1 / 5
第1章 出会いと修行編
勘違い
しおりを挟む「テリドお坊っちゃま!テリドお坊っちゃま」
「う、うんん~」
その日、坂上 三田は聞いたこともない声によって起こされた。
(ふわぁぁ、もう少しだけ)
しかし、寝ぼけている為か彼は知らない声の持ち主が近くで叫んでいることの不自然さえ気づかずに二度寝を試みる。
敢えてこの馬鹿な彼を庇うのであれば、彼が今寝ている布団は普段彼が寝ている布団とは比べ物にならないくらい寝心地が良く、彼自身も寝る前の激務によって相当疲れていたということだろう。
「テリドお坊っちゃまぁぁぁ! このままだと私ランハルド様に怒られてしまいますぅぅぅ。早く、早く起きてくだされぇぇぇ」
「お、起こすなよ。ったく……ん?」
しかし、ここに来てようやく三田も違和感に気がついた。三田は元々大学生で1人暮らし。その上、彼女などもいな____。
そんなわけで三田を起こしに来るものなどいないのだ。
「えっ? はっ、えっ?」
いよいよ事態の深刻さ気づき慌てて飛び起きた三田であったが周りを見渡して更に混乱してしまう。
なにせ、さっきまで貧乏なボロアパートにいたはずの三田は今は映画などでしか見たことのないような大きなベッドで寝ており、見たことのないレベルの大きな部屋の中で片眼鏡をつけた黒服の男が騒ぎ回っているのだ。
これで混乱しない方が無理だというものだろう。
(おいおいおい、嘘だろ)
しかし三田の混乱は別の所にあった。
(この部屋、この片眼鏡の1人、そして俺の名前……これ完全に「ライク ライブ ライブズ」の世界じゃね???)
「ライク ライブ ライブズ」とは三田がはまっているいわゆるギャルゲーと言われる類のゲームであり、その中でも近年まれにみる神ギャルゲーとして人気を博したゲームである。
そしてこの三田は「ライク ライブ ライブズ」(以下 ラ ラ ライブズ)オタクと言われるほどこのゲームをやり尽くした猛者である。
その為、部屋や人物自分の名前を聞いただけで察することが出来てしまった。
つまりである。
「うわぁ、ガロン爺じゃん! えっ、スゴ! 完全にゲーム通り!!」
「て、テリドお坊っちゃま? 」
つまり、三田は夢にまで見た世界に紛れ込んでしまったオタク。普通ならゲームの世界に突然入ってしまったら驚きで何も出来ないのだがそれを三田の「ラ ラ ライブズ」愛が凌駕した。
「スゲー! マジで「ラ ラ ライブズ」だ。
これ夢か? いや、ちゃんと痛いな。これもしかしてゲーム転生とか言う奴か? マジか?」
興奮冷めやらぬ三田は部屋を駆け回りゲームなどでは描かれなかった細かい部分などを見てはしきりに頷いたり唸ったり。
そして勿論これに1番戸惑ったのはガロン爺であった。
「えっ、あっあのテリドお坊っちゃ……ま?」
朝起きるなり突然ご主人様が部屋を奇声をあげながら駆け回っていたとしたら驚くのも無理はないだろう。というか驚かない方が不思議である。
しかし三田……いや、もうテリドか……。
テリドはそんなランハルド爺に気づくことなく笑い始めた。
「くくっ、はっはっは」
だらしなく開いた口で。
(この世界が「ラ ラ ライブズ」ということはメイナちゃんとか、ラバンデさんとかに実際に会えるわけで……むふ、なんてパラダイス!! ……1つ気になることがあるとすれば俺がテリドだと言うことだけど。
……まぁ、なんとかなるだろう。俺にはゲームの知識だってあるしな)
「つまり上手く立ち回れば夢にまで見たヒロイン達と話しながらのんびりとした生活を送ることが出来る!! くぅぅ~、かつてこんなに良いことがあったろうか?」
「皆の者ぉぉぉ、テリドお坊っちゃまがご乱心になられたぞぉぉぉ。早く来てくれぇぇぇ」
またベッドに上がると飛び上がってガッツポーズを取りながら意味の分からないことを叫ぶテリドにガロン爺は限界に達してしまい、メイドや兵士などを呼びなんとかテリドを押さえようとする。
しかし聖地にたどり着いたオタクはそのことにすら気づかず喜びの声をあげ続ける。
だがしかし! 実は彼は猛烈な勘違いをしていた。というのもここは「ラ ラ ライブズ」の世界などではない。
「ラ ラ ライブズ」の大ファンであり鬼畜なRPGゲームを作ることで有名なガンセクトPが暴走し作られた、「ラ ラ ライブズ」のキャラが原作にはなかったエミズーを倒す為に立ち向かう鬼畜なRPGゲーム「NOT ライク ライブ」である。
しかし見た目だけで見れば「ラ ラ ライブズ」であり、そもそも大して売れず原作ファンからクソゲーとまで言われたこの作品を「ラ ラ ライブズ」以外に興味がなかったテリドは知らない。
なので、テリドが勘違いしてしまうのも仕方のないことなのかもしれない。
「うぉぉぉぉ、待っててねメイナちゃんんん!!」
「き、気絶させてもよい。責任は全部私が取る坊っちゃまを止めてくれぇぇ」
「ダメですガロン様! 押さえつけても全く止まりません」
兵士達はベッドの上で喜びを叫び続けるテリドを黙らせようと、正気に戻そうと奮闘するが今のテリドは周りのことを見ている余裕などなかった。
「止めろぉぉ、息の根を止めろぉぉ」
「ガロン様ぁぁ、それはやり過ぎですって!」
押さえつけても押さえつけても、それを振り払いベッドの上で叫び続けるテリドにガロン爺はキャパシティを超え、とんでもないことを口走るがそれでもテリドは止まらない。
「うっおおぉぉぉ!!!!」
兵士らを完全に振り払うと拳を天高く突き上げて雄叫びをあげる。
しかし、このテリドの勘違いが1つの選択肢を間違えるだけで即死という鬼畜なクソゲーに多大なる影響を与えてしまう。
しかしそんなことなど露知らず、最早カオスな状態の部屋の中で彼は雄叫びをあげながら妄想を膨らませるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…
senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。
地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。
クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。
彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。
しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。
悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。
――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。
謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。
ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。
この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。
陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!
この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている
夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった!
……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。
なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ!
秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。
「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」
クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない!
秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!
クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている
夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。
ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。
無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。
クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました
ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。
意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。
しかし返ってきたのは――
「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。
完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。
その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
女性が少ない世界に転移しちゃったぁ!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比40:1の世界に転移した主人公
人のようで人ではなかった主人公が様々な人と触れ合い交流し、人になる話
温かい目で読んでいただけたら嬉しいですm(__)m
※わかりにくい話かもです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる