星の民。

ましろ まちゃ

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第2章 恋星

消えゆく絆、新たな出会い

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「今日はいい天気ですねー」

「ごめんね、ミーシャ。わたしのわがままに付き合ってもらって。」

「お気になさらないでください、リラ様。ここが気に入られたなら、毎日でもお茶をしましょう。」

リラが王宮にやってきて、2週間あまりが経過していた。

ドーランに庭を教えてもらってから、リラは頻繁に訪れるようになっていた。

あの声が気になるというのもあったが、落ち着ける場所ということが大きい。

「でも、この場所って限られた人しか入れないんでしょう?わたしなんかが使っていいのかな?」

「陛下から許可は頂いておりますし、大丈夫ですよ」

「…あの人、本当にわたしと結婚するつもりなのかしら。全然会いにもこないし…。結婚は、愛する人としたいな…」

「リラ様…」

リラはまだ決意を出せずにいた。
今は比較的自由に過ごせているが、サリウスがいつまで返事を待ってくれるかもわからない。

しかしリラは女の子だ。
たとえ生きる為であっても、その方法が結婚となればそう簡単にはいかない。

「なんだかちょっと湿気っちゃったね。わたしちょっと化粧室行ってくる!」

「あ、リラ様!?」

しんみりとした空気になってしまったため、リラは庭園から出た。

せっかくミーシャが自分を元気付けてくれようとしたのに、と少々落ち込んだ。

庭園の入口にいた兵士には化粧室に行くと伝えると、リラを気づかい同行はしてこなかった。

「あ、すみません!」

少し歩いて化粧室の手前にある角を曲がると、リラは前から来ていたらしい男性とぶつかりそうになり慌てて立ち止まった。

「(うわぁ、おっきな人…)」

その人はかなり長身でリラの頭は彼の胸下あたり。見上げると首が痛くなりそうだとリラは思った。

「おやおや、これはこれは…噂の人間のお嬢さんじゃないですか。お供も付けずに散歩ですか?」

「あ、えと…その…庭園でお茶をしてます。今は化粧室に行くところです。」

「庭園、ですか。随分贅沢をしていらっしゃるんですねぇ…」

「そう、なんでしょうか…」

男は顎に手を置き、リラを頭の上から足の爪先までなめるように見ている。見下ろされているので、リラは居づらくなってしまい、すっかり縮こまった。

「おや?ご存知じゃなかったですか?あの庭園は王族しか立ち入れないのですよ」

「え!?」

「はぁ…そんなことも知らずに使っているなんて、何と烏滸おこがましい。未来の王妃がこんな感じでは、一族の恥晒しになりますよ?」

「…っ……」

リラは恥ずかしくなり俯いた。

「もしかして、陛下といらしてるんですか?」

「…あ、いえ…ミーシャと…」

「ミーシャ様と?…ミーシャ様と親しくなられたのですか。羨ましいですねぇ」

「ミーシャは、一番身近にいる侍女で、よくしてくれるんです…」

「侍女?…ふっ、ふははははは!」

男は突然笑い始めた。
リラはそれに驚き、無意識に半歩後ろへ下がった。

一体何故笑われているのか、想像もつかなかった。

「あなたは本当に何も知らないんですねぇ。ミーシャ様は陛下の妹君ですよ?」

「え?」

「初日、あなたの面倒はドーランが見ていたのですよね?おそらく近場にいた面倒見のいいミーシャ様を“侍女”として紹介したといったところでしょう。まぁ、ドーランはミーシャ様の夫ですし、情報も入りやすいと考えたというところですかねぇ。」

「夫…?ミーシャは王族で、ドーラン様はミーシャの旦那さん…」

リラは泣きそうな顔をしていた。
自分は何も知らなかったのだと痛感した。

いやそれよりも、自分は何も教えられていないということにショックを受けていた。

ミーシャとドーランとは仲良くなったと思っていたリラにとって、目の前にいた男からもたらされた情報は精神的なダメージを与えた。

「可哀想に…。まぁ、あなたは人間ですし、こちらが信用仕切れないのは無理もないことですよ。」

「…わたし、どうしたらいいんですか…もう、誰を信用したら…?」

涙は出ていなかったが、リラの心は叫び声を上げている。

サリウスからのプロポーズのこともあるのだ。

いっぱいいっぱいになっていた。

「どうですか?私とお話ししましょう。私もあなたを信用することはありませんが、あなたが知りたいことは教えて差し上げますよ?」

リラは、その男の手を取った。

「交渉成立、ですね。私は星天十騎士せいてんじゅうきしが1人、エルグラードといいます。お見知り置きを。」

「エルグラード様、ですね。…わたしはリラです。」

「では参りましょう、リラ。」

2人の姿はその場から消えた。



ーーーー



「ここは?」

「王宮にある私の部屋ですよ。」

「…王宮に自室があるんですね。」

「あぁ、安心してください。変なことはしませんから。」

瞬間移動で移った先は質素な部屋だった。
リラが使っている部屋よりはやや小さいが、それでも王宮にあるだけの広さはあった。

「すみませんねぇ、ソファーや机を置いていなくて。座れる場所がベッドしかないんですよ。」

「…大丈夫です」

「そうですか?…あなたに興味はありませんが、もう少し警戒心はあってもいい気がしますがねぇ。」

エルグラードの言葉を無視してベッドに腰を下ろした。

エルグラードはというとベッドの側にあった丸椅子に腰を下ろした。

「で、何か聞きたいことはありますか?」

「さっき言っていた、星天十騎士というのはなんですか?」

「あぁ、それですか。簡単に言えば力の強い10人の兵士、ですかねぇ。まぁ力の強さは魔力であったり剣技であったり、知識であったり様々ですが。」

「称号みたいなものですね。」

新たに知ったことを、リラは少しずつ覚えていく。きっと、エルグラードに出会わなければその言葉を知る機会はなかっただろうとリラは感じた。

今のような生活をしていたら、この世界のことを学べないと、ようやく気付いたのだ。

「あの、エルグラード様にお願いがあります。」

「なんですか?」

「時折こうやって会って頂けませんか?色々と、この世界のことを勉強したいんです。」

「そんなこと、お安い御用ですよ。まぁ、問題はその方法ですかねぇ。今日のように密会するのもスリリングで楽しいですけど。」

「王様に、この世界の勉強をしたいといえばあなたにその役割は回りますか?」

「私は“知”を司る星天十騎士なので可能性はなくもないでしょうが…難しいかもしれませんねぇ。何せあなたとの接点がない設定ですから。」

「じゃあどうしたら…」

「まぁ、私が何とかしましょう。あなたにも少し協力して頂かなくてはなりませんが…。取り敢えず、今日のところは戻りなさい。庭園近くの化粧室に送ってあげますから。」

話はそけで終わった。
リラはベッドから立ち上がり、ありがとうございます、と頭を下げる。

気にしないで下さい、とエルグラードは返事をし、リラを出会った場所へと飛ばした。

リラが居なくなると、エルグラードは足を組んでさっきまでリラがいた場所を見つめた。

出会ったのは偶然だった。
興味本位で関わってみたが、案外面白いことになりそうだと感じていた。

動くなら早いほうがいいと、エルグラードはある場所へ向かうために部屋を後にしたのだった。
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