家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下

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第18話:新たなる場所へ

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家出したボクは都市国家ダラクで、憧れの冒険者のなることが出来た。
隣街との交易ルートの足がかりを作り、『満月襲撃』の城壁の防衛の任務も完了。

同居人のマリアの魔力の流れを、正常化する手伝いも出来た。



マリアの魔力が正常化して、日が経つ。

冒険者ギルドの今日の街の仕事を終えて、ボクは街の中を移動していた。
そんな時、“ある噂”が耳に入ってくる。

……「なぁ、知っているか? 最近、教会に“凄い神官の子”がいるみたいだぞ?」

……「ああ、知っている。たしか急に頭角を現してきた子だろ? 何でも物凄い聖魔法で、色んな奇跡を連発しているらしいぞ」

……「それに重病人や怪我人も、一気に治してくれるらしい。なんでも【次世代の聖女候補】って呼ばれているらしいぞ」

……「なんでも、その子は、今はこの先に孤児院で、治療の慈善活動をしているらしいぞ」

……「本当か? それじゃ、ひと目でいいから、見に行ってみようぜ」

そんな感じの街の噂だ。

「【次世代の聖女候補】⁉ 凄そう……どんな子なのかな? ちょっと見にいってみよう!」

今日は仕事も終わり、この後の用事はない。
寄り道をして、噂の【次世代の聖女候補様】を見に行くことにした。

しばらく進むと、凄い人だかりが出来ている。
あれが、そうだろう。

きっと、みんなも【次世代の聖女候補様】を見物に来たのだろう。
人だかりの最後列に並ぶ。

身長がまだ低いボクは、人だかりの隙間から、背伸びをしてみる。

うーん、ちゃんと見えないな。
神官着の女の子がいるのは、見えるんだけど、顔までは見えないな。

――――そんな時、前の人だかりが、パッと開ける。

おお、ナイスタイミング。
あそこから見てみよう。

そう思い前に進んだ時。

「おい、【次世代の聖女候補様】が通るぞ」

「道を開けてさしあげろ!」

あっ、まずい。
そういうことだったのか?

急いで、ここをどけないと。

「ん?」

そんな時、見覚えのある少女を見つける。

「あれ、マリア? こんな所で、何をしているの?」

孤児院から出て、こちらに歩いてきたのはマリア。
お世話になっている同居人だ。

「ハ、ハリト君? どうして、ここに?」

「いやー、街で【次世代の聖女候補様】っていう子の、噂を聞いて見物に来たん!」

「うっ……ついに恐れていたことが」

ん?
何やマリアが気まずい顔をしている。
どうしたんだろう?

そんな時、見物に人から、新たな声が聞こえてきた。

「おい、あの冒険者の子、【次世代の聖女候補様】と知り合いなのか?」

「いや、違うだろう。【次世代の聖女候補様】は優しいから、誰にでも答えるのだ」

「さすがは【次世代の聖女候補】マリア様だな」

そんな噂だ。

「えっ……もしかして今、巷で噂の【次世代の聖女候補様】って……マリアのこと⁉」

「ふう……そうです。でも一体誰もお蔭でこんなことになったと、思っているんですか、ハリト君!」

「えっ……」

よく分からないけど、この場で立ち話はマズイ気がする。

その日の夕方、家に帰ってから話を聞くことにした。



マリア家の夕食後、いつもの団らんタイムになる。

「……という訳で、ハリト君が私を魔改造したお蔭で、あの翌日から大変だったんです。ララエル様が噂を騒いで広めたり、司祭長様や女官長様に呼ばれて、怪我人の治療をしたり、聖魔法で呪いを除去したり。それでいつの間にか【次世代の聖女候補様】なんて異名の噂が、街に広がっていたのです」

「そ、そっか、それは大変だったね。あれ? でも、おめでとう、なのかな? この場合は?」

「いえいえいえいえ、何を言っているのですか、ハリト君! つい先週まで神官見習いだった私が、いきなり何段階も昇進して、【次世代の聖女候補様】なんて、勝手に呼び名まで付けられているのですよ!」

「ご、ごめん、マリア……」

「ちょっと、お姉ちゃん。それは言いすぎだと思うよ。修行をお願いしたのは、お姉ちゃんなんだし、ハリトさんも悪気はないんだし! それにハリトさんが凄い冒険者なことは、お姉ちゃんも知っていたんでしょ!」

「うっ……レオン。そうですね、アタナ言う通りです。今までの生活が急転したので、私も混乱していたのかもしれませんね。ごめんさい、ハリト君」

「うんうん。謝らなくても大丈夫だよ、マリア。とりあえず気にしないで、これからも頑張っていこうよ」

こんな感じで、マリアの問題は片付いた。
街の【次世代の聖女候補様】フィーバーは、もう少し続くかもしれない。

でも前向きに考えたら街の人たちにも、フィーバーする余裕が出てきたことだ。

つい先月までは、生きることも大変だったダラク市民。
でも今は誰もが、心に余裕が出てきたのだ。

微力ながらも手伝いしてきたボクにとって、これ以上の幸せなことはない。

よし、今日も幸せな夢を見られそうだ。



翌日になる。
今日も冒険者ギルドに出勤日。

あまり早く行き過ぎても、誰もいない。
日課の街の散策をしてから、ギルドに向かう。

「おはようございます!」

「おう、ハリト。今日も元気だな」

ゼオンさんは今日も朝一で、事務仕事をしている。
数人のギルドメンバーと、色んな仕事の受注や、報告など大変そうだ。

「ゼオンさん、今日は何か仕事がありますか?」

「うーん、今のところは待機だ。昼前には仕事がある」

「了解です!」

なるほど今は待機か。
それまで何をしようか。

あっ、そうだ。
コツコツと掃除をしていこう。

「よし、掃除をやるか! ん?」

――――玄関で掃除をしようとしていた、そんな時だった。

誰かがギルドに入ってくる。

女の人だ。
依頼人かな?

「ハリト様、見つけましたわ! 今日はこちらにいらしたのですね!」

「えっ……ララエル……さん?」

ギルドに飛び込んできたのは、金髪縦ロールな神官の女性、ララエルさんだ。

「うれしいですわ! 名前を覚えていてくださったのですね、ハリト様!」

「えーと、まぁ、はい。ところで今日は、どんな御用ですか? もしかしてギルドに依頼とか?」

「いえ、違います。先日もお願いしましたが、私の聖魔法の力を高めて欲しいのです!」

ああ……やっぱり、そのことか。

あの後も何回か、断っている。
けど全然話を聞いてくれないんだ、この人は。

マイペースというか、強引というか。
まさか冒険者ギルドにまで、乗り込んでくるとは。

ん?
ララエルさんが、冒険者ギルドに?

ボクはおそるおそる後ろを、ゼオンさんを見てみる。

「ラ、ララエル、お前、どうしてここに?」

「あら、誰かと思えば、冒険者の仕事をし過ぎて、家族に愛想を尽かされた方ではないですか?」

しまった。
恐れていたことが、やっぱり「起きてしまった。

マリアの話では、ゼオンさんとララエルさんは実の親子。
でも今の夫婦は別居中で、ララエルさんは母親側の味方。

つまりララエルさんの方は、ゼオンさんに厳しい態度なのだ。

「はぁ……相変わらず、母親に似たキツイ言い方だな。だが元気そうで、良かった、ララエル」

「な、なんですの……急に父親ぶって。わたくしは許してないですから。数年前の誕生日の日に、急にギルドの仕事に行っちゃったことを」

「ああ、そうだな。だからお詫びとして、欲しがっていたアクセサリーを買ってやっただろう? ん? お前、今でも、それを身につけているのか?」

「こ、こ、これは偶然ですわ! 偶然、身体に付いていたのです。決して父親から頂いたプレゼンだから、肌身離さず付けている訳でありませんから、もう!」

ん?
なんか、あれかもしれない。

ララエルさんの方は、父親ゼオンさんのことを、そこまで嫌っていない感じなのかな?
素直になれない、だけな感じだ。

「ああ、そうか。それでもオレは嬉しいぞ。いつでも、ここに……ハリトに会いに来い。ギル関係者とし、オレが許してやる」

「えっ、ゼオンさん⁉」

まさかの展開に、ボクは思わず声が出てしまう。
見るとゼオンさんの口元に、悪い笑みが浮かんでいる?

もしかしてボクを生贄にして、実の娘の顔をたまに見ようとしているの⁉

えー、それは無いでしょう⁉

「それではハリト様。ギルドの人の許しも出たので、ゆっくりとお話しましょう?」

「えーと、誰か……」

誰か助け欲しい。
ララエルさんからの束縛から。

――――そう思っていた時だった。

誰かがギルドに、駆け込んできた。

「ゼオン、大変だ!」

焦った顔で、飛び込んできたハンスさん。
街の守備隊長の騎士だ。

いつも冷静なハンスさんが、こんなに慌てているのは初めてみる。
どうしたんだろう?

幼馴染であるゼオンさんが対応する。

「どうした、ハンス?」

「実は昨夜、王城に賊が潜入した」

「なんだと、賊が? またか⁉ で、どうした?」

「なんとか賊は撃退した。だが王族の方が一人、毒を負ってしまった。その方が先ほど急に、容態が悪化してしまったのだ」

「ちっ……そいつはマズイな」

「だから手を貸して欲しい! 優れた聖魔法の使い手の助けが、今すぐ必要なのだ!」

そう言ってハンスさんの視線が、こちらに向けられる。

なるほど。
もしかしたらララエルさんのことを探しに、ハンスさんは来たのかな?

ララエルさんは少し変わっているけど、聖魔法の才人らしい。
王家の人の治療の手助けになるだろう。

「ああ、いいぜ。連れていけ。その代わりオレも付いていく。そいつは“普通”じゃないから、監視に慣れた奴が必要だ」

おお、ゼオンさんも行くのか。
これは大ごとになりそうだな。

駆け出しの冒険者の自分は、ここで成功を祈ることしか出来ない。

「それは助かる。それなら急いでいくぞ、ハリト君!」

「えっ? ボク……ですか?」

「もちろんだ、さぁ、私が同行するから、城に行きます!」

「えっ? えっ? お城に⁉ ボクが?」

こうして訳の分からないまま、ハンスさんに連れられていく。

場所はお城に。
目的は王族の人の治療に。

え……?

どうなるんだろう、ボクは……。
















 ◇



 ――――あとがき――――


 ◇




読んで頂きありがとうございます!

同じような痛快ファンタジーもスタートしました。

こちらも是非よろしくお願いします!



 《タイトル》

 「追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ち、いきなり《超伝説級》フル装備で冒険者デビューする。ミスリル石を1億回も採掘して戦闘力も凄かった」

https://www.alphapolis.co.jp/novel/832153235/854370307


《あらすじ》

 鍛冶師ハルクは幼い時から、道具作りが好きな青年。だが独裁的な国王によって、不本意な戦争武器ばかり作らされてきた。
  
 そんなある日、ハルクは国王によって国外追放されてしまう。自分の力不足をなげきつつ、生きていくために隣の小国で冒険者になる。だが多くの冒険者が「生産職のクセに冒険者とか、馬鹿か!」と嘲笑してきた。
 
 しかし人々は知らなかった。実はハルクが地上でただ一人《鍛冶女神の加護》を有することを。彼が真心込めて作り出す道具と武具は地味だが、全て《超伝説級》に仕上がる秘密を。それを知らずに追放した独裁王国は衰退していく。

 これはモノ作りが好きな純粋な青年が、色んな人たちを助けて認められ、《超伝説級》武具道具で活躍していく物語である。
 「えっ…聖剣? いえ、これは普通の短剣ですが、どうかしましたか?」
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