大好きだけど

根鳥 泰造

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第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛

迎へ梅雨 相合傘の影重なり

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 今日は、ディズニーランドに出かけるので、朝から安君と外出。
 でもあいにくの曇り空で、午後から雨の予想。
 私の心も、楽しいデートの筈なのに、曇り空。

 理由は、アメリカに帰りたくて、仕方がないから。

 私の研究開発の理論フェーズがなんとか終わり、実験検証したと切実に思っている。
 昨日、デビットにその意向を伝えると、今、戻るとFBIに捕まるし、今から実験を頑張っても、六月末の報告会には間に合わないだろうと、反対された。
 確かに、その通りだけど、数日捕まって監禁され、こってり説教されたとしても、それで実験できるようになるなら、それでもいいと考えている。
 でも、アメリカに帰りたい本当の理由は、安君とこれ以上一緒に居たくないから。
 嫌いになったのではなく、日に日に好きになっていて、このまま付き合っていくと、絶対に彼と離れたくないと思ってしまう。
 だから、彼と深い関係になる前に、アメリカに戻りたいのだ。
 勿論、彼とはセックスもしないし、キスもしないつもりだけど、彼に全てを捧げたいと思う自分も居る。
 今日は夜まで彼とデートするので、彼にホテルに誘われたら、断れる自信がない。

 昨日は、父の命日のお墓参りの日まで、ここにいると決めたけど、そんなに長い間、安君といれば、絶対に関係してしまうに決まっている。
 私は、フューチャーネットラボの副社長だし、研究開発は、私の人生そのもの。
 だから、ニューヨークには必ず戻るつもりだのに、安君の事が、単なる楽しい思い出とは思えなくなる。
 母が、ババの亡霊にとらわれて、ずっと再婚できなかったように、私は安君の亡霊にとらわれて、デビットに抱かるのを拒絶する気がする。デビットと上手く付き合っていく、自信がない。

 そうならないためにも、早くアメリカに戻りたいのに、今日もこうして、朝から安君とのデートにでかけてしまった。
 だから、私の心は、雨でも晴でもなく、曇り空なのだ。
 
 六月の平日ということもあり、アトラクション待ちの人も少なく、私達はいろんなアトラクションを満喫できた。
 この時だけは、素直になれて、安君とのデートを満喫できる。
 スペースマウンテンを二連続で乗ったら、安君が気持ち悪いので休ませてくれと言ってきて、乗り物酔いする人だったんだと、彼の意外な面も知ることができた。
 買い物も沢山して、本当に楽しく、今日を思い出にして、このまま、さよならしたい気分。
 でも、雨が降り始め、彼に肩を抱かれて引き寄せられて相合傘したらもうだめ。
 彼とふれあい、彼の匂いもしたので、アソコが疼き出し、彼に抱かれたくなってしまった。
 彼とは何もなく別れると決めているのに、本当に情けない。

 雨が強くなってきたので、少し早めに出て、夕食を食べることにした。
 安君はもんじゃ焼きを食べたことが無いという話だったので、月島にでて、彼にもんじゃ焼きをご馳走することにした。
 餅明太子と、豚チーズと、キムチ焼きそばの三種類のもんじゃと、ビールとを注文し、先ずは、私が作りからの見本を見せてあげた。
 二つ目は、安君が作るというので、「美味しく焼くのは難しいのよ」というと、「要は、最初に細かく切り刻んで、それで土手を作るのがコツなんだろう」と一発で見抜かれた。悔しいので、「それもあるけど、それぞれの寝かせる時間がその美味しさを決めるのよ」とか言ってやったら、訝しがられた。
 その時、大失敗。鉄板の上に、小手をおいたままにして、火傷してしまった。
「大丈夫か」安君がこっちにやって来て、私の指をしゃぶってきた。
「天然ちゃんでもいいけど、怪我するなよな」とまた天然だと言われ、悔しかったけど、私は、もう彼に抱かれたくておかしくなっていた。
 早く、アメリカに帰らないと、絶対に彼を忘れられなくなってしまう。

 安君は、三種類とも、とても気に入って満足してくれ、私も満腹だったけど、デザートとして、月島名物のあんこ巻きも食べさせてあげることにした。
 今日は、少しリッチに、一度も注文した事がない、いちごアイスあんこ巻きを注文した。
 あんこ巻きは、お店の人に目の前で作ってくれるのだけど、これはあんこ巻きの中でも絶品だった。
 安君も美味しいと感激してくれ、このお店に連れて来てくれてありがとうと、感謝してくれた。

 そんな訳で、更に彼に、東京湾の夜景を見せてあげたくなったけど、そのまま帰ることにした。
 あんな素敵な夜景を二人でみると、絶対にキスすることになり、そのあと自然な流れで、ホテルにいくことに決まっているから。

 けど、それでも駄目だった。
 石神井公園に着いた時は、雨もやんでいたので、少し遠回りして、公園を散歩することになり、その途中でキスしてしまった。
 彼が突然、私の肩を掴んで正面から私を見つめてきて、私はつい了承するかのように、目を瞑ってしまったのだ。
 その時の彼の心臓は、信じられない程高鳴っていて、まるでファーストキスかのよう。
 先週も童貞じゃないアピールしてきたけど、叔母さんとは未遂だった筈だし、もしかして本当は童貞なんじゃないと思ってしまう程。
 でも、ちゃんとした恋愛をしたことないだけだったみたい。
 キスすると直ぐに狼になっていて、勃起したアソコを押し付けて、私のお尻を揉み、舌を入れようとしてきた。
 私も興奮していたので、舌を絡め返しても良かったけど、「姉弟同士は舌なんていれないものよ」と必死に自制して、押し返し、拒絶した。
「御免」と直ぐに謝って申し訳そうな顔をした彼を見て、私はもう二度と拒絶できないなと悟った。
 
 私は、これからどうすればいいんだろう。
 その夜、私は枕を抱えて、悩み続けた。
 安田翔とセックスしたいけど、今すると、もう彼とは遊びという訳にはいかなくなる。
 翔との思い出を、胸に抱いて、一生、独身で生きていくのも悪くないか。
 そんな結論の出ない不毛な葛藤に捕らわれて、私はその夜はいつまでも寝むれない時間を過ごすことになった。

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