世界ランク1位の冒険者、初心者パーティーに紛れ込み、辺境で第二の人生を満喫する

ハーーナ殿下

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第8話:村の問題点の洗い出し

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今は亡き友ゼノスのからの依頼を受ける。
新人冒険者として滅亡寸前の村スクルドを、立て直しをすることになった。

村人に飯を振る舞った後、今後の方針を話し合う。
場所は村長の広間で、参加者は村の次の主要メンバー。

村長と孫娘リンシア。
老人会と婦人会の代表。

オレから指名で、少年代表としてラインも参加させた。

「さて、まずは村の現状を聞かせてもらおう?」

この村には不可解なことが多い。
部外者であるオレは、状況確認が必要だ。

「どうして働き盛り成人男性が、ここまで少ない?」

これが村で一番不可解なこと。
働き盛りの成人男性を、ほとんど見かけないのだ。

答えてきたのは女衆の代表。

「ザガンさん、でしたか。ウチの村の男衆は、今は出稼ぎに出ていたのさ、一番近い大きな街に」

「出稼ぎだと? なるほど、そういうことか」

出稼ぎは辺境の集落には、よくある習慣。
農繁期以外は大きな街に出て、肉体労働者として金を稼ぐ。
また農繁期が近づいてきたら、集団で戻ってくるのだ。

「だが男衆は、どうして戻って来ない? 村がこんな状況なら、出稼ぎをしている場合ではないだろう?」

村は究極に危機に瀕している。
成人男性は仕事の途中でも帰還。妻や子供たち家族を、助けてやるはずだ。

「男衆は帰りたくても、戻ってこられないのさ! 西の道が通れなくなって!」

「西の道だと?」

「それについては私の方から説明します、ザガン様」

女衆代表は感情的になってしまった。
村長の孫娘リンシアが、手を上げて補足してくる。

「男衆が出稼ぎに出た街、村との唯一の山道が、崩落事故によって通行止めになってしまったのです。しかも迂回路には魔獣も住み着いてしまい、それで……」

「なるほど、そういうことか。地形的に帰還は難しいのだろうな」

スクルドは北の山岳地帯の辺境にある。
山道が崩落したとなれば、簡単には帰還できないのだ。

「でもザガン様。男衆の皆さんは、必ず帰還してきます。今はきっと、更に迂回して、スクルドを目指しているはずです!」

「いや、この状況では男衆が戻ってきても、根本的な解決にはならない。そうだろ?」

街で稼いで金だけで持ち帰ってきても、何の腹の足しにもならない。

今のスクルドに早急に必要なのは、食料や医療品。塩などの生活必需品だ。
だが迂回路で果たして、食糧など大きな荷物を持って来られるだろうか?

――――いや、難しいのだ。

「は、はい……ザガン様の指摘の通りです」

リンシアたち村人たちも、その問題には気がついていた。
根本的な村の自給自足の問題を解決しないと、焼け石に水に過ぎないのだ。

「では次の質問に移る。どうして、こんなに食料が不足している? 見たところ、狩りと漁業で今まで、生計を立てていたみたいだが?」

「それについては、ワシが話そう」

次に手を上げたのは老人会の長。村長の次に発言力のある者だ。

「たしかにスクルドの村は昔から、狩猟と漁業で生計を立ててきた。じゃが、ここ最近、まったく獲物が捕れなくなってしまったのじゃ……」

「なるほど、やはり、そうか。原因は急に増えてきた魔獣や、湖の変化か?」

「ああ、そうじゃ。森の奥に狩りに行こうとしても、凶暴な魔獣が住みついて、何人もの村の狩人が……あと湖の底にも、何か得体のしれないモノがいるのじゃ……」

これもオレの推測通りだった。
森の奥と湖から“魔の気配”がしていたのだ。

冒険者スキルを制限しているが、今も感覚として魔を感知している。

「そうか。それでリンシアが危険を冒してまで、狩りに出ていたのか? 食料を得るために」

「はい、そうです。でもザガン様が助けてくれなければ、私も危なかったです」

先ほど広場を見た感じだと、今はリンシアが村で一番の狩人なのであろう。
他の狩人は既に、魔獣に殺されてしまったか。もしくは出稼ぎに出ている最中だ。

「ふむ。村の問題点と状況は分かった。それなら今いる全員で、一つずつ解決していくぞ」

「「「なっ……⁉」」」

村の代表者たちは声を上げる。
意外な提案だったのだろう。

「ひ、一つずつ解決って、今までだってアタイたちは、頑張ってきたのよ!」

「ああ、そうじゃ! それをいきなり横から口を出してきて! いくら飯を振る舞ったとは言え、言語道断じゃ!」

「そうじゃ! それに具体的に、どうやって解決をするのじゃ!」

主に反論してきたのは、女衆と老人衆。
子ども代表のラインと、リンシアは口を閉ざしたままだ。

「そうだな。お前たちの反論も、もっともだ。それなら一つ目の問題解決は、お手本を見せてやろう。助手は、ラインとリンシアたちだ」

「えっ……ボクが? もちろんいいけど」

「はい、私で良ければ、手伝いますが。何をすれば……?」

二人は驚きながらも、了承してきた。
これなら何とかなる。

「そうだな、まずは村の鍛冶場に案内してくれ。そこで問題解決の道具を作る」

こうして村の問題を解決するため、第一段階が動きだすのであった。
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