聖女な幼馴染に裏切られた少年、地獄の【一万倍の次元】の修行を突破。最強剣士として学園生活を満喫する

ハーーナ殿下

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第33話:快進撃

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オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。
お姫様のマリエルと、猫獣人の少女ミーケ、三人で同居しながら平和で順調な日々。

【学内選抜戦】にオレはマリエルとミーケの三人で挑戦し、一回戦を三連勝で無事に突破する。

そんな中、マリエルに対して悪意の噂が聞こえてきた。



「マリエル、ミーケ、必ず優勝しよう!」

「はい、ハリト様」

「そうだニャん!」

仲間の名誉を回復させるため、改めてオレたちは優勝を誓い合う。

『“ハリト団”の生徒は、二回戦の準備をしてください』

そんな時、アナウンスで名前が呼ばれる。
オレたちの出番が近づいてきたのだ。

「よし、まずは目の前の試合……二回戦を頑張ろう!」

「わかったニャン!」

「次も先鋒は私に、おませ下さい! 三人抜きいたしますわ!」

「でも、マリエルたん、そんなに気合いれても、先鋒は勝ち抜き戦じゃないニャー……」

「あっ⁉ オッホホホ……ですわ。私としたことがウッカリですわ!」

二人とも噂のこと、もはや気にしていない。
調子は良さそうだ。
これなら二回戦以降も何とかなりそうだ。

「さぁ、いこう!」

こうしてオレたちは一致団結して、二回戦に挑む。



それから選抜戦、ハリト団は順調に勝ち進んでいく。

まずは二回戦。
ハリト団は好調。

先鋒のエマリエル。
見事な剣術技の連続攻撃で、相手をノックダウンさせる。

次鋒はミーケ。
猫獣人の身体能力を使い、機動力で勝負を挑む。
最後は得意の地系の剣術技で勝負を決めた。

そして大将のオレ。
突進系の剣術技で一撃決めた。

こうして二回戦もハリト団は三連勝。
無事に突破できたのだ。

「やったニャー、ハリトタン!」

「やりましたね、ハリト様!」

「よし、このまま一気にいこう!」

三人ともスタミナ消費は最小限で済んだ。
モチベーションも高く調子は良い。

この後も上手くいけそうな気がする。



その後もハリト団の快進撃は続いていく。

三回戦は準々決勝となる。

こちらも三連勝と危なげなく突破。



次の四回戦は準決勝。
相手はかなりの強者ぞろい。

特に次鋒は、相手チームのポイントゲッターの強者だった。
だが次鋒のミーケは相手の猛攻を耐え切り、技ありの引き分け。

最終的に二勝一分けで、ハリト団は勝利を収める。

「やったニャー! やったニャー!」

「ミーケ、ナイスファイトでしたわ!」

「二人ともお疲れさん。いよいよ次は決勝戦だね」

準決勝を勝ったので、ハリト団の決勝進出は確定。
対戦相手は、これから決まる。

「よし、決勝の相手を確認しにいこう」

もう一つの準決勝を、三人で見に行くことにした。
オレたちは観客席に座り、次の相手が決まる試合を偵察する。

準決勝クラスになると、残るチームは強者ぞろい。
試合もかなり接戦になるであろう。

「えっ……何ですの、あの三人は……」

だが試合は、あっとう間に終わる。
例の特別参加の三人組が圧勝したのだ。

試合を見ていたマリエルでさえ、言葉を失っていた。

「す、凄く強かったニャー、あの三人は……」

同じくミーケも唖然としている。
相手もかなりの強さだったが、特別参加の三人が一方的な試合を決めたのだ。

唖然としているのは二人だけはなかった。

「な、なんだよ……今の試合は……」

「準決勝が……こんな一瞬で……」

「アイツ等が、あんな……子ども扱いにされて……」

キタエル学園の生徒……仲間を応援していた隣クラスの連中も、言葉を失っている。

何しろ特別参加の他校生に、自分たちの仲間が手も足もでなかった。
キタエル学園としての誇りが、一瞬で打ち砕かれてしまったのだ。

「特別参加か……あの連中のことを、何か知っている、マリエル?」

「あの制服は王都のものとは違います。見たことがない制服ですわ……」

情報通なマリエルですら知らないのか。
それなら知らないのも無理はない。

(よし、それなら、観客席の、あの話好きな連中から、情報収集を……)

意識を聴覚に集中。
オレ得意の地獄耳で盗聴を開始。
耳の先は、観客席の有力者たちだ。

なんかの資料をもっているアイツ等なら、特別参加組の情報も知っているはずだ。

おっ、よし、聞こえてきたぞ。

……『おお! さすがは剣士教団学園の三人は、別格じゃったのう!』

……『ですな! さすがは剣士教団の直属機関ですな!』

……『これで優勝は、彼らに間違いないな!』

有力者たちの会話に中に出てきたのは、聞き覚えのある単語。
 “剣士教団”といえば、観客席にいる怪しげな集団のことだ。

それ以外の情報は、今のところ聞こえてこない。
とりあえずマリエルにもう一度、聞いてみるとする。

「ねぇ、マリエル。“剣士教団学園”って知っている?」

「えっ、剣士教団学園ですか? たしか剣士教団が直接運営している学園……教団の本部がある聖都に、学園があったはずが……」

「聖都にある学園か。そこはどんな学園か分かる?」

「私も詳しくは分かりませんが、大陸にいる信者の中から、特に優れた才能がある子どもを集めて、独自のカリキュラムで剣士を育成している学園……そう聞いたことがあります。それがどうしたのですか、ハリト様?」

「今……いや、さっき廊下で聞こえたんだけど、あの三人組は、どうやら、その剣士教団学園からの特別参加らしい」

マリエルたちにも一応は情報を、教えておく必要がある。
何しろ決勝で当たる相手のことだ。

まぁ、廊下で聞こえた……というのは嘘も方便だが。

『えー、来場の皆さん。今の試合はいかがでした?』

そんな時、アナウンスが流れる。
先ほどまでの司会ではない。
挨拶をしているのは、神官着の小太りの中年男だ。

『私は“剣士教団学園”の理事であり、剣士教団の司祭長のダンチでございます!』

男は自己紹介をしてきた。
“剣士教団学園”の理事……つまり、特別参加の三人を引率してきた責任者だという。

『今回は栄光あるキタエル学園の選抜戦に、当校からも三名が参加させて頂きました。結果は、ご覧の通りでした。この後の決勝戦は、どうなるか既に決していると思いますが、どうぞお楽しみにご覧下さい!』

そう一方的に言い残して、ダンチという司祭長は話を終える。
かなり上からモノを言う相手だ。
聞いているだけは不快感がある。

そして今の挨拶に不快感があったのは、オレだけではない。
周りの席に座る生徒たち……キタエル学園の生徒たちも同様だった。

「くそっ……なんだ、アイツは!」

「ああ、そうだな! なんで、あんな奴らが、うちの選抜戦に乱入してきたんだよ!」

「おい、剣士教団の陰口はマズイぞ……どこに信者がいるか分からないぞ……」

「でも、このままだと、他校生に優勝を持っていかれちまうぞ……」

クラスメイトたちは嘆いていた。
学園生活で最大のイベントの一つである選抜戦。

それが大人に事情らしき特別参加の制度によって、乱されてしまった。

「くそっ! なんなんだよ! そうなったら、オレたちの今までの厳しい授業に耐えてきた苦労は、どうなるんだ⁉」

「ああ、水の泡だな……」

「どうして先生たちは、あんな横暴な奴らに、選抜戦に参加させたんだよ……」

恐らく今回の特別参加してきたのは、大人の事情があったのであろう。
その証拠にキタエル学園の教師陣も、先ほどから苦い顔をしている。

マリエルの話では剣士教団は、独自の強大な影響力を持つ。
きっと司祭長が強引に、自分の生徒を参加させたのであろう。

「とにかくオレたちの決勝戦の相手は決まった。気持ちを切り替えていこう」

「そうですわね、ハリト様。それにしても、あの強さ……決勝戦は、かなり手強い厳しい戦いになりそうですね……」

いつもは自信満々のマリエルだが、今は眉をひそめる。
何しろ先ほどの三人の戦闘力は、今までの相手とは別格。

客観的に見ても、マリエルですらギリギリ勝てる相手。
ミーケに至っては現時点では、かなり勝ちは難しい。

つまり優勝するのは、かなり厳しいのだ。

「そんな顔をするな、マリエル。オレたち三人なら大丈夫だ!」

「ですがハリト様……」

「大丈夫だニャー、マリエルたん! ハリトたんの予言はいつも当たってきたし、頑張ろうニャン!」

「そうですね……はい! 私も今まで以上の力で、決勝戦に挑みますわ!」

マリエルにいつもの自信が戻ってきた。
銀色の髪の毛をかき上げて、笑顔を取り戻す。

『それでは、少し休憩した後に、決勝戦を始めます!』

準決勝が終わったところで、司会者からアナウンスがある。

決勝戦は本日のメイン試合。
休憩をして両チームとも万全の体勢で開始となるのだ。

(剣士教団学園か……厄介な相手だな……)

こうしてオレたちは決勝戦に挑むのであった。
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