家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下

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第6話:今宵の寝床

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家出したボクは転移装置で、遠い国に転移。
ダラクという都市国家に到着。

冒険ギルドに合格して駆け出しだけど、憧れの冒険者のなることが出来た。



ゼオンさんたちに魔石を渡した後。

「それじゃ、ハリト。この魔石の山はオレたちの方で、換金しておく。ところで本当にオレたちに預けてもいいのか、この宝の山を?」

「はい、ゼオンさんたちのことは信頼しています。こちらこそ換金よろしくお願いいたします!」


今のダラク冒険者ギルドは貯蓄がほぼゼロらしい。
だから毎回、王城や商人の所に、ゼオンさんたちが換金にしに行っているという。

「ふっ……まったくお前には、驚かされてばかりだな、今日は。ほら、これが証明書だ。明日の朝にギルドに顔を出してくれ」

「はい、分かりました」


ボクは今日街に来たばかりのよそ者。
ゼオンさんを信じて換金してもらうことにした。

冒険者ギルドの建物を後にして、オレは広場に出る。

「ん? もうこんな時間になっていたのか?」

陽が傾いている。
もうすぐで夕方になり、夜になるであろう。
陽が落ちる前に、今日の寝床に移動しないといけない。

「あっ……どうしよう。今宵は、どこに泊まろう⁉」

まさかの問題に直面する。
ボクは今日、この街にやって来たばかり。
常宿も探しておらず、泊まる場所が見つけないなのだ。

「どうしようゼオンさんたちに、聞こうかな……でも、今さら中に戻るのもな……」

何となく気まずい。
あんなに勢いよく飛び出てきたのに、すごくカッコ悪い。

「ふう……でも、どうしよう泊まる所……ん?」

そんな時だった。
広場の陰から、誰か視線を感じる。

ジーーー。

こっちを凝視してくるのは神官着の少女だ。

あれ、あの子は?
見覚えのある神官見習い。

さっきは墓場で会った、司祭見習少女マリアだった。

ジーー

なんかマリアはすごくボクの方を見てくる。
本人は隠れているつもりだけど、すごいバレバレだ。

あっ、そうだ。
あの子に聞いてみよう!

マリアの方に近づいていく。

「ねぇ、マリア。ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」

「ひっ⁉ えっ? 見つかった⁉」

隠れていたマリアは飛び上がって驚く。
やっぱりバレていないつもりだったんだ、本人は。

「えーと、ちょっと聞きたいんだけど、この街で格安で泊まれる宿はないかな?」

「えっ、宿ですか?」

「そう贅沢は言わないので、今宵一晩だけでも」

「ハリト君……この街に今、基本的に営業して宿屋はありません。なにせ、この状況なので……」

「あっ、そうか。」

ゼオンさんの話を思い出す。
ダラクの街には今は旅人や行商人が全く来ない。

原因は周囲の街道は、魔物や野盗で溢れかえっているから。
そいつらはこの街の中央にある宝物庫を狙っているのだ。

そのため旅人や巡礼者を相手して宿屋が、軒並み廃業しているのだろう。

「宿屋が無いのか……これは困ったぞ……」

家族からのトレーニングで野宿をしたことはある。
でも、ここは初めてきた街。

いきなり広場で野宿をしたら、街の人に迷惑なるかもしれない。
あと冒険者ギルドにも迷惑をかけてしまうかも。

うーん、困ったぞ。

「えーと、ハリト君。困っていますか?」

「あっ、うん。ちょっと……」

「そ、それなら一件だけあります。今宵、泊まれる場所が」

「えっ、本当⁉」

「はい。それでは案内しますね」

「うん。ありがとう、マリア!」

マリアの後を付いて街を歩いていく。

いや……泊まる所があって、よかった。
これで皆に迷惑をかけないですむぞ。

いったいどんな所なんだろう?
宿屋は営業してないから、長期滞在用の場所とかな?

そんな事を考えながらマリアの後を付いていく。

「着きました。ここです、ハリト君」

「えっ? ここ……?」

マリアの案内で到着したのは、小さな一軒家。
お世辞にも綺麗で豪華とは言えない。
かなり薄汚れて、古い民家だ。
ということは民泊みたな場所なのかな、ここは?

「どうぞ、こっちが入り口です」

「あっ、うん。失礼します」

マリアの後に続き中に入っていく。
中も質素な感じの作り。
宿屋や民泊というより、普通の民家だ。

「ここが台所で、奥が寝る所です」

「なるほど。あっ……でも、勝手にこんなに入ってもいいの? ここは人様の家なのに?」

「いえ、問題ないです。ここは我が家なので……」

「えっ……『我が家』って、それってつまり、マリアの家に……ボクが泊まるってこと? あっ、それじゃ親御さんに挨拶をしないと!」

まさかの事実に急に緊張してきた。
マリアの実家にお世話になるとは。
いったいどんなご両親なんだろう?

「ウチは……両親はいません」

「あっ……そうだったんだ。ごめん……」

「いえ、気になさらずに。豊かではありませんが、生活はしていけてますので」

「そっか……ボクと同じ位の歳なのに、一人前なんだねマリアは……ん? ご両親がいない……?」

その時である。
オレはある事実に気が付く。

(えっ……つまり……今宵は……マリアと二人きりで、ここで夜を過ごすって……こと⁉)

急に心臓がドキドキしてきた。
今まで年頃の女の子と、一緒に過ごしたことはない。

こんな時はどうすればいんだろうか?

「き、着替えるので、後ろを向いてもらってもいいですか、ハリト君?」

「えっ? あっ⁉ ご、ごめん⁉」

マリアがいきなり神官着を脱ぎだした。
家の中の服に着替えるのであろう。

慌ててオレは後ろを向く。
でも、振り向く時に、後ろ姿のマリアの素肌が見えてしまった。

すごく真っ白な背中の素肌で、腰は凄く細い。
あと、腕の隙間から少し大きめの胸が見えてしまった。

(うっ……エルザ姉さんとは全然違う……)

我が家の姉はたしかに美人だ。
でも日焼けして結構筋肉質な部分もある。
もちろん女として見たことはない。

だから初めて見る異性の、しかも可愛い女の子の肌。
ボクの心臓はマグマのようにバクバクしてきた。

(心を落ち着かせるんだボクよ! こんな時はどう対応すれば……あっ、そうだ! “冒険王リック”の冒険譚を思い出すん……)

ボクの愛読していた冒険譚。
その中には青年リックが、若い女性と同じ宿に泊まる話もあった。

その内容を思い出して、この場の対応を策を見つけるんだ。

(あれはたしか……《リック青年編》の第二章だったはず……えーと、あのシーンの文章を思い出すんだ……)

こう見えて記憶力はけっこう良い。
頼みのワンシーンを、心の中で音読してヒントを探す。

(えーと、たしか……『裸の女が目の前にいたら、まずはジッと目を見つめる。そして激情に駆られるまま口づけを。その後は獣のように互いの欲望を、裸体でぶつけ合うのだ』だ!)

いや、いや、これはマズイでしょ⁉
『激情に駆られるまま口づけ』とか『獣のように互いの欲望を、裸体でぶつけ合う』とかって、どういうことだよ⁉

たしかに心臓が破裂しそうなくらいに、バクバクしている。
これがリックの語る『激情』とか『獣のような欲望』なのか⁉

(ど、どうしよう……明らかに寝る場所も一個ないし、今宵はどうなるんだろう……)

間取り的に台所以外は、部屋はない。
つまりこのリビングの端にある、ベッドみたいな所で、二人で寝るのだろうか?

い、いや、そんなことを考えちゃダメだ。
マリアは好意で泊めてくれるんだから?

「ねぇ、ハリト君? 大丈夫?」

「えっ?」

すぐ後ろにマリアが近づいていた。
混乱して接近に気がつかなかった。

後ろを振り向けない。
どうしよう。

――――そんな時だった。

誰かが家に入ってくる。

「ただいま、姉さん! あれ? お客さん?」

入ってきたのは八歳の少年。
マリアと顔が良く似た男の子だ。

「あれ『姉さん』……って、つまり、その子は?」

「そうです。私の弟で、唯一の家族のレオンです。この家に一緒に住んでいます」

「おお、そうか! 弟君か! それは良かった!」

すごい安心した。
なるほど、そういうことか。

そう言われてみれば、マリアは両親はいないと言っていた。
でも他に家族はいない、とは言っていない。

つまりボクの勘違いだったのだ。

ふう……。
とにかく第三者がいてよかった。

ありがとう、弟君。
今宵はお世話になります。

「ん?」

その時だった。
弟レオン君を直視てして、ボクはあることに気が付く。

「その……足は? もしかして」

「はい。レオンは魔物にやられてしまいました……」

「えっ……」

レオン君は松葉杖を使っていた。
その右足は膝から下が無かったのだ。
「呪いがある魔物らしくて、司祭様でも回復できない欠損なんです……」

マリアの顔が急に曇る。

そうだったのか……。

なにか手助けしてあげたいけど、こんなボクに出来ることはあるかな……。
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