家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下

文字の大きさ
2 / 15

第2話:新しい人生スタート

しおりを挟む
実家を追放されてしまったボクは、辺境に島流しされる。
家どころか魔物しかない荒野に、一人でポツンと立ち尽くす。

「よし、これから頑張っていこう!」

追放されてしまったことには、正直なところ憤りは感じている。
だが気持ちの切り替えが大事。一日でも長く生き抜くことを決意する。

「まずは衣食住を確保しないとな。衣類はあるから、住居と食料をどうにかしよう!」

とりあえず廃村に向かう。
村の中を進んでいく、二十軒くらいの木造の建物があった。でも全ての建物が半壊している。

先ほどの兄たちの話では、昔アルバート家が送り込んだ開拓団の名残。
魔物だらけのこの領地を開拓できず、獣に襲われて滅びた感じだ。
でも今は他に住むアテはない。

「よし、この建物がいいかな」

廃村の中、一番大きな建物の前にやってきた。
おそらくは村長が住んでいた建物なのであろう。ここも見事に半壊はしている。
ボクが住むには修理をする必要がある。

「それじゃ出すか……【収納】!」

ボクの作った魔道具《収納袋》の中から、リフォーム用の魔道具を取り出す。

シュイ――――ン!

華やかな音と共に、目の前に七体の小人が出現する。
ボクが昔作った、魔道具《魔道人形パペット》だ。
魔道人形パペット》は仕事内容を命令したら、忠実なまで実行してくれる。


この七人の名は《七人小人セブンス・ホビット》といって、得意分野は修理や物作り手先が器用で、腕利きの職人並の技術がある。
あと力もけっこう強く、大木や巨石も持ち運び可能。まさに壊れた家を直すには、うってつけ存在なのだ。

「それじゃ、みんな。“建物”を人が住めるように、直してちょうだい!」

「「「うん! えい、えい、お――――!」」」

可愛い掛け声と共に、《七人小人セブンス・ホビット》が一斉に動き出す。
内蔵している工具を使って、家の修理を始めていく。

ボクは収納袋から修理に必要な材料を、家の前に出しておく。
材料はアルバート領をウロウロしながら、ここ十年で貯めこんでおいた物だ。

「さて修理の間、ボクは周辺の調査でもしておこうかな」

衣食住の中で残るは食料。その中でも一番大事な“水”を確保するために、周囲を村の確認に向かう。

「ここに開拓団の拠点があったということは……あった、川だ!」

村の奥に川が流れていた。
水場の跡もあり、雰囲気的に開拓団の人たちは、この川の水を飲んで生活していたのだろう。

試しに飲んでみる、「うん、美味しい!」かなりの美味しさだ。
少なくともアルバート領の鉄分を含んだ井戸水よりは、何倍も美味しい。

「あれ? もしかしたら追放されたことは、ボクにとって幸せなのかもしれないな……」

アルバート家でこの十数年間、ボクは本当に肩身の狭い生活をしてきた。
あの家にとってボクは異質な存在。今は亡き母の連れ子であり、アルバート家の誰ともボクは血が繋がっていない。

正直なところ追放されなければ家出をしていたくらい、屋敷の中では蔑まされて毎日だった。

「でも、ここではボクを罵倒する家族や、蔑んでくる兄はいない。しかも大好きな魔道具を、正々堂々と使うことも出来る! よく考えたら、こんな素晴らしいことはないぞ!」

大陸の貴族は攻撃魔法至上主義な人が多く、魔道具は軽んじられてきた。
そのためアルバート家でも、ボクは大ぴらに魔道具を使うことが出来なった。

だが今は違う。名目上ではあるが、ここはボクの領地。
誰の目も気にしないで自由気まま魔道具を使える。更に新しい魔道具も、ドンドン作り出していくことが出来るのだ。

「よし、頑張っていくぞ! ……へっ⁉」

気合を入れて後ろを振り向いて、ボクは思わず変な声を出してしまう。
何故なら見たことがある男女三人が、すぐ後ろに控えていたのだ。

「えーと、セバスチャンとレイチェル、それにミーケ……だよね? どうして、こんなところに?」

膝をついて控えていたのは、三人の知った顔。

初老でダンディな白髪オールバックの執事服のセバスチャン。

赤い髪で妖艶なボディのメイド服のレイチェル。

茶色いショートカットで小柄な猫獣人のメイド服のミーケ。

アルバート家に仕えている使用人の三人。
何の気配もなく、いきなりボクの背後にいたのだ。

「も、もしかしてボクを……」

“始末”しにきたのだろうか。
父の命令で、邪魔なボクの命を亡きものに⁉
思わず身構えてしまう。

「突然のことで失礼いたしました、ライル様。我々三名はライル様を慕って出奔しゅっぽんしてまいりました」

三人を代表して、執事長セバスチャンが理由を説明してきた。
出奔しゅっぽん”は領民や家臣が無断で、領地の外に出て姿を消すことだ。つまり……

「えっ? ボクのことを慕って、アルバート家から出てきたの? えっ、三人とも仕事は、どうしたの?」

「仕事は辞めてまいりましたわ、ライル様。ライル様が追放されたと聞いて、三人ですぐに辞表を出して追いかけてまいりましたわ!」

次に答えたのはセクシーなレイチェル。妖艶な笑みで、ボクのことをじっと見つめてくる。

「そ、そうなんだ……でも父上がよく許してくれたね。三人は屋敷の中でも、需要な役職に就いていたのに」

セバスチャンは執事長で、使用人の中でも一番偉い。
彼がアルバート家の裏の仕事を全て回している、といって過言でない。
大げさな話、セバスチャンがいないとアルバート家は、一日も通常稼働できないのだ。

それにレイチェルもメイド長。
数十人いるメイド束ねる才女であり、彼女がいなければ掃除洗濯、料理など回らない。

猫獣人メイドのミーケものんびりしているように見えて、かなり有能なメイドだ。

アルバート家の中核のこの三人が一気に辞めたら、今ごろ大騒動だろう。
よく、あの傲慢な父が許したものだ。

「大丈夫ニャー、ライル様。ミーたちは辞表だけ置いて、勝手に辞めてきたニャー!」

「えっ、そうだったの⁉」

ミーケの説明を聞いて、心の中で納得する。勝手に出てきたのなら、傲慢な父でも止めることも出来ないのだ。

「そうなんだ……あれ? でもおかしいな」

冷静になって、ふと疑問に思う。
ボクは馬の引く護送車で、ここまで運ばれてきた。結構なスピードだった。

それに比べて三人はどう見ても徒歩。
どうして遅れて出発した三人が、もう追いついていたのだろう?

「そんなのは簡単ニャン! ミーたちは隠密の、ゴフ、ゴフッ、ゴフッ!」

ミーケが何か説明をしようとして、レイチェルが慌てて口を塞いでいた。ミーケは何やら怒られている。
いったい何を言おうとしていたのだろう。

「ライル様、失礼いたしました。それで改めてお願い申し上げます。是非とも我々三人を、ライル様の使用人としてお仕えさせてください!」

「えっ、ボクの使用人に? 別にいいけど、お給料は払えないよ」

使用人は毎月、給料を払う必要がある。
特に優秀なこの三人に対して、アルバート家は通常の使用人の数倍の給料を支払っていた。

でも今のボクは名前ばかりの領主。収入は1ペリカもなく、給料が払えないのだ。

「いえ、給料は結構でございますわ! 敬愛するライル様にお仕えすることが、我々三人への最高の褒美となりますわ!」

「そうだニャン! ミーたち三人は自分の食い扶持くらいは、自分で狩れるニャン!」

「是非とも三人をライル様の元へ、使用人として!」

驚いたことに三人とも無給で、ボクに仕えてくれるという。
理由は分からないけど、何か思うところがあるのだろう。無下には断れない雰囲気だ。

「分かった。それなら、こちらこそ、よろしくお願いします! あっ。でも給料はまだ払えないから“使用人”は変だな? それなら“家族”というのは、どうかな? ボクたち四人は家族……それなら一緒に暮らしていても変じゃないし!」

かなり強引だが提案してみる。
何故ならボクは前から“使用人”という言葉が、少し苦手だった。

何故なら実の母さんが生きていた時、ボクによく話してくれた。
……『ライル、人は種族や身分に関係なく、誰でも平等に幸せになるべきなのよ』と。
だからボクもなるべく使用人という言葉を、使いたくなかったのだ。

「「「うっ、うっ……」」」

ん?
気がつくと三人とも涙を流している。
ハンカチで涙を拭くこともなく、大粒の涙をこぼしていた。

「ど、どうしたの、三人とも⁉ ボク、なんか変なことを、言っちゃったかな?」

「い、いえ、ライル様は何も悪くありません。ライル様の尊大な心遣いに、我々の心の琴線と、涙腺が崩壊してしまっただけです。見苦しい所を見せて、申し訳ないです。ああ、寛大なるライル様よ……」

セバスチャンちゃんは子どものように、顔を輝かせている。まるで神を崇めるかのように、ボクのことを見つめてきた。

「ライル様……ああ、ライル様……愛しのライル様……」

レイチェルは涙を流しながら、頬を赤らめていた。まるで恋する乙女のように、ボクのことを尊そうに見てくる。

「やっぱりライル様に付いてきて、よかったニャン!」

ミーケも涙を流しながら、何か叫んでいた。
とにかく三人ともボクに対して、凄く好感度が臨界突破している気がする。

とても恥ずかしい。
けど、凄く嬉しい雰囲気だった。

「それじゃ、とりあえず、四人で住む場所の準備をしようか。あっちに廃村があるんだ!」

三人は廃村を通らずに、まっすぐボクの所にきた感じ。
今後の仮拠点になる村長の家を、修理にしに向かう。

「ん? あれ?」

廃村に到着して、ボクは自分の目を疑う。何故なら“廃村”がどこにもなかったのだ。

「えっ……村が完成している?」

廃村が消えて、綺麗な村が出現していた。
二十軒ほどあった廃屋は、全て人が住めるようにリフォームされていたのだ。

リフォームしたのは《七人小人セブンス・ホビット》たち。仕事を終えて待機していた。

「どうして、こんなことにて? あっ、そうか。命令の出し方のせいか!」

先ほどボクは『建物を人が住めるように直してちょうだい!』と《七人小人セブンス・ホビット》に命令を出した。

だから彼らは『村にある全ての建物』を人が住めるように、直してしまったのだ。
それにしても何という仕事の速さ。前にアルバート領でこっそり使った時の十倍の速度だ。
いったい、どうして、こんなに早くなったんだろう?

「おお、さすがライル様の偉大なる力……」
「これぞ過去に我々を救ってくれた、神なる力ですわ……」
「さすがライル様ニャン……」

村のリフォームされた光景を見て、三人はまた何から声を上げている。
凄まじい尊敬の眼差しで、ボクのことを見つめてきた。

「あっはっはっは……とりあえず、これから四人でよろしく!」

訳が分からないので笑ってごまし、改めて三人に挨拶をする。

ふう……それにしても、いよいよ辺境生活がスタートするのか。
ここは危険な辺境だけど、皆で力を合わせていけばなんとかなるかもしれない。

食料や衣類も四人分くらいなら、ボクの収納袋の中にある。のんびりと辺境生活をしていくのも悪くはない。



だが翌日、事件が起きる。

「ライル様! 我々も領民の末席に加えてください!」
「真の領主たるライル様に、どこまで尽くしていきます!」
「是非とも我々も民に!」
「ライル様、万歳!」

なんと更に移住者が、辺境に押し寄せてきたのだ。
アルバート領にいた領民が数十人、荷馬車で大移動。ボクの開拓村への移住を希望してきたのだ。

「う、うん、大丈夫です! 新天地で頑張っていきましょう!」

と言ったものの、問題が山積み。
さすがに数十人分の食料は、収納していない。あと生活物資も新しく、手に入れる必要があるのだ。

(やれやれ、仕方がないな。まず広大なこの荒野を開墾して……魔物がいそうな森から食料と木材を入手して……あの山から鉱石を採掘して。後は燃料や衣類、上下水道や道を整備して、医薬品と香辛料、酒や娯楽も欲しいな。一番の問題は塩や穀物の必需品だな。よし、頑張って、一つずつ解決していくぞ!)

こうしてボクは三人の家臣と数十人の領民のために、辺境を開拓することを決意した。







だが、この時のライルは知らなかった。

――――アルバート領から向かってくる領民は、まだまだ増えていくことを!

――――それに加えて亡国の姫の一行や、焼け落ちたエルフの森から逃げ出してきたエルフ王女など、どんどん難題を抱えた難民が押し寄せてくることを!

――――そしてアルバート家から討伐隊が向けられてしまう、危険な事件が起こることを!









そして誰も知らなかった。

自由を手にして自重しなくなった、ライルの作り出した魔道具と魔道具《魔道人形パペット》が、そんな困難や事件を規格外に解決してしまうことを。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...