日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

文字の大きさ
469 / 486
第九章:奪還作戦と、国の闇

469:あの男、再び

しおりを挟む
 流は悲恋の中で、そんな会話がされているとは思ってもおらず、そのまま話を続ける。
 それはセリアたちと合流前に、イルミスから聞いた話だ。
 黒土の事、そして分からない存在。ノーミンと言う女のこと。

「――と言うわけで、その黒いクワを持った娘の方がヤバい」
「農耕魔法? 聞いたことがないわね……」
「ワシも知りませんなぁ。王都の大図書館なら、もしや情報があるやも知れませぬがなぁ。お嬢様なら閲覧可能では?」
「あぁそうだね。うん、可能なはずよ。あっちに行ったら見てみましょうか?」
「頼む。だが黒土はこうも言っていた。それは魔法じゃないとな」
『馬鹿ですよね、あの顔だけの人。その情報通りなら、多分魔法じゃなくて……スキル?』
「その線が濃厚だろうな。誰かそんなスキルがあると聞いたことは?」

 全員その言葉に首をふるだけだ。ただエルヴィスだけは、思いだすように口を開く。

「あぁ……もしかしてだが、固有スキルかもしれないな」
「固有スキル? なんだそりゃ、初めて聞いたが」
「だろうな。まして異世界人の流は知らないだろう。こっちの世界でも知ってるのは、一部の人間だけだろう」
「どうしてまた? そんなものなら、有名になりそうなものなのに」

 エルヴィスは「それはな」と前置きしてから、その理由を話す。
 どうやら固有スキルと呼ばれるものは、大抵強力なものらしく、それを使い人々を苦しめる輩が多い。
 そこで各国が連携し、固有スキル持ちは、発見されたその国で囲う。もしくは「処分」すると言う話だった。

「処分ねぇ……ほんと、異世界ってのは物騒で怖すぎだろ。でもなんで固有スキル持ちは、悪行に走るんだ?」
「いやそうじゃないんだ。無論正しく使う奴も過去にはいたさ。だが、どういうワケか、発現するのが悪党に多い。今回のその娘も、まぁそっち側だろ?」
「そう、なのかもな。でも悪いやつには見えなかったんだがな……」

 流はあの娘。ノーミンの事が気になる。一般人にしか見えないただの村娘のはずだが、あの異常な力。
 そしてなんの動作もなしに放たれる土の驚異。だがそれを流に、葬ろうと言う威力で放ったはずだが、そこに悪意は感じられない。
 
(もしかしてアイツは俺たちを見逃してくれた? いや、ただ眼中に無かっただけか?)

 流はそう考えるが、答えは出なかった。ただその瞳は、黒土とノーミンが去った方の空を見つめていた。


 ◇◇◇


 ――同時刻――

 黒土とノーミンは、王家の天領へさしかかる手前でノーミンの指示で止まる。
 そこは街道の分岐点であり、草原の真ん中に大きな岩がぽつりとある場所だ。
 岩には簡単な地図が掘られており、ここで旅人が休憩するようなキャンプ場でもあった。

「黒土、分かっているだべな?」
「わ~ってるよ。たっく……俺がココまで好き勝手にさせてもらったことには、本当に感謝してるぜ」
「んならばよす! んだば先生のどごさ向かうべな」
「ゲェ~アイツかよぅ。俺はアイツ嫌いなんだよなぁ……」
「ワッスも嫌いだす。だども、この箱を先生に渡すのも依頼の一つのす」
「って出すなよ!! しまえしまえ! ったく、わかったよ~。んでどこへ行きゃいいんだ?」
此処ここですよ」

 突如背後から声が聞こえる。その方向へと黒土は振り向くと、そこには宗教指導者ような、ゆったりとしたデザインの服の男がいた。
 その衣服の素材は、黒を貴重とした金糸で刺繍が入った贅沢な物で、首からストラと呼ばれる白い帯が、左右の肩から前に垂れ下がる。
 ストラには記号のような文字と、蛇のような生物が刺繍されていた。
 
 男……いや、先生と呼ばれた人物は、軽薄そうな顔つきで笑いながら手をふる。
 見た目は二十代半ば程の、黒髪糸目で優男風の美男子だが、大抵の人は生理的に受け付けないタイプだ。

「……いただすか。それならはずめから、姿を見すてほしいだすね」
「チッ、だから嫌なんだよアンタは」
「はっはっは。先生をそんなに嫌わないでほしいものですねぇ。これでも先生ナイーブななんです。だから嫌われるとね、ショックで死んでしまいますよ?」
「いっぺん、んでみるのす?」
「えぇ……そりゃぁ願ってもない事ですねぇ。少し前に侍に殺されて以来、死と言う快楽が忘れられなくてね。それを貴女が私にプレゼントしていただけるなら、とても幸運な事です」

 先生とノーミンは睨み合う。そしてどちらともなく強烈な殺気を放ち始める。
 足元の草はちぎれるように揺れ、蜃気楼のような歪みすら見えだす頃、それを止める男がいた。黒土である。

「やめやめやめ!! 俺の頭の上で殺気を飛ばすなノーミン。せっかく修復した顔のヒビが、また広がるだろうが!! それにアンタもだよ先生。死にてぇなら、そこの岩にでも頭潰して勝手にくたばれや」
「おやおや、黒土。久しぶりに会ったと言うのに、随分とつれないですね」
「うっせえよ。こちとら会いたくもなかったぜ。要件は箱だけか? ならさっさと渡しちまえよノーミン」

 ノーミンは手に持った灰色の箱を一瞥し、それを無造作に放り投げる。
 それを先生はニコリと笑いながら片手で受け取ると、嬉しそうに頭を下げた。

「これはこれは……確かに受け取りました。ありがとうございます」
「んだば要件はこれで済んだすな? んだば、ワッスたちは行くだす」
「そう嫌わないでくださいよ。ステキなプレゼント、実に感謝しています。ですからお礼に、一つお返しをいたしましょう」
「お礼? いらねのす。オメに親切にされたら、次になに頼まれるか怖わいのす」
「やれやれ。無償の善意ですよ? それに……このままお帰りになったら、色々面倒では?」
「……あぁ、たすかに羽虫が飛んでるべ」

 先生が見つめる先。そこには夜が明けかけた空に浮かぶ、黒い影が滞空していたのだった。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...