23 / 39
第23話:勇者候補としての魔人
しおりを挟む
レイチェル=ライザールの本質を知るために、《勇者杯ミナエル学園選抜戦》に参加。
ボクは準決勝まで楽勝で進出する。
「ふっふっふ……ライン様との再戦、心から嫉妬しながら、待っていました!」
だが準決勝の相手はレヴィ。
ボクと再戦するために、こっそり参加していたのだ。
いや、ちょっと待って。
身内同士で戦って、どうするのだ、レヴィよ⁉
「準決勝戦、はじめ!」
だが審判の合図で、試合が開幕してしまう。
「いくわよ、ライン様ぁ! はぁあああ!」
歓喜の叫び声と共に、レヴィが斬り込んでくる。
蛇の形を模した双剣による、左右からの挟撃だ。
「くっ、速い!」
バックステップで緊急回避。
さすがは七大魔人の一人、《嫉妬のレヴィ》だ。
魔人の力を使わなくても、今までの対戦相手とは比べ物にならない戦闘力。
ボクも片手間で勝てる相手ではない。
「ふっ……それなら“少しだけ”本気を出すとするか!」
今回の選抜戦は基本的に余興。
ボクもポケットから手を出して、レヴィに斬りかかっていく。
「くっ⁉ やりますね、さすがライン様!」
ほほう、今の一撃を受け止めたか。流石レヴィだ。
「だが、これはどうだ⁉ 【疾風乱舞斬り】!」
ボクは“勇者候補としての剣技”を発動。
無数の剣戟をレヴィに加えていく。
「ぐっ……ぐはっ⁉」
連撃に耐え切れず、レヴィが吹き飛んでいく。
「場外! そこまで!」
選抜戦は場外になった者は負け。
レヴィはまだ動けるが、あえて場外にしたのだ。
場外にいる彼女に、手を差し伸べる。
「くっ……さすがはライン様、お見事です」
「いや、レヴィもなかなか楽しめたぞ」
「ありがとうございます。ところで、いつの間にライン様は、勇者候補の剣技の会得をしていたんですか? 授業中はいつも片手間だったのに?」
ボクは優等生を演じているが、授業は基本的に片手間。
それを知るレヴィは驚いている。
「ふっ……ボククラスになると片手間でも会得は可能なのさ」
「なるほど。さすがはライン様です」
だが勇者候補の技も、悪いものばかりではない。
場合によっては魔族の技よりも使える。
半魔のボクは、基本的に両方の技を会得可能。
いつか勇者候補の技も出番がくるかもしれない。
「さて、次は決勝戦か……」
選抜戦のスケジュールは、けっこうタイト。
参加者は回復魔法で、傷とスタミナを全回復してもらう。すぐに決勝戦に移るのだ。
……「それでは決勝戦を行います。両選手、開始線にどうぞ!」
案内があったので、ボクは決勝の準備をする。
準備を終えて、再び開始線に向かう。
「ん? レヴィが参加していたということは、もしや? ああ、やっぱり、そうか」
「ライン様。お手を柔らかに」
決勝戦の相手は、金髪の好青年。
勇者候補としての《怠惰のベルフェ》だった。
もちろん義体で、本体は自室にいる。
「ふん。やっぱりお前も参加していたのか」
「私は嫌だったのですが、レヴィが勝手に申し込みをしていました」
なるほど、そういうことか。
それでも決勝戦にまで進むとは、《怠惰のベルフェ》らしからぬ勤勉さだな。
「実は、こう見えて、負けず嫌いなんです、私は」
「なるほど。お前も《七大地獄《セブンス・ヘル》》のリベンジということか」
「そうですね。あの時は私もライン様も、魔法だけの戦いだったので」
いつになくベルフェは不敵な表情。
《七大地獄《セブンス・ヘル》》でボクに負けたことが、よほど悔しかったのだろう。
「よし、それなら今度は互いに本気だな。勇者候補としてだが」
「はい、では、参ります、ライン様」
勇者候補バージョンのベルフェとの戦いが、幕を開ける。
「いくぞ、ベルフェ!」
選抜戦では、魔法を使うことも可能。
ボクは剣技と魔法の連携で、攻め込んでいく。
「うむ、お見事。ですが!」
一方でベルフェは得意の魔法で迎撃。
カウンター系の魔法を、連続で発動してくる。
「ほほう、やるな。ベルフェ。勇者候補の魔法も、ここまで会得しているとは?」
「いえいえ、ライン様こそ、お見事です。魔族の術を、誰にもバレないように、ここまで勇者候補の攻撃に融合しているとは」
「はん、だからといって手加減はせんぞ!」
「有りがたき!」
ボクたちの戦いは激戦。
決勝戦に相応しい戦いだった。
久しぶりに充実した、戦いのひと時だった。
――――そして決着の時がきた。
「勝者、ライン!」
「「「おおおーー!」」」
観客席にいた候補生たちから、大歓声が上がる。
勝利したのは剣術と魔法を組みわせて、戦ったボクの方だ。
闘技場を降りていく。
「ちょっと、ライン様! なに、ベルフェと楽しそうに、激戦を繰り広げていたんですか⁉ 嫉妬案件ですよ!」
「はっはっは……すまないな、レヴィ。お前とも、今度、ちゃんと戦うから」
先ほど力加減を間違えて、レヴィのことは一撃で、場外にしてしまった。
どうしても勇者候補として手加減するのは、難しいのだ。
……「それでは選抜戦の優勝者は、一組のライン君に決定しました!」
魔道具のアナウンスが流れる。余興として盛り上がる流れだ。
司会の生徒が、ボクのところまでマイクの魔道具を持ってくる。
「さて、優勝したライン君。この後の副賞の対戦相手は、どちらの勇者先生を指名します?」
選抜戦の優勝者には教師である勇者と、対戦する権利が与えられる。
《剣帝》バーナード=ナックルか《大賢者》レイチェル=ライザールの二択だ。
ボクはマイクを手に取る。
「それなら……レイチェル先生の胸を借りたいと思います。よろしくお願いします、先生!」
観客席にいたレイチェル=ライザールに視線を向ける。
これから模擬戦を行う相手に、因縁の相手を指名したのだ。
「ほほう? まさかアタシを指名するとはね。そうきたか、ライン一回生」
こうして現役の勇者との模擬戦に、ボクは勇者候補だけの力で挑むのであった。
ボクは準決勝まで楽勝で進出する。
「ふっふっふ……ライン様との再戦、心から嫉妬しながら、待っていました!」
だが準決勝の相手はレヴィ。
ボクと再戦するために、こっそり参加していたのだ。
いや、ちょっと待って。
身内同士で戦って、どうするのだ、レヴィよ⁉
「準決勝戦、はじめ!」
だが審判の合図で、試合が開幕してしまう。
「いくわよ、ライン様ぁ! はぁあああ!」
歓喜の叫び声と共に、レヴィが斬り込んでくる。
蛇の形を模した双剣による、左右からの挟撃だ。
「くっ、速い!」
バックステップで緊急回避。
さすがは七大魔人の一人、《嫉妬のレヴィ》だ。
魔人の力を使わなくても、今までの対戦相手とは比べ物にならない戦闘力。
ボクも片手間で勝てる相手ではない。
「ふっ……それなら“少しだけ”本気を出すとするか!」
今回の選抜戦は基本的に余興。
ボクもポケットから手を出して、レヴィに斬りかかっていく。
「くっ⁉ やりますね、さすがライン様!」
ほほう、今の一撃を受け止めたか。流石レヴィだ。
「だが、これはどうだ⁉ 【疾風乱舞斬り】!」
ボクは“勇者候補としての剣技”を発動。
無数の剣戟をレヴィに加えていく。
「ぐっ……ぐはっ⁉」
連撃に耐え切れず、レヴィが吹き飛んでいく。
「場外! そこまで!」
選抜戦は場外になった者は負け。
レヴィはまだ動けるが、あえて場外にしたのだ。
場外にいる彼女に、手を差し伸べる。
「くっ……さすがはライン様、お見事です」
「いや、レヴィもなかなか楽しめたぞ」
「ありがとうございます。ところで、いつの間にライン様は、勇者候補の剣技の会得をしていたんですか? 授業中はいつも片手間だったのに?」
ボクは優等生を演じているが、授業は基本的に片手間。
それを知るレヴィは驚いている。
「ふっ……ボククラスになると片手間でも会得は可能なのさ」
「なるほど。さすがはライン様です」
だが勇者候補の技も、悪いものばかりではない。
場合によっては魔族の技よりも使える。
半魔のボクは、基本的に両方の技を会得可能。
いつか勇者候補の技も出番がくるかもしれない。
「さて、次は決勝戦か……」
選抜戦のスケジュールは、けっこうタイト。
参加者は回復魔法で、傷とスタミナを全回復してもらう。すぐに決勝戦に移るのだ。
……「それでは決勝戦を行います。両選手、開始線にどうぞ!」
案内があったので、ボクは決勝の準備をする。
準備を終えて、再び開始線に向かう。
「ん? レヴィが参加していたということは、もしや? ああ、やっぱり、そうか」
「ライン様。お手を柔らかに」
決勝戦の相手は、金髪の好青年。
勇者候補としての《怠惰のベルフェ》だった。
もちろん義体で、本体は自室にいる。
「ふん。やっぱりお前も参加していたのか」
「私は嫌だったのですが、レヴィが勝手に申し込みをしていました」
なるほど、そういうことか。
それでも決勝戦にまで進むとは、《怠惰のベルフェ》らしからぬ勤勉さだな。
「実は、こう見えて、負けず嫌いなんです、私は」
「なるほど。お前も《七大地獄《セブンス・ヘル》》のリベンジということか」
「そうですね。あの時は私もライン様も、魔法だけの戦いだったので」
いつになくベルフェは不敵な表情。
《七大地獄《セブンス・ヘル》》でボクに負けたことが、よほど悔しかったのだろう。
「よし、それなら今度は互いに本気だな。勇者候補としてだが」
「はい、では、参ります、ライン様」
勇者候補バージョンのベルフェとの戦いが、幕を開ける。
「いくぞ、ベルフェ!」
選抜戦では、魔法を使うことも可能。
ボクは剣技と魔法の連携で、攻め込んでいく。
「うむ、お見事。ですが!」
一方でベルフェは得意の魔法で迎撃。
カウンター系の魔法を、連続で発動してくる。
「ほほう、やるな。ベルフェ。勇者候補の魔法も、ここまで会得しているとは?」
「いえいえ、ライン様こそ、お見事です。魔族の術を、誰にもバレないように、ここまで勇者候補の攻撃に融合しているとは」
「はん、だからといって手加減はせんぞ!」
「有りがたき!」
ボクたちの戦いは激戦。
決勝戦に相応しい戦いだった。
久しぶりに充実した、戦いのひと時だった。
――――そして決着の時がきた。
「勝者、ライン!」
「「「おおおーー!」」」
観客席にいた候補生たちから、大歓声が上がる。
勝利したのは剣術と魔法を組みわせて、戦ったボクの方だ。
闘技場を降りていく。
「ちょっと、ライン様! なに、ベルフェと楽しそうに、激戦を繰り広げていたんですか⁉ 嫉妬案件ですよ!」
「はっはっは……すまないな、レヴィ。お前とも、今度、ちゃんと戦うから」
先ほど力加減を間違えて、レヴィのことは一撃で、場外にしてしまった。
どうしても勇者候補として手加減するのは、難しいのだ。
……「それでは選抜戦の優勝者は、一組のライン君に決定しました!」
魔道具のアナウンスが流れる。余興として盛り上がる流れだ。
司会の生徒が、ボクのところまでマイクの魔道具を持ってくる。
「さて、優勝したライン君。この後の副賞の対戦相手は、どちらの勇者先生を指名します?」
選抜戦の優勝者には教師である勇者と、対戦する権利が与えられる。
《剣帝》バーナード=ナックルか《大賢者》レイチェル=ライザールの二択だ。
ボクはマイクを手に取る。
「それなら……レイチェル先生の胸を借りたいと思います。よろしくお願いします、先生!」
観客席にいたレイチェル=ライザールに視線を向ける。
これから模擬戦を行う相手に、因縁の相手を指名したのだ。
「ほほう? まさかアタシを指名するとはね。そうきたか、ライン一回生」
こうして現役の勇者との模擬戦に、ボクは勇者候補だけの力で挑むのであった。
22
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる