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第九章:奪還作戦と、国の闇
433:同族は分かり合う
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「ねぇナガレ? 貴方のその腰の黒いモノ。それの事について聞きたいんだけど、よろしくて?」
「そう得物を見るような目で、悲恋を見つめないでくれ。まぁ俺も、その事が聞きたいワケだからな。そちらからどうぞ?」
「あら、紳士的ですわね。それでは遠慮なく――ずばり、それは異世界のモノなんでしょう?」
「……どうしてそう思う? この国にも日本刀の伝承はあるはずだ。俺がそれを元に作らせたかもしれないだろう?」
「ええ、そうね。確かにそのとおりですわ」
そうイルミスは言うと、美琴の頭を撫でながら髪へ顔をうずめる。
美琴は実に嫌そうに涙目だったが、それを楽しむようにイルミスは美琴の髪を手ぐしですく。
はらりと、美琴の髪が白魚のような指からこぼれ落ちる刹那、またしても奇っ怪な現象を全員は目撃する。
美琴の黒髪がまとまり始めたかと思えば、そこから黒い棒状のモノが突き出るように出た。
それは間違いなく、流もよく知る――。
「――ッ。日本刀、か。そいつも具現化したのか?」
「いえ、これはわたくしが持っているモノでしてよ。淑女のたしなみとして、アイテムバッグの開閉は、お見せするべきではなくてよ?」
」
「つまり、それはイルミスの持ち物という事か。どこでソイツを手に入れたんだ?」
「そうですわね、その前に抜いて見てはもらえませんこと?」
イルミスはその手に持つ日本刀を流へ差し出す。それを一つうなずき、右手を出して握りしめ、ずしりと重いその感覚で理解する。〝本物〟だと。
鞘は輪島塗であろうか、その堅牢な質感と黒一色だが今でも美しさがにじみ出る。
そっと抜く……思わず白紙を口にくわえ、飛沫が原因による錆防止をしたくなるほど、見事な刀身がのぞく。
それは流でさえ〝ゾクリ〟とするほど美しく、悲恋より格段に劣るとはいえ見事な刃紋が浮き出ていた。
まぁ、悲恋と比べるのは間違っているのだが、やはり比べてしまう。
流は慎重に飛沫を飛ばさないように口を開き、刃へ向けて語りかけるように話す。
「コイツは備前長船と言う大業物だ。しかもただの備前長船じゃない。数百年の時を経て今なお〝神気〟が宿っている。イルスミ、これは普通じゃないモノだ。悪いことは言わない、二度と他人に見せるな。特にこれからはな」
「あらまぁ。そこまでの日本刀でしたの? 確かにコレが伝わった経緯を考えれば、さもありなんと言うところですわねえ」
イルミスはそう言うと美琴の頭を抱きしめ、何かを思うように瞳を閉じ考え込む。
やがて口を開き、流の疑問に答えをだす。
「ナガレ。貴方が知りたがっていた事にお答えいたしますわ。その前にここではなんですの。そろそろ我が家につきますので、そこでお話いたしましょう」
流はそれに無言でうなずくと、備前長船を納刀する。それをルナミスへ返し、ほどなくすると馬車は左へ曲がった。
窓から見える町並みは魔具の優しげな光にあふれ、古い町並みを美しく照らす。
さらに数分後、馬車の速度が落ちる頃に石造りの立派な門をくぐり抜け、よく手入れされた豪華な庭園に到着する。
魔具の暖色系の柔らかな光に照らされた、怪しげで儚げな光景が広がっていた。
その中でもバラの花のような花弁が多い、真っ赤な花が咲き乱れている美しいそれは、視覚と香りで訪れた客を魅了する。
「さぁつきましたわ。いかがです、わたくしの庭園は?」
「ああ素晴らしい。情熱を感じるような赤一色と言うのも悪くない」
「ええ……ウチの庭園も見事だけど、本当に美しいわね……ずっといたくなるほどだね」
「お嬢様に花を愛でるような心がついに……セルガルド様。お嬢様は成長しましたぞ!」
「ちょっとルーセント。私が戦しか興味ないような言い方やめなさいよね」
「え? 違うの!?」
「ナガレまでもぅ」
「セルガルド? もしかして貴女、クコロー伯のご息女ですの?」
「あ、そうでした。ご挨拶が遅れてしまい、失礼しました。お初にお目にかかります、イルミス伯爵。私はクコロー・フォン・セリアと申します。以後お見知りおきを」
イルミスは驚くように美琴を背後から抱きしめると、その氷のように冷たい頬に、自分の頬を合わせながらニコリとほほえむ。
「まぁ! すると最近噂のジャジャ馬姫とは貴女ですの? ステキですわ~! 戦場に咲く一輪の大華! それを支える老いてますます盛んな、猛将ルーセント! あぁ~いいわ~す・ご・く・イイワアア♪」
イルミスは強烈に体を震わせると、さらに美琴に頬ずりをする。それに美琴は「ヒィィ」と泣くが、もう誰も気にしない。じつに哀れだ。
それよりもイルミスの恍惚とした表情に、エルヴィスですらドン引きしている。だから流をはじめ、セリアもルーセントも一歩後ずさるほど。
「わたくし、強い女は大好きよ? そして、今はナガレとこの娘が好き……」
イルミスは美琴の頬にキスをすると、そのまま左手を握り屋敷へと向かう。
美琴の目は死んでいた。幽霊なのにさらに死んだ目で、ルナミスに手を引かれ屋敷へと入る。
「さぁさ。そんな所で呆けていないで、早くおいでなさいな。まずはゆったり旅の疲れを癒やしておいでなさい。お話は夕食のときに、いたしましょう」
そう言うとルナミスは美琴とセリア。そしてLを連れて浴室へと向かう。
途中でLをジックリ見つめると、開口一番「貴女、わたくしとヘンタイね?」と言うと、大輪の花が咲くようにほほえむのだった。
「そう得物を見るような目で、悲恋を見つめないでくれ。まぁ俺も、その事が聞きたいワケだからな。そちらからどうぞ?」
「あら、紳士的ですわね。それでは遠慮なく――ずばり、それは異世界のモノなんでしょう?」
「……どうしてそう思う? この国にも日本刀の伝承はあるはずだ。俺がそれを元に作らせたかもしれないだろう?」
「ええ、そうね。確かにそのとおりですわ」
そうイルミスは言うと、美琴の頭を撫でながら髪へ顔をうずめる。
美琴は実に嫌そうに涙目だったが、それを楽しむようにイルミスは美琴の髪を手ぐしですく。
はらりと、美琴の髪が白魚のような指からこぼれ落ちる刹那、またしても奇っ怪な現象を全員は目撃する。
美琴の黒髪がまとまり始めたかと思えば、そこから黒い棒状のモノが突き出るように出た。
それは間違いなく、流もよく知る――。
「――ッ。日本刀、か。そいつも具現化したのか?」
「いえ、これはわたくしが持っているモノでしてよ。淑女のたしなみとして、アイテムバッグの開閉は、お見せするべきではなくてよ?」
」
「つまり、それはイルミスの持ち物という事か。どこでソイツを手に入れたんだ?」
「そうですわね、その前に抜いて見てはもらえませんこと?」
イルミスはその手に持つ日本刀を流へ差し出す。それを一つうなずき、右手を出して握りしめ、ずしりと重いその感覚で理解する。〝本物〟だと。
鞘は輪島塗であろうか、その堅牢な質感と黒一色だが今でも美しさがにじみ出る。
そっと抜く……思わず白紙を口にくわえ、飛沫が原因による錆防止をしたくなるほど、見事な刀身がのぞく。
それは流でさえ〝ゾクリ〟とするほど美しく、悲恋より格段に劣るとはいえ見事な刃紋が浮き出ていた。
まぁ、悲恋と比べるのは間違っているのだが、やはり比べてしまう。
流は慎重に飛沫を飛ばさないように口を開き、刃へ向けて語りかけるように話す。
「コイツは備前長船と言う大業物だ。しかもただの備前長船じゃない。数百年の時を経て今なお〝神気〟が宿っている。イルスミ、これは普通じゃないモノだ。悪いことは言わない、二度と他人に見せるな。特にこれからはな」
「あらまぁ。そこまでの日本刀でしたの? 確かにコレが伝わった経緯を考えれば、さもありなんと言うところですわねえ」
イルミスはそう言うと美琴の頭を抱きしめ、何かを思うように瞳を閉じ考え込む。
やがて口を開き、流の疑問に答えをだす。
「ナガレ。貴方が知りたがっていた事にお答えいたしますわ。その前にここではなんですの。そろそろ我が家につきますので、そこでお話いたしましょう」
流はそれに無言でうなずくと、備前長船を納刀する。それをルナミスへ返し、ほどなくすると馬車は左へ曲がった。
窓から見える町並みは魔具の優しげな光にあふれ、古い町並みを美しく照らす。
さらに数分後、馬車の速度が落ちる頃に石造りの立派な門をくぐり抜け、よく手入れされた豪華な庭園に到着する。
魔具の暖色系の柔らかな光に照らされた、怪しげで儚げな光景が広がっていた。
その中でもバラの花のような花弁が多い、真っ赤な花が咲き乱れている美しいそれは、視覚と香りで訪れた客を魅了する。
「さぁつきましたわ。いかがです、わたくしの庭園は?」
「ああ素晴らしい。情熱を感じるような赤一色と言うのも悪くない」
「ええ……ウチの庭園も見事だけど、本当に美しいわね……ずっといたくなるほどだね」
「お嬢様に花を愛でるような心がついに……セルガルド様。お嬢様は成長しましたぞ!」
「ちょっとルーセント。私が戦しか興味ないような言い方やめなさいよね」
「え? 違うの!?」
「ナガレまでもぅ」
「セルガルド? もしかして貴女、クコロー伯のご息女ですの?」
「あ、そうでした。ご挨拶が遅れてしまい、失礼しました。お初にお目にかかります、イルミス伯爵。私はクコロー・フォン・セリアと申します。以後お見知りおきを」
イルミスは驚くように美琴を背後から抱きしめると、その氷のように冷たい頬に、自分の頬を合わせながらニコリとほほえむ。
「まぁ! すると最近噂のジャジャ馬姫とは貴女ですの? ステキですわ~! 戦場に咲く一輪の大華! それを支える老いてますます盛んな、猛将ルーセント! あぁ~いいわ~す・ご・く・イイワアア♪」
イルミスは強烈に体を震わせると、さらに美琴に頬ずりをする。それに美琴は「ヒィィ」と泣くが、もう誰も気にしない。じつに哀れだ。
それよりもイルミスの恍惚とした表情に、エルヴィスですらドン引きしている。だから流をはじめ、セリアもルーセントも一歩後ずさるほど。
「わたくし、強い女は大好きよ? そして、今はナガレとこの娘が好き……」
イルミスは美琴の頬にキスをすると、そのまま左手を握り屋敷へと向かう。
美琴の目は死んでいた。幽霊なのにさらに死んだ目で、ルナミスに手を引かれ屋敷へと入る。
「さぁさ。そんな所で呆けていないで、早くおいでなさいな。まずはゆったり旅の疲れを癒やしておいでなさい。お話は夕食のときに、いたしましょう」
そう言うとルナミスは美琴とセリア。そしてLを連れて浴室へと向かう。
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