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絶望の元・大聖女
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「コレット。いや、神に選ばれし稀代の大聖女よ。貴女にこの国の行末をたくそうぞ!!」
そう言うと、国王陛下はワタクシの聖印にキスをする。
と同時に、背後では一斉にひざまずく音が聞こえ、「聖女殿下のために!!」と声が重なった。
その快感に打ち震えながらも、人受けのするいい笑顔を作り込み、瞳になみだを浮かべ頬を染め「はい」とやさしく微笑んだ。
◇◇◇
――コレットが聖女と国王に認定されてから七時間半後。城の地下牢で魔女認定された、みじめな娘が、ひたいに水滴があたり目覚める。
んんん……冷たい。からだもあちこち痛い……ここはいったい?
鈍い痛みを感じながら、ゆっくりと体を起こす。
「痛たッ!? 頭が、え、なに?」
そう言いながら体を起こして周囲を見渡すけど、うっすらと明るさがあるだけで暗い石牢だと気がつく。
「……そっか。魔女だって言われて……デレク様にも殴られて……」
気絶する前の状況を思い出し、すごく切ない気持ちで悲しくなり、大粒の涙があふれでてきた。
思わず嗚咽となって、その声が大きくなると「うるせえぞクソ魔女が!!」と鉄格子を硬いもので殴られた音で背筋が震える。
「あの、牢番さん聞いてください! 私は何も悪いことをしていないのです! どうかお父様へおとりつぎを!!」
「黙れと言っている! 魔女の声など聞くだけで不愉快だ!!」
「そ、そんな……」
「フン。なんて嫌な時に当番になったものか」
太った牢番さんは私へと唾を吐き捨て、それが袖へとネトリと付着した。
もわりと立ち上る悪臭でむせそうになったけれど、となりの痩せた牢番さんがもっと嫌そうに話す。
「いい加減にしろ。汚れた魔女と言葉をかわすのも汚らわしい。どうせ明日には火あぶりなんだからな」
「え、火あぶりってそんな!? お願いです、どうかお父様へおとりつぎを!!」
「「黙れ常闇の魔女!!」」
そう二人は声を揃えていうと、階段を上っていってしまう。
「お願い! まって、待ってください牢番さん!!」
その声が虚しく石壁へと反響し、小さな明かり窓から外へと抜け出ていく。
ギュッと鉄格子を握りしめると同時に、明かり窓からさしこむ満月が私の顔を照らす。
その時だった。鉄格子の向こう側の壁にかけられている鏡に、顔がただれたバケモノが浮かび上がり「ひぃ!?」と息を呑む。
「そうか……そうなんだよね。これが私……」
片方だけ黄金の瞳。黄金で美しかった髪は漆黒にそまり、半分ただれた顔面。
その現実に涙だけが流れ落ち、ただただ悲しかった。
十七年の間、王族として気品ある生き方を目指し、それを守り生きてきた。
だから人前ではじめて、みっともなく声を大きくあげて泣きだす。
そう、誰も。もう誰も。私の事などみていない。そう思うとさらに悲しくなり、涙が止まらないまま疲れはて寝落ちしてしまう……。
▷▷▷▷▷▷完結まで残り――4話
そう言うと、国王陛下はワタクシの聖印にキスをする。
と同時に、背後では一斉にひざまずく音が聞こえ、「聖女殿下のために!!」と声が重なった。
その快感に打ち震えながらも、人受けのするいい笑顔を作り込み、瞳になみだを浮かべ頬を染め「はい」とやさしく微笑んだ。
◇◇◇
――コレットが聖女と国王に認定されてから七時間半後。城の地下牢で魔女認定された、みじめな娘が、ひたいに水滴があたり目覚める。
んんん……冷たい。からだもあちこち痛い……ここはいったい?
鈍い痛みを感じながら、ゆっくりと体を起こす。
「痛たッ!? 頭が、え、なに?」
そう言いながら体を起こして周囲を見渡すけど、うっすらと明るさがあるだけで暗い石牢だと気がつく。
「……そっか。魔女だって言われて……デレク様にも殴られて……」
気絶する前の状況を思い出し、すごく切ない気持ちで悲しくなり、大粒の涙があふれでてきた。
思わず嗚咽となって、その声が大きくなると「うるせえぞクソ魔女が!!」と鉄格子を硬いもので殴られた音で背筋が震える。
「あの、牢番さん聞いてください! 私は何も悪いことをしていないのです! どうかお父様へおとりつぎを!!」
「黙れと言っている! 魔女の声など聞くだけで不愉快だ!!」
「そ、そんな……」
「フン。なんて嫌な時に当番になったものか」
太った牢番さんは私へと唾を吐き捨て、それが袖へとネトリと付着した。
もわりと立ち上る悪臭でむせそうになったけれど、となりの痩せた牢番さんがもっと嫌そうに話す。
「いい加減にしろ。汚れた魔女と言葉をかわすのも汚らわしい。どうせ明日には火あぶりなんだからな」
「え、火あぶりってそんな!? お願いです、どうかお父様へおとりつぎを!!」
「「黙れ常闇の魔女!!」」
そう二人は声を揃えていうと、階段を上っていってしまう。
「お願い! まって、待ってください牢番さん!!」
その声が虚しく石壁へと反響し、小さな明かり窓から外へと抜け出ていく。
ギュッと鉄格子を握りしめると同時に、明かり窓からさしこむ満月が私の顔を照らす。
その時だった。鉄格子の向こう側の壁にかけられている鏡に、顔がただれたバケモノが浮かび上がり「ひぃ!?」と息を呑む。
「そうか……そうなんだよね。これが私……」
片方だけ黄金の瞳。黄金で美しかった髪は漆黒にそまり、半分ただれた顔面。
その現実に涙だけが流れ落ち、ただただ悲しかった。
十七年の間、王族として気品ある生き方を目指し、それを守り生きてきた。
だから人前ではじめて、みっともなく声を大きくあげて泣きだす。
そう、誰も。もう誰も。私の事などみていない。そう思うとさらに悲しくなり、涙が止まらないまま疲れはて寝落ちしてしまう……。
▷▷▷▷▷▷完結まで残り――4話
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