星の民。

ましろ まちゃ

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第2章 恋星

自覚した恋心

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ある朝、王の間にはサリウスを始め星天十騎士と医師長、侍女長など各部署の長たちが集まっていた。

何もないことが一番だが何かあってからでは遅い為、週に3回、こうやって定例会が開かれるのだ。

「陛下、例の…あの人間の娘とはどういった具合ですかな?」

定例会も終わりに差し迫っていた頃、大臣が発言した。

その話題は誰もが気になっていた内容だけに、その場はざわめき始める。

「別にどうということもない。」

「それでは困りますぞ陛下。ただでさえ人間の娘を王妃にすることを反対する者も多いのです。」

「わかっている」

やれやれ、といった風に発言する大臣にサリウスもめんどくさいといった表情を見せていた。

この場にはミーシャも同席しているが、リラの話が出たため心配した様子で成り行きを見ている。

「陛下か少しよろしいですかねぇ?」

「お前が発言するとは珍しいな、エルグラード」

手を挙げたのは、エルグラードだった。
サリウスが発言を許したので、エルグラードは一歩前に出て口を開いた。

「陛下は一妻多夫制を導入されましたよね?その制度、リラ様が王妃になられたあかつきには彼女にもそれを?」

「あぁ、それは勿論だ。例外はない。」

「実は、“知”の星天十騎士としてリラ様に教育をしたいと思っているのですが。その許可を頂きたいのです。」

「教育…?お前が…?」

「はい。私は人間の娘に全く興味などありませんが、将来…もし有数の名家の者が夫になろうとすれば、一族の名に恥がつくといけませんから。」

エルグラードの言葉に、確かにその話は最もだと賛同の声が上がった。

彼自身、恐らく会議に参加している大半は自分の意見に賛同することを確信していた。反対するとすれば、ミーシャとドーランだろうと踏んでいたが、チラとそちらへ目をやれば案の定複雑な表情をしている。

ドーランと視線が交わったエルグラードは、わざとドーランに向けてほくそ笑んだ。

「いかがですか、陛下」

「まぁ、いいだろう。したいようにすればいい。」

返事を即すエルグラードを見て、サリウスは大して何も思っていなかったのかあっさり許可を下ろした。

ありがとうございます、とエルグラードは一礼をし、後退したのだった。

その後サリウスが他に何かある者はいないかを確認したが、誰も反応を見せなかったので、定例会は終わりを迎えた。

「少しいいか?エルグラード」

「…来られると思っていましたよ、ドーラン」

王の間を次々に後にする人々に紛れ、ドーランがエルグラードに後ろから声を掛けた。

エルグラードは待っていたとばかりにドーランをむかえる。

「場所を変えますか?」

「西側の調理場なら、この時間人目がない。そこに来い」

「構いませんよ」

話し合う場所を決めると2人はそれぞれ魔法を使い移動をした。

西側の調理場横にある人がいない廊下に2人はいた。外に面していないので若干暗かった。

「何を企んでいる、エルグラード」

「何も企んでなどいませんよ、失礼ですねぇ」

「嘘を吐くな。でなければ、星天十騎士の名を嫌うお前がこの名前を使うはずがないだろう。」

「人聞きの悪い。私もたまにはお仕事をしようと思っただけですよ。それより君こそ一体何を企んでるんですか?ミーシャ様をリラ様の侍女に仕立て上げたりして」

「お前には関係のないことだ。」

「えぇ、関係ありません。ただ、ミーシャ様とリラ様が哀れだと思いますよ?君の妻でありながら、訳も分からぬ人間の世話をさせられるミーシャ様と、そのミーシャ様や君に騙されているリラ様がね。」

「なんだとっ!」

ドーランは自分より長身のエルグラードの胸ぐらを掴み、そのまま壁に押さえつけた。

「…っ…乱暴ですねぇ。今のその顔、ミーシャ様やリラ様に見せてあげたいくらいですよ」

「もしリラに何かあればただじゃ済まないぞ、エルグラード!」

「それほど心配しなくても、何もしませんよ。君は安心してミーシャ様と仲良くしてて下さい。では私はこれで」

「っ、待て!エルグラード!!」

壁に押さえつけられた状態でエルグラードは転移魔法を使ったのか、ドーランの手から消えた。

「くそっ」

1人取り残されたドーランは、行き場のない感情を壁にぶつけた。

力任せに殴ったので自分の拳にも痛みがあったが、ドーランは気にもしていれなかった。

「それほど怒りを露わにしては、城に響きますよ?ドーラン様」

「!……ミーシャ。いつからそこに?」

「さっきですから安心して下さい。」

いつの間にか、ドーランの元にミーシャが来ていた。

リラの元へ出向く前なのか、城の侍女服へと既に着替えている。定例会の最中は、姫らしく美しいドレスを着ていたが今はその面影もない。

「…ドーラン様、怒らないで聞いて下さい。貴方がリラ様の様子を気にしていらっしゃるのは、同情からですか?」

「君まで、何を言い出すんだ…そんな訳ないだろう?」

「それを聞いて安心致しました。私、ずっと不安だったのですよ?人間だから、黒髪だから、自分と同じ目に遭わないように守らなければ、と…。貴方がそう思っているのではと。」


「違うんだ…純粋に、彼女を心配してるんだ。サリウスにも乱暴に扱われたりしたら、アイツを殴ってしまいそうだ。」

「ふふふっ…ドーラン様ったら、すっかりリラ様に恋い焦がれていらっしゃるのね」

「え?」

「本気で恋をしたことがないまま兄上の命令で私と婚約してしまったから、不器用になってしまったんですよ、きっと。」

ドーランは目をぱちくり、と何度か瞬かせた。

ミーシャはというと、最初みた時からそうではないかと思ってたんですよ、や、リラ様を見る瞳がこうギラギラしてましたから、などと1人でぶつぶつ呟いていたが、ドーランは呆気に取られていた。

「(…恋…?)」

その一言に頭を占領されていた。

ドーランとミーシャは、周囲には結婚したと公表されているが実際はミーシャを男から守るためだと、サリウスが勝手に発表したのだ。

厳密には、法律上では夫婦ではない。

幼馴染であるがゆえに婚約はしているが、ミーシャは結婚に興味はなかったし、ドーランは結婚の噂が立つまで様々な女性を相手にしていた遊び人だった。

「しかし、恋と言われても…よくわからない」

「立場上、仕方がないことですわ。私たちには無縁の世界ですから。」

「…すまない、ミーシャ」

「いいのですよ。だから、気にせずリラ様を口説いて下さいね。兄上には私から言っておきますから。」

私が言いたかったのはそれだけです、と言ってミーシャは仕事があるからと早々に姿を消した。

ぼうっと立ち尽くしていたドーランだったが、少ししてから自分も仕事へ向かったのだった。


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