家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下

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第27話:クルシュ姫

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家出したボクは都市国家ダラクで、憧れの冒険者のなることが出来た。
今のところ冒険者生活は順調。

ダラク城の警備の仕事で、城の中を巡回していた。



そんな中、クルシュ姫の護衛らしき女騎士に、襲撃を受けてしまう。

「ちっ、賊のくせに鋭い奴め! 我が主クルシュ様には、指一本も触れさせんぞ!」

早く誤解を解かないと。
でも、どうやって⁉
相手は話を聞いてくれない雰囲気。

「怪しい賊め、成敗してやる! はぁああ!」

また女騎士は攻撃をしかけてきた。
鋭い剣で斬り込んでくる。

「うっと!」

何とか回避。
よし、弁明しないと。

「えーと、誤解です。ボクは冒険者ギルドからきた、ハリトと申します」

「ちっ⁉ また躱《かわ》されただと⁉ しかも冒険者ギルドから来たなど、怪しい奴め! はぁああ!」

ダメだ。
話しが通じていない。

バラストさんが言っていた通り、この王宮の騎士には連絡が来てないのだろう。
賊だと思って、ボクに連撃を喰らわせてくる。

「うぉっと⁉」

何とか回避して、一回後方に下がる。

さて、どうしたモノか。
どうやって無実なことを証明しよう。

クルシュ姫さんには危害を与えるつもりはないことを、この人に証明したい。

ん?
何か、相手の状況がおかしいぞ。

「キ、キサマ⁉ まさか姫を人質に捕るつもりで、そこに回避したのか⁉」

「えっ……? あっ⁉」

ボクが回避した先に、ちょうどクルシュ姫がいた。
女騎士から見たら、ボクはお姫さんを盾にして格好になったのだ。

「くっ……こうなった私の命を賭けてでも、姫様をお救いする! はぁあああ……」

女騎士が何かの剣技を、繰り出そうとしている。
かなり危険そうな技だ。

何とか止めないと。
でもどうやって。

――――そんな時だった。

ボクの前に、背中を向けて立ちはだかる少女がいた。

「イリーナ! お止めなさい! この方は賊などではありません!」

クルシュ姫だった。
ボクのことをかばってくれたのだ。

イリーナと呼ばれた女騎士は、突然のことに固まる。

「えっ……姫様? その者を、ご存知なのですか?」

「ええ、この方は《自由冒険者》ハリト様……私を毒から救っていただいた、命の恩人です!」

「な、なんと……その者が……くっ、失礼いたしました」

イリーナさんは剣を収めて、片膝を付いてきた。
何とか誤解が解けたのだ。

ふう……良かった。
無益な争いが収まってくれた。

これでも勇気を出して、前に出てくれたクルシュ姫のお蔭だ。
ありがとうございます。

「ふっ……ふう……」

だがクルシュ姫は、その場に座り込みそうになる。

「だ、大丈夫⁉」

慌てて抱きかかえて、彼女を助ける。
うっ……凄く軽い。

異常なまでに体重が、軽すぎる。
支えて思わず驚いてしまう。

「キサマ! 姫様に軽々しく触るな!」

もの凄い形相で、イリーナさんが駆けてきた。
また剣を抜こうとしている。

「だ、大丈夫です、イリーナ。少し眩暈めまいがしただけです」

クルシュ姫は何とか自分の力で立つ。
そしてボクに向かって、礼のポーズをしてくる。

「見苦しいとことをお見せしました、ハリト様。改めまして先日は、誠にありがとうございました」

「そ、そんなにかしこまらないでください、お姫様! ボクは当たり前のことをしたまでなので!」

いきなり身分の高い人に、謝れてしまった。
どぎまぎしてしまう。

「いえ、何度お礼を言っても、足りません。何かわたくしにできるお礼があったら、何でも仰ってください」

「えーと、それじゃ、もう少し柔らかい感じで、話をして貰えると助かるかな? ボク敬語が苦手なので。あと『ハリト様』も何か恥ずかしいかな?」

「分かりました。これで大丈夫ですか、ハリト様」

クルシュ姫は簡単な口調になる。

でも『様付け』は止めない。
恥ずかしいけど、慣れていくしかない。

「えーと、クルシュ姫様は、あの後の体調は大丈夫ですか?」

「クルシュと呼び捨て下さい、ハリト様。あと私にも敬語も不要です」

「それじゃ、クルシュ。体調は大丈夫?」

「はい、お蔭さま。この通り元気です」

クルシュは軽く動いて、見せてくれる。
けっこう軽い身のこなしだ。
ちょっとビックリした。

「ひ、姫様⁉ あまり激しく動かれては⁉」

女騎士イリーナさんも心配している。

でもこの感じだとクルシュは元々、身体を動かのす好きそうだ。

「もしかしてクルシュは、身体を動かすのは好きなの?」

「はい、幼い時は、よく木登りや、川下りをして遊んでいました、この庭園で」

「えっ⁉ それは凄いね」

先ほどの貧血のイメージと違う。
思わず声に出して驚いてしまう。

「ですが、ここ数年は……」

クルシュの顔が急に暗くなる。
自分の全身ある呪印を、静かに見つめていた。

「もしかして、それが原因で、運動が?」

「はい、ハリト様。実は、このダラク王家の秘術で、私は……」
「姫様! そのことを、このような部外者には、いけません!」

クルシュの言葉を、イリーナさんが血相を変えて止めに入る。
秘術ということもあり、他言はしてはならないのであろう。

「大丈夫です、イリーナ。ハリト様はわたくしの命を救ってくれた方。それにバラスト団長をはじめ、城の危機も救ってくれた方です。下がりなさい」

「は、はい。かしこまりました」

イリーナさんはしぶしぶ口を閉じる。
でもボクのことを静かに睨んできた。

ちょっと怖い。

「失礼しました、ハリト様。詳しくは話せませんが、この王家の秘術の影響で、私《わたくし》の健康は少し悪くなりました。ですが、これもダラク王家で“召喚の巫女”の才を受け継いだ者の、運命なのです」

“召喚の巫女”という新しい単語が出てきた。

でもどこかで聞いたことがあるような気がする。
どこで聞いたのかな?
お爺ちゃんの昔話で、どこか聞いたような。

そんな中でも、クルシュの話は続いていく。

「ですからわたくしは身体が阻害されても、後悔はありません。このダラクの国のため……ゆくゆくは大陸を守るための宿命なのです」

クルシュは真っ直ぐな目をしていた。
眼下に広がるダラクの街を、静かに見つめている。

その横顔は夕日を浴びて、眩しく光っていた。
きっと街の民のために、彼女は自分の運命を受け入れているのだ。

「そっか……強いだんね、クルシュは。ボクと違って……」

「えっ、ハリト様が⁉ あんな強大な聖魔法の使い手なのにですか?」

「実はボクは実家から家出してきた、弱虫なんだ。家の色んなことから逃げてきたんだ」

「そうだったんですか……」

「だからダラクの街では頑張りたいんだ! 困っている人を助けて、一人前の冒険者になりたいんだ! そしていつか胸を張って、家族にも報告したいんだ!」

家出したことに後悔はない。
でも今なら家族のことも少しは理解できる。
だからダラクでは逃げ出したくないのだ。

「そうだったんですね。ハリト様なら必ず叶います、その夢は!」

「あっはっはは……ありがとう。ちなみにクルシュは夢とないの?」

わたくしは……一度でいいので、あのダラクの街を歩いてみたいです。あと、街の外の景色も見てみたいです」

「ん? もしかしてクルシュは、街に行ったことがないの?」

「はい。恥ずかしながら、この城の敷地から今まで、一歩も出たことがありません」

「えー、一歩も⁉」

まさかのことに思わず声を出してしまう。
普通のお姫様でも、外出くらいはするはずなのに。

「もしかして、その王家の秘術があるから?」

「はい……この秘術を受けた者は、城の敷地の外に出られないのです、永遠に……」

説明してクルシュは顔を曇らせる。
でもすぐに笑顔に戻る。

「あっ、すみませんでした。こんな辛気臭い話をして……」

「姫様、そろそろ部屋に戻る時間です」

そんな時、時間を告げる鐘がなる。
女騎士イリーナさんが静かに告げてきた。

「ええ、そうね、イリーナ。それではハリト様、今日はありがとうございました。話しが出来て本当に楽しかったです。またよかったら、私と話しをしてくれませんか?」

「えっ? ボク? うん、こんな自分で良かったら、いつでも!」

「本当ですか! それでは明日も同じ時間に、ここで待っております!」

クルシュは挨拶をして、屋敷の方に身体を向ける。
身体が衰弱してきた彼女は、あまり外の風には当たれないのであろう。

ボクは黙って見送ることしか出来ない。

「クルシュ……姫か」

そして心の中には、何とも言えないもやが残ってしまった感じだ。




















 ◇



 ――――あとがき――――


 ◇




読んで頂きありがとうございます!

同じような痛快ファンタジー作品も書いてました。

こちらも是非よろしくお願いします!


《タイトル》
愛する家族を勇者パーティーに惨殺された少年、【最強の魔剣】と【七大魔人の仲間】を手に入れ、勇者パーティーと世界の全てにざまぁ復讐していく

https://www.alphapolis.co.jp/novel/832153235/331366467

《あらすじ》

 
 少年ラインは改心した魔族の元王女と、人族男性の間に生まれた子。人里離れた山奥で、美しい母親と幸せに暮らしていた。
  
 だが合法の《魔族狩り》に来た残虐な六人の勇者によって、幸せな生活は一瞬で崩壊。辛うじて生き残ったラインは、見るも無残な母の亡骸の前で血の涙を流す。魔族公爵の叔父に拾われ、復讐のため魔界の七大試練に挑む。
 
 時は流れ十四歳になったラインは、勇者育成学園に身分を隠し入学。目的は教師となった六人の勇者への完全な復讐。

  これは最強の魔の力を会得した少年が、勇者候補を演じながら、勇者と世界を相手に復讐していく物語である。

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