世界ランク1位の冒険者、初心者パーティーに紛れ込み、辺境で第二の人生を満喫する

ハーーナ殿下

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第6話:依頼人

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冒険者仲間で、唯一の親友である故人ゼノス。
オレ宛てに手紙が残されていた。

中身を開封して読んでみる。

――――◇――――

親愛なる我が友ザガンへ

この手紙を読んでいるということは、今はスクルドの村にいるのか?
どうだ、オレの故郷の村は?
素敵なところだろう。

すぐ目の前には美しい湖があり、周囲は森と山に囲まれた自然あふれる環境。
住人たちには常に笑顔があふれ、活気に満ちている。

ザガンが村を歩いていたら、きっと子どもたちが笑顔で寄ってきただろう?
だがザガンは子ども嫌いだから、困っているはずだな、きっと。

あと手紙を読んでいるのは、たぶんウチの実家だろう
たぶん爺ちゃんが、手紙を読んで怒っていただろうな。家族不幸なオレに対して。

今回は、こんな面倒な任務を、お前に頼んで悪かった。
だがオレにとってザガンだけが唯一無二の友。
最期の手紙は、どうしてもお前に託したかったのだ。

スクルドの村はどうだ?
もしも気にいったら、お前も住んでもいいぞ。
オレの妹のリンシアも、ちょうど年頃になっているはず。
きっと死んだ母さんに似て、可憐な乙女に成長しるのだろうな。

ああ……オレも死ぬ前にもう一度だけ、故郷の景色を見たかったな。
美しい自然と、住人の笑顔にあふれた、あの豊かな村を。

あっ、そうだ、ザガン。
万が一、村で何か困っていることがあったら、お前も手伝ってくれないか。

まぁ、あの豊かな村は、何も問題はないと思うけど、万が一だ。
ちなみに依頼料は、その封筒の中に入れてある。

お前にとっては小銭にもならない少額。
だがオレにとっては宝物……ということだ。

オレからの最後のプレゼンということにしてくれ。

それでは最高に美しいスクルドの村を、オレの分まで堪能してくれ。

友ザガンより

――――◇――――

こんな感じの内容だった。

「ゼノス……」

読み終わって思わず、言葉を失ってしまう。
何故なら現実とかけ離れ、厳しい手紙の内容だったのだ。

――――『すぐ目の前には美しい湖があり、周囲は森と山に囲まれた自然あふれる環境だ』

ゼノス聞いてくれ。
今、スクルドの村の周囲は、異様な負と魔の瘴気に囲まれているぞ。

湖の底からは、何かの魔の気配がしている。
このままでは水も沼地のように濁ってしまうぞ。

また周囲の森にも“魔の気配”がする。
何しろ魔獣が、村の近くに出没したのだ。
おそらく近いうちに、森にも悪影響が出てくるだろう。

――――『住人たちには常に笑顔があふれ、活気に満ちている。ザガンが村を歩いていたら、きっと子どもたちが笑顔で寄ってきただろう?』

いや、それどころはない。
残念ながら村には、異常なほどの住民がいない。
子どもたちは餓死寸前で、笑顔はどこにもなかった。

――――『たぶん爺ちゃんが、手紙を読んで怒っていただろうな』

お前の祖父はショックを受けているぞ。
今にも泣き落ちそうなくらいに、落ち込んでいる。お前のことを本当は心より心配して、愛していたのだろう。

――――『オレの妹のリンシアも、ちょうど年頃になっているはず。きっと死んだ母さんに似て、可憐な乙女に成長しるのだろうな』

お前の妹はたしかに年頃になっている。
だが栄養失調で痩せこけて、今にも折れそうな状態だ。

たぶん村の中でも奮闘して、狩りに励んでいるのだろう。
だが正直なところ、彼女が村で一番危険。
このままの衰弱した状態だと、明日にも魔獣や獣に返り討ちに合うかもしれない。

――――『ああ……オレも死ぬ前にもう一度だけ、故郷の景色を見たかったな。美しい自然と、住人の笑顔にあふれた、あの豊かな村を』

ゼノス、もう一度、聞いてくれ。
残念ながらこのままでは間違いなく、お前の故郷は消滅してしまうだろう。

「ふう……ゼノス」

手紙の内容を思い返して、息を吐き出す。
最後まで自分の故郷を思っていた友。心境に共感してしまったのだ。

彼の故郷は窮地に陥っている。
このままでゼノスも天国で浮かばれないだろう。

「……ザガン様? どうなさいましたか? 兄は手紙に何か、書いていましたか?」

「ああ、そうだな。このスクルドの村のことを『死ぬ前にもう一度だけ、美しい自然と、住人の笑顔にあふれた、あの豊かな村故郷の景色を見たかった』と書いてあった」

オレは嘘をつくのが苦手。
だから答えられる内容は、そのまま伝える。

「えっ……兄さん⁉ うっうっ……」

「あの馬鹿ものめ……最期まで、そんなことを……」

手紙の内容を聞いて、リンシアは大粒の涙を流す。
村長も拳を握りしめていた。
きっと家族宛ての手紙には、書いていなかった内容なのだろう。

「さて、悲しんでいるところにすまないが、仕事の話をしてもいいか、村長?」

「――――ん? 仕事だと? どう意味だ?」

「オレは今日から、この村の冒険者となる。歳は食っているが、わけあって駆け出し冒険者。出来る限りの手伝いをしよう」

「えっ、ザガン様⁉」

「な、何をいきなり⁉ 手助けは嬉しいが、残念ながら見てきた通り、ウチの村には自分たちの食う飯もない。冒険者に払う依頼料など、どこにもないぞ?」

提案に二人とも戸惑っている。
この反応も仕方がない。オレの言い方が少しマズかったのだろう。

「自分の食料は、自分で狩るから問題はない。それに依頼料も不要。すでに依頼人から貰っている」

「えっ……どういう意味ですか、ザガン様?」

「そうじゃ、誰から依頼を? ま、まさか……?」

「ああ、そうだ。依頼人はゼノス。これが依頼書で、賃金はこの共通貨幣だ」

唖然とする二人に、オレ宛ての手紙を見せる。
二人は内容を確認してもなお、信じられない表情だ。

「た、たしかに、文面的には依頼書にも見える。じゃが、そんな五ペリカだと、何の収入にもならないぞ⁉」

村長が唖然とする、理由も分かる。
ゼノスの入れていた依頼料は、五ペリカ硬貨一枚。
今どき街の子どもの小遣いにもならない少額だ。

「いや、この五ペリカは普通の硬貨ではない。王都の“この冒険者あり”と言われていた“《天弓》ゼノス”。オレが唯一尊敬する最高峰の冒険者、その男が残してくれた宝物なのだ。オレにとっては数億ペリカの財宝や、古代竜《エンシェント・ドラゴン》の財宝よりも価値はあるのだ!」

この五ペリカ硬貨は、普通の硬貨ではない。
ゼノスが冒険者として初めて稼いだ金なのだ。

彼が紐を通して、いつも首から下げていた宝物。
それをオレは託されたのだ。

「ザガン様……」

「――――くっ! な、なんだ、その分かったような言い分は!」

「お爺様⁉ でもザガン様は、ゼノス兄さんのために……」

「ああ、分かっている。勝手にしろ、ザガンとやら! 協力はするが、期待はしていないぞ……」

村長は肩を震わせながら、後ろを向く。
きっと今の表情を、オレに見られたくないのだろう。

「ああ、分かった。これで依頼の完全に受諾された。これから頼むぞ」

こうして今は亡き友のからの依頼を、受けることになる。
新人冒険者として滅亡寸前の村の、立て直しをするのであった。
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