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第67話:新しい超魔具
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危険なミスリス鉱脈へ向かう準備は整った。
「それでは行きましょう!」
ボクたち三人はミスリス鉱脈へと向かう。
ルートは王都の地下通路を使い、そのままミカエル城の地下へ。ボクが昔、掘っておいた地下通路なので、鉱脈の入り口までは問題なく行けるはずだ。
「あっ、そうだ。その前に、これを起動しておかないと」
地下に潜る前に、一つの道具を【収納】から取り出す。子どもの背丈くらいの超道具だ。
「ハルク君、それは何ですか? 不思議な形をしていますが?」
起動の準備をしていると、サラが興味津々に訊ねてきた。何しろこの超道具の形は少し変わっているからだ。
「これは《無人回転翼機》という、超道具なんだ。機能は……とりあえず見せるね!」
《無人回転翼機》の概念は口で説明するのは難しい。実際に起動してサラに説明をする。
ウィ――――ン
《無人回転翼機》が起動すると、小型のプロペラが高速回転。空に向かって上昇していく。
「えっ⁉ そ、空を飛んだ⁉ 魔法ですか、これは⁉ ついにハルク君が魔法使いに⁉」
まさかの光景にサラは目を丸くしている。
何しろこの大陸で空を飛べるのは飛行系の魔物か、飛行魔法を使える上位魔導士だけ。
奇妙な形をした超道具がいきなり飛翔したので、驚いていたのだ。
「いやいや、まさか。ボクは魔法なんて一つも使えないよ。あの《無人回転翼機》はこの竹トンボと同じ簡単な原理で、飛んでいるのさ!」
ボクは竹トンボを出して、サラに説明をする。
これは街の子どもが遊んでいたおもちゃを、ボクも買ってきたもの。
竹トンボは回転翼と翼をまわすための軸によって構成された、シンプルな飛翔玩具。軸を手のひらでこすって回すと、勢いよく飛翔していくのだ。
「竹トンボは手で回すけど、あの《無人回転翼機》は小型ミスリル・モーターを使っているから、あそこでま自由自在に空を飛べるんだ!」
《無人回転翼機》と竹トンボの基本的な原理は一緒。
だが複数のミスリルプロペラを使っているため、色んな動きが可能。あと魔道具も組み込んでいるから、自由自在に空を飛ぶことができるのだ。
ミスリル・モーターを回転させる動力は魔石。計算によれば一週間くらいは、飛翔していても動力が切れる心配はない。
「竹トンボは私も家で遊んだことがありますが……あんな大きな超魔道具を飛ばせるなんて、さすがです、ハルク君です!」
大きな《無人回転翼機》が空を飛ぶ姿は、たしかに感動的。しかも音も小さいので不思議な光景だ。
「そういえば、あの超魔具は、何に使うんですか? 今回は地下に行くんですよね?」
「そうだね。ボクたちには使わない。使うのはマリエルの警護のためだ!」
今回の超道具の使用目的は、マリエルの警護のため。
事前に彼女に渡しておいた指輪に、《無人回転翼機》が反応するように作ってある。
そのため《無人回転翼機》はマリエルの上空に待機。もしも指輪の持ち主に異変が起きたら、《無人回転翼機》の内蔵兵器が作動する仕組みなのだ。
ちなみに《無人回転翼機》の表面には、《光学迷彩》もセット。ボクの持つ操作魔道具で、透明になることも可能だ。
つまり機能を簡単に説明するなら『誰にも見つかることなく音も静かで、常にマリエルの上空を待機。彼女に危機が迫った時だけ、防衛機能で守る』という超魔具なのだ。
「なるほどです。難しすぎて、よく分かりませんが。マリエル様の身の安全が保たれるんですね!」
大事な親友マリエルのことを案じるサラも、笑顔で納得してくれた。これでボクたち三人が鉱脈に潜っている間も、安心して行動することが可能なのだ。
「よし! それじゃ、行きましょう……っ、ドルトンさん? どうしました?」
先ほどからドルトンさんはずっと無言。《無人回転翼機》を見つめながら、呆れたような、諦めたような不思議な表情をしている。
「いや、何でもない。あんな規格外の発想で、とんでもない機能の作るオヌシに、お手上げしていたところじゃ」
「あっはっはっは……なんか分からないですが、面目ないです」
ドルトンさんが呆れる気持ちも分かる。
何しろ今回の《無人回転翼機》は鍛冶道具の範疇を、“少しだけ”超えている品。
でもマリエルの身を守るために、必死で考案して製作したもの。上手く機能するか分からないけど、作って後悔はない。
「よし、それでは改めていきましょう!」
《無人回転翼機》の操作盤で全ての機能をオンにしておく。姿が消えて、マリエルの警護モードに移行する。
マリエルの安全を確認してから、ボクたち三人は地下への秘密の通路へと向かっていくのであった。
◇
準備を終えて地下道に潜入。ミスリス鉱脈の入り口まではけっこうな距離がある。
そのため荷馬車“ハルク式荷馬車”を【収納】から取り出し、三人で乗り込む。
整備された地下通路を走行して、一気に入り口まで向かう予定だ。
「あれ、ハルク君? この“ハルク式荷馬車”、なんか前と少し変わってないですか?」
中の座席に乗り込んだサラが、違和感に気がつく。王都まで乗ってきた時と、内部と外装が変化しているのだ。
「うん、そうだね。念のためにこの“ハルク式荷馬車”も“少しだけ”改造しておいたんだ」
これから向かうミスリス鉱脈の最深部は、慣れない人たちには危険な場所。だから対応できるように、準備の期間で改造をしておいたのだ。
大きな改造点は、複数の魔道具を各所に組み込んだとこと。お蔭で今まで無かった機能が、荷馬車に追加された。
これから向かう地下鉱脈で、きっと役立つ機能ばかりだ。
「なるほどです。よく分かりませんが、流石です、ハルク君!」
「まったく、こんなに魔改造して、もはや荷馬車と呼んでいいのやら……」
ドルトンさんは何やブツブツ言いながら、自分の指定の席に着く。座席も配置も少しだけ改造してある。
前回と同じく戦闘時は、ボクが車輌を指揮する車長と操縦手。
主砲を照準し射撃を行う砲手がサラだ。
だが砲弾の装填は魔道具と、ミスリル・モーターで自動式に改造済み。
前は装填手だったドルトンさんは、操縦手と砲手の両方をできる副車長に変更になった。
お蔭で誰か一人が欠けても、新しい“ハルク式荷馬車”は移動と戦闘が可能なのだ。
“ハルク式荷馬車・改”を更に改良したものだから、“ハルク式荷馬車・参式”とでも名付けよう。
「それじゃ、いきましょう。ミスリル・モーター、起動!」
キュィ――――ン!
起動スイッチを押すと、荷台の下にあるミスリル・モーターが、高速回転を始める。
モーターの出力も前回の時よりも、更にパワーアップしていた。
今回向かうのは荒れた地下。前回よりもスピードよりもパワーを重視した調整で、パワフルで心地よい金属音だ。
「よし、それではミスリス鉱脈に向けて、“ハルク式荷馬車・参式”、発進!」
こうして全ての準備を終えて、ボクたちは危険なミスリス鉱脈へと向かうのであった。
「それでは行きましょう!」
ボクたち三人はミスリス鉱脈へと向かう。
ルートは王都の地下通路を使い、そのままミカエル城の地下へ。ボクが昔、掘っておいた地下通路なので、鉱脈の入り口までは問題なく行けるはずだ。
「あっ、そうだ。その前に、これを起動しておかないと」
地下に潜る前に、一つの道具を【収納】から取り出す。子どもの背丈くらいの超道具だ。
「ハルク君、それは何ですか? 不思議な形をしていますが?」
起動の準備をしていると、サラが興味津々に訊ねてきた。何しろこの超道具の形は少し変わっているからだ。
「これは《無人回転翼機》という、超道具なんだ。機能は……とりあえず見せるね!」
《無人回転翼機》の概念は口で説明するのは難しい。実際に起動してサラに説明をする。
ウィ――――ン
《無人回転翼機》が起動すると、小型のプロペラが高速回転。空に向かって上昇していく。
「えっ⁉ そ、空を飛んだ⁉ 魔法ですか、これは⁉ ついにハルク君が魔法使いに⁉」
まさかの光景にサラは目を丸くしている。
何しろこの大陸で空を飛べるのは飛行系の魔物か、飛行魔法を使える上位魔導士だけ。
奇妙な形をした超道具がいきなり飛翔したので、驚いていたのだ。
「いやいや、まさか。ボクは魔法なんて一つも使えないよ。あの《無人回転翼機》はこの竹トンボと同じ簡単な原理で、飛んでいるのさ!」
ボクは竹トンボを出して、サラに説明をする。
これは街の子どもが遊んでいたおもちゃを、ボクも買ってきたもの。
竹トンボは回転翼と翼をまわすための軸によって構成された、シンプルな飛翔玩具。軸を手のひらでこすって回すと、勢いよく飛翔していくのだ。
「竹トンボは手で回すけど、あの《無人回転翼機》は小型ミスリル・モーターを使っているから、あそこでま自由自在に空を飛べるんだ!」
《無人回転翼機》と竹トンボの基本的な原理は一緒。
だが複数のミスリルプロペラを使っているため、色んな動きが可能。あと魔道具も組み込んでいるから、自由自在に空を飛ぶことができるのだ。
ミスリル・モーターを回転させる動力は魔石。計算によれば一週間くらいは、飛翔していても動力が切れる心配はない。
「竹トンボは私も家で遊んだことがありますが……あんな大きな超魔道具を飛ばせるなんて、さすがです、ハルク君です!」
大きな《無人回転翼機》が空を飛ぶ姿は、たしかに感動的。しかも音も小さいので不思議な光景だ。
「そういえば、あの超魔具は、何に使うんですか? 今回は地下に行くんですよね?」
「そうだね。ボクたちには使わない。使うのはマリエルの警護のためだ!」
今回の超道具の使用目的は、マリエルの警護のため。
事前に彼女に渡しておいた指輪に、《無人回転翼機》が反応するように作ってある。
そのため《無人回転翼機》はマリエルの上空に待機。もしも指輪の持ち主に異変が起きたら、《無人回転翼機》の内蔵兵器が作動する仕組みなのだ。
ちなみに《無人回転翼機》の表面には、《光学迷彩》もセット。ボクの持つ操作魔道具で、透明になることも可能だ。
つまり機能を簡単に説明するなら『誰にも見つかることなく音も静かで、常にマリエルの上空を待機。彼女に危機が迫った時だけ、防衛機能で守る』という超魔具なのだ。
「なるほどです。難しすぎて、よく分かりませんが。マリエル様の身の安全が保たれるんですね!」
大事な親友マリエルのことを案じるサラも、笑顔で納得してくれた。これでボクたち三人が鉱脈に潜っている間も、安心して行動することが可能なのだ。
「よし! それじゃ、行きましょう……っ、ドルトンさん? どうしました?」
先ほどからドルトンさんはずっと無言。《無人回転翼機》を見つめながら、呆れたような、諦めたような不思議な表情をしている。
「いや、何でもない。あんな規格外の発想で、とんでもない機能の作るオヌシに、お手上げしていたところじゃ」
「あっはっはっは……なんか分からないですが、面目ないです」
ドルトンさんが呆れる気持ちも分かる。
何しろ今回の《無人回転翼機》は鍛冶道具の範疇を、“少しだけ”超えている品。
でもマリエルの身を守るために、必死で考案して製作したもの。上手く機能するか分からないけど、作って後悔はない。
「よし、それでは改めていきましょう!」
《無人回転翼機》の操作盤で全ての機能をオンにしておく。姿が消えて、マリエルの警護モードに移行する。
マリエルの安全を確認してから、ボクたち三人は地下への秘密の通路へと向かっていくのであった。
◇
準備を終えて地下道に潜入。ミスリス鉱脈の入り口まではけっこうな距離がある。
そのため荷馬車“ハルク式荷馬車”を【収納】から取り出し、三人で乗り込む。
整備された地下通路を走行して、一気に入り口まで向かう予定だ。
「あれ、ハルク君? この“ハルク式荷馬車”、なんか前と少し変わってないですか?」
中の座席に乗り込んだサラが、違和感に気がつく。王都まで乗ってきた時と、内部と外装が変化しているのだ。
「うん、そうだね。念のためにこの“ハルク式荷馬車”も“少しだけ”改造しておいたんだ」
これから向かうミスリス鉱脈の最深部は、慣れない人たちには危険な場所。だから対応できるように、準備の期間で改造をしておいたのだ。
大きな改造点は、複数の魔道具を各所に組み込んだとこと。お蔭で今まで無かった機能が、荷馬車に追加された。
これから向かう地下鉱脈で、きっと役立つ機能ばかりだ。
「なるほどです。よく分かりませんが、流石です、ハルク君!」
「まったく、こんなに魔改造して、もはや荷馬車と呼んでいいのやら……」
ドルトンさんは何やブツブツ言いながら、自分の指定の席に着く。座席も配置も少しだけ改造してある。
前回と同じく戦闘時は、ボクが車輌を指揮する車長と操縦手。
主砲を照準し射撃を行う砲手がサラだ。
だが砲弾の装填は魔道具と、ミスリル・モーターで自動式に改造済み。
前は装填手だったドルトンさんは、操縦手と砲手の両方をできる副車長に変更になった。
お蔭で誰か一人が欠けても、新しい“ハルク式荷馬車”は移動と戦闘が可能なのだ。
“ハルク式荷馬車・改”を更に改良したものだから、“ハルク式荷馬車・参式”とでも名付けよう。
「それじゃ、いきましょう。ミスリル・モーター、起動!」
キュィ――――ン!
起動スイッチを押すと、荷台の下にあるミスリル・モーターが、高速回転を始める。
モーターの出力も前回の時よりも、更にパワーアップしていた。
今回向かうのは荒れた地下。前回よりもスピードよりもパワーを重視した調整で、パワフルで心地よい金属音だ。
「よし、それではミスリス鉱脈に向けて、“ハルク式荷馬車・参式”、発進!」
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