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029:カマドと釣りばか

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「これはヤシの木の葉っぱか? デカイし簡単に燃えそうだ。あとは……あった! 小枝と太い枯れ枝ゲット♪」
『良い判断です。それでキャンプ地はどこに?』
「そうだな……うん、滝つぼプールの隣にしよう。ちょうどよくカマドに使えそうな石があるし。それとあの石の上にも行こうぜ?」

 すぐ近くにある滝つぼプール。
 そこの隣に平たく巨大な石が地中に埋まっていて、そこの上を拠点に活動しようと思う。

 巨石の高さは地面から大体だが八メートルほど。
 そこへ登るのに適した形の凹みもあり、まるで階段みたいでスッゴク心が躍る。

 美中年オッサンのころだったら、そんな面倒な場所にはいかなかったと思うが、今は逆に登ってみたい。
 そんな気持ちを見透かされて、相棒に『馬鹿と煙はなんとやら』と突っ込まれる。アンタ、日本マニアか?

 そんな感じで岩の上に到着し、駆け足で岩のはじへと向かう。
 思わず「すっげぇ……」と言葉につまり、その光景に息を呑む。

 高台からみる純白のプライベートビーチは、まるで湾全体が極上の宝石箱みたいに見え、生命の息吹で鮮やかに輝く。

 そこに太陽光がさんさんと降り注ぎ、なんとも言えない美しさでオーシャンブルーを切り出して魅せる。

 あまりにも贅沢な光景。それに時を忘れて見入っていると、若い体はそれを許さない。
 そう、ハラヘリの民がやってきたのだ。

『ステキな光景はまた後で堪能しましょう』
「ハラヘッタ。メシ。用意。スル」
『なぜ片言なんですか。それでどうします?』
「まずは下にある小さな岩があるだろう? それを利用してカマドを作る」

 上から見下ろすと、いい感じに∪の文字ぽく見える岩へと向かい、階段下においてあった燃やせる物をカマド予定の場所へとうつす。

「さて、と。問題はここからだ」
『ですね。確かに岩がくぼんではいますが、このくぼみ程度ではカマドには役不足と思いますが?』

 その言葉に「まぁ見ていろって」と言いながら、相棒を片手に岩の前に立つ。
 糸の先についているゴッド・ルアーの形状は小魚のままだ。

 それにマナポインちょうを込めて、くぼんでる部分へ向けて思い切り相棒をしならせてゴッド・ルアーをぶん投げる!

 相棒が『なにを!?』と驚くが、そんな事をお構いなしに白銀色に光る小魚は、そのままぶっ飛ぶ。

 直後に〝ぞザッ〟と、岩に金属が当たった音とはマッタク違う、不思議な音と共にルアーが消失。

『き、消えた……一体どこにゴッド・ルアーは消えたのですか?』
「消えた? おいおい何を言ってるんだよ。〝スキル:人釣一体〟で探ってみろって」

 人釣一体。このスキルは半径十センチの状況を、手にとるように理解できる優れものだ。
 だからその言葉を理解し、人釣一体を起動した直後に『まさか岩の中ッ!?』と驚く相棒。

「そう、そのまさかってヤツだ。どこだ? どこかに塊があるはず・・・・・・だ――ッ見つけた!!」

 ザラつく感覚と、ぬめりとした感覚。それらが高圧縮され、一つとなっているのが見える。
 が、はたしてそれは本当に一つの物体なのだろうか?

 否! それは違う。元々は別の物体なはず。
 ならば見つけりゃいい。その分かれ目・・・・ってやつを。

「捉えたぜッ! フィィィィッシュ!!」

 凹みの中央から思いっきりゴッド・ルアーを引き上げたと同時に、岩と同じ色をした灰色の魚が〝のヴぉッ〟っと飛び抜けて出た。

 その形はでっぷりと太ったフグみたいな形で弧を描き、地面へと落下した瞬間に砂になってしまう。

 その砂の魚が抜け出た場所を見ると、いい感じに凹みがあり、一番したから上部へと穴が開いてトンネル状になっていた。

『主、これは一体どういう事なのですか!?』
「どうって昨日おまえにさ、調味料の抜き方を教えてもらった事だろう? あれと同じように釣り抜いただけだよ」
『抜いたとは岩をですか?』

 その問いに「そうだ」と答えると、相棒は『そんな使い方は出来ないはず……』と噛みしめるように話す。

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