聖女な幼馴染に裏切られた少年、地獄の【一万倍の次元】の修行を突破。最強剣士として学園生活を満喫する

ハーーナ殿下

文字の大きさ
14 / 44

第14話:王女の理由

しおりを挟む
 オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。
 謎の激ヤセでイケメン風に、クラスの女の子からも高い好感度を。

 そんな中で、転入生のお姫様マリエルの強襲を、何とか撃退。
 暴走した彼女を助けるのであった。

 ◇

 気絶したマリエルを抱き合え、オレは校舎に向かう。

「このまま医務室に……そうだ、先生のところに行こう!」

 行く先を変更。
 校舎内にあるカテリーナ先生の個室を、先に訊ねることにした。

 何故なら先生は魔道具のスペシャルとで、回復術に詳しいのだ。

「先生いますか? ハリトです」

 先生の教員個室をノックする。
 今は放課後。
 まだ、いるかな?

「開いています。入ってください」

 よかった、先生がいた。

「はい、失礼します!」

 マリエルを抱きかかえながら、部屋に入っていく。

 白衣のカテリーナ先生は読んでいた本から、こちらに視線を向ける。

 視線の先はマリエルの胸元。先ほどの戦闘で、少し乱れている制服だ。

「ハリト君、もしかしてマリエルさんと、この部屋で性行為をするつもりですか? ここはそういう場所ではありませんが?」

「い、いえ、違います、先生! 実は……」


 まずは部屋にあるソファーに、マリエルを寝かせる。

すぐにエッチな誤解を解くために弁明。
 そして先ほどあった出来ごとを、先生に簡潔に説明していく。

「……なるほど。それは間違いなく“魔力欠乏症”です。私の方で治療しておきます」

 事情を聞いて先生は、寝ているマリエルの治療に当たる。
 薬や色んな魔道具で処置していく。

「う……カテリーナ先生? それにハリト様も?」

 しばらくしてマリエルが目を覚ます。
 よかった!
 まだダルそうだが、意識はハッキリしている。

「ハリト君が、貴女をここまで運んで、私が治療しました」

「ああ、そうでしたか……お手数をおかけしました」

 上半身を起こして、マリエルは頭を下げてくる。
 普通の王女は、庶民は頭など下げない。
 かなり礼儀正しい。

「大丈夫、マリエルさん?」

「はい、ハリト様。私は、もう歩けます……うっ……」

 立ち上がろうとして、マリエルは軽く目まいを起こす。
 何とか歩けそうだが、少しだけ心配な様子だ。

「“魔力欠乏症”は、その内に回復するから大丈夫です。とりあえずハリト君、マリエルさんを特別寮まで送ってください」

「マリエルさんを寮に? はい、わかりました!」

 校舎はもうすぐ閉館となる。
 足元が不安なマリエルを、彼女の寮まで送ってあげることにした。

「あっ、ハリトくん。校内で、くれぐれも不順異性交遊は、いけませんよ」

「し、しませんから! では、失礼します!」

 どうも、あの部屋にいるカテリーナ先生は、エロスに満ちあふれている。
 本人は真面目に注意しているつもりだが、何かアダルトになってしまうのだ。

「よし、行こうか?」

「はい、よろしくお願いいたします」

 マリエルに肩を貸しながら、校舎を後にする。
 外は夕方になっていた。

 彼女の寮まで、一緒に敷地内を歩いていく。

「ハリト様、今回のことは本当に申し訳ありませんでした……」

 歩きながらマリエルが、泣きそうな声で謝ってきた。
 今回の襲撃の事件について、謝罪してくる。

「そんな顔しないでよ、マリエルさん! オレは大丈夫だから気にしないで! ほら、オレはカスリ傷一つないし!」

 腕をグルグル回して、元気なことをアピール。
 満面の笑みで元気づける。

「ふっふっふ……ハリト様、本当に面白い方ですね」

 マリエルに元気な笑顔が戻る。

「そうかな? オレは普通なつもりだけど?」

「いえ、ハリト様は本当に素晴らしい方です。類まれな剣の腕を持ちながらも、一向に驕(おご)ることなく、常に自然体です」

「自然体か……それは、そうかもな」

 王都を出てから、オレは自分に正直に生きることにした。
 常に前向きに、一生懸命に進む。
 だから自然体に見えるのであろう。

「ねぇ、マリエルさん……」

「マリエルでけっこうです」

「それなら、マリエル。一つ聞いてもいいかな? キミがどうして、あんなに強さにこだわっていたかを?」

 気になっていたことを、質問してみる。
 先ほどの襲撃。マリエルは自分の本心を、オレにぶつけてきた。

 そこから感じたのは『彼女の強さに対する、狂気なまでの執着心』だった。

 何しろ命を賭けてまで、【第三階位】の【暴風斬り】を発動してきたのだ。
 尋常ではない理由があるのであろう。

「あっ、でも、マリエルが言いたくないなら、もちろん言わなくても大丈夫だから!」

「いえ、ハリト様には本当に、ご迷惑をおかけしました。私には正直に話す義務があります。少し個人的な話ですが、よろしいですか?」

「ああ、もちろん。オレは大丈夫。そこに座って聞くよ」

 話が長くなりそうなので、途中のベンチに座ることにした。
 小高い丘にあり、遠くには沈んでいく夕日が見える。

 ここならゆっくりと話も聞ける。

「ハリト様……実は私……“強く”なりたいんです」

「強くか……でもマリエルは、あんなに強いよね?」

 オレの疑問が思うのも無理はない。
 転校してきたばかりだが、マリエルの実力はクラスの中でも断トツだ。

 何しろ新入生なのに【第二階位】まで完全習得。
 暴走はしたが【第三階位】にまで、足を踏み入れているのだ。

 おそらくキタエル学園の全生徒の中でも、上位の強さであろう。

(そんな彼女が“もっと強くなりたい”……か)

 オレは何か気が付く。

 ――――王族であるマリエル姫は、王都に住んでいたはず。

 普通なら王都剣士学園に通うのが、彼女の王道。
 あそこなら王都中等部から、高等部にエスカレート式で上がれる。

 だが彼女は、こんな辺境のキタエル学園に、わざわざ転入して来た。
 つまり王都学園で“何か”があったのであろう。

「もしかして前にいた学園で……何かあったの?」

「はい、ハリト様の推測のとおりです。私は前の学園……王都学園の中等部で、“ある者”に決闘で負けてしまったのです……」

「えっ……あんなに強いマリエルが⁉」

「私は完膚なきまで、負けてしまいました。決闘での敗者の条件は、『王都学園を去る』こと。私は王都を去りました。でも、諦めきれず……それではワラにもすがる思いで、北の名門キタエルにやってきました……」

 なるほど……そういうことだったのか。
 マリエルが、あそこまで強さに執着する理由が分かった気がした。

 彼女は決闘で負けた相手に、いつかリベンジしたいのであろう。
 だから危険を承知で、【第三階位】も発動しようとしたのだ。

「でも、マリエル。無理は禁物だよ。ほら、キミは才能があるから、いつかは立派な剣士になれるよ!」

「ありがとうございます、ハリト様。ですが私は早く……もっと強くなりたいのです! あの時の悔しさを、払しょくするために……」

 強さに関してマリエルは、かなり頑固な性格のようだ。
 決意の意思は固く、説得に応じてくれない。

(でも、その気持ち……オレも分かるかも……)

 剣の才能が無いオレは、今まで必死に稽古に励んできた。
 周りの誰から止められて、止めることはしなかった。

 何故なら『強くなりたい!』というのはオレの真なる想い。
 誰かに変えることなど、絶対に出来ないのだ。

(何とかマリエルの願いを、叶えてあげたいな……)

 でも教師でもないオレは、彼女に剣技を教えることは出来ない。
 いったいどうすれば、いいのだろう?

(ん……あっ、そうか!)

 その時、一つアイデアが浮かんできた。
 かなりいい感じの策だ。

 よし、マリエルに提案してみよう。

「ねぇ、オレから提案が、あるんだけど?」

「えっ……提案ですか?」

「そう。マリエルは強くなりたいだよね?」

「はい、そうです!」

「それなら今後、オレと一緒に、修行していかない?」

「えっ、ハリト様と、修行を⁉」

「そう。まぁ、修行といっても、特に難しいことはなくて、実戦稽古的とか武者修行な感じかな?」

「なるほど。でもハリト様、今でも十分、強いのに、特訓を?」

「実はオレ……あまり、あの力は、上手くセーブできないんだ」

 これは嘘でも方便でもなく、本当のこと。

 無料寮を消滅させた後。
 オレは何度か【|雷光斬(ライ・コウ・ザン)】の発動を、試してみた。

 だが上手く発動できなかった。
 おそらく完全には会得していない。

 だからオレも個人的な特訓が必要なのだ。

「上手く発動できない剣術技……それでハリト様は、学園では弱いフリをしていたのですね」

「ま、まぁ、そういうことだね」

 あの時に偶然、発動できたのは内緒にしておこう。
 お互いのプライドのためにも。

「だから、オレと特訓していこうよ!」

 この提案には、オレにもメリットが多い。
 何故ならオレも強くなりたい。

 でも危険なオレの【第一階位】の練習相手を、他のクラスメイトには頼めない。
 しかし才能あるマリエルなら、何とか相手をしてくれるだろ。

 だからマリエルとの個人特訓は、オレも望んでいるのだ。

「もちろん、嫌だったら、断ってもいいよ?」

「いえ、ハリト様。むしろ私の方から、お願いいたします。二人での特訓することを!」

 マリエルは頭を深く下げてくる。

「これからご教授よろしくお願いします!」

 上げた顔は、清々しいほどの表情。
 スッキリとした表情だった。

(おっ、良い表情だな。もしかしたら、これがマリエルの本当の素顔なのかもな)

 彼女は馬車で出会った時から、どこか作った表情をしていた。
 教室でも、なんか他人行儀だった。

 原因はきっと今回のことだったのだ。


 王都学園を追われてから彼女は今まで、思いつめて毎日過ごしてきたのであろう。
 本当の自分の笑顔を抑えて。

「よし、それなら、今日からよろしく、マリエル!」

「はい、ハリト様!」

 そして彼女は本当の笑顔を取り戻した。

「それじゃ、今日はここまで。あとは明日にでも決めていこう!」

 オレたち新たなパーティーを結成した。
 さっそく明日の放課後から、特訓を開始することに。

「さて。それじゃ、マリエルを寮に送って、オレも早く戻らないとな……あっ!」

 そんな時、オレはある事実に気が付く。

「そ、そうだ……オレ、今日から、どこで寝泊まりすれば、いいんだ……」

 今日の朝まで寝泊まりしていた無料寮は、オレ自身が【|雷光斬(ライ・コウ・ザン)】で吹き飛ばしてしまった。

 担任のカテリーナ先生に寮のことを相談するにも、既に校舎は真っ暗。
 他の教員も誰もいない。

「も、もしかして、今宵は野宿かな……でも、なんか雨も降りそうだな……」

 上を見ると、急に暗雲が大接近。
 何の野営道具もなく、この天気で野宿は辛いな。

「それならハリト様、今宵は私の部屋に、お泊りください!」

「えっ、でも、女子寮には、男子の立ち入りは、禁止を……」

「それは大丈夫です。私の部屋は王族用の特別寮なので、校則の治外法権なのです」

「そうなんだ。でも、女の子の部屋に、男子が泊まるのは、さすがに……」

「ハリト様の寮が消えたのも、元の原因は私の暴走。私には恩を返す必要があります! さぁ、こちらにどうぞ! 雨が降ってくる前に」

「えっ、ちょっ、ちょっと、まっててば……」

 マリエルは思いこんだら、強引な子だった。

 しかも魔力が高いでの、腕力も半端ない。
 オレは抵抗することが出来ない。

(マリエルの部屋に……オレが……えっー⁉)

 こうしてオレは王女様の寝室で、夜を明かすことになったのだ。

 ――――色んな意味で、大丈夫か……オレ。


















 ◇



 ――――あとがき――――


 ◇




読んで頂きありがとうございます!

同じような痛快ファンタジーもスタートしました。

こちらも是非よろしくお願いします!



 《タイトル》
『世界ランク1位の冒険者、初心者パーティーに紛れ込み、辺境で第二の人生を満喫する』

https://www.alphapolis.co.jp/novel/832153235/809371928


《あらすじ》

 青年ザガンは《武王》の称号をもつ最強の冒険者で、天神の啓示による世界順列でも最高位に君臨。しかし王都での上位ランカーとの殺伐とした、ランク戦の日々に疲れ果てていた。

  そんなある日、《身代わりコピー人形》を手に入れ自由の身となる。自分の能力に99%激減リミッターをかけ、新人冒険者として辺境の村に向かう。そんなザガンのことを、村の若い冒険者たちはあざ笑う。

  だが彼らは知らなかった。目の前にいるのが世界最強の男であることを。

  これは99%激減でも最強クラスな男が、困っていた荒廃していた村を再建、高ランカーを押しのけて、新たな偉業を達成して物語である。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...