凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造

文字の大きさ
41 / 43
第四章 魔王討伐が終わった後は

クーデター

しおりを挟む
 ついに革命当日を迎えた。
 僕とユリは、朝一番の列車で、クリフトに行ったが、既に巡回している兵士は完全にいなくなっていた。
 戻る列車まで四時間しかないので、急いでパレンティオンに向かったのだが、なぜか『女神の剣』のクランメンバーまでいた。カール部長が危険だと言っていたので、今晩、クーデターを起こすと知られては困る。
「ミキさん、どうしてこんなところに」
「パレンティオンも、マナイクシオンも、突然、全員に招集を掛けたんだ。あたいらだって、察しはつくさ。今日、クーデターを起こすんだろう。もしかして、トルスタンやミリアミスも、あんたたちの仕業かい」
 すっかり、バレていてどうすべきか悩んでいると、ユリが話し始めた。
「初めまして。今回のクーデターのリーダーをさせてもらっているユリです。ミキさんは、A級クラン『女神の剣』のリーダーですか?」
 クーデターのリーダーなんていうから、周りにいたクランメンバーがざわざわと騒ぎ始める。
「ああ、そうだが。あたいらにそんなこと言ってもいいのかい」
「クリフトの兵は完全にいなくなり、私たちに加勢した方が、得と判断したということですよね。静観するという選択肢もありますが、正しい状況判断です。私たちは、革命を成し遂げます。国王に着くより、革命軍に加わる方が、今後もいろいろと有利に働くと思います。ですから、私たちと一緒に、戦いましょう」
 そういって、ミキに握手を求めた。
「昔の勇者の面影は皆無だと聞いていたが、やはり勇者ユリは健在みたいだな。宜しくたのむ」
 ミキもユリの手を取った。
「時間がないから急ぎましょう」 いきなり走り出すから、こっちも介助が大変だ。
 そして、少し高くなっている演説台に、ぴょんと華麗に飛び乗った。
「本日、午後八時、私達は、ロレンスの悪政を正すため、王城を襲撃します」
 そう言って、ユリは、計画の詳細、二国の協力を取り付けている事、敵の兵力、味方の兵力等の現在知りうるすべての情報を開示して、皆が協力してくれれば、必ず勝てると宣言した。
 そのパフォーマンスと演説とで、全盲だという噂は噂でしかなかったと、懸念を払拭できたみたいで、見事、全員の賛同を取り付ける事が出来、最後は、全員で「ロレンスを討つぞ」と言わせて、拳を突き上げさせた。
 女神の剣のキミと、パレンティオンのクリフは、夕方の列車にて王都に乗り込むと約束してくれた。
 ラクニス駅に到着後、直行すれば王城には七時五十分頃に着くことになるので、裏切り者が居たとしても、もう対処しようがない。
 勿論、通話魔具で今すぐ連絡すれば、周辺貴族やラクニス内の軍が援軍に来ることも考えられるが、彼らが王城内部の者と通話登録しているとは考えづらいし、この流れなら、どちらに着くのが得かは明確で、裏切るもはいない筈だ。
 その後、マナイクシオンでも、ユリに演説に共感してもらえ、これで百人近いA級兵士を確保できた。

 僕はユリと、一足先にラクニスに戻り、僕も久しぶりに戦闘服に着替えて、魔剣を携えた。
 新型通信機も全員に配り終えたそうで、フレイアも胸に晒しを巻いて、髪を後ろでまとめ、男装したシーフ姿に戻っている。
 緊張が走る中、決起の十五分前になった。
「行ってくるね」
 フレイアはラブラブで、恥ずかしげもなくイケメンのマネージャーと抱き合いキスをした。
「じゃあ、私たちはこれから出発します」 新型通信機に向け、ユリが声を発する。
「了解、我らも行動に移る。城門前に集合しろ」
「八時丁度に開門する予定だが、何かあったら直ぐに知らせる」
「御免、列車が遅れていて、あたいらはまだラクニスにはついていない。着き次第向かうから」
 既に到着していてもいい筈なのに、連絡がなかったのは、列車が遅延していたためだった。

 アーロンを除く、元勇者一行四人で、徒歩で王城へと進軍を始めた。
 分散することで、警備兵にクーデターを悟られなくするためだ。
 でも、次々と五人単位で合流してきて、どんどん大きくなり、丸わかりだ。
「今駅に到着。直ぐに向かう」
「やばい、気づかれた。時間通りに、開門できるか分からない。うりゃ」
 まだ、八時になっていないが、城内では、戦闘が始まってしまった。
 城内の兵力は九百人弱になり、クリフトからの戦力が三十人増えたので、こちらがかなり有利となったが、城門が開かないとなると話はちがう。城内だけでは、圧倒的には敵兵力が勝るのだ。正直、これは大変な事態だ。

「全員、城門目掛けて突撃」
「脇の小門に兄貴達が向かった。こっちなら直ぐに開けられるはずだ」
「屋上と左右窓に弓兵」 僕はユリの目になる。
「フレイア、上の弓兵は任せた。弓使いは左右窓の弓兵を撃退。ローラは正門に爆裂魔法。魔法攻撃できる人は全員で正門を攻撃して。他は正門横の小門から一人ずつ突入して、開門を手伝って」
 トルスタンは、ライフル銃使いもいて、弓と銃とで、次々と弓兵を排除していく。
 小門がなかなか開かず、中に入れずに困ったが、数分待たされ、漸く開いた。
 でも、門は狭いので、二人位ずつしか中に入っていけない。それでも、フレイアが一番に飛び込んで、勇気の歌を唄いつつ、アーロンや兄ケイロス達を支援したが、それでも正門を開けることは困難な状況だ。
 正門は、開門用のクランクを回さなければならず、次々増援がくるので、開門できない。
 小門から流入するこちらの増員よりも、正門を守ろうとやって来る敵兵の方が多いのだ。

「正門攻撃中止。ローラが小門を通れるように優先させて。ローラが入ったら、小門を通れる順に、できるだけ早く中に入って来て」
 ユリは、何か打開策を思いついたのか、新型通信魔具に向かってそう指示をだした。
「ユウスケ、中の皆に、火傷用のリジェネを掛け捲って。ローラは、中に入ったら、開門用クランクの箇所にファイアストーム。私が飛び込んで、開門する」
「ユリ、無理しないでよ」
 無謀に見えるが、理にかなっている。兵士と戦闘できない今のユリでも、開門操作なら可能だ。ローラは火炎魔法発動前に、かならずユリに火炎耐性を掛ける筈だし、僕が火傷用ハイヒールを掛ければ、火傷は負うが、大火傷することはなく、単独でクランクを回せ、開門することができる。
「ローラが来た」 僕がいうと、ユリが開門装置目掛けて飛び込んでいく。
 衛兵が阻止しようとユリに襲い掛かりが、パルクールの練習が功を奏し、軽業師の様に交わす。それでも傷を負ったが、深手にはならず、次々と兵を交し、開門装置のクランクに手を掛けた。
 当然、増援の敵や衛兵が一斉にユリに襲い掛かるが、そこにローラの広範囲火炎魔法が発動。僕は切り傷用のヒールに加え、火傷のエクストラヒールも発動し、みるみると魔力が減っていくが、正門が徐々に上がっていく。
 丁度、クリフトのクランメンバー百人も駆けつけてきて、一気に城内に流れ込んできて、形勢が逆転した。

「一気に、ロレンスを押さえるよ。ローラ索敵。フレイアは癒しの歌を唄いながらローラを援護。全員城内に流れ込んで」
 ユリは、民衆を導く自由の女神化の様に、先頭に立って、防衛兵の中に突っ込んでいく。何度も危機があったが、ブリットからユリを守れと命令を受けているのか、トリスタンの精鋭が飛び込んできて守ってくれた。それでも切られて傷だらけになったが、僕のハイヒールやスーパーヒールもあって、なんとか頑張って指揮を執り続けている。
「東館に向けて逃走している」
「ロレンスが昔いた建屋の方ね。きっと脱出路がある。脱出される前に先回りして」
 最前線で適格な指示を出し続けたことで、こちらがどんどん優勢になって押していく。ユリが袈裟切りされ、エクストラヒールまで発動することになり、魔力切れ寸前にまでになったが、ユリが飛び回って逃げながら指示を出しているので、マナポーションを飲んでいる暇もない。

 そして、ユリが敵の攻撃を掻い潜って、ロレンスが昔いたという部屋に突入すると、そこの暖炉に潜ろうとするロレンスが居た。
「ロレンスがいる。親衛隊三人」
「観念しなさい。もう逃げられないわよ」
 そう言ったユリに向かって、親衛隊の一人が切りかかってきた。僕が介助して最初の一撃は回避したが、二撃目の横払い切りは、僕の指示が遅れて、もろに直撃を食らって吹っ飛び、そのままうつ伏せになったまま、起き上がらない。どうやら、脳震盪を起こしたらしく、傷もかなり深く、大量の血が流れていく。
 僕はユリの介助をやめ、親衛隊と剣で応戦しながら、マナポを飲んだが、その間にもう一人の親衛隊員が止めを刺しに、ユリに剣を突き立てようした。
 だが、間一髪の所で、フレイアが飛び込んできて、防いでくれ、癒しの歌まで唄ってくれた。
 トルスタンの精鋭たちや、アーロンもやってきて、親衛隊員三人との戦闘を始めた。僕は、瀕死状態になったユリにエクストラヒールを掛け、なんとかユリの死亡という悲劇だけは食い止めた。
 ユリが瀕死の重傷を負ってしまったが、ロレンス親衛隊の三人も無事制圧し、ロレンスの捕獲に成功した。
「ロレンス確保完了」
 アーロンが通信機で報告すると、一斉に歓声が沸き上がった。
 程なく、次々と降伏したとの報告が来て、城内の鎮圧にも成功。
 連絡によると、三十二人もの死者がでたとのことで、こちらの被害も甚大だったが、予定通りに王城制圧を成し遂げることができた。
 ユリが、最前線で傷だらけになりながらも、的確な指示を出し頑張ったお蔭だ。そのことで、士気が上がり、全員が頑張ってくれ、このクーデターの王城戦に勝利できたのだ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...