家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下

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第28話:ターニングポイント

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家出したボクは都市国家ダラクで、憧れの冒険者のなることが出来た。
今のところ駆け出し冒険者生活は順調。

ダラク城での巡回の仕事も始動。
そんな中でクルシュ姫と話をする機会があった。



クルシュ姫と別れてから、ボクは城から出ていく。
マリア邸に戻っていく。

「ただいま!」

「あっ、ハリト君お帰りです。ちょうど晩ご飯も出来ていますよ」

「おっ、本当? いつもありがとう、マリア」

「いえいえ。ん? ハリト君、何か元気がないですね? 城で何かありましたか?」

「えっ……分かるの?」

マリアに指摘されて驚く。
実は帰路はずっと、クルシュ姫のこと考えていたのだ。

「ハリト君は嘘がつけないので、顔にもすぐ出てしますから」

「あっ、そうか。そうだなったね」

「私で良かったら、話しくらいなら聞きますよ? 夕食の後にでも」

「本当? ありがとう、サラ」

有りがたい提案だった。
今回の件は迂闊、誰にも話せない。

でもクルシュ姫の呪印のことを、マリアも見ている。
夕食後、レオン君が寝た後に、彼女に相談することにした。



レオン君は寝息を立てて寝始めた。

ボクはマリアに話をすることにした。
念のために【防音】の魔法を発動しておく。

「……という訳で、クルシュ姫はあの呪印のお蔭で、色々と困っているみたいなんだな」

「なるほどです。一度の城の敷地から、外に出たことがないのは、少し可哀想そうですね……」

同じ年頃の少女として、マリアは共感していた。
生まれた時から外出したことがない、クルシュ姫のことを本気で可哀想に思っていた。

「あと、クルシュ姫の健康が心配なんだ。体重も異常なまでに軽くて……あのままじゃ、いつか栄養失調で倒れちゃうかも」

「そうですか、それも心配ですね。ん? ハリト君は姫様の体重を? 身体を持ったのですか?」

マリアは目を見開いて驚いている。
普通は一介の庶民は、お姫様の身体に触ってはいけないのだ。

「あー、それは、偶然というか、彼女を支えるために、少しだけ」

「ふう……良かったです。でもハリト君のことだから、何が起きても心配じゃないですが」

「いやー、心配させて面目ない。でも、クルシュ姫のことは何とかしてあげたいんだよね」

「でも呪印は勝手に解除しちゃ、駄目なんですよね?」

「うん、そうだね。王家の問題に関係しているらしいんだ。だから、もう少し調べてみるよ」

「分かりました。私の方でも、教会で何か調べておきます」

「えっ、本当? ありがとう、マリア!」

素直に嬉しい提案だった。

ダラク教会は由緒ある場所。
もしかしたらクルシュ姫の呪印に関して、安易か情報があるかもしれない。

「よし、それじゃ。今日はここまでしようか? 明日から、少しずつ調べていくしかないね」

「そうですね」

こうしてこの夜の話は終わる。

互いにクルシュ姫と王家の秘術について、調べていくことにした。
行動を起こすのは、事情を調べてからでも遅くない。



次の日になる。

「それじゃ、行ってきます!」

いつものように朝の準備をして、冒険者ギルドに向かう。
道中はいつものルートで、まず街の散策へ。

駆けながら、街の光景を見ていく。
少しずつ活気が戻ってきた広場の市場バザール

買い物客と市民の笑顔を見ながら、今日の一日のエネルギーを充電していく。

その後はいつものように冒険者ギルドに。

「おはようございます、みなさん!」

「おお、ハリト。今日も元気だな」

「ゼオンさんも朝早くからご苦労様です!」

朝一からギルドの事務仕事している、ゼオンさんに挨拶。
熊のように顔をしているが、この人は元ダラク騎士で爵位持ち。

だから経理の仕事も出来るのであろう。
改めて尊敬する。

「ちなみに今日は何か急ぎの仕事はありますか、ゼオンさん?」

「うーん、今のところは大丈夫かな? 街の方もかなり安定してきたからな」

「そうですよね。市場バザールも前よりも、品揃えがよくなっていました」

「ああ、そうだな。これもお前のお蔭だぞ」

「あっはっはは……ありがとうございます」

ゼオンさんに褒められると、何か恥ずかしい気分。
笑って照れ隠してして、感謝を伝えておく。

「あっ、そういえばハンスの奴が、お前に今日にでも会いに来るぞ?」

「えっ、ハンスさんが?」

いったい何の用事だろう。
街の守備隊長だから、警備や防衛のことかな。
ボクで良ければいくらでも力になる。

「もしかしたら次回の《満月の襲撃》の対策かもな?」

「ああ、なるほどです。あと二週間後ですからね」

月に一回の万月の時、大陸の魔物は活性化する。
常時、魔物に狙われているダラクの街には、魔物の大軍が押し寄せてくる。

それが通称《満月の襲撃》。
ダラクの街が一番の脅威に怯える夜だ。

「そういえばゼオンさん。先手を打って、魔物を狩りに行ってもいんですか? ダラク近郊の怪しい場所に?」

「ん? 見つけることは可能なのか、ハリト?」

「はい、例の【完全探知エクス・スキャン】をもっと広範囲で使えば、だいたいの魔物は検知できます」

「ほ、本当か⁉ あれ以上の広範囲が可能なのか⁉」

「そうですね。全力でいけば、たぶん、大陸の半分くらいまでなら、いけます?」

「なっ……『大陸の半分』……だと?」

「はい。あっ、でも探知の精度は落ちてしまうので、あまり使い道はないですが」

「はっはっは……相変わらず基準が別次元だな。まぁ、今回はダラク周辺の危険地帯だけもいいぞ。ダラク冒険者ギルドを総動員して、魔物狩りといくか?」

最近のダラク冒険者ギルドも、余裕が出てきた。
街の生活が安定してきたために、外へ出ていけるようになったのだ。

「そうですね! 頑張って協力します!」

街の周辺の魔物の数を減らしていけば、《満月の襲撃》の危機も減っていく。
最終的には街の市民が怯えることも、無くなるようにしたい。

「おい、野郎ども! 今度、時間が空いた時に、魔物狩りに行くぞ! もちろんハリトの支援付きでな!」

ギルドで待機しているメンバーに、ゼオンさんが声をかける。

「「「おー!」」」

メンバーから歓声が上がる。

「魔物狩りか、久しぶりだな!」

「ああ、ようやく冒険者らしくなってきたな、オレたちも!」

「たくさん魔物を狩って、魔石も手に入れるチャンスだな!」

「ああ。これで子供たちに新しい服を買ってやれそうだな!」

ギルドメンバーは吉報に大喜び。
魔物狩りは危険があるが、儲けも多い。
まさに一攫千金の大チャンスなのだ。

そんな光景を見て、オレは心がほっこりする。

(ああ、いいな……これぞ……冒険者という感じだな)

最初ここに来た時、冒険者ギルドとして機能していかなった。

街の人からの依頼は無く、ギルドメンバーも雑務に追われる日々。
誰も“冒険”の余裕はなかったのだ。

でも今は違う。
誰もが目を輝かせていた。
困っている人を助け、一攫千金を夢見る冒険者の顔をしているのだ。

(本当に良かった……これからもボクも微力ながら手伝っていこう!)

――――そう心に誓った時だった。

妙な胸騒ぎがする。

「ん⁉ えっ⁉ なんだ、これは⁉」

今まで感じたことがない不安感だ。

これは……上?
空の上が、何か変だぞ?

何かが起きてきそうだ。

――――その時だった。

「おい、みんな! 大変だ! 空が! 陽がやばいぞ!」

外の鍛錬場にいたメンバーが、飛び込んでくる。
かなり焦った様子だ。

「「「どうした⁉」」」

全員で外に出ていく。
そして空を見上げる。

「「「なっ……」」」

全員が言葉を失う。
信じられない光景が、上空にあるみたいなのだ。

少し遅れてボクも外に出て、上を見上げる。
そして空の異変に気が付く。

「あれは……陽が隠れていく⁉ まだ早朝なのに⁉」

驚いたことだった。
朝日が段々と黒くなっていくのだ。

あれは自宅の本で見たことがある現象。
たしか皆既日食かいきにっしょくだ。

でも、あんな異様な皆既日食は、本と違う。
初めて見る光景。

それ今はまだ早朝なのに、どうして、こんな現象が起こるのだろうか?

――――そんな時、また異変を感知する。

「ん? これは……まさか⁉」

北の方に意識を向ける。
先ほど発動した【完全探知エクス・スキャン】に、大きな反応を発見したのだ。

「どうした、ハリト? 何かあったのか⁉」

ボクの異変に、ゼオンさんが気付く。

「はい……凄く大きな反応の魔物が、こっちに近づいてきます。ちょっとヤバイ個体です、これは」

「なんだと⁉ お前が……ハリトが『ヤバイ』だと⁉ 時間は?」

「この距離と移動速度だと……一時間以内には、この街の上空に到達します」

相手は空を飛んで移動してきている。
速度はそれほど速くはない。

だが反応が普通ではない。
それに明らかに敵意を出して、直線でこのダラクを目指してきている。

「そうか。こいつは《満月の襲撃》どころの騒ぎじゃないな……おい、野郎ども! 急いで街の市民に連絡していけ! あと、誰かハンスのところに走れ! このことを伝えるんだ! 四十分後に、北の城壁に完全武装で集合だぞ!」

「「「おう!」」」

ゼオンさんの指示で、ギルドメンバーは一斉に動き出す。
全員が今回のことに一致団結。
蜘蛛の子を散らすように、仕事にとりかかる。

「ゼオンさん、ボクは何をすれば?」

「お前は城に行って、バラストに今のことを伝えろ。あと出来たら陛下にも! 城の……いや国の危機だと! その後は北の城壁に来てくれ!」

「はい! 必ず伝えてきます!」

とんでもない事件が起きた。

ボクは全力疾走で城へと向かうのであった。
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