六人の勇者と……

ha-tsu

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第十二話

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見たことも無いような木や草が生い茂る中、五人は山の頂上を目指して歩いていた。
「ねぇ本当にココの山であってるの?もうヘトヘトで……ちょっと歩けないんだけど……」
礼は列の一番後ろを枝凛に押されながら歩いていたが、つい弱音を吐いてしまう。
「ちょっと!枝凛に押させておいて何言ってるの?枝凛の方が倍疲れてるんだけど。」
「四ノ宮さんは僕を押しつつ魔力を溜めてるんじゃ無いの?」
礼がそう言うと、武が先頭から猛ダッシュで向かってくる。
「さっき魔力って聞こえたが、魔法使えるのか?めっちゃ興味があるんだが、見せてくれよ!」
そう言いながら枝凛に武が迫って来た。
「ちょっとくらいなら良いわよ。」
そう言うと枝凛は礼の肩に手を当てたまま英唱する。
「フライ」
英唱すると、枝凛と一緒に礼も空中に浮かんで行った。
「おぉー初めてみたぜ!魔法って凄いなぁ!!オレにもかけてくれよ!」
武が嬉しそうに枝凛にお願いする。
「ゴメンなさい、今はこれが精一杯なの、これ以上の人数は無理ね。」
武はそれを聞くと、つまらなさそうに先頭へ戻った。
「せっかく魔法かけたんだし、しばらくはこのまま飛んで行きましょう。」
笑いながら枝凛は礼に話しかけた。
「……ってか始めから飛んでいったらこんなに疲れなくて良かったのに。」
ボソッと礼が余計な一言を言った。
数時間歩くと頂上付近に、一つの洞窟を見つけた。
その洞窟は、一見変哲もない洞窟に見えたが、四人は違和感を覚えた。
「何だ?みんなして後ずさって?この洞窟に何かあんのか?」
ただ一人だけ鈍感な人もいたようだった。
「……武くん……ちょっと気付きにくい人だよね……」
「ハッキリいってお茶屋さんは鈍感にゃよ。」
「うわ……一ノ瀬さんハッキリ言い過ぎ……でもそうかも。」
「枝凛も鈍感だと思ったわよ、これだけ違和感を放っている洞窟は無いもの!」
四人は武を見ながらそれぞれに言った。
「まぁいいわ、多分この中にあと一人居ると思うの。」
そう枝凛が言うと、入るのを躊躇いつつ五人は中へと入って行った。
五人は洞窟の奥へと進んで行くと、二つの分かれ道があった。
「なぁこれどっちに行くのが正解なんだ?大体迷路とかなら片手を壁につけて歩いたら必ずゴールに行けるけど……その方法で……」
武がそこまで言うと蓮が武の口に手を当て、少し呆れた表情で首を左右に揺らす。
「どう見てもこの気配がする方へ行ったら会えそうだけど。」
「そうね、枝凛もそう思うわ、この感じ……たぶん何か奥でしてるわね。」
武以外の全員が納得し右の道に進む。
「オレだけ訳分からんのだがなぁ……」
そう一言言うと後ろから武もついて行った。
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