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第三章 裏切りと復讐の果て
新たな仲間が増えました
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勲章を授与されたお蔭か、二十代の男女三名が、入団希望にやってきた。Bランクの重戦士コリン、同じくBランクの狩人ミカ、Cランクの女黒魔導士ミミの三人組だ。
以前は、それぞれ別の強豪チームに所属していたが、地下迷宮依頼でリーダーが大怪我したり、死亡したりでチームが解散となり、あぶれた三人でチームを結成したのだそう。
でも、魔物狩りで大怪我をしたことで、三人だけではと限界を感じ、最強と名高い『オリーブの芽』に加えてもらえないかと、やってきた。
丁度、オリーブの芽結成当時の様な後衛二人のチームなので、魔物狩りが厳しいのはよくわかる。
他の三人も、戦力は多い方がいいし、入れてやってもいいんじゃないかと言ってきたので、入団を許可したが、実際に魔物狩りに連れて行ってみると、てんで使い物にならない。
鎧は機動性が悪いし、走ると音もするので、コリンは、軽装備の戦士にコンバートしたのだが、怪我ばかりする。巨漢だが俊敏なので、回避できるはずなのだが、鎧前提の戦闘が染みついていて、大剣を振り回して、敵を仕留めるも、攻撃を食らってしまうのだ。
毒矢使いのミカは、腕はいいのだが、弓矢ではDPSがあまりに低く、近接戦闘が苦手で、敵に近づかれると、何もできなくなる。
ミミは更に最悪。水と土の魔法が使えるのだが、詠唱発動しかできず、無詠唱を教え込んだが、敵に近接されると、恐怖から魔法が本来の威力で発動できなくなる。
正直、三人とも、足手まとい以外の何物でもない。
とはいっても、それを使い物になる様に鍛え上げるしかなく、コリンはミラが、ミカはケントが、ミミはリットが特訓して、鍛えている。
そして、メグは三人のための新たな武器を開発中だ。
ミラ、ケントとリットにも、武器のアイデア出しに協力してもらい、新人三人に最適と思われる武器を試作中。
入団して一月程経って、その武器が形になってきたので、いつもの石切り場にて、試作品の新武器のお披露目会をすることにした。
「コリンは、攻撃ばかりで、防御がなおざりだから、盾にしました。ミラ、持ってきて」
ミラは、一メートル近くある盾を二つに割った様な形の攻防一体型の武器を持ってきた。
「ここに前腕を通して、これを握って、殴る様に攻撃するの。片側四キロと重いけど、主柱の部分が金槌を兼ねてるから、かなりの破壊力がある。そして、敵が攻撃してきたら、二つを合わせて、巨大な盾にして防御する」
「このボタンは?」
「押してみて」
金槌の先端がゆっくりと飛び出した。
「これ、ボクの秘密兵器」
ミラには内緒で、これにもハンマーと同じ機能を内蔵した。
「正解。一回だけ使える魔宝石の削岩機能。左右で二発使える様にしてみた。直ぐに壊れそうで、改良が必要と思ってるけど、とりあえず試してみて」
コリンは、ミラの秘密兵器の攻撃を見たことが無かったので、岩が木っ端みじんになるのを見て、その威力に驚いていた。
でも、自動出し部は、ものの見事に壊れてしまった。やはり改善は必要そう。
「次は、ミカね。あなたには近接戦闘は無理と諦めて、敵が来れない程の遠距離から、狙撃してもらう銃にしました。バズーカライフルです」
最初はミカにも軽量の拳銃をと考えていたけど、ケントが近接戦闘は、絶対に無理だと言うので、狙撃手になってもらうことにした。
ケントがあらかじめ設置し、隠しておいた銃の布を捲り取る。
実際にはロケット砲ではなく地面に固定して打つタイプのライフル銃に過ぎないが、口径が異常に大きく、銃自体の重量も四キロ以上ある巨大銃のため、バズーカの名を付けた。
「こうやって伏せて、照準器を覗いて、狙撃するの。照準器の調整は、ケントがしてくれたから、多分大丈夫だと思う。アソコに見える的を撃ってみて」
的はなんと五十メートルも先の大きな岩の中央に置かれていて、肉眼では見えないほどだ。
ドカン。
鼓膜が破れる程の大きな音がして、的どころか、岩毎木っ端みじんにした。
「凄い威力。しかも、あんな遠くのものまで当てられるなんて」
「銃弾がこれだからな」
ケントが取り出したのは、巨大な銃弾。魔石玉の薬莢を三個束ねて、五倍重量の弾丸を飛ばす新方式の銃弾だ。
「銃を設置できる場所を素早く探して、設置して撃たなければならないから、大変だし、連射もできないけど、一撃で敵を仕留められる程の威力は保証するわ」
「消音装置も開発中だから、音はもう少し小さくなるが、照準調整等、覚えなければならない事は山の様にあるぞ」
「最後は、ミミ。あなたの場合、近接戦で、魔法をちゃんと発動できるようになるのが、前提だけど、クールタイム中に相手の攻撃を防げる武器を作ってみました。名付けて、びりびり鞭」
柄の部分に大型のコンデンサーを内蔵してあり、ボタンを押すと、電気が流れる金属製の鞭だ。
「師匠、その命名、ダサすぎます。まあ、名前は置いといて、僕も使いたいと思ったほどの凄い武器だから、試してみて。ハイ」
「これ、只の金属製の鞭ですよね」
「そうよ。あなたの場合、銃は重すぎて扱えないでしょう。でも鞭なら、必ず当てることができる。武器としての威力はないけど、そのボタンを押すと、高圧電流が流れるの」
「高圧電流?」
「雷のびりびりの事。鞭に触れた敵は、感電して動けなくなるから、機敏な敵の動きを鈍らせることができるし、動けない間に逃げることもできるでしょう」
「ただ、合計五秒分しか、効力はない。その度に、僕か師匠に、充電してもらわないとならないのが難点だけど、素早い敵の動きを確実に止めて、魔法を当てられるんだ。凄いだろう」
ミミはきょとんと有用性に気づいていないみたい。でも、無詠唱で魔法をちゃんと連発できるようになったら、動きを鈍らせる効果を実感することになると考えている。
そして、更に一か月程経ち、彼らがどれだけ成長したかを確認するため、三人だけで、魔物狩りをさせてみることにした。といっても、四人も付き添いで同行し、治癒魔法だけは、メグが掛けてあげる。
「左四十五度、距離三百メートルに、獲物発見」
ミミは、サーチという探索魔法が使え、半径四百メートル範囲内のB級魔物を感知できるので重宝する。魔法発動しないと、探知できないので、メグの勘の様ないつでも気配を察知できる能力程ではないが、メグの感知能力はA級なら三百メートル程、B級なら二百メートル程しかないのに比べ、探索魔法は、A級、B級に関わらず四百メートル範囲と広範囲を網羅できる点で優れている。
ミカは、すぐさま、狙撃に向いた場所を探し始め、その場所に向かっていち早く駆け出していく。ケントも、彼女の観察者として、彼女の後を追う。
コリンも背負っていた二枚の盾を腕に嵌め、ゆっくりと慎重に、魔物のいる方向に歩み出し、ミミはその後ろを着いていく。
ミミが発見したのは、牛型魔人のミノタウロスだった。B級魔物の中では、ベスト3に入る程の強敵。動きが速く、遠距離攻撃は回避するし、その皮膚は、鈍ら剣程度では切り裂けない程丈夫で、タフだし、体力も尋常でなく、なかなか仕留められない。突進攻撃は、岩をも砕くほどの威力があるし、斧の攻撃は、一発一発が、一撃必殺と言っていい程の威力を持っている。
そのB級最強と言っていい程のミノタウロスが、鹿型魔物のコルドホーンを餌にしようと、身を潜めてじっと隙を伺っていた。
コリンはリーダーらしく、指で合図を送り、牛魔人が鹿に攻撃する瞬間を待って、攻撃するつもりらしい。
そして、一分程経って、牛魔人が鹿に切りかかり、二匹が争い始めた。それを待っていたかのように、コリンは、素早く攻撃を開始する。
バン。
消音機を取り付けてはいるが、五十メートル程離れていても、聞こえる程の銃声がして、鹿の胴体に大きな穴が開いた。首に斧で切られ、俊敏に動けなくなっていたとは言え、一発で打ち抜いた腕は、大したものだ。
コルドホーンは、その一撃で、塵となって消えていった。
そして、牛魔人が、踵を返し突進してくるが、コリンはすぐさま盾を合わせ、守備に転じた。
コリンは、バーサク化していないミラよりも力持ちの巨漢。見事、牛魔人の動きを止めて見せた。
そして、牛魔人が泥沼に嵌っていく。ミミが漸く覚えた沼魔法を発動したのだ。
直ぐに凍結させて、抜け出せなくすべきだが、それはできないらしく、魔人は両手で、沼化していない地面を押さえ、脱出を試みる。
だが、そこに、盾ハンマーの乱れ打ち。両手が使えないので、防御できず、一方的に殴られる。
そして、一旦、コリンが魔人から距離を取ると、再び銃声。だが、魔人が沼から抜け出した瞬間だったので、足を抉った程度の傷しか負わせられなかった。
それからは、牛魔人の猛攻が始まる。
千手観音のごとく、高速に腕を振って、斧攻撃してきた。もう沼魔法や狙撃を食らわない様に、立ち位置を常に変えながら、攻撃を続ける。
コリンは、盾で防ぎながら、反撃の隙を伺うが、攻撃の手は止まらない。
ミミも、水魔法を次々と繰り出して、援護はしているのだが、つらら攻撃や、高圧水刃では、さしてダメージを与えられない。
「エレウィップを頼む」コリンが、ミミに作戦を出す。
動きを止めるのが最優先なので、的確な指示だけど、折角びりびり鞭と命名したのに、違う名前にされていた。
牛魔人は風切り音すらしないへっぼこ鞭攻撃でも、一応警戒して、傷ついた足で、ステップして交わしにかかるが、逃げられない。ミミはちゃんと手首を捻って、鞭の軌道を変え、追尾するように、絡みつかせた。
ビリビリビリ。
流石の牛魔人も、感電すると動けなくなり、攻撃が止まった。
バン。
銃弾が、見事に牛魔人の胴に命中し、血が噴き出した。
それでも倒れないのは流石だが、今度はミミが、岩柱壁で、牛を空中に吹き飛ばす。
「オラオラオラ」
落ちてくる牛魔人に、コリンが強烈なハンマーパンチを何発も打ち込む。
そして、止めとばかりに、削岩機能をオンにした渾身の右ストレートを鳩尾に放った。
流石にタフな牛魔人も、その一撃で、膝をついて前のめりに倒れる。
ここで、バズーカライフルで、頭を吹き飛ばしてもらいたいところだったが、準備に時間がかかるのが難点だ。
「ウォ~ッ」
それでも再び、立ち上がり、再び斧攻撃を開始する。
本当にタフな魔人だ。
でも、この攻撃で、確実に体力を消耗させられると悟り、防御して、感電からの狙撃、パンチ攻撃を何度も何度も繰り返していく。
十五分程の闘いにはなったが、最後はコリンが顔面に削岩パンチを繰り出して、無傷で、ミノタウロスを討伐することに成功した。
「これなら、地下三階層にも連れていけそうね」
「いよいよ、リベンジですね。僕、エレウィップをヒントに、感電エリアを生成するエレクトロンという新しい魔法を開発したんです」
「ボクだって、筋力アップして、衝撃波範囲を二倍に広げたんだ」
「御免、ミラもリットも、ベルゼブブ討伐に燃えているみたいだけど、あの魔人とはもう戦わない。彼と約束したのもあるけど、前回の様な悲しい思いは二度としたくない。それに、あの魔人には絶対に勝てない。あれでも彼は全力じゃなく、手加減してくれてたんだよ」
「ごめん。てっきり、リベンジに行くんだと勘違いして」
「先輩方、俺らの戦い、合格ですか」
しょんぼり、気落ちしていたところに、コリンとミミがやってきた。
そして、ケントとミカも駆けつけてきた。
「皆、合格よ。随分と強くなったから、地下迷宮の第三階層につれていけるねって話していたところ」
「おっ、いよいよベルゼブブ討伐か。ミラと秘密特訓して、蟹バサミからの寝技をマスターした甲斐があった。あの素早い動きは、捕まえて動きを止めるしかないからな」
ケントが浮かれて話すのをミラが止めて、耳打ちした。
「御免、二度と戦わないと約束して、見逃してもらったんだったよな」
再び、気まずい雰囲気になってしまった。
「私たちの目標は、フェルニゲシュ討伐。皆の特訓はきっと活かせる筈だから」
そう言ってみたが、やはり気まずい雰囲気は晴れなかった。
以前は、それぞれ別の強豪チームに所属していたが、地下迷宮依頼でリーダーが大怪我したり、死亡したりでチームが解散となり、あぶれた三人でチームを結成したのだそう。
でも、魔物狩りで大怪我をしたことで、三人だけではと限界を感じ、最強と名高い『オリーブの芽』に加えてもらえないかと、やってきた。
丁度、オリーブの芽結成当時の様な後衛二人のチームなので、魔物狩りが厳しいのはよくわかる。
他の三人も、戦力は多い方がいいし、入れてやってもいいんじゃないかと言ってきたので、入団を許可したが、実際に魔物狩りに連れて行ってみると、てんで使い物にならない。
鎧は機動性が悪いし、走ると音もするので、コリンは、軽装備の戦士にコンバートしたのだが、怪我ばかりする。巨漢だが俊敏なので、回避できるはずなのだが、鎧前提の戦闘が染みついていて、大剣を振り回して、敵を仕留めるも、攻撃を食らってしまうのだ。
毒矢使いのミカは、腕はいいのだが、弓矢ではDPSがあまりに低く、近接戦闘が苦手で、敵に近づかれると、何もできなくなる。
ミミは更に最悪。水と土の魔法が使えるのだが、詠唱発動しかできず、無詠唱を教え込んだが、敵に近接されると、恐怖から魔法が本来の威力で発動できなくなる。
正直、三人とも、足手まとい以外の何物でもない。
とはいっても、それを使い物になる様に鍛え上げるしかなく、コリンはミラが、ミカはケントが、ミミはリットが特訓して、鍛えている。
そして、メグは三人のための新たな武器を開発中だ。
ミラ、ケントとリットにも、武器のアイデア出しに協力してもらい、新人三人に最適と思われる武器を試作中。
入団して一月程経って、その武器が形になってきたので、いつもの石切り場にて、試作品の新武器のお披露目会をすることにした。
「コリンは、攻撃ばかりで、防御がなおざりだから、盾にしました。ミラ、持ってきて」
ミラは、一メートル近くある盾を二つに割った様な形の攻防一体型の武器を持ってきた。
「ここに前腕を通して、これを握って、殴る様に攻撃するの。片側四キロと重いけど、主柱の部分が金槌を兼ねてるから、かなりの破壊力がある。そして、敵が攻撃してきたら、二つを合わせて、巨大な盾にして防御する」
「このボタンは?」
「押してみて」
金槌の先端がゆっくりと飛び出した。
「これ、ボクの秘密兵器」
ミラには内緒で、これにもハンマーと同じ機能を内蔵した。
「正解。一回だけ使える魔宝石の削岩機能。左右で二発使える様にしてみた。直ぐに壊れそうで、改良が必要と思ってるけど、とりあえず試してみて」
コリンは、ミラの秘密兵器の攻撃を見たことが無かったので、岩が木っ端みじんになるのを見て、その威力に驚いていた。
でも、自動出し部は、ものの見事に壊れてしまった。やはり改善は必要そう。
「次は、ミカね。あなたには近接戦闘は無理と諦めて、敵が来れない程の遠距離から、狙撃してもらう銃にしました。バズーカライフルです」
最初はミカにも軽量の拳銃をと考えていたけど、ケントが近接戦闘は、絶対に無理だと言うので、狙撃手になってもらうことにした。
ケントがあらかじめ設置し、隠しておいた銃の布を捲り取る。
実際にはロケット砲ではなく地面に固定して打つタイプのライフル銃に過ぎないが、口径が異常に大きく、銃自体の重量も四キロ以上ある巨大銃のため、バズーカの名を付けた。
「こうやって伏せて、照準器を覗いて、狙撃するの。照準器の調整は、ケントがしてくれたから、多分大丈夫だと思う。アソコに見える的を撃ってみて」
的はなんと五十メートルも先の大きな岩の中央に置かれていて、肉眼では見えないほどだ。
ドカン。
鼓膜が破れる程の大きな音がして、的どころか、岩毎木っ端みじんにした。
「凄い威力。しかも、あんな遠くのものまで当てられるなんて」
「銃弾がこれだからな」
ケントが取り出したのは、巨大な銃弾。魔石玉の薬莢を三個束ねて、五倍重量の弾丸を飛ばす新方式の銃弾だ。
「銃を設置できる場所を素早く探して、設置して撃たなければならないから、大変だし、連射もできないけど、一撃で敵を仕留められる程の威力は保証するわ」
「消音装置も開発中だから、音はもう少し小さくなるが、照準調整等、覚えなければならない事は山の様にあるぞ」
「最後は、ミミ。あなたの場合、近接戦で、魔法をちゃんと発動できるようになるのが、前提だけど、クールタイム中に相手の攻撃を防げる武器を作ってみました。名付けて、びりびり鞭」
柄の部分に大型のコンデンサーを内蔵してあり、ボタンを押すと、電気が流れる金属製の鞭だ。
「師匠、その命名、ダサすぎます。まあ、名前は置いといて、僕も使いたいと思ったほどの凄い武器だから、試してみて。ハイ」
「これ、只の金属製の鞭ですよね」
「そうよ。あなたの場合、銃は重すぎて扱えないでしょう。でも鞭なら、必ず当てることができる。武器としての威力はないけど、そのボタンを押すと、高圧電流が流れるの」
「高圧電流?」
「雷のびりびりの事。鞭に触れた敵は、感電して動けなくなるから、機敏な敵の動きを鈍らせることができるし、動けない間に逃げることもできるでしょう」
「ただ、合計五秒分しか、効力はない。その度に、僕か師匠に、充電してもらわないとならないのが難点だけど、素早い敵の動きを確実に止めて、魔法を当てられるんだ。凄いだろう」
ミミはきょとんと有用性に気づいていないみたい。でも、無詠唱で魔法をちゃんと連発できるようになったら、動きを鈍らせる効果を実感することになると考えている。
そして、更に一か月程経ち、彼らがどれだけ成長したかを確認するため、三人だけで、魔物狩りをさせてみることにした。といっても、四人も付き添いで同行し、治癒魔法だけは、メグが掛けてあげる。
「左四十五度、距離三百メートルに、獲物発見」
ミミは、サーチという探索魔法が使え、半径四百メートル範囲内のB級魔物を感知できるので重宝する。魔法発動しないと、探知できないので、メグの勘の様ないつでも気配を察知できる能力程ではないが、メグの感知能力はA級なら三百メートル程、B級なら二百メートル程しかないのに比べ、探索魔法は、A級、B級に関わらず四百メートル範囲と広範囲を網羅できる点で優れている。
ミカは、すぐさま、狙撃に向いた場所を探し始め、その場所に向かっていち早く駆け出していく。ケントも、彼女の観察者として、彼女の後を追う。
コリンも背負っていた二枚の盾を腕に嵌め、ゆっくりと慎重に、魔物のいる方向に歩み出し、ミミはその後ろを着いていく。
ミミが発見したのは、牛型魔人のミノタウロスだった。B級魔物の中では、ベスト3に入る程の強敵。動きが速く、遠距離攻撃は回避するし、その皮膚は、鈍ら剣程度では切り裂けない程丈夫で、タフだし、体力も尋常でなく、なかなか仕留められない。突進攻撃は、岩をも砕くほどの威力があるし、斧の攻撃は、一発一発が、一撃必殺と言っていい程の威力を持っている。
そのB級最強と言っていい程のミノタウロスが、鹿型魔物のコルドホーンを餌にしようと、身を潜めてじっと隙を伺っていた。
コリンはリーダーらしく、指で合図を送り、牛魔人が鹿に攻撃する瞬間を待って、攻撃するつもりらしい。
そして、一分程経って、牛魔人が鹿に切りかかり、二匹が争い始めた。それを待っていたかのように、コリンは、素早く攻撃を開始する。
バン。
消音機を取り付けてはいるが、五十メートル程離れていても、聞こえる程の銃声がして、鹿の胴体に大きな穴が開いた。首に斧で切られ、俊敏に動けなくなっていたとは言え、一発で打ち抜いた腕は、大したものだ。
コルドホーンは、その一撃で、塵となって消えていった。
そして、牛魔人が、踵を返し突進してくるが、コリンはすぐさま盾を合わせ、守備に転じた。
コリンは、バーサク化していないミラよりも力持ちの巨漢。見事、牛魔人の動きを止めて見せた。
そして、牛魔人が泥沼に嵌っていく。ミミが漸く覚えた沼魔法を発動したのだ。
直ぐに凍結させて、抜け出せなくすべきだが、それはできないらしく、魔人は両手で、沼化していない地面を押さえ、脱出を試みる。
だが、そこに、盾ハンマーの乱れ打ち。両手が使えないので、防御できず、一方的に殴られる。
そして、一旦、コリンが魔人から距離を取ると、再び銃声。だが、魔人が沼から抜け出した瞬間だったので、足を抉った程度の傷しか負わせられなかった。
それからは、牛魔人の猛攻が始まる。
千手観音のごとく、高速に腕を振って、斧攻撃してきた。もう沼魔法や狙撃を食らわない様に、立ち位置を常に変えながら、攻撃を続ける。
コリンは、盾で防ぎながら、反撃の隙を伺うが、攻撃の手は止まらない。
ミミも、水魔法を次々と繰り出して、援護はしているのだが、つらら攻撃や、高圧水刃では、さしてダメージを与えられない。
「エレウィップを頼む」コリンが、ミミに作戦を出す。
動きを止めるのが最優先なので、的確な指示だけど、折角びりびり鞭と命名したのに、違う名前にされていた。
牛魔人は風切り音すらしないへっぼこ鞭攻撃でも、一応警戒して、傷ついた足で、ステップして交わしにかかるが、逃げられない。ミミはちゃんと手首を捻って、鞭の軌道を変え、追尾するように、絡みつかせた。
ビリビリビリ。
流石の牛魔人も、感電すると動けなくなり、攻撃が止まった。
バン。
銃弾が、見事に牛魔人の胴に命中し、血が噴き出した。
それでも倒れないのは流石だが、今度はミミが、岩柱壁で、牛を空中に吹き飛ばす。
「オラオラオラ」
落ちてくる牛魔人に、コリンが強烈なハンマーパンチを何発も打ち込む。
そして、止めとばかりに、削岩機能をオンにした渾身の右ストレートを鳩尾に放った。
流石にタフな牛魔人も、その一撃で、膝をついて前のめりに倒れる。
ここで、バズーカライフルで、頭を吹き飛ばしてもらいたいところだったが、準備に時間がかかるのが難点だ。
「ウォ~ッ」
それでも再び、立ち上がり、再び斧攻撃を開始する。
本当にタフな魔人だ。
でも、この攻撃で、確実に体力を消耗させられると悟り、防御して、感電からの狙撃、パンチ攻撃を何度も何度も繰り返していく。
十五分程の闘いにはなったが、最後はコリンが顔面に削岩パンチを繰り出して、無傷で、ミノタウロスを討伐することに成功した。
「これなら、地下三階層にも連れていけそうね」
「いよいよ、リベンジですね。僕、エレウィップをヒントに、感電エリアを生成するエレクトロンという新しい魔法を開発したんです」
「ボクだって、筋力アップして、衝撃波範囲を二倍に広げたんだ」
「御免、ミラもリットも、ベルゼブブ討伐に燃えているみたいだけど、あの魔人とはもう戦わない。彼と約束したのもあるけど、前回の様な悲しい思いは二度としたくない。それに、あの魔人には絶対に勝てない。あれでも彼は全力じゃなく、手加減してくれてたんだよ」
「ごめん。てっきり、リベンジに行くんだと勘違いして」
「先輩方、俺らの戦い、合格ですか」
しょんぼり、気落ちしていたところに、コリンとミミがやってきた。
そして、ケントとミカも駆けつけてきた。
「皆、合格よ。随分と強くなったから、地下迷宮の第三階層につれていけるねって話していたところ」
「おっ、いよいよベルゼブブ討伐か。ミラと秘密特訓して、蟹バサミからの寝技をマスターした甲斐があった。あの素早い動きは、捕まえて動きを止めるしかないからな」
ケントが浮かれて話すのをミラが止めて、耳打ちした。
「御免、二度と戦わないと約束して、見逃してもらったんだったよな」
再び、気まずい雰囲気になってしまった。
「私たちの目標は、フェルニゲシュ討伐。皆の特訓はきっと活かせる筈だから」
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