3 / 8
ドス黒い仮面
しおりを挟む
一瞬そう考えたけど、痛みと苦しみで空腹だったお腹から、苦いものが吐き出されてむせてしまう。
でも衛兵はそんな事を気にもせず、両肩を引きずりあげて立たせると、そのまま引きずって入り口まですすむ。
「ゲホっ……ま゛、ま゛っ゛て゛……何かのまちがえ……」
「ええい黙れ魔女め!!」
さらに衛兵に殴られ、景色が三重に見えたと同時に、意識が保てなくなった。
もうだめかもしれない。そう思いながらも急速に視界が暗くなり、完全に意識を手放す……。
◇◇◇
闇堕ちしたワタクシの姉。常闇の魔女、エリーシアが謁見の間より連れ出され、重厚な樫の木の扉が閉じた事で父上が口を開く。
「なんという事だ。我が王家からあのような穢れがうまれようとは……」
「父上……心中をおさっしいたしますわ」
玉座に腰を落とし、右手で顔を覆いながら重々しくため息を吐く。
そんな父上へと静かに近づきながら、足元まで来ると同時にひざまずく。
「父上……いえ、国王陛下ご安心を。お姉さまの代わりと言っては役不足ですが、こちらを御覧ください」
そう言いながら右手のこうを差し出すと、父上は「何を言って……おおおそれは!?」と驚く。
ふふ、当然よ。これは紛れもない聖印なのだから。
あの夜、私は契約をした。そう……あの厄災の魔女と〝エリーシアを売り渡す契約〟を。
そこでもらったのは、この〝闇堕ちしたように偽装する呪術が込められたコンパクト〟と、聖印をワタクシへと移す術式が込められた指輪。
ついでに父上もその周囲も、コンパクトの力でワタクシの虜にできて満足ですわ。
そう内心ほくそ笑んでいると、父上が玉座から降りてきてワタクシの肩を優しく包む。
「なんと、なんという事だ。神はまだ我らを見捨ててはおらなんだか……」
「はい父上。昨日魔女様が訪れ、ワタクシに聖印を移すと言われ困惑しておりました」
その言葉で謁見の間は「「「おおお!!」」」と声が重なり歓喜にふるえる。
それを聞き父上も「さもあろう」とうなずくと、ワタクシの言葉を待つ。
「魔女様はおっしゃりました。明日の正午に姉上が闇に染まる、と」
「なんと!? それはどういう意味だ?」
「はい……信じたくはありませんでしたが、残念ながら姉上は厄災の魔女と契約し、この国を滅ぼそうと思っていたようです。だからそれが本当かどうかを、静かに見守っておりましたが……うぅ。まさかこのような事になろうとは……」
肩を震わせ下をむきながら泣いて見せる。そう、城に来る道化師よりも極上の演技ですわ。
なんという完璧な演技。そう思うとさらに体が喜びでふるえる。
それがさらにリアリティを生み、父上が涙をながして抱きかかえてくれた。ふっ、笑えますわね。
▷▷▷▷▷▷完結まで残り――6話
でも衛兵はそんな事を気にもせず、両肩を引きずりあげて立たせると、そのまま引きずって入り口まですすむ。
「ゲホっ……ま゛、ま゛っ゛て゛……何かのまちがえ……」
「ええい黙れ魔女め!!」
さらに衛兵に殴られ、景色が三重に見えたと同時に、意識が保てなくなった。
もうだめかもしれない。そう思いながらも急速に視界が暗くなり、完全に意識を手放す……。
◇◇◇
闇堕ちしたワタクシの姉。常闇の魔女、エリーシアが謁見の間より連れ出され、重厚な樫の木の扉が閉じた事で父上が口を開く。
「なんという事だ。我が王家からあのような穢れがうまれようとは……」
「父上……心中をおさっしいたしますわ」
玉座に腰を落とし、右手で顔を覆いながら重々しくため息を吐く。
そんな父上へと静かに近づきながら、足元まで来ると同時にひざまずく。
「父上……いえ、国王陛下ご安心を。お姉さまの代わりと言っては役不足ですが、こちらを御覧ください」
そう言いながら右手のこうを差し出すと、父上は「何を言って……おおおそれは!?」と驚く。
ふふ、当然よ。これは紛れもない聖印なのだから。
あの夜、私は契約をした。そう……あの厄災の魔女と〝エリーシアを売り渡す契約〟を。
そこでもらったのは、この〝闇堕ちしたように偽装する呪術が込められたコンパクト〟と、聖印をワタクシへと移す術式が込められた指輪。
ついでに父上もその周囲も、コンパクトの力でワタクシの虜にできて満足ですわ。
そう内心ほくそ笑んでいると、父上が玉座から降りてきてワタクシの肩を優しく包む。
「なんと、なんという事だ。神はまだ我らを見捨ててはおらなんだか……」
「はい父上。昨日魔女様が訪れ、ワタクシに聖印を移すと言われ困惑しておりました」
その言葉で謁見の間は「「「おおお!!」」」と声が重なり歓喜にふるえる。
それを聞き父上も「さもあろう」とうなずくと、ワタクシの言葉を待つ。
「魔女様はおっしゃりました。明日の正午に姉上が闇に染まる、と」
「なんと!? それはどういう意味だ?」
「はい……信じたくはありませんでしたが、残念ながら姉上は厄災の魔女と契約し、この国を滅ぼそうと思っていたようです。だからそれが本当かどうかを、静かに見守っておりましたが……うぅ。まさかこのような事になろうとは……」
肩を震わせ下をむきながら泣いて見せる。そう、城に来る道化師よりも極上の演技ですわ。
なんという完璧な演技。そう思うとさらに体が喜びでふるえる。
それがさらにリアリティを生み、父上が涙をながして抱きかかえてくれた。ふっ、笑えますわね。
▷▷▷▷▷▷完結まで残り――6話
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
「お前の代わりはいくらでもいる」と笑った婚約者が、翌日から報告書一枚書けなくなった件
歩人
ファンタジー
子爵令嬢リーゼロッテの取り柄は、文章を書くことだけ。
華やかさのかけらもない彼女は、婚約者アルベルトの政務報告、外交書簡、
演説原稿——その全てを代筆していた。
「お前の代わりはいくらでもいる」
社交界の花形令嬢に乗り換えたアルベルトは、笑ってそう言った。
翌日から、彼の机の上には白紙の報告書だけが積み上がっていく。
——代わりは、いなかった。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました
九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」
悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。
公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。
「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」
――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。
『呪いのせいで愛妻家になった公爵様は、もう冷徹を名乗れない(天然妻は気づかない)』
星乃和花
恋愛
【完結済:全20話+番外3話+@】
「冷徹公爵」と呼ばれるレオンハルトが、ある日突然“愛妻家”に豹変――原因は、妻リリアにだけ発動する呪いだった。
手を離せない、目を逸らせない、褒めたくなる、守りたくなる……止まれない溺愛が暴走するのに、当のリリアは「熱(体調不良)」と心配または「治安ですね」と天然で受け流すばかり。
借金を理由に始まった契約結婚(恋愛なし)だったはずなのにーー??
そんなふたりの恋は愉快な王都を舞台に、屋敷でも社交界でも面白……ゆるふわ熱烈に見守られる流れに。
甘々・溺愛・コメディ全振り!
“呪いのせい”から始まった愛が、最後は“意思”になる、にやにや必至の夫婦ラブファンタジー。
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
「君との婚約は時間の無駄だった」とエリート魔術師に捨てられた凡人令嬢ですが、彼が必死で探している『古代魔法の唯一の使い手』って、どうやら私
白桃
恋愛
魔力も才能もない「凡人令嬢」フィリア。婚約者の天才魔術師アルトは彼女を見下し、ついに「君は無駄だ」と婚約破棄。失意の中、フィリアは自分に古代魔法の力が宿っていることを知る。時を同じくして、アルトは国を救う鍵となる古代魔法の使い手が、自分が捨てたフィリアだったと気づき後悔に苛まれる。「彼女を見つけ出さねば…!」必死でフィリアを探す元婚約者。果たして彼は、彼女に許されるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる