世界ランク1位の冒険者、初心者パーティーに紛れ込み、辺境で第二の人生を満喫する

ハーーナ殿下

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第12話:生きるための狩り

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ドワーフの腕利き老鍛冶師バルドンに、特製のクロスボウの量産を依頼。
村の子どもたちと試射会を行う。
全員のやる気が出たところで、森へ狩りに向かう。

森の中の獣道を進んでいく。
オレが先頭、リンシアが最後尾。子どもたちが中盤だ。

「ほほう? これはなかなかだな」

森の中を移動して思わず声を漏らす。
子どもたちが森の中での動きが、かなり様になっているのだ。

「ボクたちは幼い時から、村の狩りと採取の手伝いをしてきたんだ。あと遊ぶもの、森か湖しかなかったかね」

リーダー格ラインが教えてくれる。
なるほど、そういうことか。家の手伝い遊びで、自然と見に着いた技術なのか。

そういえば天弓ゼノスも森の行動に特に優れていた。
奴の幼い時から、こうして自然と身につけていたのだろう。

「だが、お前たち、もう少し気を引き締めていけ。いくらクロスボウで武装していても、戦闘能力は魔獣の方が上。それを忘れるな」

「「「うん」」」

移動しながら狩りで大事なことを教えていく。
子どもたちは全員が素直な性格。この分だとグングン技術と知識を吸収していくだろう。

「ん? いたぞ。止まれ」

遠目に得物を発見した。
数頭の鹿の群れ。
後方の全員に静かにするように合図をする。

「ザガン様……あれは、三目大鹿みつめおおじかの魔獣ですよ」

「ああ、そうだな。かなり大きいな」

三目大鹿みつめおおじかは鹿類が魔獣化したもの。
見た目とは違い、性格はかなり凶暴。狩人を見かけたら、突進して鋭い角で刺し殺す。
“狩人殺し”で有名な危険な魔獣なのだ。

「どうしますか? 避けていきますか?」

「いや、三目大鹿みつめおおじかは肉が多く。栄養価も高い。全員で狩るぞ」

「えっ……全員で、ですか?」

「ああ、お前たち、教えた通り準備をしろ」

「「「うん!」」」

子どもたちに合図をする。教えた通りに陣形を組んでいく。
身体が大きく力が強い少年たちが、前衛となり盾を構える。
ラインたち試射会で成績が良かった者たちは、後衛となりクロスボウを構える。

「よし、最初にしてはいい感じだな。あと教えた通り、大盾は斜めに構えて、受け流す感じで防御しろ。決して真っ正面から受け止めるな。最悪、腕が折れる」

「「「うん!」」」

今回持たせている大盾はオレが収納で持ち歩いてた予備の品。
何の特殊効果は無いが、軽くて滑りやすい表面加工の品だ。

「よし、それなら三目大鹿みつめおおじかを引きつける。クロスボウ隊はよく引きつけてから、撃つんだぞ。それじゃ、いくぞ」

オレは石を投げつけて、三目大鹿みつめおおじかを挑発する。

『ギュ⁉ ギャラッルウ!』

作戦通り三目大鹿みつめおおじかは興奮。
こちらに向かって突進してくる。
鋭い鹿角をこちらにむけて、凄まじい脚力だ。

「まだだ……よい、今だ、撃て!」

ビュン! ビュン! ビュン! ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!
ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ!

ラインたちクロスボウ隊が一斉に矢を放つ。
何本かが命中。三目大鹿みつめおおじかの身体を貫く。

『ギュ⁉ ギャラッルウ!』

だが三目大鹿みつめおおじかは突進を止めない。
かなりのダメージを負っているが、怒りで直進してくる。
だが動きは先ほどより遅くなっていた。

「第二射、今だ、撃て!」

ビュン! ビュン! ビュン! ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!
ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ! ズシャッ!

このクロスボウは連射式。すぐさ発射が可能なのだ。
先ほどの以上の矢の雨が、三目大鹿みつめおおじかが襲いかかる。
何本かが頭部を貫通して、吹き飛ばす。

バタン

致命傷を受けて三目大鹿みつめおおじかはその場に倒れ込む。
魔獣は普通の獣よりも生命力は高いが、急所を貫けばこうして倒せるのだ。

「よし、よくやったな」
「「「おーーーー⁉」」」

直後、子どもたちから歓声が上がる。
今回はオレとリンシアは一切手助けをしていない。
まさか本当に自分たちで倒せると思っていなかったのだろう。

「すごい……本当にボクたちだけで⁉」
「こんな大人でも無理だった魔獣を⁉」

誰もが三目大鹿みつめおおじかの死体を確認して興奮していた。

「今回は訓練とおり、よくやったな。だが油断はするな。狩りは危険がつきものだ」

今回は的が大きい三目大鹿みつめおおじかだったから、上手くてクロスボウを当てられた。
これが小さい魔獣ならもっと手こずっていただろう。

あと先に得物を発見できたことも要因。
もしも待ち伏せされていたら、かなり危険があったのだ。

そして何より狩れた要因は、相手が攻撃してくる魔獣だったから。
普通の臆病な獣なら、逃げられていたのだ。

「わかったか?」
「「「うん!」」」

興奮しながらも子どもたちは素直に答えてくれる。
こうした吸収力の高い部分は、大人の冒険者にはない長所だ。

「よし、ここから先は何班に分かれて、狩りを行うぞ。オレは見回るから、安心しろ」

それから実戦形式で、狩りを教えていく。
編成は四人一組で一つの小隊方式。
大きな盾を持った二人が前衛で、魔獣の攻撃を防ぐ係り。
後衛の二人はクロスボウで狙いすませて、獣を倒す陣形だ。

「ああ、そうだ。魔獣が突進してきても、怯むな。その盾はよほどの攻撃でも壊れない」
「「「うん!」」」

 辺境に住むこの子ども達は、自然の中で鍛えられ足腰はしっかりとしていた。
身体能力も高く、小型の獣や魔獣なら、なんとか受け流すことが可能。
大型の魔獣は難しいので、オレがサポートしてやることにした。

お蔭で小さな魔獣と獣を、子どもたちで狩っていくことが出来た。
狩った獲物はオレが【収納】スキルでしまっておく。
解体は設備がある村に着いてから、皆で行う。

「よし、次はオレがクロスボウ係りな!!」
「わたしも射ちたい!」
「お前ら、順番どおりにしろ! ザガン兄ちゃんを困らせるな!」

 オレの指示に子ども達は順応に従っているが、ときたま我先に状態になる。
その辺りはやはり、まだまだ精神的に幼いのであろう。

 そんな時は一番年上のリーダー格のラインの出番。一声で静かになる。
こいつは性格的にも面倒見ものよく、村のガキ大将といったところであろう。何かにつけて頼りになる。

「凄いですね、ザガン様。このクロスボウがあれば、食料や毛皮の確保が容易になりますね!」

 同行している狩人の少女リンシアリーシャは、目を輝かせ喜んでいる。
最近、村では彼女が一人で、危険を冒していた狩りをしていた。
だがクロスボウのお蔭で、数倍に狩りの効率が上がっていたのだ。

「よし、全員、集合だ。そろそろ、村に戻るぞ」
「「「うん!」」」

散っていた子どもたちを招集する。
そろそろ夕方が近づいてきた。
陽が落ちる前に、村に戻って解体作業も行いたいのだ。

「さて、今日は初日にしては、なかなかの成果だったな」
「「「えっへっへ……」」」

まさかの大成果に子どもたちは浮かれていた。

「だが忘れるな。狩れたのはお前たちの力だけではない。慢心をすると必ず大きな失敗をする。だから“心”を絶対に忘れるな」

 クロスボウの破壊力に興奮している子ども達に声をかける。安易に使える武器であるだけに、心構えには細心の注意をはらわせていた。

「えっ……心?」
「ああ、そうだ。強くなるためには、心をまず鍛えていく。技と体は次だ。これぞ『心技体』の極意だ」
「心技体……か、たしかに! なるほどね!」
「気を付けていかないとね! 心技体を!」

 子ども達に心技体の教えを復唱させる。
どんな便利な道具でも、使う者によっては危険な破壊兵器になってしまう。
心技体という武道の極意から、オレは子ども達の心構えから鍛えていくつもりだ。

 ありがたいことに子どもたちは素直に従ってくれている。
スクルドの民は大人たちも含めて、純粋で真っ直ぐな性根をもった民族なのだろう。実に素晴らしい民族性だ。

「よし、理解したところで、村に戻る。大人たちを驚かせてやるぞ」
「「「うん! 楽しみだね!」」」

こうしてオレたちは大量の成果を持って、食糧難の村に凱旋するのであった。
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