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第二章 逆さ鳥居の神社編
72話
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「神楽坂都さんで、宜しかったかしら?」
――そう返答したのは、山城綾子であった。
俺が言葉を都に返す前に先んじて話す彼女を見て、都の視線が綾子に向けられる。
「いま、優斗と話をしているのですけど?」
「別に、私が代わりに答えてもいいはずだと思うけど?」
「貴女には聞いていません! 私は、優斗に聞いているんです!」
キッ! と、怒りの視線を綾子から俺に向けてくる都。
どうして、そこまで怒っているのか俺には分からないんだが……。
「都、これはだな……」
山城綾子と一緒にいる本当の理由を話すことはできない。
そもそも都には、普通の世界で暮らしていてほしい。
だから、誤魔化すしかない。
「仕方ないわね。神楽坂さん」
俺と都の間に割って入ってくる綾子を見て本当の事を話すのか? と、一瞬、考えてしまう。
「桂木君には、生徒会の仕事を手伝ってもらっているのです。だから、貴方と桂木君の間に割って入るような無粋な真似をするつもりは一切ないわ」
「――で、でも! こんな朝早くから生徒会の仕事なんて……、しかも学校休むって……」
「それなら、一緒に付いてくる?」
「どこにですか?」
「付いてくれば分かるわよ」
チラリと俺の方を見てくる都。
とりあえず俺は頷いておく。
「分かりました。一緒に行きます」
事情は、いったん保留か。
それにしても、何て都を説得するつもりなのか……。
山城綾子は、すぐに電話をする。
そして、到着する車。
「それでは二人とも車に乗ってくれる?」
その綾子の言葉に、俺と都は車に乗る。
車は、走り出し有料道路を経由してから山武郡の方へと向かう。
有料道路を降りたあとは、日向駅から見て学校からは反対側の山の上へと車は上がっていく。
もちろん、その間は無言で沈黙な空間が車内を満たしている。
そして――、その間、都と綾子は互いを値踏みするかのように見ている。
しばらくしてから到着したのは山王総合病院。
「ここって病院?」
「ええ。そうよ」
車から降りたところで、都が呟くが、それに対して反応する山城綾子。
「どうして、病院で? 生徒会に何の関係があるんですか?」
「山王高等学校と、山王総合病院は、我が校の理事長であるお父様が運営しているの」
「つまり、この病院は……」
「そういうこと」
黙っている俺を他所に、山城綾子は都に疑問に回答していく。
「我が校は、毎年の春には山王総合病院と合同企画をしているの」
「――でも、それと優斗に何の関係が……」
「私は一般の方と感性がズレているのは分かっていたから、それで一般人の桂木君に手伝ってもらおうとしたの」
「それなら優斗じゃなくても良いんじゃないんですか?」
「それはダメよ。だって桂木君は、最近の学生生活において非常に問題がある行動が多いから、彼を更生させる為に、人との付き合いを学んで欲しいから生徒会の仕事を手伝ってもらうように強制したの」
「最近の学生生活って……」
「言葉遣いとかが一番大きいのよ? とくに彼は、目上の人に対する言葉がまるでなっていないもの。だから、生徒会としても放置できないと思ってイベントの手伝いを強制させてもらったの」
「ほんとに? 優斗」
「ああ、本当だ」
かなり強引な話の持って行き方だが、この際、都が納得してくれるなら何でもいい。
――そう返答したのは、山城綾子であった。
俺が言葉を都に返す前に先んじて話す彼女を見て、都の視線が綾子に向けられる。
「いま、優斗と話をしているのですけど?」
「別に、私が代わりに答えてもいいはずだと思うけど?」
「貴女には聞いていません! 私は、優斗に聞いているんです!」
キッ! と、怒りの視線を綾子から俺に向けてくる都。
どうして、そこまで怒っているのか俺には分からないんだが……。
「都、これはだな……」
山城綾子と一緒にいる本当の理由を話すことはできない。
そもそも都には、普通の世界で暮らしていてほしい。
だから、誤魔化すしかない。
「仕方ないわね。神楽坂さん」
俺と都の間に割って入ってくる綾子を見て本当の事を話すのか? と、一瞬、考えてしまう。
「桂木君には、生徒会の仕事を手伝ってもらっているのです。だから、貴方と桂木君の間に割って入るような無粋な真似をするつもりは一切ないわ」
「――で、でも! こんな朝早くから生徒会の仕事なんて……、しかも学校休むって……」
「それなら、一緒に付いてくる?」
「どこにですか?」
「付いてくれば分かるわよ」
チラリと俺の方を見てくる都。
とりあえず俺は頷いておく。
「分かりました。一緒に行きます」
事情は、いったん保留か。
それにしても、何て都を説得するつもりなのか……。
山城綾子は、すぐに電話をする。
そして、到着する車。
「それでは二人とも車に乗ってくれる?」
その綾子の言葉に、俺と都は車に乗る。
車は、走り出し有料道路を経由してから山武郡の方へと向かう。
有料道路を降りたあとは、日向駅から見て学校からは反対側の山の上へと車は上がっていく。
もちろん、その間は無言で沈黙な空間が車内を満たしている。
そして――、その間、都と綾子は互いを値踏みするかのように見ている。
しばらくしてから到着したのは山王総合病院。
「ここって病院?」
「ええ。そうよ」
車から降りたところで、都が呟くが、それに対して反応する山城綾子。
「どうして、病院で? 生徒会に何の関係があるんですか?」
「山王高等学校と、山王総合病院は、我が校の理事長であるお父様が運営しているの」
「つまり、この病院は……」
「そういうこと」
黙っている俺を他所に、山城綾子は都に疑問に回答していく。
「我が校は、毎年の春には山王総合病院と合同企画をしているの」
「――でも、それと優斗に何の関係が……」
「私は一般の方と感性がズレているのは分かっていたから、それで一般人の桂木君に手伝ってもらおうとしたの」
「それなら優斗じゃなくても良いんじゃないんですか?」
「それはダメよ。だって桂木君は、最近の学生生活において非常に問題がある行動が多いから、彼を更生させる為に、人との付き合いを学んで欲しいから生徒会の仕事を手伝ってもらうように強制したの」
「最近の学生生活って……」
「言葉遣いとかが一番大きいのよ? とくに彼は、目上の人に対する言葉がまるでなっていないもの。だから、生徒会としても放置できないと思ってイベントの手伝いを強制させてもらったの」
「ほんとに? 優斗」
「ああ、本当だ」
かなり強引な話の持って行き方だが、この際、都が納得してくれるなら何でもいい。
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