私って何者なの

根鳥 泰造

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第三章 裏切りと復讐の果て

勇者になれと言われたものの

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 王都の豪邸に戻ると、直ぐに、ルーカスが、国王陛下からの使者がきたことを知らせてくれた。
 今度は何だろうと、四人で王宮に出向くと、今日は応接室に通され、ソファに座ったまま、話を聞くことになった。
 女王陛下には、神の託宣を聞くことができる能力が備わっているのだそうで、そのお告げによると、魔王が人間界を支配しようと動きだしたのだそう。
 魔王は、ニ十五年前に、勇者により討伐されたのではと、訊いてみたら、次の魔王に代替わりしただけで、魔王は常に魔界を支配しているとの話。今までは、魔界に潜んで大人しくしていたが、先の大国間戦争の混乱に乗じて、人間界の支配に改めて動き出した可能性が高いのだとか。
「そこで、そちにお願いじゃ。先代勇者ビンセント・ヴィダーと同じ家名を持ち、数々の功績を上げているそちなら、勇者になれる筈じゃ。魔王を倒す勇者になってはくれぬか」
 いきなり、とんでもない無茶ぶり。名字が同じというだけで、勇者の血筋でもなんでもないのに、勇者になれなんて、あまりに無体な仕打ち。
 メグが返答せずに、その場で悩んでいると、リットが小声で話しかけてきた。
「師匠、受けましょうよ。勇者になれるなんて、光栄なことじゃないですか」
「ボクは、どっちでもいい。メグに従う」
「勇者一行として英雄になれるのは、確かに魅力的な話だと、俺は思う」
 やはり、受けるべきかなと一瞬思ったけど、ベルゼブブを思い出した。
「申し訳ありませんが、私に勇者は務まりません。私たちでは、地下迷宮三階層にいるボスにすら、手も足も出ません。ですから、それらの魔人を統べる魔王を討伐するなんて、とてもじゃないですが、できまんせので」
「それは、勇者の加護を受けていないからじゃ。聖剣エクカリバーを手にした勇者一行は、勇者の加護を得て、何倍もの力を発揮できるようになる。聖剣は、先の勇者と共に、行方不明となってはいるが、それさえ見つけ出せば、魔王を打てるだけの力を手に入れられるはずじゃ」
「しかし、その聖剣が見つからないかぎり、勇者の加護は、得られないということですよね。聖剣を探す旅をするのは、吝かではありませんが、それを見つけ出すまでに、魔王が人間界を支配してしまいかねません」
「分かっておる。予が、急ぎ聖剣エクカリバーを探し出す故、心配せずともよい」
「わかりました。その聖剣の在処が判明しましたら、勇者の任、御受けさせて頂きます」
「そちなら、引き受けてくれると信じておった。感謝する。それで、早速じゃが……」
 女王は、メグ達に、ロンブル帝国の調査を命じてきた。
 間者を送り込み、諜報活動させていたのだが、ここ一週間、何も連絡がなく、新たに間者を送り込んだが、そのものからも連絡が来ないのだとか。
 ロンブル帝国が、現在、どういう状況になっているのか、様子を見てきて欲しいという依頼だった。
 メグは、その程度の事ならばと、軽い気持ちで、了承した。

「国王陛下から、何を言われたんですか」
 帰宅すると、コリン、ミカ、ミミの三人が待ち構えていた。
「魔王が再び、人間界の支配に動き出し、メグが勇者に選ばれたんだ」
 ケントがそんな説明をしたから、三人は大はしゃぎ。
「違うから。失われた聖剣がみつかったら、勇者の任を受けると言っただけ。まだ、勇者でも何でもないから……」
 メグは必死に否定したが、両親に勇者一行になったと連絡しなくちゃと、はしゃぎまわって、収拾がつかなくなった。
 ソフィアさんも、エマも、アパもルーカスも皆、大喜びで、その日は豪華な晩餐で、勇者就任祝賀会が開かれることになった。
 流石に、メグも、もう勇者になるしかないと、覚悟を決めた。

 翌朝、二日酔いで、気持ち悪かったが、女王の依頼の件を七人で相談した。
 ロンブル帝国に侵入するには、魔物の森を突っ切る方法と、カーマン山脈を越える方法とがある。魔物の森を抜ける方がずっと早いが、森の主の虎に、二度と魔物砦付近には足を踏み入れないと、約束したので、カーマン山脈越えのルートで、潜入することにした。

 そして、山越えルートを進んでいると、足を引きずる様に歩く、みすぼらしい五人組と出会った。
 酷い怪我で、治癒薬や、治癒魔法を掛けながら、話を訊くと、彼らはロンブル帝国の住人だった。二週間ほど前、魔物軍が突如押し寄せてきて、必死に交戦したが、先週ついに、ロンブル帝国は、彼らの軍門に下り、占拠されてしまったのだとか。
 生き残った人間は、奴隷にされ、過酷な重労働だけでなく、人体実験や、人間同士を戦わせての娯楽、慰み者にもされ、まさに地獄の扱いを受けているのだとか。
 そして、逃走を図ったものは、簡単には殺さず、手足を切り落として、絶命するまで、晒し者にするのだそう。
 それでも、逃走を試みるものは後を絶たず、彼らも五十人ほどで、逃走を図り、ほとんどが捕まったが、彼らだけは、なんとか逃げおおせたのだとか。

 これで、女王からの任務は、達成できたことになるが、その話を聞いたメグが、大人しく王都に帰還する訳がない。
 セージを含め、皆が無謀だと言って説得を試みたが、一人でも助けに行くからと、メグが言い出し、残りの六人も渋々彼女の我儘に付き合うことにした。
 戦闘になれば、全滅は免れないが、気づかれずに潜入できれば、なんとかなるかもしれないと考えたのだ。

 他にも捕虜収容所は存在するかもしれないが、彼らはザラネスクの収容所から逃げてきたという話だったので、ロンブル帝国の首都ザラネスクに向けて、馬を走らせた。
 そして山を越えてすぐの辺りで、赤い煙を見つけた。救難の狼煙だ。
 急いで狼煙の場所に駆けつけると、二十人程の冒険者が、魔物の軍勢と戦っていた。既に戦闘不能で倒れている冒険者も沢山いる。
 魔物軍は、コブラの大蛇と、牛魔人、梟男に、ゴキブリ男のB級四体に、C級六体の合計十体だけだが、B級四体は、A級冒険者五人程度に相当するので、全滅は免れない状況だ。
 メグ達七人が加勢に入ったことで、有利に戦える状態にはなったが、壮絶な戦いが繰り広げられることになった。
 それでも、何とか魔物軍を全滅させることができた。

「助かったよ。俺は、ガルシア王国冒険者を束ねているリンクだ。魔物がロンブル帝国を支配したと聞いて、魔結晶稼ぎに、五十人を集めて来てみたが、少し、考えが甘かった。まさか、魔物同志が手を組んで、編隊になっているとはな。全滅する所だったよ。助けに来てくれて、本当にありがとう。それにしても、お前たち、とんでもなく強いな。どこの国の冒険者だ」
「モーリー王国の『オリーブの芽』というチームで、私はそのリーダーのメグです」
「お前たちが、『オリーブの芽』か。A級魔物を何体も仕留めているとんでもない冒険者チームがあるとは聞いたことがあったが、納得がいったよ。だが、どうしてモーリー王国の冒険者が、こんなところにいるんだ」
「沢山の人間が魔物の奴隷にされて、迫害を受けていると訊いて、助けにきたの」
「バカ野郎。死に行く気か」リンクに大声で怒鳴られた。
「つい、大声をだして済まなかった。人間が、魔物の奴隷にされているのは、俺も心苦しいが、千体以上もの魔物がいるんだぞ。自殺しにいくつもりなら止めないがな」
「でも、助けたいの。見つからないように潜入できれば、逃がせるかもしれないでしょう」
「お前、強いが馬鹿だな。何人が捕虜にされているか知らんが、少なくとも一万人以上は居るだろう。忍び込めたとして、全員逃がせるとでも思っているのか。もし、本気で逃がしたいのなら、頭を使え。国を動かすんだよ。ガルシア王国、ルーメリア共和国、モーリー王国の三国が協定を結び、全軍挙げて、攻め込むしか手はない。我が国も、ロンブル帝国が魔物に支配されたと知り、警戒心を抱いている。魔物退治の協定を持ち出せば、直ぐにでも応じる筈だ。ここは、じっと耐え忍んで、そういう体制づくりに、動くべきじゃないか」
「師匠、リンクさんの言う通りです。ここは、一旦、王都に戻りましょう」
 確かに、一万人以上の人を見つからずに逃がす事なんて、不可能。たった七人で戦闘になれば、あっさり殺されるのは明らか。
 メグも、王都に戻り、女王陛下に働きかけて、三国同盟を結んでもらおうと、考え直した。

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