32 / 109
031:相棒と過去の主
しおりを挟む
『ほら、最後に〝正確にエモノを具現化してゲットする〟とあるでしょう?』
「そうだな……あ、そうか! だから俺は好きなように形に出来るのか!?」
『そうとしか考えられませんね』
と相棒はいいながら続きを話す。
どうやら〝スキル:器用貧乏〟は本来ならレベル5で止まり、次の開放まではかなりの経験が必要となるらしい。
そして開放されると貧乏が取れて〝器用〟となり、最初よりはまともになる程度だという。
じゃあ今の〝変態的な器用さ〟とはなんなのか?
それは相棒すら初の事であり、聞いたこともないという。
おいおい、スキルの管理者として大丈夫か?
さらに俺がさっきヤシの木実を自然に取った事も、実は驚いていたという。
確かにごく自然にルアーでヤシの実を取り、それを好みの形に具現化したのだから。
『……なにか失礼な事を思っていませんか?』
「イエ、ベツニ」
『まぁいいでしょう。とすれば謎は深まりつつも、一応は理解できました』
「よし、じゃあ火を起こそうぜ! 俺、カマドで火を起こすのって好きなんだよな」
相棒は『まったく軽い人ですね』とため息を付きつつ、楽しげに『どうしますか?』と聞いてくる。
実際はコイツも楽しいんだろうなと、内心クスリとしつつ、カマドの準備をする。
まずはヤシの幹から取った、ふわりとした繊維。
それをカマドの中へと入れる。
その上にヤシの葉っぱを被せ、そこを囲む形で細い枝の後に太い枝の順に並べる。
まずはヤシの繊維に着火すれば、大きな火力は必要ない。
「幸いライフジャケットの中にライターがあったから、これを使えばすぐに火が起こせる」
そう言いながら糸状の繊維に火を付ける。
ものの二秒ほどで一気に着火し、瞬間的に火が大きくなる。
これは結構すごい火力だろう。
そこへヤシの葉っぱを動かしつつ火にあて、瞬時に燃え移る。
さらに大きくなる火の塊。
そこへさらに葉っぱを投入し、火を大きくしつつ小さな枝に着火する。
少し時間はかかったが、それにも無事に着火。
そのまま細い枝をくべながら火種を大きくして、いよいよ本命の太い枝へと炎を移す。
「この工程はいつやってもドキドキする……」
ジリジリと焦げる表面。
そこから、うっすらと白煙が立ち昇り、次の瞬間オレンジ色の美しい炎が垂直に燃え上がる。
『おお! 主よ、これはいいですね。原始的な魂の喜びを感じます!』
笑いながら「なんだよそりゃ」と言いながらも、その言葉の意味がよく分かる。
炎というのは危険だが、同時にやすらぎも覚える不思議なものだ。
だからこそ、人は焚き火に魅力を感じるのだろう。
そんな事を思っていると、いよいよ本格的に太い枝に着火して、炎が大きく育つ。
「うし、こんなものっしょ。後はこのまま太い薪をくべてやって……と」
強くなった火力はカマドの上部の穴へと吸い込まれ、どんどん火力が強くなる。
そこへ次々と太い枝を投入し、火力が安定するころには相棒が感動していた。
『おお……これは良いものですね』
「だろう? おまえは長生きなのに焚き火は見たこと無いの?」
『もちろんありますよ。ですが、その時々の主と見る火の色は、私の中では特別なのですよ。ですから今日この時の焚き火は、また格別なのです』
そう寂しそうに話す相棒に「そうか……」と一言いいつつ、静かに炎を見つめる。
パチパチと木片がはぜる音に癒やされながらも、無粋なハラヘリの民が腹の中でブーイング音をならし、場の雰囲気を壊す。
『……さ、今は主の食欲を満たしてあげてください』
「だな。えっと何か獲物は……お、いたいた。アイツにしよう」
カマドのすぐ後ろにある天然の滝つぼプール。
ここは全体的に木陰だが、滝つぼの周囲だけは日が入り、まるでスポットライトを当てられているようだ。
その光に照らされたのは複数の魚群。
それに狙いを定め、相棒を握りしめて振り抜く。
「そうだな……あ、そうか! だから俺は好きなように形に出来るのか!?」
『そうとしか考えられませんね』
と相棒はいいながら続きを話す。
どうやら〝スキル:器用貧乏〟は本来ならレベル5で止まり、次の開放まではかなりの経験が必要となるらしい。
そして開放されると貧乏が取れて〝器用〟となり、最初よりはまともになる程度だという。
じゃあ今の〝変態的な器用さ〟とはなんなのか?
それは相棒すら初の事であり、聞いたこともないという。
おいおい、スキルの管理者として大丈夫か?
さらに俺がさっきヤシの木実を自然に取った事も、実は驚いていたという。
確かにごく自然にルアーでヤシの実を取り、それを好みの形に具現化したのだから。
『……なにか失礼な事を思っていませんか?』
「イエ、ベツニ」
『まぁいいでしょう。とすれば謎は深まりつつも、一応は理解できました』
「よし、じゃあ火を起こそうぜ! 俺、カマドで火を起こすのって好きなんだよな」
相棒は『まったく軽い人ですね』とため息を付きつつ、楽しげに『どうしますか?』と聞いてくる。
実際はコイツも楽しいんだろうなと、内心クスリとしつつ、カマドの準備をする。
まずはヤシの幹から取った、ふわりとした繊維。
それをカマドの中へと入れる。
その上にヤシの葉っぱを被せ、そこを囲む形で細い枝の後に太い枝の順に並べる。
まずはヤシの繊維に着火すれば、大きな火力は必要ない。
「幸いライフジャケットの中にライターがあったから、これを使えばすぐに火が起こせる」
そう言いながら糸状の繊維に火を付ける。
ものの二秒ほどで一気に着火し、瞬間的に火が大きくなる。
これは結構すごい火力だろう。
そこへヤシの葉っぱを動かしつつ火にあて、瞬時に燃え移る。
さらに大きくなる火の塊。
そこへさらに葉っぱを投入し、火を大きくしつつ小さな枝に着火する。
少し時間はかかったが、それにも無事に着火。
そのまま細い枝をくべながら火種を大きくして、いよいよ本命の太い枝へと炎を移す。
「この工程はいつやってもドキドキする……」
ジリジリと焦げる表面。
そこから、うっすらと白煙が立ち昇り、次の瞬間オレンジ色の美しい炎が垂直に燃え上がる。
『おお! 主よ、これはいいですね。原始的な魂の喜びを感じます!』
笑いながら「なんだよそりゃ」と言いながらも、その言葉の意味がよく分かる。
炎というのは危険だが、同時にやすらぎも覚える不思議なものだ。
だからこそ、人は焚き火に魅力を感じるのだろう。
そんな事を思っていると、いよいよ本格的に太い枝に着火して、炎が大きく育つ。
「うし、こんなものっしょ。後はこのまま太い薪をくべてやって……と」
強くなった火力はカマドの上部の穴へと吸い込まれ、どんどん火力が強くなる。
そこへ次々と太い枝を投入し、火力が安定するころには相棒が感動していた。
『おお……これは良いものですね』
「だろう? おまえは長生きなのに焚き火は見たこと無いの?」
『もちろんありますよ。ですが、その時々の主と見る火の色は、私の中では特別なのですよ。ですから今日この時の焚き火は、また格別なのです』
そう寂しそうに話す相棒に「そうか……」と一言いいつつ、静かに炎を見つめる。
パチパチと木片がはぜる音に癒やされながらも、無粋なハラヘリの民が腹の中でブーイング音をならし、場の雰囲気を壊す。
『……さ、今は主の食欲を満たしてあげてください』
「だな。えっと何か獲物は……お、いたいた。アイツにしよう」
カマドのすぐ後ろにある天然の滝つぼプール。
ここは全体的に木陰だが、滝つぼの周囲だけは日が入り、まるでスポットライトを当てられているようだ。
その光に照らされたのは複数の魚群。
それに狙いを定め、相棒を握りしめて振り抜く。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました
黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。
これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。
ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。
森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。
一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。
これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる