25 / 39
第25話:模擬戦の結末
しおりを挟む
選抜戦の後、《大賢者》レイチェル=ライザールと模擬戦を行うことに。
(まさかレイチェル=ライザールは勇者でありながら、“魔族の力”を取り込んだのか⁉)
戦いながら違和感があった。
相手が魔族の力を発動した、可能性があったのだ。
思わず心の中で、危険な考えを浮べてしまう。
相手の勇者魔法に、ボク思考を感知されてしまう危険性がある。
(いや、今は大丈夫だ。“魔族の力”を発動しながら、勇者魔法など使えないからな)
だがボクは思考を正常に戻す。
原理は分からないが、レイチェル=ライザールは魔族の力を発動している。
つまり心を読まれる危険性は、今はないのだ。
(だが、どういう原理だ? たとえ勇者でも、“普通の人”は魔族の力が使えないはずだ……)
魔族の力は魔法とは違う。
いくら修練しても、人は会得することが出来ないのだ。
唯一の例外は半魔であるボクのような存在。
体内と魂に魔族が混じっているからこそ、ボクは魔族の力を《七大地獄《セブンス・ヘル》》で会得できたのだ。
(つまりレイチェル=ライザールは“何かカラクリ”があるのか。あの狂気の研究者に……)
相手は魔族の解剖や研究を、専門にする者。
おそらく研究の過程で“何か”を発見。魔族の力を会得したのだろう。
――――勇者でありながら魔族の力を発動できる。
敵対する者として、これ以上の恐ろしい存在はいない。
(ふっ……だが……)
心の中で笑みを浮かべて、ボクは動き出す。
剣を構えて、レイチェル=ライザールに斬りかかっていく。
「いくぞ! 【疾風乱舞斬り】!」
先ほど同じく勇者候補としての、剣術スキルを発動。
無数の斬撃で、相手に連撃を加えていく。
「無駄なことを、ライン一回生!」
だがレイチェル=ライザールに余裕で回避されてしまう。
先ほどと同じ“謎の回避”をされてしまったのだ。
「それでは反撃といくぞ。こちらかも」
直後、凄まじい攻撃魔法が、ボクに襲いかかってきた。
死角からの完全なる奇襲。
「うわぁああ!」
耐え切ることができず、ボクは場外に吹き飛んでしまう。
……『勝者! ライザール先生!』
心配の合図を共に、司会のアナウンスが響き渡る。
「「「うぉお!」」」
観客席から大歓声が起こる。
圧倒的に勝利した、頼もしい勇者レイチェル=ライザールに対して。
そして果敢に挑んでいった、候補生ラインに対する歓声と拍手だった。
(ふむ。我ながら“良い感じ”で負けられたな)
だが場外に吹き飛んだボクには、そんな称賛の拍手は聞こえていなかった。
何故ならボクは無傷であった。
勝負を早く終わらせるため、先ほどはワザと攻撃を喰らって、自然な感じで場外に吹き飛んだのだ。
観客はもちろんのこと、相手のレイチェル=ライザールですら、ボクの迫真の演技には気が付いていない。
(さて欲しい情報が得られた、余興も終わりだ。これからは本物の復讐の時間といこうじゃないか!)
対峙したボクには、レイチェル=ライザールの本質が見えかけていた。
あとは“本番”で見極めていくだけ。
こうして二人目の勇者への、復讐の時がやってきたのだった。
(まさかレイチェル=ライザールは勇者でありながら、“魔族の力”を取り込んだのか⁉)
戦いながら違和感があった。
相手が魔族の力を発動した、可能性があったのだ。
思わず心の中で、危険な考えを浮べてしまう。
相手の勇者魔法に、ボク思考を感知されてしまう危険性がある。
(いや、今は大丈夫だ。“魔族の力”を発動しながら、勇者魔法など使えないからな)
だがボクは思考を正常に戻す。
原理は分からないが、レイチェル=ライザールは魔族の力を発動している。
つまり心を読まれる危険性は、今はないのだ。
(だが、どういう原理だ? たとえ勇者でも、“普通の人”は魔族の力が使えないはずだ……)
魔族の力は魔法とは違う。
いくら修練しても、人は会得することが出来ないのだ。
唯一の例外は半魔であるボクのような存在。
体内と魂に魔族が混じっているからこそ、ボクは魔族の力を《七大地獄《セブンス・ヘル》》で会得できたのだ。
(つまりレイチェル=ライザールは“何かカラクリ”があるのか。あの狂気の研究者に……)
相手は魔族の解剖や研究を、専門にする者。
おそらく研究の過程で“何か”を発見。魔族の力を会得したのだろう。
――――勇者でありながら魔族の力を発動できる。
敵対する者として、これ以上の恐ろしい存在はいない。
(ふっ……だが……)
心の中で笑みを浮かべて、ボクは動き出す。
剣を構えて、レイチェル=ライザールに斬りかかっていく。
「いくぞ! 【疾風乱舞斬り】!」
先ほど同じく勇者候補としての、剣術スキルを発動。
無数の斬撃で、相手に連撃を加えていく。
「無駄なことを、ライン一回生!」
だがレイチェル=ライザールに余裕で回避されてしまう。
先ほどと同じ“謎の回避”をされてしまったのだ。
「それでは反撃といくぞ。こちらかも」
直後、凄まじい攻撃魔法が、ボクに襲いかかってきた。
死角からの完全なる奇襲。
「うわぁああ!」
耐え切ることができず、ボクは場外に吹き飛んでしまう。
……『勝者! ライザール先生!』
心配の合図を共に、司会のアナウンスが響き渡る。
「「「うぉお!」」」
観客席から大歓声が起こる。
圧倒的に勝利した、頼もしい勇者レイチェル=ライザールに対して。
そして果敢に挑んでいった、候補生ラインに対する歓声と拍手だった。
(ふむ。我ながら“良い感じ”で負けられたな)
だが場外に吹き飛んだボクには、そんな称賛の拍手は聞こえていなかった。
何故ならボクは無傷であった。
勝負を早く終わらせるため、先ほどはワザと攻撃を喰らって、自然な感じで場外に吹き飛んだのだ。
観客はもちろんのこと、相手のレイチェル=ライザールですら、ボクの迫真の演技には気が付いていない。
(さて欲しい情報が得られた、余興も終わりだ。これからは本物の復讐の時間といこうじゃないか!)
対峙したボクには、レイチェル=ライザールの本質が見えかけていた。
あとは“本番”で見極めていくだけ。
こうして二人目の勇者への、復讐の時がやってきたのだった。
22
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる