でもいたしますもの。しかもお話するなんて、ふふ。驚きましたわ」
「まぁ、ちょっと変わったやつなんで、驚かせてしまいすみません。俺は古廻流と言います。貴女は?」
「あぁこれは失礼を。わたくしはここの領主をしております、イルミス・フォン・イルミスと言いますの。よろしくね、極武の英雄さん」
そう領主と名乗った女は茶髪を縦ロールにした髪型で、高級そうな深い緑色のドレスを身にまとっている。
顔立ちは喉のハリから見るに、三十路ほどだが実に美しく、いっても二十五歳ほどに見える。
目元はキリリとし、知性を感じる瞳だ。しかし今は愛嬌溢れる表情であり、そのギャップが可愛らしく見える。
それはいたずらが成功した子供のような顔つきで、舌をだしつつ流を見るのだった。
「話は分かった。ナガレ、本当にありがとう。それで今回、レッド・ドラゴンの緊急討伐クエストを発行した。その報酬を受け取ってくれ。まぁ話だともう来ないのだろう? なら討伐相当とみなし、全額支払う。報酬額は竜貨五枚だ」
「それはまた凄い金額だな……いいのか、討伐してないんだが?」
流は竜貨五枚、つまり日本円にして五千万円ほどの報酬に驚く。
「いい、極武級とは存在自体が信頼の証みたいなものだからな。それに万が一襲って来ても、お前がなんとかしてくれるだろ?」
「ああ、それは任せてくれ。もし襲ってきたら、確実に討伐するさ」
「それを聞いて安心した。まぁ、そういう訳だからもらっておけ」
「憧れるねぇ~極武級! 俺もなってみたいわな~。まぁ、お前が駆けつけるまで、俺らがこの街を守るさ」
「感謝する。ヨシュアも凄いじゃないか、酋長クラスを単独討伐だろ?」
「まぁあれは運が良かっただけだ。オークが酋長になって間もないのが、突然目の前の道に転がって来てな。手負いのそいつを倒したってワケよ」
「手負いでも凄いだろ。俺も異世界に来たばかりのころ、ゴブリンの酋長と戦ったからよく分かる。あれは脅威だった」
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そうヨシュアは言って流の背中を叩く。ドルドルも笑いながらそれを見ていたが、やがてギルドの職員が部屋にやって来る。どうやら領主の館から迎えが来たようで、謁見の準備が整ったそうだ。
「ドルドルさん。ヨシュア。二人とも世話になったよ、何かあったらいつでも呼んでくれ」
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「ああ。王室が何やら、トエトリーに思う所があるらしいからな。二人とも十分に注意してくれ。今後どうなるか分からないが、よくない方向へと進んでいるのは間違いない」
流の言葉に二人はうなずく。そのまま流は部屋の外で待っていた職員に案内され、出ていくのを静かに見つめる二人。
やがてドルドルが声をひそめながら、ヨシュアに話す。
「……ヨシュア。今の話、誰にも言うなよ?」
「分かってるって。ただ間違いなく来るだろうな」
「ああ、王都との――」
ドルドルは閉められた窓を勢いよく開け放つ。そこには箱庭があり、隙間から見える真っ赤な空を眺めながら、話を続ける。
「――まったなしの殲滅戦が始まる」
「だな。さて、うちの領主様はどうするのか」
二人は無言で今後の情勢を考えると、背筋が寒くなるのだった。
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「おまたせ~って、あらまぁ。随分とお楽しみで羨ましい」
「おかげさまで楽しく過ごせたわよ。ええ、たのしくねぇ」
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見ればLは料理を次々と形の良い口にほうりこみ、木の皿を積み上げている。
そして流を見つけると、白い肉が乗った皿を持ち歩いてくる。どうやら流に食べさせるらしい。
「マフィ・マフター。こふぇ、おいふぃでふ~」
「あぁもう。ほら、口にソースついてるぞ。そして食べながら歩くのはヤメロ」
「あん♪ ほめらふぇた! ふぁい、あ~ん」
「ん、どれ。あ~ん……んぐッ!? コイツはうま~い! 鶏肉のようなタンパクな味だが、濃厚な肉汁が溢れる!! まるでブライン液に長時間漬け込み、それをリンゴの木でいぶしたかのような深い味わいとコクがたまらん!! そして赤と緑の酸味と辛味のソースがより複雑な味にし、素材ををさらに昇華させている!!」
『ふふ、もう。流様の表現は本当に美味しそう。また食べたくなっちゃうな。でも、ほら。外で待ってるよ?』
「んあ? そうだった行かないと。ほらみんな、迎えが来たから行くぞ~」
流たちは歓待してくれた冒険者たちに別れを告げると、そのまま外で待っている馬車へと向かう。
ギルドの外へ出ると嵐影は大量の食べ物と、見物人に撫でられていた。ワン太郎は三十路ほどの品の良いご婦人に抱っこされており、やはり何か食べている。
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「コラ、献上じゃなく、いただいたって言うんだぞ? まったく……すみません、うちのペットが礼儀知らずで」
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「まぁ、ちょっと変わったやつなんで、驚かせてしまいすみません。俺は古廻流と言います。貴女は?」
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