聖女な幼馴染に裏切られた少年、地獄の【一万倍の次元】の修行を突破。最強剣士として学園生活を満喫する

ハーーナ殿下

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第15話:新しい寝床

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 オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。
 謎の激ヤセでイケメン風に、クラスの女の子からも高い好感度を。

転入生のお姫様マリエルの暴走を助け、彼女の不幸な身の上を聞いてやる。



宿なしになったオレは、マリエルの部屋に泊まることになった。

「ハリト様、ここが私の寮でございます」

学園の敷地内にある特別寮に、強引に連れてこられた。

「これが寮……?」

目の前の建物を見て、オレは思わず言葉を失う。
何故なら貴族風の大きな屋敷。
木造長屋の無料寮とは、比べものにならない豪華さだ。

「はい、王族専用の特別寮です」

「なるほど……そうだったね」

マリエルは現国王の娘の一人であり、本物のお姫様。
剣士学園の中でも特別な存在なのだ。

「それでは中に、まずはハリト様の身体の汚れを」

「あ、うん、そうだね」

手を引っ張られるまま、屋敷の門に近づいていく。

「ん? マリエル様!」

「随分と遅い帰りでしたが、大丈夫でした⁉」

正門には門番までいた。
学園の正門は経費の関係で、いなかったのに。
凄い格差だ。

「ええ、心配かけました。自習をして、少し帰宅が遅れました」

「それは幸いでした!」

「お嬢様の御身に何かあったら、我々は腹を切るつもりです!」

話していうる雰囲気的に、王都から連れてきた護衛剣士なのであろう。
かなり強そうな人たちだ。

「ん? 何だ、キサマは⁉」

護衛剣士の鋭い視線が、オレに向けられる。
視線には殺気が込められていた。

「お止めなさい! この方は学友のハリト様……あの“フードの剣士様”です!」

「な、なんと、あの時の剣士様⁉」

「大変失礼いたしました! あの時は我々と姫の命を救っていただき、本当にありがとうございました!」

マリエルの説明を聞いて、護衛騎士の態度が一変。
片膝をついて、オレに対して感謝の言葉を述べてきた。

そうか、あの時の馬車の護衛の人たちだったのか。

「そ、そんなにかしこまらなくても、大丈夫です。顔を上げてください」

「いえ、姫と我々の命の恩人に、無礼な真似はできません!」

「先ほどの無礼の詫びるために、腹を切らせていただきます!」

なんか凄いことにエスカレートしてきた。
主のマリエルに似て、家臣もなんか行動が凄い。

というか、助けて、マリエル。

「お止めなさい、二人とも。ハリト様が困っております。立ちなさい」

「「はっ! 失礼します!」」

「では、中に生きましょう、ハリト様?」

「あ、うん、そうだね」

なんか最初から色々と凄い屋敷。
マリエルに手を引っ張られながら、オレたちは屋敷の中に入っていく。

「うわ……すごいな……これで寮か……」

屋敷の中に入ってからも、驚きがいっぱいだった。
豪華な造りの内装に、立派な調度品の数々。
まさに貴族の別荘といった感じだ。

「まずは私の叔母さまを、ハリト様にご紹介したいと思います」

「えっ、マリエルの叔母さんが、ここにいるの?」

「はい、この屋敷の持ち主で、私の支援者です。ですが、その前に、ハリト様の身体を綺麗にしないとですね……誰か!」

「「はい、お嬢様!」」

マリエルが合図すると、どこからともなくメイド軍団が登場。

「この方はハリト様。私の学友であり、命の恩人“フードの剣士様”であります。浴場でも、丁重に扱うように!」

「「はい、お嬢様!」」

マリエルの命令で、メイドたちがオレを包囲。
そのまま浴場に連行されてしまう。

「えっ……オレ、自分で洗えますが?」

「お嬢様からのご命令なので、諦めてください、ハリト様」

「えっ? ひゃっ、くすぐったい……」

そして全裸にされて、浴場で身体をゴシゴシされてしまう。
綺麗なメイドさんたちに、全身くまなく。

とても恥ずかしくて、ずっとドキドキしていた。

「こちらが着替えのガウンです。ハリト様の制服は、洗濯しておきます」

そして真っ白でフカフカのガウンを着せられる。
凄い手際が良く、抵抗する暇さえない。

「こちらが寝室でございます、ハリト様。それでは失礼します」

着替えが終わったら、客室に案内される。
ベッドと机しかないシンプル部屋。
でも調度品はかなり立派だ。

「ふう……ようやく、息がつけるぞ……」

入館から風呂、この部屋までまるでジェットコースターだった。
ベッドに座って、一息つく。

「それにしても、客室があったのか。本当によかった……」

展望台でのマリエルの口調だと、彼女の部屋で一緒に寝ると、オレは勘違いしていた。
だから個室があってひと安心だ。

「はいるわよ」

そんな時、また事件が起きる。
知らない女性が入ってきたのだ。

メイドさんではない、紫のネグリジェを着た女性。
三十代前半くらいの大人の人だ。

「えっ?」

誰だろう?
ビックリしてベッドから立ち上がる。

「そんなに怖がらなくても、大丈夫よ、坊や。私はマリエルの叔母のイザベーラよ」

「マリエルの叔母さん……あっ、お世話になります、今日は!」

玄関でのマリエルの話では、この屋敷は叔母さんのもの。
主であるイザベーラさんに、頭を下げて挨拶をする。

「あら、礼儀正しいのね、坊や? 凄腕の“フードの剣士様”だと聞いたから、どんな無頼漢と思えば。それに顔も可愛いし、身体の線も悪くはないわ。マリエルが入れ込むのも無理ないわね」

「えっ……⁉」

イザベーラさんはいきなり、オレの身体をペタペタ触ってきた。
大きく開いたネグリジェの胸元から、イザベーラさんの大きい胸が目に入る。

それに甘くて官能的な香水の匂いも。
身体を密着させて触ってくるので、意識が朦朧としてしまう。

「な、何を……イザベーラさん?」

「全身の魔力も凄いわね、あなた。これは……思っていたよりも優良物件かもね。上手くいけば、私の野望も一歩前進するわ……」

だがイザベーラさんは話を聞いてくれない。
オレの全身をくまなく触りながら、何やら呟いている。

よく分からないけど、なんとなく野望が高い内容。
この人は野望値が高い美魔女な感じがする。

「よし。アタナの将来性に賭けるわ! 付いてきなさい、坊や!」

「えっ? どこに?」

だがイザベーラさんは答えてくれない。
かなり強い力で、ぐいぐいオレを引っ張られていく。

(うっ……凄い力だ。もしかして、イザベーラさんも、剣士……なのか?)

マリエルの叔母ということは、天賦てんぶの才能があるのかもしれない。
歩き方から推測すると、元腕利きの女剣士という可能性が高い。

素のオレの力では抵抗ができず、連れていかれてしまう。

「着いたわ。坊やは、今日からここで寝泊まりしない!」

「えっ?」

返事も言わさず、オレは部屋の中に放り込まれる。
部屋の中は先ほどとは違う雰囲気。
白とピンクで統一された女の子の部屋だった。

「ハリト様? 叔母さま?」

「えっ……マリエル?」

驚いた顔をするのは、部屋の主はマリエルだった。
ちょうどお風呂上りだったのであろう。
白くて可愛い薄手のネグリジェを着ている。

「マリエル。この坊や……いえ、ハリト殿と今日から一緒に、この部屋で過ごしなさい! 私たちの悲願達成のため。そして、あなたの未来のために!」

「えっ?」

まさかの強引な命令に、オレは思わず絶句。
それに、いくなら屋敷の主で叔母でも、さすがそれはマリエルも怒るだろう。

「はい……叔母さま。私も覚悟しております……」

「えっ、マリエル?」

だがマリエルは怒っていない。
それどころか覚悟を決めた顔で、オレをベッドに引っ張っていく。
目も少しトローンとしていて、様子が変だった。

「それでは朝まで二人が、この部屋を出ることを禁じます。学園生活を平和に過ごすために、ハリト殿も肝に銘じてください!」

そう言い残してイザベーラさんは扉を閉めて出ていく。

ガチャ、ガチャ。

外から部屋に鍵を何個もかけていく。
本当にオレを外に逃がさないつもりなのだ。

「ハリト様、申し訳ありません。とりあえず明日の朝も早いので……ベッドにはいりしょう……」

「う、うん、そうだね……」

もはや逃げられない状況。
それにマリエルは魔力欠乏症で、早く寝ないといけない。
仕方がいのでオレはベッドに入ることにした。

(こうなったら……)

一緒に寝たふりをして、隙を見て移動。
オレは床で寝ておこう。

(うわっ……けっこう狭いな……)

マリエルのベッドに入って驚く。
二人で寝たら、横の幅はギリギリ。
つまりマリエルとくっついて寝ないと、二人とも落ちてしまうのだ。

なるべく肌がつかない様に、マリエルと一緒に横になる。

「あっ……顔が……」

すぐ目の前に、マリエルの顔があった。

「ハリト様……」

危なく唇同士が、くっつくところだった。
マリエルの目が潤み、頬がピンクになっている。

すごく恥ずかしいので、オレは身体を上向きに変える。

「ハリト様……強引な叔母で、本当にご迷惑をお掛けして、申し訳ありません……」

「い、いや、そんなことないよ。だって、宿無しのオレに、ここまで世話してくれて、本当に感謝しかないよ!」

「そう言っていただければ、私も助かります。実は叔母様は、私の母親代わりなのです……」

「母親代わり?」

「はい、実の母は、私を産んで、すぐに病死しました。それから叔母様が、ずっと世話をしてくれ、だから私も断ることも出来ず」

「そうだったのか……」

何となくマリエルの家族の事情を察する。
彼女の父親は現国王だが、母親は数人いるうちの側室。

実の母を早くに亡くしイザベーラさんが、マリエルの後継人になっているのであろう。

「そして私を庇(かば)ったせいで、このキタエルの別宅まで、飛ばされてしまったのです、叔母様は……」

「えっ……そうだったのか……」

マリエルの話を聞いて、何となく事情を察する。
先ほどのイザベーラさんの野望値が高いことが。

きっと彼女はマリエルと共に、王都に凱旋したいのであろう。

「そっか……色々と、大変だったんだね、マリエルも……」

「ですが今、私は幸せです。こうしてハリト様の隣にいられるので……」

「えっ……?」

その時だった。
マリエルがオレの抱きついてくる。

彼女の小さく膨らんだ胸が、オレの腕に当たってきた。
ネグリジェから真っ白に伸びた足が、オレの素足に絡まってきたのだ。

「マ、マ、マリエル……?」

恐る恐る顔を横に向ける。
そこにあったのはギリギリまで迫っていた、マリエルの美しい顔。

トローン潤んだ瞳と、長いまつ毛。
ピンクに染まった唇に、思わず目が釘付けになる。

ごくり。

思わず唾を飲み込む。

「ハリト様……ハリト様……」

「マリエル?」

そして彼女はそのまま目を閉じてしまう。
オレを抱きかかえたまま、寝息を立て始めたのだ。

(マリエル……疲れと緊張が、ピークに達していたんだな……)

その寝顔を見て察する。
王都学園から追放されて、ずっと張っていた彼女の心。
今ようやく、安寧あんねいの場所を見つけたことを。

(マリエル……ゆっくりお休みなさい……)

抱きついていたマリエルを、そっと離してあげる。
幸せそうな寝顔を見ながら、オレも眠ることした。

明日からは二人の放課後特訓も始まる。

本当に楽しみだな。



そして夜が明ける。

「ん……朝か?」

カーテンの隙間から、朝日の光がこぼれてきた。
早起きを日課にしているオレは、目を覚ます。

(ん……なんだ。この柔らかい感触は?)

オレの全身に、ぷにぷにした感触がある。

(マリエル⁉ あっ……そうだった……)

朝起きると、またマリエルが抱きついていた。
薄いネグリジェから彼女の白い肌があらわ。
オレを包み込むように寝ていたのだ。

「ふにゃ……ふにゃ……」

マリエルも目を覚ます。
でも、まだ寝ぼけている。

「ねぇ、マリエル。朝だよ」

「えっ? ハリト様? し、失礼しました!」

寝ぼけてマリエルが、一気に目を覚ます。
立ち上がって乱れたネグリジェを、直そうとする。

「えっ? キャッ?」

でも足を引っかけて、ベッドから落ちてしまう。
ネグリジェの大きくまくれて、彼女のピンクの下着と太ももがあらわなる。

プライベートの彼女は、かなり“うっかりさん”なのかもしれない。

(ふう……これから大変なことになりそうだな……)

こうしてオレと王女マリエルとの共同生活が、スタートするのであった。
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