星の民。

ましろ まちゃ

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第2章 恋星

フィーニティアの花

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「リラ様、そのように引き篭もられてはお体に悪うございますよ。」

「……………」

「困ったわ」

星の民の王であるサリウスからプロポーズという名の脅迫をされて以来、リラはずっと部屋に篭っていた。

外出の制限があるため元々大した外出はできないが、城内ならば、侍女か兵士を連れていれば散策してもいいという許可は下りている。

が、サリウスからのプロポーズがよほど堪えたのか、リラの引き篭もり具合は、ベッドの上で布団に包まるまで来ていた。

流石のミーシャも、リラの状況に困りはてていたのだ。

どうしたものかとミーシャが考えていると、扉のノック音が聞こえた。

「あら、ドーラン様!」

「どうも。…リラ様はいらっしゃいますか?」

「それがドーラン様、いらっしゃるも何も、ずっと引き篭もられてるんですよ、リラ様ったら!」

「引き篭もり、ですか…」

やってきたのはドーランだった。
戦以来、その後始末に追われていたドーランはようやくひと息をつく時間が出来た為、こうしてリラを訪れたのだが、聞かされた内容に目を丸くした。

もちろんドーランはサリウスと近いので、サリウスがリラにプロポーズをしたことは知っている。

その様子見も兼ねていたご、そこまで落ち込んでいるのを知るともう少し早く来ればよかったと、些か後悔した。

「きっと、あのバカ兄上のことです、失礼なことをしたに違いないですわ」

ベッドにいるリラの耳には入らぬよう、小さな声でミーシャが呟いた。

ドーランはそんなミーシャを宥めながら部屋へ入る。

「リラ、気分が優れないようですね」

「……ドーラン様」

「散歩に行きませんか?」

「散歩…?」

「えぇ。綺麗な庭園があるんです。きっと、よい気分転換になりますよ。」

布団の間から顔を出したリラは、ベッドの傍に立つドーランを見た。

優しく微笑んでくれるドーランに少し安心感を覚えるが、すぐに外方を向いてしまった。

「ご機嫌取りに来たのね。王様の命令?」

「(これは、なかなか重症だな。…全く)」

不機嫌なリラを見て、ドーランは内心深く溜息をつく。昔なじみの王に呆れていた。

「少し失礼しますよ、リラ」

「え?」

ドーランはリラの肩にそっと触れた。

すると次の瞬間、リラの視界は部屋とは違う光景が広がっていた。

「うわぁっ!綺麗…」

水が吹き出す大きな白い噴水に、アーチ状の緑のトンネル。その先には、色とりどりの花が咲き誇っている。

「ここは、立ち入りが制限されている特別な庭でね。君に見せたかったんだよ、リラ。」

「素敵な庭ですね」

「気に入ってくれたみたいでよかった。…サリウスが言ったこと、無視してもいいんだよ?リラ」

「え?」

「あいつは頭が堅いし、強引すぎるんだ。」

王のことを呼び捨てにするドーランに、リラは驚いていた。それに、話し方も丸っきり変わっている。

リラの驚きが伝わったのか、ドーランは苦笑していた。

「プライベートの時はこんなだよ。」

「でも、今お仕事中じゃ…」

「君との関係を仕事にしたくないんだ、俺」

「は、はぁ…」

リラは、なんだかももう別人と話している気分に陥った。本質は変わらないんだろうけど、慣れていない分違和感が大きかった。

「リラって、今何歳?」

「へっ?」

「あ、ごめんね。やっぱり女性に年齢を聞くのは失礼かな?」

「そんなことはないですけど…。まだ19ですよ、わたし」

「へぇ、19歳か。人間って確か、20歳で成人だよね?もう立派な女性じゃないか」

ほらどうぞ、とドーランはリラに手を差し出した。

リラは少し躊躇ったが、その手を取った。

緑のトンネルを抜け、2人は花園の中にある道を進んだ。

「あの、ドーラン様は…」

「ずっと言ってるのに、なかなか呼び捨てにしてくれないね?君は」

「すみません…なんだか、慣れなくて」

「ごめんごめん、別に責めてるわけじゃないんだ。ちょっと寂しくてね」

「慣れるように、頑張ります」

「それで、なんだい?」

「えと…王様と仲いいんですか?さっき呼び捨てにしてましたよね?」

「(またサリウスのことか…なんだか、妬けるな)」

「ドーラン…さま?」

「あ、ごめんね。サリウスとは幼なじみなんだ。子供の頃から知ってるよ。兄弟のように育ったんだ。」

そうだったんですか、とリラは納得した。

「いいなぁ。わたし、兄弟とか年の近い親戚いないんですよ。両親はわたしが物心つく前に亡くなってしまって、祖父母と暮らしてました。」

「兄弟なんていても面倒なだけだよ?サリウスみたいにさ」

「あははは」

思わずリラは声を大きくして笑った。
笑ってからはしたないかと思ったが、何も言われなかったから別にいいか、と開き直った。

「ほらリラ…星の民を象徴する花、“フィーニティア”だよ。」

花園の中を歩いて3分程たった頃、開けた場所に着いた。

そこにあったのは、大きな1つの花壇だった。

真中にある星形から枝伝えに5つの円が出ている。星と円の中には、綺麗な青色の花が敷き詰められていた。

この模様に、リラは見覚えがあった。
光の扉に描かれた紋様にも、この形があった気がしたのだ。

「この形はね、星紋といって、一族のシンボルなんだ。因みにフィーニティアというのは、“ただ1人の愛しい人へ”という意味があって、云い伝えでは、神代に別れた始祖を愛していた人が残した言葉らしいよ。」

「フィーニティア…」

ー君は本当によく笑うな、フィー
ーゼオが仏頂面すぎるのよ!未来の王様の癖に!

「あれ?」

「リラ!?」

リラは突然立ちくらんだ。
頭が酷く痛み、額を押さえた。

「大丈夫か?」

「ごめんなさい。何だか、急に頭が痛くなって。それに、誰かの声も聞こえた気が…」

「声?」

「女の人と、男の人の声…。お互いのことを、フィー、ゼオって呼んでて…」

「ゼオだって…?」

ゼオという名前にドーランは大きく反応した。

リラがその名前は誰の名前だとドーランに聞き返すと、言うか迷ったが、ドーランは口を開いた。

「…ゼオは、星の民の初代王のお名前だよ。」

「初代?どうしてわたし、そんな名前を…」

混乱しているリラを見ながら、ドーランは考えていた。

これが、未来から来たリラの息子が言っていたという“血の記憶”だろうか。

しかし、一体“血の記憶”が何を指すかドーランにもわからなかった。

サリウスから聞いた時は信じきれない部分があったが、目の当たりにするとリラの身に何かが起きているのは分かった。

「戻ろうか、リラ。少し疲れたんだよ、きっと」

ドーランはとりあえずそう言ってその場を誤魔化し、瞬間移動で部屋へリラを連れ帰ったのだった。



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